【スタッフ神田の視点】アーク・ノヴァ:拡張 マリンワールド

 「アーク・ノヴァ:拡張 マリンワールド」は自分だけの動物園を作り上げる戦略ゲーム「アーク・ノヴァ」の初の拡張セットとなります。「マリンワールド」というタイトルが示す通り、この拡張での大きな目玉は水族館に展示できる海洋動物の登場となりますが、この記事ではそれだけに留まらない「マリンワールド」の新要素をより深くご紹介していきます。

◆新動物カテゴリー「海洋動物」を使いこなせるか?

 「マリンワールド」では、新たな動物カテゴリーとして海洋動物が追加されました。いくつかの動物を除いて、これらの動物は収容するための新たな特別囲い地「水族館」が必要になります。

 水族館は2スペースと5スペースの2種があり、ゲーム開始時から建設することができる特別囲い地です。そのため、建設時の感覚としては基本ゲームのふれあい動物園に近いものと言えるでしょう。

 建設時の制限として、水族館は最低1つの水域スペースに隣接させて建設する必要があります。そのため、特に水域が固まっているレイアウトの動物園では水族館用のスペースをどう捻出するか事前計画が重要になります(特に5スペースの大型水族館はかなり独特な形です)。
 また、水族館はそれ自体が水域アイコンを1つ持っています。水族館自体は水辺ではないので、水域アイコンをプレイ条件とする動物を隣接する囲い地にプレイできないのですが、水域アイコンをカウントするいくつかの効果で役立つ場合があります。

 例えばこちらの「水生公園」。これは基本セットからあるカードですが、水域アイコンを獲得しやすくなったため、拡張では条件が変更された差し替え用のカードが用意されています。

 また、海洋動物は他の囲い地と異なり、2つの水族館に跨って動物を配置できる点も特徴的です。2つの水族館を建て、なおかつ大型の海洋動物をプレイする場合という限られた例ではありますが、海洋動物が手札に余っている場合などは役立つかもしれません。

 「珊瑚礁の住人」は海洋動物の中の小ジャンルです。これらの動物は通常のプレイ時効果に加えて、「珊瑚礁の住人効果」を発動させることができます。珊瑚礁の住人効果は単独では微々たるものですが、2枚目以降の珊瑚礁の住人効果が累積する特徴があります。累積させると得点が伸びるふれあい動物と似た感覚と言えるかもしれません。

 例えば「ナンヨウマンタ」をプレイすると、遊泳3の効果に加えて1保全点が獲得できます。ここまでは普通。しかし、さらに「アクマミノカサゴ」をプレイすると、自身の毒1の効果に加えて、Xトークン1枚と1保全点が獲得できます。1保全点の二重取りやー。

 そのため、珊瑚礁の住人効果を重ねて利用することができればより多くのアドバンテージを稼ぐことができます。とは言え、水族館は基本の囲い地と違って収容能力に限度がありますから、水族館がいっぱいになったところで海洋動物を野生復帰させ、空いた水族館スぺースをまた再利用するといったテクニカルなムーブが必要な場合もありそうです。

 新しく加わったカードの一部には「波アイコン」が描かれたものもあります。このカードがディスプレイに並ぶと、即座にフォルダ1のカードを捨てて補充を行います。新しいカードに波アイコンがあった場合、同じ処理をさらに行うため、基本ゲームよりもカードが滞留しにくい作りになっています。

 基本ゲームの動物園カード212枚に比べて、拡張の動物園カードは54枚とボリュームはやや控えめです。そのため「なかなか新カードに出会えないのでは?」と思われるかもしれませんが、この要素のおかげで適度に新カードが出てくるようになっています(若干手間は増えますけども)。

 また、「波アイコン」は、新しい動物能力「マーキング」とのシナジーが地味にあります。「マーキング」はディスプレイ上のカードにキューブを乗せ、そのカードが場を離れた際にちょっとした恩恵がもらえる効果です。波アイコンの処理でカードの流れが早くなっているため、マーキングが生きやすい環境ではあります。

 新能力「マーキング」は、カードがディスプレイを離れた時に、そのカード or 2金が貰える能力。どちらにしてもちょっぴりオトク。

◆協会アクションの新たな選択肢「新たな大学」

 「新たな大学」は提携大学を得る場合の新しいオプションです。この提携大学を獲得することでプレイヤーは動物園に6種の動物アイコンいずれかを1個加えられ、さらに動物園デックから同種の動物アイコンを持つカードをサーチすることができます。新カテゴリーの海洋動物アイコンを持つ大学もあるので、建設した水族館を余さず使うならこれも有力な選択肢になるでしょう。

 新たな大学は、大学自身のアイコンと引いたカードのアイコンで、都合2個分の動物アイコンを増やすことができるところが大きなポイントで、対応する保全計画や後援者カードをより効率的に利用することができます。基本保全計画カードに合わせて新たな大学を選択するのが序盤の新しい選択肢になりそうです。

