ゲーム紹介:ニャー(MEOW / Reiner Knizia / Cranio Creations / 2020)

 前回紹介した「メカネ」に引き続き、2020年秋のクラニオクリエーションズ新作の紹介です。
 名ゲームデザイナー、ライナー・クニツィアの新作カードゲーム「ニャー」です。
 ゲームジャンルとしては「トリックテイキング」。日本でもファンの多いジャンルですが、もともとトリックテイキングに馴染みのあるヨーロッパと違い、日本ではイマイチ馴染みが薄く、場合によっては「マニア向け」と取られることも多く、少し抵抗感を抱いている人もいるかもしれません。
 しかし!この「ニャー」は、そういった人にこそ遊んで欲しい、広くオススメできるトリックテイキングなのです。

 誤解を恐れず言うならば、「トリックテイキング」とは、「カードの数比べを繰り返していくゲーム」なので、本来は非常に簡単なゲームです。
 配られた手札のカードから、全員が一枚ずつカードを出していきます。この一周が「トリック」。そして、出されたカードの数を比べ、そのトリックの勝者(基本的には数字の大きい人)となります。ざっくり言うと、トリックを取りあうから「トリックテイキング」なのです。
 そして、基本的な「トリックテイキング」において、もう一つ大事なのが「フォロー」のルールです。
 「ニャー」では、「マストフォロー」というルールが採用されており、カードを一枚ずつ出す際に、最初に出されたカードと同じ色のカードを出さなければなりません。(同じ色のカードを持っていない場合は、好きな色を出すことができます)
 フォローが出来ない場合は、基本的にそのトリックにおいては「負け」になるのです。
 だだし、そこでもう一つの基本的なルールである「切り札」が大事なポイントになります。ある色が「切り札」となっており、最初に出されたカードと異なる色のカードであったとしても、「切り札」は常に「より強いカード」として扱われるのです。例えば、「赤の8」が最初に出されたトリックにおいて、「緑の2」は異なる色であっても「赤の8」よりも強いのです。

少し変わったデザインのカード

 「ニャー」では、赤・青・緑の三色、1~18の各18枚でゲームを行います。マストフォローで、切り札は常に「緑」です。そして、さらにそれぞれの色で「1」は、同じ色の「18」には勝てるというルールがあります。
 「トリックテイキング」としては、非常にオーソドックスと言えるものじゃないでしょうか。

 ここまで読んで「オーソドックスだから、広くオススメできるトリックテイキングなの?」と思われた方もいるかもしれません。
 もちろん、オーソドックスだから、ということも理由のひとつではありますが、「ニャー」は決してそれだけのゲームではありません。

 では、どんなところがオススメポイントなのか。
 ここで、カード構成を詳しく見てみます。
 3色、18枚。色の数が少なく、それぞれの色のカードがとても多いという構成になっています。
 マストフォローのトリックテイキングでは、ある特定の色のカードを手札からなくし、カードを少し自由に出せるようにすることがプレイのコツとしてあります。
 しかし、「ニャー」では、そのカード構成から、ある特定の色のカードを無くすということが出来にくくなっているのです。
 そして、このカード構成と得点の仕組みが相乗効果を生むことになります。
 「ニャー」は、3ラウンドに渡ってゲームを行います。
 それぞれのラウンドの開始時に、トリック数分のチップが並べられ、このチップを順番に、各トリックにおける勝者が取っていくことになります。
 このチップの得点配分がいやらしくも面白く作られています。
 チップは、プラスだけでなく、マイナスも用意され-むしろ、マイナスになりやすいバランスで構成されているのです。
 すなわち、トリックは、ただ勝てばいいのではなく、そのチップに応じて勝たないようにすることも大事なのです。
 前述のカード構成と組み合わさることで、ここに妙味が生まれるのです。
 特定の色をなくしにくく、それぞれの色における数字の強弱は幅広いため、各トリックで勝ちを狙うのか、勝たないようにするのか。また、どの数のカードを出すのか。異なる色を交えた手札のコントロールというよりも、そのトリックごとの押し引きとその見極めのウエイトがとても大きいのです。そして、だからこそ、特定の色をなくし、切り札も踏まえた手札のコントロールが出来るようになった時のアドバンテージも大きく、それがゲームをよりエキサイティングなものにしてくれているとも言えます。

