「セイミ・イン・ザ・スーパークレイジーワールド」インスパイア元紹介 

 テンデイズゲームズが以前発売した「セイミ・イン・ザ・スーパークレイジーワールド」。
 ライナー・クニツィアによる傑作カードゲーム「ロード・オブ・ザ・リング二つの塔カードゲーム」のリメイク作である「セイミ」ですが、私、タナカマが、「二つの塔」カードゲームが好きすぎるということもあり、「せっかく作るんだから、好きなものをこれでもかとぶち込んで、『俺なら100個買う』ものにするぞ!」と意気込んで作ったのですが、ぶち込み方が過剰だったせいか、ゲーム内容はともなく、アートワーク、テーマは賛否両論、中にはまったく受け付けなかった方もいるようで…。
 その点については、ちょっぴり反省もしているわけですが、せっかくそれだけ熱い思いをぶち込んだので、それらのインスパイア元、元ネタをここでまとめてみようかと思った次第です。
 「デザイナーズノート」とはちょっと違うかもしれませんが、どのようにアイデアを膨らませ、どのようにゲームに落とし込んでいくのかの参考になれば幸いです。

 なお、「セイミ」のアートワークは、イラストレーター、デザイナーの大城聖未さんにお願いをしました。→ホームページ
 こちらのアイデアをしっかりと汲み取ってくれ、最高のアートワークを提供してくれました。
 他にも素敵なイラストを描いているので、ぜひ、上のアドレスにもアクセスしてみてください。

テーマ&設定

  • 奇々怪々(ビデオゲーム)
  • 妖怪道中記(ビデオゲーム)
    子どもが異世界を旅するというジュブナイル的設定の基本は、これらのビデオゲームから。
  • アリス・イン・ワンダーランド(小説、映画)
  • ナイトメアー・ビフォア・クリスマス(映画)
  • ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド(映画)
    「・」がたくさん入ったタイトルに惹かれるので、いつかやりたいと思っていた。
  • モータルコンバット(ビデオゲーム)
  • ラストハルマゲドン(ビデオゲーム)
  • ハイドライド3(ビデオゲーム)
  • 死亡遊戯(映画)
  • ジャッジドレッド(映画・2012年版)
    さまざまなエンターテインメント作品に登場する「塔」は、非常に優れた設定だと思う。
    さらに「セイミ」は、「二つの塔カードゲーム」のリメイクということで、当初は「異世界を旅してきたセイミが、最終的にたどり着いた塔で、各フロアごとのボスキャラと戦って、元の世界に戻ることを目指す」という設定にした。
    最終的には、その辺りの設定はなくなったのだが、前面には出なくなったものの、私にとっては最後まで舞台は「塔」だった。
  • ブレインデッド(映画)
    「過剰なまでのサービス精神とスプラッター表現」は、この映画がベース。
    映画「ロード・オブ・ザ・リング」の監督ピーター・ジャクソンのデビュー作ということもあり、インスパイア元としてはこれ以上ないものだと思った。
    しかし、過剰なまでのスプラッター表現は、クニツィアに怒られてしまうのだった。
  • 漂流教室(マンガ)
    言うまでもなく、ワイルドカードとして登場する「両親」の元ネタ。時空を超えて主人公を助ける親。そのまま。
  • ウロボロスの偽書(小説)
    「実在の人物が作品中に登場する」というメタな部分の元ネタ。主人公のセイミは、イラストを描いていただいた大城聖未さん本人という設定です。
  • バトルランナー(映画)
    変な敵キャラと続けざまに一対一で戦うという設定に合っている上、「バトルランナー」の敵キャラのユニークさは大いに参考にした
  • 死霊のはらわた(映画)
    言うまでもなく「クレイジーの書」の元ネタは「死者の書」。そのまま。

パッケージ

  • ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘(映画)
  • エドワードランディ(ビデオゲーム)
    「多数のモンスターの右下にそれを見上げる主人公」という構図が好き。
    プラス、「セイミ」では「エドワードランディ」の躍動感を加えたかった。
こうして見てみると割とそのままですね。

モンスター

 このゲームのもう一方の主役であるモンスター。
 わかりやすいゾンビとか騎士、悪魔みたいなものにはしたくないのもあって、こちらもいろいろとぶち込みました。

  • 「ディアブロ」から、ブッチャー(ビデオゲーム)
  • 八仙飯店之人肉饅頭(映画)
    言うまでもなく「スーパークレイジーブッチャー」のインスパイア元。
  • キョンシー(映画)
    言うまでもなく「スーパークレイジーホッピングデッド」のインスパイア元。「キョンシー」の名称が商標的に微妙だったので、改名。
  • テンタクルズ(映画)
    言うまでもなく「スーパークレイジーオクトパス」のインスパイア元。モンスターパニックものとしては他に「グリズリー」、「オルカ」などが候補になった。
  • リトル・ショップ・オブ・ホラーズ(映画)
    言うまでもなく「スーパークレイジープラント」の元ネタ
  • ブレインデッド(映画)
    ここでも登場「ブレインデッド」。
    「スーパークレイジーナース」の元ネタ。
  • バトルヒーター(映画)
  • バスケットケース(映画)
    無機物がモンスター化したものはどうしても入れたかった。
    コタツが人を襲う「バトルヒーター」のようなシュールさに、「バスケットケース」で見られる、「中から異形のものが覗いている」というシチュエーションのミクスチャー。
  • ブレインデッド(映画)
    ここでも登場「ブレインデッド」。
    「スーパークレイジーナース」の元ネタ。
  • クリスティーン(映画)
    「スーパークレイジーポリスメン」の元ネタ。
    私の中では、「実は車の方が本体」という設定があります。
  • キラートマト(映画)
  • アメリカン・バーガー(映画)
    「スーパークレイジーバーガー」の元ネタ。
    「食べ物」がモンスター化というアイデアは好きなので入れたかった。
    あと、ハンバーガーにそこはかとない狂気みたいなものを感じるので、それとミックス。