 とは言え、協会アクション自体が有力な選択肢の多いアクションなので、果たして重要な1アクションを大学の獲得に回すかどうかは悩ましいところです。協会アクションは基本セットでもゲーム展開の鍵となるアクションではありましたが、新しい選択肢が増えたことでより深みを増したと言えます。

 個人的には肉食動物アイコンをプレイすればするほど強力になる「ブチハイエナの放飼場」を使って悪さをしたいところですが、序盤に引けるかな、どうかな……

 基本セットからある「ブチハイエナの放飼場」は、参照する肉食動物アイコンが増えれば増えるほど強くなるのが特徴。

◆隠れた目玉要素、「ひねりを加えたアクションカード」

 基本セットではプレイヤーは同じセットの5枚のアクションカードを使用していましたが、この拡張ではそれぞれ異なる効果を持つアクションカードを持ってゲームを進めることになります。何度も使用するアクションカードに追加効果が加わるというこの要素、実はこの拡張で一番大きく変化を感じる部分かもしれません。

 プレイヤーは5種のアクションカードのうち、2枚を追加効果の加わったアクションカードに取り換えることができます。追加効果はちょっとした変更ながら痒いところに手が届くものばかりで自身のエンジンをより滑らかに回すことができるようになります。

 私見では、基本ゲームではやや存在感の弱かった「カード」アクションのアクションカード(ややこしい)が少し強めな効果を振られているようにも思います。単純にプレイヤー間の非対称能力を強めて華やかさをプラスしている面もありますが、アクションカード間の役割バランスを再調整している面も窺えます。

 新しいアクションカードはドラフトで選択・獲得します。各プレイヤーは配られた3枚の新アクションカードが1枚を選び、残りを左隣のプレイヤーに渡します。これを2度繰り返した後、手元にある3枚のカードから2枚を選びます。

 この時、同じ種類のアクションカード(例えば「動物」と「動物」など)を選ぶことはできません。ゲームは必ず5種のアクションカードのセットで行われるので、通常カード3枚と新カード2枚の組み合わせでゲームに臨むことになります。

 このカードの選択も結構悩ましく…… 「これは強いぞ!」と思ったカードが手にしてみると案外使いこなせなかったり、逆に大ピンチをささやかすぎる効果に助けられたりとプレイの起伏がより豊かになります。

◆見た目が華やかな「代替用カウンター/プレイヤートークン」も同梱。

 「マリンワールド」では各プレイヤーごとに異なる形の動物駒が用意されています。この動物駒、一見して「完成した囲い地に置ける動物!?」と思われるかもしれません…… が、そうではなくて、基本セットのキューブの代替になるものです。

 基本セットでは「保全計画の達成を示すキューブは、手元から出す? or 個人ボードから出す?」「寄付を示すキューブは手元から出す? or 個人ボードから出す?」といった点で混乱を招きやすいがあったのですが、プレイヤートークンが新たに用意されたことで「保全計画の達成はプレイヤートークンで示し、寄付はキューブで示す」と用法が明確になりました。

 プレイヤートークンは…… 見た目がいいです。画像右下のトークンは博士帽で評判点トラックに置きます。逆さまに置かないように注意。

◆他にもまだ見ぬ要素があなたを待っている!

 動物園カードは今回ご紹介した海洋動物だけでなく、一癖も二癖もある動物カードや後援者カードも用意されています。この尖った性能はやはり拡張セットならでは!

 例えば、人物後援者を捨て札にして効果を得られる異色の「海洋調査隊」。カードイラストではなくカード名で人物か否かを判断させるというユーロゲーム文脈では異質なデザインのカードです。

 「マリンワールド」は、基本のいいところはそのままに、細かい部分をブラッシュアップして全体の完成度を高めるタイプの拡張セットと言えます。大胆な要素の差し替えといったギミックはないので、基本セットを楽しんでいる方であればすんなりとこの世界に入ることができるでしょう。

 基本セット未経験の初回プレイから拡張入りで遊べるかどうかについて言えば、条件付きでアリかなという感じです。ルール量は基本からさほど変化がないので、経験者がついていれば「波アイコン」の処理などを適切に解決できるかと思います。この手の重いゲームに慣れている人であれば、乗りこなすことができる範囲です。

 一方で全員が未経験の場合、そもそもの「アーク・ノヴァ」が歯ごたえのある、ルール分量も多いゲームなので、まずは基本から遊ぶことをおススメします。野生復帰の際の囲い地の扱いなど感覚的に独特な部分もあるにはあるゲームですしね。

 総評として、「アーク・ノヴァ」を楽しんでいる方なら間違いのない拡張セットと言えます。もうすぐ発売となる本作、ぜひご期待いただければと思います。

「アーク・ノヴァ:拡張 マリンワールド」は、11月中旬発売予定です。
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