さて、どんな風にカードを出していこうか・・・

 加えて、「ニャー」では、各ラウンド9トリック(手札9枚)と決まっているため、6人プレイ以外のプレイ人数においては、使用されないカードがあることになります。
 トリックテイキングでは、出されたカードを覚えておくことで、その後のプレイに活かすという「カウンティング」というテクニックがあります。
 このカウンティングがハードルの高さとして感じられることも多いのですが、この「ニャー」では使われないカードがあることで、それを緩和させてくれていると言えるでしょう。(もちろん、カウンティングは魅力でもあるため、一部のカードをはじめから抜く、上級ルールも用意されています)
 これもまた得点チップと組み合わされることで、アクシデント性が高まり、ゲームをよりエキサイティングなものにしてくれています。
 特に、「マイナスチップを一枚打ち消す魚チップ」、「一枚ならマイナスにならないものの、二枚取ってしまうと大きくマイナスとなる割れた花瓶チップ」を、意外なカードで取ったり、取らされたりの時は、おおいに盛り上がります。
 また、盛り上がりという点では、最強のカード「18」に勝つことのできる「1」のカード抜きで語ることはできません。「1」で勝つ、勝たされてしまうこと、決して少なくないですよ!

「割れた花瓶」はとてもいいアクセント!

 「ニャー」は、テクニカルな部分を極力廃し、遊びやすさ、そして、なによりゲーム的な盛り上がりに特化させたトリックテイキングと言えるでしょう。
 ポーチタイプのパッケージや愛らしい猫のイラストに惹かれて手に取ったとしても、そのままの軽い気持ちで十分楽しめるタイトルになっていると思います。
 ありそうでなかった「ファミリー向けトリックテイキング」として楽しむのもいいかもしれません。
 とにかく広くオススメできる一作です。
 

スタッフ神田の視点

「ニャー」は、「チグリス・ユーフラテス」「ラー」など様々な名作で知られるライナー・クニツィアのトリックテイキングゲームです。出版社は「バラージ」「ロレンツォ・イル・マニーフィコ」などを送り出しているCranio Creations。

 この両者がタッグを組むことで一体どんなゲームが生まれるのか!? 1トリテファンでもあるぼくは、このゲームの初報を聞いてテンションが跳ね上ったことを覚えています。と、同時に数寄ゲームズで「ブードゥープリンス」の日本語版の発売を控えていたぼくは「クニツィア唯一の本格トリテ!」という売り文句が使えなくなったことにガッカリもしてたのでした。まあ、それはさておいて。

◆ゲームの概要

 ゲームの詳しいあらましはタナカマさんの記事を読んでいただくとして、こちらの記事ではトリテをある程度知ってる人向けに一段飛ばしで概要を述べていきます。

 カードは全部で54枚、内訳は3スート18ランクで、トランプの4スート13ランクと比べて1スートが長いのが特徴的なカード構成です。

 ゲームの準備として27枚のご褒美トークンをよく混ぜ、そのうち9枚を表にして一列にして並べます。トリックに勝ったプレイヤーはこの列の一番左のご褒美トークンを獲得するのですが、ご褒美トークンには「得点となるトークン」、「失点となるトークン」、「失点トークンを1枚だけ捨てられるトークン」、「2枚集めると-20点になるトークン」の4種があり、単純にトリックに勝てばいいだけでなく、時にはトリックに負けなければならない時もあります。このトークンの獲得に纏わる手札のハンドリングがこのゲームのキモと言える部分です。