 細かいものを入れると、まだまだあるのですが、特徴的なところといえばこの辺りでしょうか。
 興味がありましたら、インスパイア元もチェックしてみてください。

エッセン注目作はこれだ!2021

 10月14日木曜日、ドイツエッセンで「Spiel」が開催となります。
 コロナ禍で昨年はデジタル開催となった「Spiel」も、今年は実際に会場に来場者を入れての開催。制限をかなり設けつつとはいえ開催にこぎ着けたのは、一ファンとしても本当に嬉しいところ。
 
 そのSpielで発売、発表される新作もコロナ前とは比べものにならないものの、同じ時期にこれだけ出るのだから、やはり興奮させられます。

 この記事では、その発表、発売される新作群の中から個人的に注目作を紹介していきたいと思います。
 本当は、2019年までのように動画で賑やかに紹介していきたかったのですが、まだまだ一所に集まってのお喋り配信は難しいこともあり、今年はブログ記事でお送りいたします。

 なお、この記事で触れているタイトルは、あまりテンデイズゲームズと関わりのない出版社に限っています。
 本当にごくごく個人的なものだと思っていただければ。

 ちなみに、配信の時は一緒にやっているシミーズさん、永峯さんのお二人、そして数寄ゲームズの円卓さんも同様の記事、一人での配信をやっておりますので、ご興味のある方、こちらもどうぞ。

シミーズさん→ツイキャス「エッセン直前チェック!!! / シミーズボードゲーム」

永峯さん→今日もプレイミス「2021年エッセンシュピール私的注目作」

円卓さん→18番発電所「エッセンシュピール2021の個人的注目作10作」

Rocodromo

https://boardgamegeek.com/boardgame/313166/rocodromo

 見ての通り、ボルダリング、スポーツクライミングをテーマとしたタイトル。
 スポーツテーマのボードゲームに「アタリ」ははっきり言って少ない。
 動画を見た限り、(先取りの要素はあるものの)用意されたタイルを使ってちょうど届く穴へ駒を進めていくというごくごく単純なレースゲームようだが、はたしてアタリかハズレか。

Galaxy Trucker

https://boardgamegeek.com/boardgame/336794/galaxy-trucker

 最高のドタバタリアルタイムパズルゲームが帰ってきた!
 過去、幾度となく日本語版を夢見たタイトルだけに、この機会に日本語版が出てくれれば……と願わずにいられない。

Caral

https://boardgamegeek.com/boardgame/348325/caral

 「カルカソンヌ」のヴレーデによる新作。今年はデモ出品。
 ヴレーデ、今年はPegasusから「Fire & Stone」を発表したり、なにやら精力的。
 この「Caral」、まだ情報は少ないものの、特殊効果カードあり、ミニチュアを用いたピラミッド建設ありの本格指向の様子。
 加えて「グレンモア2」の出版社からということもあってか「グレンモア2」で見られたモジュール形式の拡張「クロニクル」方式も取り入れているようで、さらにゲームを発展させていくことも可能とのこと。
 これまで「カルカソンヌ」のデザイナーでありながら、あまり強い存在感を打ち出してこれなかったヴレーデが、キースリングのようにその存在を強烈にアピールできるのか。今年と来年、注目してみたい。

Gigaton

https://boardgamegeek.com/boardgamepublisher/13288/sinonis

 まさか、2021年になってSINONISの新作を見ることになろうとは。
 デザイナーは、「ショウビジネス」から11年ぶりの新作となるよう。
 内容は、ポストアポカリプステーマの3Dミニチュアを使ったレースゲーム。
 いや、内容はどうでもいい。SINONISの新作というだけでアツい。

Glory: A Game of Knights

https://boardgamegeek.com/boardgame/206757/glory-game-knights

 騎士となって、馬、装備を揃えつつ、いろいろな人の助けを借りて、槍試合に出場、勝ち上がることを目指すという、全国1000万槍試合ファン大注目の一作。
 最愛の女性とのロマンスや、有名な貴族に挑むという展開も盛り込まれているようで、デザイナー曰く「騎士の人生の物語をボードゲームを通じて伝えたかった」とのこと。
 もちろん、プレイヤー間の闘いもありで、アツい展開も期待できそう。
 2019年にデモ出品の話を聞いて会場で探したものの見つけられなかったタイトルがいよいよ発売。
 絶対遊びたい。

