ゲーム紹介:キャピタルラックス2(Captal Lux2 / Eilif Svensson, Kristian Amundsen Ostby / 2020)

 ノルウェーの名デザイナーコンビによる2016年の隠れた逸品に、スケールを大幅にアップさせた続編が登場しました。

基本は二択。しかし、超強烈。

 ゲームでは、異世界の発展と勢力争いが描かれます。
 共通の場となる「首都」に出されたカードを「発展」と見立て、その発展度合いに対し、対応する各勢力(色)のカードをいかに「本拠地」となる手元に出せるかということを競います。
 各勢力は首都に人材を派遣し発展に貢献しつつ、自分の本拠地をより充実させていくというイメージです。
 
 ゲームは三ラウンドに渡って行われます。
 各ラウンド、配られたカードを元に「選び取っては次のプレイヤーに回す」形でのドラフトを行い、各プレイヤーの手札が決まります。

 基本的に手番で行うことはシンプルそのもの。
 手札からカードを「場に出す」か「手元に出す」かの二択です。
 しかし、シンプルでありながら、いや、シンプルゆえに、一手番一手番がとても悩ましいものになっています。
 まず、得点の基本に触れておきましょう。
 得点の基本となるのは、各ラウンド終了時に手元に出されているカードの数比べです。色ごとに自分の手元に出されているカードの数値を合計し、もっとも高い数値だったプレイヤーが、場の中央に出されている同色のカードから得点となるカードを受取ることができます。
 「じゃ、どんどん手元にカードを出していけばいいじゃないか」と思う方もいるかもしれません。しかし、もちろん、そんなに簡単は話ではありません。
 冒頭で書いた通り、場となる「首都」に出されたカードは発展度合いを表しています。この発展度合いが、首都のキャパシティーとなるのです。
 勘のいい方なら気付いたかもしれません。
 そう、各プレイヤーの手元に出されているカードの数値合計は、このキャパシティー(首都上限)までしか許されないのです。
 しかも、首都上限を超えた時のペナルティーはかなりキツいもの。ラウンド中に一時的に超えるのは許されているのですが、得点計算時に、もし超えているようであれば、せっかく手元に出したその色のカード、すべてを捨てなければならないのです。

 一方で、場に安易にカードを出すことができないことは言うまでもありません。
 「場にカードを出す」ということは、すなわち、他のプレイヤーにとっても手元にカードを出しやすくなるということに繋がるからです。

 さらに、各ラウンドの手札となるカードはたったの6枚。一枚一枚の価値たるや、他のゲームの比ではありません。
 
 この強烈な悩ましさ、ジレンマは、間違いなく「キャピタルラックス2」最大の魅力と言えるでしょう。

ゲームごとに異なるパワー、その影響を読み解け!

 もちろん、強烈な悩ましさだけが「キャピタルラックス2」の魅力ではありません。
 ゲームごとに変化を加えてくれる「パワー」も忘れてはいけないでしょう。

 ゲーム開始時に、各色ごとに特別な「パワー」が用意されることになります。
 この「パワー」は、ゲームを通してさまざまな効果をもたらすことになります。
 場となる「首都」にカードが出された場合、その色に対応した「パワー」の効果が発生します。
 「パワー」は、追加手番、カード補充と言ったシンプルなものから、他プレイヤーと完全に異なる駆け引きをもたらすものまで、幅広く、とてもユニークです。

 例えば、上の写真の「悲観論者」。
 彼はこの世の中に何か強い不安を抱えているのでしょう。その自分の不安の矛先を「時限爆弾」による破壊に向けてしまっています。
 桃色のカードを場に出す度に、時限爆弾のカウントダウンを表すタイルを一枚めくります。合計が4までであれば何もおきませんが、5以上になるとドカーン!場に出されているカード、各色ごとに1枚ずつ捨て札となってしまうのです。

 例えば、「商人」。
 プレイヤーは、黄色のカードを場に出す度、金貨を受取ります。
 各ラウンドの終了時、もし、首都上限を手元のカードの数値を超えていたならば、この金貨を支払うことで、(自分にだけ作用するように)首都上限を引き上げることができます。
 さながら、取引で得た財力にものを言わせるイメージでしょうか。

 そのほか、場に出すか手元に出すかによって内容が変わる特別なカードを補充することの出来る「二元論者」、ランダムで退いた特別なタイルによって首都上限を(自分だけがその数値を知った状態で)増減することができる「工作員」、完全版と言える「キャピタルラックス2:ジェネレーションズ」にはロケット発射計画を推し進める「発見者」などなど、各色ごとに4種類ずつ(廉価版「ポケット」では3種類)用意され、その組み合わせのバリエーションは256種類(ジェネレーションズ)にも及ぶのです。