 トリックテイキングとしてはマストフォローで切り札は緑スートで固定、最高ランクの18がプレイされた場合だけランク1が最強になるというツイストもありますが、基本的には極めてオーソドックスな作りです。

 プレイヤーには9枚のカードが手札として配られ、1ディールは9トリックで構成されます。ゲームは3ディールを通して行うので全部で27トリック。これはご褒美トークンと同じ数なので、すべてのご褒美トークンがちょうど1度だけゲームに登場することを意味しています。
 得点計算の後、最も多くの得点を獲得したプレイヤーがゲームに勝利します。トリテを嗜んでいる人なら、これだけでどんなゲームか想像がつくほどに、シンプルな構造のトリテと言えます。

◆シンプルなだけのトリテなのか?(反語)

 少し長くゲームを嗜んでいる人ならご存知のように「ご飯に塩を振っただけ」というゲームも密かに多いのがクニツィア。シンプルな作りを身上とするクニツィアのゲームは、一歩間違えると味気なさが先立つこともままあるのですが、「ニャー」もそんなゲームの一つなのでしょうか?

 実際に遊んでみると上記の通りシンプルな作りのゲームにも関わらず、トリテ特有の勝ち負けの楽しさが存分に味わえる作りになっています。これがまさにクニツィアならではの魔法の種なのですが、とにかく得点配分が絶妙で、控えめな存在感の得点トークンに対して、失点トークンは7点や10点など強烈なインパクトを持つものが多く、得点をコツコツと積み上げるよりも、一撃死の失点をなんとか避ける方向に意識が向く得点体系になっています。
 これによって「このトリックは絶対に取りたい!/取りたくない!」という気持ちをプレイヤー全員に浸透させ、その上で必ず勝者と敗者が生まれる非情の勝負を行わせるので、そりゃドッカンドッカンと盛り上がるワケです。「はい、ここで盛り上がってくださいねー」と合図するクニツィアの幻影すら見えてきます。

 他にも2枚取ると-20点になる花瓶のトークンもうまい作りで、1枚取るだけなら「まあ、1枚ならセーフだし」と余裕ぶっていられるのですが、いざ2枚目を目にした時の緊張感はとんでもないものです。「パチンコでリーチがかかると当たった時と同じ興奮作用がある」という話がありますが、まさにそれと似た人間の心理の機微を活用しているワケです。

 また、地味ながら匠の技を思わせるのが、ゲームを通して得点計算が1回だけという省力設計。トリテの得点計算は意外と手間ではあるので、ならば途中の計算はいっそ省いてしまえ、とするのは合理的なクニツィアらしい考えとも言えます。

 一方で難点として、カードのデザインがこなれていない点が挙げられます。独特の小判型のカードは「猫に小判」と言わせたかったのでしょうか、ユニークな形状ではありますが、やや大ぶりで子供の手には持ちづらく、ランクもカードの内側に寄っているので思いっきり開かないとランクが見づらい場合があります。
 せっかく子供でも持ちやすい手札9枚のトリテなのに、惜しい……!

 また、ゲーム展開として手札とトークンがどうしても噛み合わない状況が発生することがままあります。トークンの並びが得点ばかりなら、トリックを取れるハイランクのカードや切り札が欲しいのですが、トークンの並びとは関係なしに手札は無作為に配られるので、手札を見て「あ、どうしようもない」と思ってしまう場合もあるにはあります。

 1ディール目から大量失点を食らった場合、劣勢を挽回できるルールが欲しくもなりますが、今回は敢えてそうした付け足しは省いて、粗さはあっても手軽さを優先したんだと思います。軽いんだから負けたらもう1ゲームやればいいじゃない!