「ステップアップ幻想」の話

 先日、ボードゲームポッドキャスト「ほらボド!」に呼んでいただいて、ホスト役のmomiさん、アークライトゲームズの刈谷さん、ボードゲーム芸人のいけださんとともにボードゲームシーンの今、これからをそれぞれの立場でお話させていただいた時のこと。
 「ライトなゲームから戦略性の高いゲームへステップアップしていかない」という話から、私は「ステップアップで云々みたいな話っていうのは、幻想か、もしくはビジネス的なトーク」と持論を展開させてもらいました。
 それを「Table Games in the World」の小野さんの琴線に触れたようで、エッセイとして取り上げていただきました。(→リンク

 これが思いの外、反響があり、私もいろいろな人のツイートなりを拝見させてもらったのですが、「ステップアップ幻想」という言葉が一人歩きしている感があり、誤解をもたれている方も多いようなので、今回、ここで少し突っ込んで書いてみることにしました。

ステップアップ(論)幻想

 まず、今回、「ステップアップ幻想」という言葉から『ステップアップを経てゲームをより遊んでもらう』こと、それ自体を「幻想である」と断じている旨の会話だったと捉えられた方が多いような印象です。
 しかし、それは私が本来言いたかったこととは少し異なります。

 私は普段、職業柄、多くの方に接するわけですが、その中で「周りの人を『ステップアップ』させたい」ということをうかがうことは少なくありません。
 これはゲームをこれまで長く遊んできた方に多いというよりも、ここ数年でボードゲームの魅力を知り、今まさに「もっともっとゲームを遊びたいし、知っている人を増やしたい」と思っている方に多い印象です。
 より詳しく話を聞いてみると、大多数というわけではないものの「ステップを踏んでこなかった」方も少なくありません。
 「自分はステップを踏んでこなかったけれど、誰かにボードゲームをより知ってもらいたい時、ステップを踏んでもらおう、ステップアップしてもらおう」と思ってしまっているわけです。
 そう思い込んでしまわないためにも、「ゲームをより知ってもらうためにはステップを踏ませたほうがいいよ」というステップアップ(論)を「幻想ではないか」と表わしたのです。
 決して「ステップアップ」自体を否定したわけはなく、むしろ、「ステップアップ」が有効な過程であることも知っています。
 しかし、その「ステップアップ」の形は、それこそ無数にあり、「これがまさに王道のステップアップ」と決めることはできないでしょう。
 ただ、より多くの方に当てはまるであろう「ステップアップ」の形を提示することも重要です。「ほらボド!」の中で、「幻想」と同時に「ビジネス的トーク」との言葉を用いました。「多くの方が参考にしやすい形で提示する」ことを、私は「ビジネス的トーク」と表したのです。

ステップアップの形

 多くの方がゲームに触れるようになった今、「ステップアップ」という言葉も、狭義のもの、広義のもの、と分けて考えるタイミングになったのかもしれません。

 「ステップアップ」という単語から、多くの方は「簡単なゲーム→難しいゲーム」という形を想像するかもしれません。
 「簡単なゲーム→難しいゲーム」というステップアップは、「ひとつの側面でそうであるけれども、ある側面ではそうではない」のではないでしょうか。
 今回の「ほらボド!」では「簡単なゲーム→難しいゲーム」という流れを前提に「ステップアップ」の話をしていましたが、それは狭義のステップアップであるように思います。

 では、広義のステップアップとはどのようなものでしょうか。
  例えば、ある「大喜利系パーティーゲーム」を楽しんだ方が、さらにゲームを遊びたいと思った時のステップアップについて考えてみます。
 これを狭義のステップアップで、次のステップを考えるなら、「少し戦略性のあるカードゲーム」辺りでしょうか。「ボードゲーム」に触れてみる意味でも、大定番を試す価値もあるでしょう。
 しかし、「異なるスタイル(システム)のパーティーゲームを試す」、「ゲームとしての駆け引き、得点要素のあるようなパーティーゲームを試す」というようなステップアップもあるはずです。
 これは、中級以上のゲームにも当てはまります。
 「45分くらいの競りゲーム」を楽しんだ後のステップアップ。
 「60分~90分くらいのゲーム」、「さらにいくつかの要素を縦走的に重ねたより複雑な競りゲーム」、「まったく異なる(遊んだことのない)システムのゲーム」、いずれも当てはまるでしょう。
 
 もちろん、狭義のステップアップ、広義のステップアップのどちらについて話すべきかということではありません。
 これからは、発信する側も、受取る側も、この点を少し気をつけて話せるならば、よりたしかな形で話ができるのではないでしょうか。

販売店、出版社として

 今回、ブログのトピックとして書かせていただきましたが、販売店として、そして出版社としては、すでに、そして自然に意識させていただいていることでもあります。

 店頭で、ご相談いただいた場合は、「どういったゲームが欲しいのか」はもちろんのこと、「これまでのゲーム経験」、「想定している場、メンバー」さまざまな点をうかがった上で、ご提案をさせていただいています。
 はじめてゲームをやる人、ひとまずは「今日の飲み会」で楽しめればいい人、プレゼントにしたい人、ゲームを買われる方の幅は本当に広がっています。
 そして、もちろん、「ステップアップしたい人」。
 それぞれの方に真摯に向き合い、最良の提案をさせていただくことはとても重要です。
 このときに、前述の「ステップアップ(論)」に安易に頼ってしまわないよう、自戒気味に「幻想」と思っているのかもしれません。