 ベースとなるルールが、非常にシンプルだけに、その効果はシンプルなものであっても、もたらされる影響はかなりものです。
 タイルの効果、ゲームにもたらす影響をしっかりと読み解き、カードを適切、かつ効果的にプレイするのも、「キャピタルラックス2」の醍醐味です。

唸らされる「油断のならないポイント」

 ここまで大きな二つの魅力を書いてきましたが、「キャピタルラックス2」を優れたゲームにしている、というよりも、ゲーム好きにとってはたまらない油断のならないポイントは他にもあります。

 まず、ラウンドの終了タイミングと残った手札の扱いです。
 各ラウンド、あるプレイヤーの手札がつきた時、他のプレイヤーはもう一手番ずつプレイして終了となります。
 ラウンド開始時は、同じ枚数の手札を持っていることになるのですが、「パワー」効果によっては手札枚数が均一ではなくなります。
 そのため、ラウンド終了となった時点で、まだ手札が残っているプレイヤーが出ることも少なくありません。
 この残った手札は、問答無用でそれぞれのプレイヤーの手元に置かれることになります。
 手元に置かれたカードの数値が大きければ大きいほど得点のチャンスに繋がるこのゲームにあって、手元に置かれるカードの枚数が肝心ではあるのですが、前述の通り、首都上限を超えた時のペナルティーはとても大きいため、むしろ手元に置きたくないケースも多々あります。
 このルールにより、手元にどのカードをキープするかという悩ましさ、カードを出すタイミングの見極めのシビアさが増しているのです。

 続いては、ゲーム終了時の得点獲得方法です。
 3ラウンド目の得点計算が行われた後、ゲーム終了の得点獲得があります。
 各プレイヤーは、その数値の大小にかかわらず、手元に置かれていたカードをすべて得点として獲得することになります。
 各ラウンドでは、色ごとの数比べを制したとしても、得点として獲得できるのはカード一枚のみです。
 このゲーム終了時の得点ウエイトが大きく設定されているわけです。
 また、この得点獲得があるため、「ある色を捨てる」、「ある色に絞る」ようなプレイは、無効ではないものの、もたらされる得点を考えると有効的とは言えないでしょう。
 そしてプレイヤーは、どのような状況であっても、出来るだけギリギリ首都上限ギリギリを攻めたい、そんな風に思わされるのです。

 また、冒頭で簡単に触れましたが、各ラウンド、手札は「ドラフト」によって決まります。
 悩ましいゲームだけに、他のプレイヤーに回したカードというのは、極めて重要な情報となるでしょう。もちろん、回ってきたカードから推測することも重要です。
 あくまで数字のみが描かれているのみのカードでありながら、そして手札は6枚と少ないながら、ラウンド開始時点でのドラフトから、シビアな駆け引きは始まっているのです。

まとめ

 「キャピタルラックス2」は、構成する要素が主に「二択のカードプレイ」、「ゲームごとに異なる特殊効果タイル」の二要素だけに、とてもシンプルなゲームです。
 得点のシステムも、「色ごとのマジョリティ争い」という、非常にオーソドックスなものです。
 しかし、悩ましさが詰まったゲームプレイ、至るところに用意されたプレイヤー間の駆け引き、ゲームごとに異なる特殊効果の組み合わせから生まれる展開の妙、これらがとてもセンス良く組み上げられたタイトルです。
 そして、シンプルゆえに「凄み」を感じられるゲームデザインにもなっているように思うのです。

 クワンチャイ・モリヤの魅力的なアートワークにより、ルールブックなどでは深く語られていないながらも、その世界観がうまくゲームにも彩りを与えてくれてもいます。

 「キャピタルラックス2」は、間違いなく多くの方に触れてもらいたいタイトルです。

※「キャピタルラックス2」は、完全版といえる「ジェネレーションズ」と廉価版「ポケット」の二種類があります。「ジェネレーションズ」では、「ポケット」と比べ、「パワー」が各色1つずつ多く用意されています。また、「ジェネレーションズ」では、ソロプレイ用のルールと内容物が含まれています。