◆クニツィア諸作との比較で見る「ニャー」

 さて、クニツィアにとってこの「ニャー」は、「ブードゥープリンス」に続く、本格トリテの2作目という位置づけになるのですが、実は広義のトリックテイキングとしては、「陰陽/フィフティ・フィフティ」や「革命万歳!」のようなゲームもあり、それっぽい手札回しのゲームを結構作ってるデザイナーではあるんですよね。
 で、「ブードゥープリンス」はかなり本格的なトリテの文脈に寄せた1作だったんですが、この「ニャー」はもっと「陰陽」や「革命万歳!」に寄せたカジュアルな数字比べの趣が強いゲームのように思えます。
 すごく極端な言い方をすると「3スートにした『陰陽』」ぽいゲームでもあります。「陰陽」は手札と場札を見比べながらトリックの取る/取らないを選択するゲームで、これが感覚としてはかなり似てるんですね。
 「ニャー」の独特な3スート18ランクのカード構成は、手札のスートを枯らしにくく、基本的には数字の大小で勝負をつける場面が多いです。なので、同じ「捨てるトリック」にしても捨て方を問われると言うか、5を捨てるべきか8を捨てるべきか、手札のマネジメントを問うゲームになってるんですね。
 「ニャー」は、1ディールが終わった後で「あの時5じゃなくて8を捨てておけばなー」という振り返りがすごく多いゲームで、失着がわかりやすいのは、ゲーム自体がわかりやすいということなんだと思います。本格的なトリテだと自分の敗因を探るのって結構慣れがいるんですよ。

◆国産トリックテイキング「フリップオーバー」

 さて、「ニャー」をさらに語る上で外せないゲームの1つが国産トリックテイキングの「フリップオーバー」です。このゲームはトリックの勝ち負けによって得点/失点トークンを獲得するという、まさに「ニャー」と同じコンセプトを持つゲーム!
 「さてはクニツィア、パクったな……?」と思ったトリテ好きもいるとかいないとか(※クニツィアはゲームデザインの剽窃に対して極めて厳格な態度を取ることで知られるデザイナーです)。
 しかもこの「フリップオーバー」は得点トークンのウラオモテが「10点/-10点」のように同じ絶対値で正負が反転した作りになっていて、普通に1ディールを遊んだ後に、同じ手札で反転した得点トークンで2ディール目を遊ぶ…… つまり、前半でバカスカ得点を取れるような強い手札は、後半で失点までバカスカ取るハメになりかねない…… 手札運へのエクスキューズまで備えたトリテなのです。これはエポックではないですか?
 とは言え、両者を比較してみると遊びやすさで言えば「ニャー」に軍配が上がるところもあり、ここは重視するのがガチ感かパーティー感かで好みが分かれるところなのかなと思います。同じコンセプトながら仕上がりが全く違う方向を向いているのがゲームデザインの面白いところですね。
 そんな「フリップオーバー」は、テンデイズゲームズでも2546円(税込)で販売しているので、気になる方はどうぞ「ニャー」と一緒にご検討頂ければと思います(露骨な宣伝)。

https://tendaysgames.shop/?pid=129650087

◆シンプルなトリテと侮るなかれ!

 さて、ここまで「ニャー」の特徴について色々と触れてきましたが、総論としては「クニツィアらしいわかりやすくシンプルに纏めたファミリーゲーム」であり、「ツボを抑えた設計でドカンと盛り上がる抜け目のないトリックテイキングゲーム」と言えます。
 「ブードゥープリンス」でも、シンプルなルールでプレイヤーを一喜一憂させる技巧を見せつけたクニツィアですが、この「ニャー」でもその手腕は健在と言えそうです。
 それでいて「ブードゥープリンス」よりもルール量はより少なく、よりカジュアルな方向に舵を切られているゲームなので、初めてトリックテイキングを触る人にもうってつけのゲームと言えるのではないでしょうか。一方でトリテ好きの方には手札配りきりの上級ルールが用意されていて、カウンティングを交えたトークンのやりとりもこれまた熱そうです。
 「ニャー」は見た目以上に感情が揺れ動かされる手強くも楽しいトリテです。ぜひぜひ一度遊んでみてください。

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