 一方、テンデイズゲームズは、出版社としての顔も持っています。
 出版社として「ステップアップ」についてのアプローチを考えた時、また違った面が出てきます。
 テンデイズゲームズでは、多くのゲームを発売していますが、これらのゲームについて一つ一つ、出版社自らが販売店と同様の形でお客様一人一人にご提案していくことは不可能です。
 しかし、なんらかのアプローチはできるはずです。
 テンデイズゲームズは決して大きな出版社ではありませんが、そのラインナップの幅は、キッズゲームから、パーティーゲーム、重量級ゲームの日本語版、コアユーザー向けの和訳付輸入版など、出版社としての規模に見合わない幅の広さがあると自負しています。
 ラインナップの拡充と安定供給をはかることで、より多くの方に、さまざまな選択肢をご提供できるものと思っています。
 お客様一人一人が、それぞれの環境でボードゲームの購入やステップアップを考えた時や、出版社よりもファンの方に近い販売店やサークル主催者の方々などへ、多くの選択肢を提供できるように努めることは出版社としてとても重要だと思うのです。
 もちろん、まだまだ課題はたくさんあります。今、私が取り組みたいものとしては、「お客様と購入ゲームのミスマッチがおきないよう、より参考となる情報を提供する」ということでしょうか。

最後に

 今回、多くの方が「ステップアップ幻想」というトピックについて考えたり、語られたように思います。
 日本のボードゲームシーンは、まだまだはじまったばかりではないでしょうか。
 そのボードゲームシーンで、ひとつのトピックが熱を持って語られるというのは、とてもいいことだと思います。(もちろん、そんなことは放っておいて、純粋にゲームを楽しむのも大事です)
 いろいろな方の話を共有し、昨日より今日、今年より来年、5年後より10年後のボードゲームシーンがより充実したものになればいいなあと思います。

今、「ガイアプロジェクト」ではなく「テラミスティカ」を遊ぶ6つの大きな理由

 2012年の発表以降、ユーロ系ヘビーストラテジーゲームシーンを代表する一作として多くの人に楽しんでいただいている「テラミスティカ」。
 引き続き、高い人気を誇る一方で、派生作の「ガイアプロジェクト」と比較され、その上で「ガイアの方がいいよ」と言われることも少なくありません。
 また、店頭などでお客様から「どっちがいいですか?やっぱりガイアプロジェクトですか?」というように訊かれることもあります。

 先日、再版分が入荷したこともあり、2021年、「ガイアプロジェクト」ではなく「テラミスティカ」を遊ぶ理由をお送りしたいと思います。

 もちろん、どちらが優れているか、ということではありません。それぞれの魅力を今一度、みなさんに知っていただき、参考にしていただければと思います。

 なお、今回の記事作成にあたり、「テラミスティカ」の熱烈なファンであり、かなりのプレイ回数を誇る、せんせーさん(Twitter:@ T_Irie6037)にご協力をいただきました。

1:経験値を積みやすい

 ゲームごとにいくつかのボードを組み合わせるモジュラーボードを採用した「ガイアプロジェクト」と異なり、「テラミスティカ」のボードは固定ボードです。
 このことにより、「テラミスティカ」では、セッティングの段階で、大きくボード構成が変わることはありません。
 そのため、一回一回のゲーム経験を、次のプレイに向けてよりいいプレイングをイメージをしたり、活かすことが比較的容易です。
 「テラミスティカ」を遊んだ後、「初期配置をあそこにしておけば」、「あっちに延ばしたほうが、この種族の強みを活かせたはず」といった感想から、すぐにでも次のプレイをしたくなった人も少なくないと思います。
 この経験値をダイレクトに活かしやすいというのは、「テラミスティカ」の大きな魅力の一つといって間違いないでしょう。

 一方で「ガイアプロジェクト」のセットアップにおけるランダム性は、ゲームごとにアプローチを変える必要性が高く、経験値というより、ゲームの根本的な部分に対する深い理解をより求められると言っていいでしょう。
 「ガイアプロジェクト」のランダム性による「リプレイ性の高さ」が魅力として触れられることも多いですが、「経験値を次のプレイに活かす」ということも、次のゲームプレイへのモチベーションとしては決して劣るものではなく、そのリプレイ性は「ちょっと毛色の違うもの」と言えるのではないでしょうか。

2:相手の行動を読む面白さ

 「テラミスティカ」は、基本的には王道的な(素直な、と言ってもいいかもあしれません)アクションが強いゲームです。また、その「強いアクション」は、場面場面で、ある程度絞られています。
 このことにより、プレイ経験を積むと、プレイヤー間で相手がどのようなアクションを実行するかという読みが比較的容易にできるようになります。
 手の読み合いの面白さがプレイを重ねるごとに上積みされ、自分のプレイングの上達も実感できることでしょう。

 「ガイアプロジェクト」はQICアクションに代表されるように、選択肢の幅が広げられ、アクションの自由度も高められています。
 さまざまな戦略を試す面白さ、妙味がアップしており、「どちらの戦略がより優れているか」を競うという点は大きな魅力ではあります。
 しかし、「テラミスティカ」の効果的な手を打ち合い、その読み合いを繰り返す面白さは、やはり大きな魅力と言えるでしょう。

3:慣れるとプレイのテンポが早くなり、ゲーム時間が短くなりやすい

 「王道的なアクションが強い」ということを「2」で述べました。
 この利点は、まだほかにあります。
 さまざまなアクションを吟味しなければならないという状況は、プレイを重ねることで少なくなり、そのプレイはより洗練されたものになります。
 そのため、さまざまな状況での思考時間は、プレイを重ねるほどに短くなっていくでしょう。
 プレイ時間が短くなれば、より多くの遊ぶ機会をもたらしてくれるでしょう。

 このことは、「定石化しやすい」ということに繋がり、それをネガティブに捉える方もいるかもしれません。
 しかし、「テラミスティカ」は、多人数ゲームであり、ある程度定石化したところで、すべてのケースに対応することは決して簡単ではありません。
 また、そのことにより、「相手のアクションを読む面白さ」はより高められていると言っていいでしょう。

 また、「テラミスティカ」が本来持っている拡大再生産的な面白さや、ボード上のせめぎ合いは、ゲーム展開に起伏を生み、プレイは毎回ドラマティックであり、「定石(に近いもの)をなぞる」ような印象はありません。
 やはり、むしろ魅力に繋がっていると考えていいでしょう。

4:他プレイヤーとの協力関係による妙味

 「テラミスティカ」は、陣取り要素がある一方で、他プレイヤーと協力関係を作ることがシステムに組み込まれ、それをプレイに活かすことが重要となるゲームです。
 交易所のコストダウンやパワー授受など、一回一回の恩恵は少ないながらも、その積み重ねは大きく勝敗に関わってくることになります。

 「テラミスティカ」の陣取り要素において、他プレイヤーを閉じ込めるようなプレイングも可能です。
 このことにネガティブがイメージを持たれている方も少なくないように思います。
 しかし、果たしてそうでしょうか。
 協力関係を作ることがある程度重要である以上、いたずらに他プレイヤーを閉じ込めるより、共存共栄を選択するほうがゲームの勝敗においては有利であることも多いのです。
 もちろん、鍵となるマスを押さえることは極めて重要です。
 相手をどう活かし、自分はより優位を保つか、その押し引きの悩ましさ、面白さがある、ということです。

 説明書の推奨配置を見ると、「テラミスティカ」は二軒とも他プレイヤーと隣接していますが、「ガイアプロジェクト」では一軒隣接に留まります。ひょっとしたらこのあたりに、設計思想が見え隠れしているのかもしれません。

5:種族の使い分けが楽しい

 「いやいや、『ガイアプロジェクト』だってそうでしょ?」と思われた方、それは正しくもあり、間違ってもいます。
 
 種族ごとの異なる特性をどう活かすか、は「テラミスティカ」、「ガイアプロジェクト」の最大の魅力のひとつ、であることは言うまでもありません。

 しかし、その特性の持たせ方は少し異なります。
 発売当初は、非常に個性的に思えた「テラミスティカ」の種族特性は、「ガイアプロジェクト」と比較すると、ややおとなしめなものになっています。
 このことにより、異なる種族を使った時であっても、ある程度はそれまでのプレイ経験を活かしやすいということに繋がっています。
 それでいて、さらに特性を巧みに活かすことができれば、勝利に近づきます。
 もちろん、個性的かどうかということについても、「テラミスティカ」の種族特性も十二分に個性的です。
 この種族間の特性バランスの良さは、「テラミスティカ」において特筆すべきポイントでしょう。

 「ガイアプロジェクト」は、「テラミスティカ」と比べ、より種族特性は個性的なものになっています。
 種族ごとに新鮮なプレイ感覚を得られるというのはもちろん魅力です。また、個性的なだけに、活かしきった時の気持ちよさもあります。

 「テラミスティカ」の種族間の特性バランスの妙味をとるか、個性的な種族特性を活かす面白さをとるか。
 あなたの好みはどちらでしょうか?

6:拡張セットを加える度に新鮮な発見ができる

 「テラミスティカ」では、「氷と炎」、「商人たち」という二種類の大型拡張セットが発売されています。
 これらの拡張セットを購入することで、新しいボードや、新しい種族、新しい要素、ボーナス得点システムなどを追加することが出来ます。

 「テラミスティカ」の拡張セットは、いずれも完成度が高く、決してその人気にあやかった安易な商品ではありません。
 また、「拡張要素は、すべて加えたほうがいい」ということでもなく、基本セットだけでも十二分な面白さ、奥深さがあり、そこへ拡張セット(要素)をどのように加えるかによって、新鮮なプレイ環境、戦略の試行錯誤などを繰り返し楽しむことが出来るのです。

 もともとランダム性の高いセットアップを取り入れた「ガイアプロジェクト」は、プレイごとの新鮮さは基本セットだけでもかなりのものがあると言えます。
 しかし、現状では拡張セットは発売されておらず、「テラミスティカ」に拡張セットを加えたほどの大きな変化を味わうことはできません。
 あんなに大好きだったゲームも、いつかは飽きてしまうこともあるでしょう。
 その時に、すでに拡張セットが用意されている「テラミスティカ」は、また新しい気持ちを呼び起こしてくれる作品となるでしょう。

最後に

 というわけで、お送りした「今、テラミスティカを遊ぶ6つの理由」、いかがでしたでしょうか。
 
 「ガイアプロジェクト」との比較を軸としてありますが、冒頭でも触れたように異なる魅力を持った作品であり、どちらが優れているかということではありません。
 また、ここで触れた内容が、ある人にとっては魅力であっても、ある人にとっては欠点となることもあるでしょう。
 
 「テラミスティカ」、「ガイアプロジェクト」のどちらで遊ぼうか、どっちが自分の好みに合っているだろうか、そんな時にこの記事を参考にしていただけると嬉しいです。

 「テラミスティカ」、「ガイアプロジェクト」のいずれも、名作であることは間違いありません。
 ぜひ、それぞれを遊び比べて、自分にとってより響く方はどちらなのかを考えみてください。

ボードゲーム出版現場でのコロナウィルスの影響について

世界規模の感染拡大により多大な影響が出ているコロナウィルスですが、ボードゲーム業界においても、それは変わりなく、大きな影響が出つつあります。

普段、私は、「裏側」のようなこういったことを詳細にお伝えすることはないのですが、これから(ものによっては秋以降、年末といった遅いタイミングで)、その影響が目に見える形で、そしてお客様にも避けられない形で現れる可能性が高いことから、今回、どういった影響が出つつあるのか、また、今後考えられるのかをまとめてみました。

※この記事において言及されている事柄は、あくまでテンデイズゲームズとそれに関係するものであり、ボードゲーム業界、すべての出版社や商品に当てはまるものではありません。また、2020年4月20日時点でのものになります。

工場での製造について

いまや、ボードゲームに関しても、多くのタイトルの製造を担っているのは中国の工場です。
その中国の工場に関しては、春節の休み以降も、業務再開を見送っている工場がほとんどでしたが、現在は地域差はあるものの大多数の工場が製造再開出来ているように感じます。
ただ、本来、2月中旬から稼働する前提で組まれていたスケジュールが変更を余儀なくされてしまい、現時点でも、まだその変更の影響が大きく残っているようです。

ヨーロッパの工場は、操業が止まるということはなかったようで、製造自体に大きな影響は感じられませんが、工場の印刷用データ作成のスタッフなど、製造以外の作業を受け持つスタッフの仕事には影響があるようで、いつもより時間がかかっている印象です。

制作について

続いて、製造の前段階である、制作についてです。

ヨーロッパ各国の出版社は、そのほとんどが現在、在宅での仕事となっているようです。
多くの国で外出禁止措置がとられてから一ヶ月半程度経過していることもあり、在宅でもオフィスと同等の仕事が出来ている出版社が多い印象です。
ただ、製造と同様に、まだ、初期段階におい生じた影響をリカバーするには至っておらず、夏の発売に向けて組まれていたスケジュールに関しては影響が大きいままであり、これから具体的にその影響が見えてくると思います。
エッセンシュピール合わせで計画されていたタイトルについては、まだ、そのスケジュールについて言及されていない段階ではありますが、上記の夏発売タイトルの進行次第では、これから影響が出てくる可能性は高いと思います。

輸送について

船便については、そこまでの大きな影響は現時点ではありません。

航空便については、旅客機の減便により可能な輸送量が世界的に大きく減少しており、航空貨物の輸送費が平時と比べ3倍以上となっています。

これから考えられる影響

製造自体は、現在の工場の稼働具合から考えると、徐々にスケジュールも当初の通りのものに修正されていくように思います。ただ、夏頃までは発売予定日の急な変更なども多くなるかもしれません。

制作に関しては現在も色濃くその影響が残っており、今後もその影響は大きいと思いますが、まだユーザー向けにアナウンスされていないタイトルも多く、実際にお客様がその影響を感じる機会は今後も少ないかもしれません。 ただ、原版における制作の遅れなどの影響は、当然、日本語版にも及ぶため、すでに日本語版の制作スケジュールは、例年のそれよりもかなりタイトになっています。充分な作業時間が確保されない中での制作による影響が、(本来あってはならないことですが)誤訳やルールブックの誤字脱字といった形で現れる可能性も少なくないように思います。

輸送に関しては、船便の場合が多く、まとまった輸送であるためにボリュームメリットも出やすい「日本語版」については、影響は少ないままであると思っています。
一方で、少量での輸送が多い「輸入版」については、今後、輸送(入荷)機会が減る、輸送コスト高騰に起因して商品価格が上がってしまうこともあるかもしれません。

テンデイズゲームズとして

テンデイズゲームズとしては、輸送機会の減少に対応するためのまとまった流通量の確保や、輸送費の上昇を見込んだ上でそれを吸収するためのボリュームメリットを出せるよう、お客様に喜ばれる商品選定を前提としつつも、精力的な日本語版出版を進めたく思っております。
しかし、その一方で、上で述べたように、制作時間の確保の問題などもあり、お客様に不都合が及ぶ懸念も残されています。
そういったことのないよう、努めて制作を進めさせていただき、また、何かあった場合も出来るだけのサポートはさせていただきたく思っておりますが、あたたかい気持ちで見ていただけますと幸いです。

「バラージ(Barrage)」と低評価爆撃

テンデイズゲームズから今秋、日本語版の発売も予定されている「バラージ(Barrage)」。

この「バラージ」が、現在、世界最大のボードゲームデータベースサイト、Boardgame Geekにおいて、多くのユーザーによってレーティングで「1点」を付けられる、という事態に陥っています。

「ロレンツォ・イル・マニフィーコ」、「ニュートン」とスマッシュヒットを飛ばし、ゲーマー注目の出版社となったイタリアのクラニオクリエーションが、人気デザイナーのシモーネ・ルチアーニと組んで発表したビッグゲームということで、発表直後から話題になっていたタイトルに一体何が起きているのか?

今回、私なりに読み解いてみました。

ボードゲーム界でも起きた「低評価爆撃」

まず、どうして今回、このようなことが起きてしまったのでしょうか。

Boardgame Geekのレーティングに添えられた各ユーザーのコメントを読んでみるとその原因が少し見えてきます。

要約になりますが、いくつか紹介してみます。

「私は通常、ゲームに対して、このような得点を付けません。しかし、これは悪いKickstarterだったのです。彼らのゲームはとてもよかったですが、このキャンペーンはネガティブなものになりました」

「恥知らずだ。アップデートもされない。なにもない」

「120ユーロという高い金額を支払ったにも関わらず、約束された品質ではなかった。だまされた」、

「史上最悪のKickstarterキャンペーン!」

などなど。

なかなかキツい言葉のものもありますが、これらを読んでいくと原因として主たるものは「実際は、Kickstarterで告知されていたような内容ではなく、我々は裏切られてしまった」ということのようです。

「バラージ」は、2018年、Kickstarterにおいてクラウドファンディングが行われ、ゴールとして設定された24000ユーロを大きく超える431901ユーロを集めるという大成功を収めました。

そのキャンペーンの際に、「特別」なこととして告知されたことをいくつか紹介してみましょう。

・豪華パッケージ

・特別な「くぼみ」が用いられた立体仕様のボード

・特別仕様の駒

・秋に予定されている通常版(日本語版もこちらです)販売よりも数ヶ月早くお届け

ゲームが面白そうなのはもちろんですが、大成功を収めた要因に、これらもあることは間違いないでしょう。

そう、今回の「1点」の理由の多くが、ゲーム内容によるものではなく、このキャンペーンで謳われた内容と、実際の内容が異なることによって投じられたものなのです。

実際のゲーム内容とは別のことに起因することで、このような低評価が大量に投じられることは、実はテレビゲームの世界では、ここ数年、よく起きています。

このようなことは「低評価爆撃」と名付けられ、一部で問題視もされています。

(注:「低評価爆撃」と呼ばれることは、小説投稿サイトやYoutubeなどでも行われていますが、このコラムにおける「低評価爆撃」とはやや異なっていることもあり、言及いたしません)

例えば、現在、もっとも多くのソフトを扱っている配信プラットフォームであるSteamでも、ゲームの本質的な部分ではないことを理由として付けられた「不評」を除外するようなシステムを盛り込みたい旨が、運営会社であるValveから発表されています。

では、そのSteam上では、どのようなことに起因して「低評価爆撃」が行われてしまうのでしょうか。

新しいところでは、今年の5月、家庭用ゲーム機でも発売され人気を博している「ロケットリーグ」に対し、低評価爆撃が行われました。これは、新興のゲーム配信プラットフォームであるEpic Gamesが、「ロケットリーグ」の開発会社を買収したことに起因しています。多くのユーザーが、人気タイトルのSteam上でのサポート打ち切りや「独占」に対する懸念が「低評価爆撃」に繋がったわけです。

しかし、ゲームそのものを見た場合、「ロケットリーグ」が名作であることは間違いありません。

UBIのグラフィック劣化問題

次に、仕様変更…今回、立体ボードが予定されていたものより低品質なのではないか…という点についても見てみましょう。

世界的なテレビゲームパブリッシャーであるUBIは、この手の話題において「やり玉」に挙ることが多いパブリッシャーです。

世界的なゲームショー(例えば「E3」)において、上映されたトレーラーと比べ、実際に発売されたゲームのグラフィックは大きく劣るということで、度々、話題になっています。

批判を受け、公式にグラフィックの低下を認めた「ウォッチドッグス」や、「ゲーム性を優先させるためにグラフィックの変更を行った」と説明がなされた「レインボーシックスシージ」、Youtubeなどで比較動画が多数投稿された「ディビジョン」などが、ユーザーから「劣化」の烙印を押されてしまった主なゲームです。

これらのゲームは、ゲームショーでの発表の際、ゲーム内容はもちろんのこと、革新的で先進的、そして写実的なグラフィックで多くのユーザーからの注目と期待を集めることになったゲームで、グラフィックの魅力が前評判を押し上げたことは間違いないでしょう。

しかし、実際のグラフィックは、トレーラーから劣化したものと言わざるを得ず、批判の的となったです。トレーラーである以上、実際のゲーム機、ゲームエンジンで動かしたものではなく、よりパワーのあるマシンで用意された、美しく映えるイメージ映像であってもいいわけですが、多くのファンにとって、それは裏切り行為と取られてしまったわけです。

現在、このグラフィック劣化問題については、多くの人が気にかけることとなり、トレーラーは実際のゲーム機上で動かされ、「実際のゲームエンジンによるものです」といった注意書きが添えられることが多くなりました。

ここでも強調したいのは、これらのゲームも「ゲームそのものは素晴らしい出来だった」ということです。

あらためて「なぜ、今回、このようなことになったのか」

こういったテレビゲームの例と非常に近い形で「バラージ」にも「低評価爆撃」が行われたと考えて間違いないでしょう。

では、なぜ、今回、「バラージ」がこのようなこと…ファウンダーを裏切るようなことに至ってしまったのか、より深く考えてみたいと思います。

まず挙げられるのは、「ボードゲーム制作におけるマネージメントの難しさ」でしょう。

テンデイズゲームズでも、いくつかクラウドファンディングと平行しての日本語版制作や、世界同時発売を視野に入れての日本語版制作を行っていますが、そのほとんど(すべて、と言ってもいいかもしれません)において、もとからスケジュールがタイトであることに加え、制作も佳境になると変更や修正に追われる日々となり、時間的制約のある中での制作は、非常に困難であると痛感しています。ボードゲームという性質上、タイルやカードの数字ひとつを修正するにしても、さまざまな作業が伴うことになるのもその一因です。

こういった難しさから、具体名は出せませんが、具体的に参画が決まっていたものの、版元メーカーのプロジェクトへの取り組み方の不透明さもあり、テンデイズゲームズとして「降りた」クラウドファンディングのプロジェクトもあります。ゲームがどれだけ魅力的であっても、制作の難しさについては常に考えなければならないのです。

無事、制作を終えたとしても、大量の製造や、その後の輸送や流通の難しさもあります。

「バラージ」の版元であるクラニオクリエーションも新興パブリッシャーではないのだから、こういった点の難しさは充分に留意すべきだったと思います。

次に挙げられるのは「Kickstarterにおけるプロモーションの加熱」ではないでしょうか。

これは、さきの「マネージメントの難しさ」を留意できなかったことにも繋がることになるかと思います。

現在、Kickstarterでは、日々、新しいプロジェクトが立ち上がり、そのほとんどのプロジェクトで、魅力ある動画や数多くのストレッチゴールが用意され、熱のこもったプロモーションを見ることができます。

「ファンの興味を引く」ということではとても有用な方法であることは違いありませんが、それぞれのパブリッシャーの許容範囲を超えてしまうようなことになってしまっては意味がありません。

これについては、ニュースサイト「4Gamer」でのインタビューで、KickstarterのHead of GamesであるLuke Crane氏も触れており、生産コストや流通コストの懸念もあり「アナログゲームにおけるストレッチゴールの設定はとても難しい」と言っています。

立体仕様のボードや特製駒はとても魅力的ではありましたが、果たして、それを問題なく形にするだけのキャパシティーがあったのでしょうか。

「クラウドファンディングを成功させるため」、冷静さを欠いたプロモーションを計画してしまったのではないでしょうか。

テレビゲームにおける「ゲームショーでユーザーの関心をひくため」に用意されたグラフィックと、実際のグラフィックで見られる「劣化」の問題と近いものを感じるのです。

これらは、版元であるクラニオクリエーションのミスとして非難されるべきものではあります。

また、ファウンダーからの問い合わせ(主にKickstarterのプロジェクトページに寄せられたコメント)への対応や、プロジェクト進捗の報告に関して、誠実さを欠いていたことは違いありません。

ただ、クラニオクリエーションを非難するだけで終わらせてはいけないように思います。

テレビゲームの世界においてみられる「低評価爆撃」という意思表示手段がボードゲームの世界にもやってきたように思え(趣味の世界において一般化しつつある、と言ってもいいかもしれません)、私はとても心配しています。

レビューやレーティングは、とても有用なものです。有効に活用するためにも「低評価爆撃」かどうかを見極め(「低評価爆撃」がなくなることは、残念ながらないように思います)、表面的な点数だけなく、いろいろなことを読み取るようにしたいものです。

また、基本的なこととして、Kickstarterにおいてファウンディングする場合も、ある程度のリスクを踏まえ検討することを再確認したほうがいいかもしれません。

最後に

長々と書いてしまいましたが、ゲームファンとして、やはり一番重要なことはなんと言っても、「ゲームを評価するのは実際にゲームを遊んでから」ということにつきると思います。

ちなみに、日本語版制作の作業中、私の妻でもあるあっきーが校正のためルールブックに目を通している際に「このゲーム、すごく面白そう!」と言っていたので、遊ぶのが楽しみで仕方ありません。(私も個人的にファウンディングしています)

ちょっとだけクラニオクリエーションを擁護させていただくと、彼らは、本当に気のいいイタリア人で、真摯にゲーム作りをしていますし、ファンのこともとても大事に思っています。

今回、幸か不幸か規模があまりに大きくなったため、このような形になってしまいましたが(詳しくは言えないのですが、規模が大きくなったことを受け、テンデイズゲームズも通常の範疇を超え、制作をサポートしています)、協力パブリッシャーとして「バラージ」を楽しみにしていてもらえればと思います。

…あと、タイミングをみて、今回の一件については、「店長が訊く」で聞いてみたいところです。