スタッフ神田の視点

◆全体に貢献しつつも個人の最大利益を目指す

 「キャピタル・ラックス2」において、プレイヤーは未来の首都「ラックス」の有力者として、カードで示される4種の人物を首都か本拠地に派遣(プレイ)します。ゲーム中、プレイヤーは、カードを首都にプレイして公共の利益に貢献するか、あるいはカードを自分の本拠地にプレイして利益を独占するかの二者択一を迫られます。
 もちろん、大変なだけの公共事業は他人に任せて、自分の利益だけを追求できれば最高です。しかしながら、公益を軽視して蓄財に励んでいることが露見してしまえば、これまで築き上げてきたすべての利得を没収されてしまうでしょう。
 したがって、プレイヤーは公共の利益と、自分の利益を天秤にかけて、バランスよく両者を発展させていく必要性があります。その上で、ゲームに勝利するためには他者を出し抜いて自分だけが利益を独占する立ち回りが必要になるでしょう。

 「キャピタル・ラックス2」は2016年に発売された「キャピタル・ラックス」のアップデート版です。基本的なルールにも若干の見直しが入りましたが、それ以上に着目すべきは固定式だった4種の特殊効果が組み換え可能になったことで、「ポケット」版なら81通り、「ジェネレーションズ」版は256通りのセットアップが可能になりました。
 「キャピタル・ラックス2」の各バージョンの違いについてはタナカマ店長の記事にて紹介されているので、そちらをご覧ください。

◆ゲームの流れはごくごくシンプル

 「キャピタル・ラックス2」は、カードドラフトとカードプレイの2つのエンジンによってラウンドが構成されたゲームです。

 ラウンドの始めにはカードのドラフトを行います。全員がカードを6枚引き、同時に2枚をピックして残りを左隣に渡し、また2枚をピックして渡し、最終的に6枚の手札を構築します。
 その後、スタートプレイヤーから手番を行います。手番ですることは手札からカードを1枚選んでプレイするだけです。
 カードは本拠地(自分の場札)へプレイするか、首都(全員共有の場札)へプレイするかのいずれかを選び、どちらの場合でも、プレイされたカードは場札として蓄積されていきます。また、共有の場札にプレイした場合、カードの色に応じた特殊効果が発動します。

 誰か1人の手札が尽きるとラウンド終了のトリガーが引かれます。他のプレイヤーは最後の1手番を行い、余った手札はすべて自分の場札に加えます。

 ラウンドの最後には、4色のカードそれぞれについて得点計算を行います。ここでは自分の場札の数値の合計と共有の場札の数値の合計を比べるのですが、自分の場札の合計値が共有の場札の合計値を上回ってしまった場合、自分の場札をすべて捨てなければなりません。
 その後、それぞれの色について場札の合計値のマジョリティを比較し、勝ったプレイヤーが共有場札から最も高いカード1枚を得点ボーナスとして獲得します。

 こうした流れのラウンドを3回繰り返したところでゲームは終了します。ゲーム中に獲得した得点ボーナス、自分の場札の数値の合計、金貨トークンの得点を合算して最も多くの得点を得たプレイヤーがゲームに勝利します。

◆明瞭平易なゲームデザインの奥に隠された工夫の数々

 こうして文章にしてみると極めて簡素な展開のゲームですが、実際にプレイしてみるとルールの裏側に潜んでいる匠の技の数々に気づかされます。

 まず、着目すべきはその得点システム。プレイヤー共有の場札によって上限値が決まり、ラウンド終了時までにその範囲内に自分のカードの合計値を収める。ここにはチキンレース、バーストの要素があり、まず1つ目のジレンマになります。
 そして、さらにこのバーストをくぐり抜けたとしてもそれだけでは得点には結びつきません。その中でさらに合計値で1位を目指さなければならない。これが2つ目のジレンマになります。
 バースト+マジョリティの組み合わせはバーストの「上限値を越えてはならない」特性と、マジョリティの「最大多数を目指さなければならない」特性が噛み合い、両者が両者の特性を補完する極めて筋の良いメカニクスです。昆布とカツオの掛け合わせみたいなもので、旨味と旨味が足し算ではなく掛け算になる、言わば黄金の組み合わせなのです。

 さらにマジョリティはその機能上、後手が極めて有利なゲームです。なぜなら先手の行動に対して、後手はそれを(時にはちょっと無理して)上回ることも、勝てないと見限って勝負を降りることもできるからです。
 このゲームではプレイヤーは「手番に必ずカードを1枚プレイしなければなりません」。他人の動きを見てから判断を下したいのにルールがそれを許してくれないのです。これが3つ目のジレンマになります。

 さらにラウンド終了時に余った手札は「すべて自分の場札としてプレイしなければなりません」。それがバーストの引き金になるとしても避けることはできないのです。もうお分かりの通り、これが4つ目のジレンマです。
 従ってバーストの危険性があるカードは早めに共有の場札に送り込まなければなりません。しかしバーストの上限値が緩んで喜ぶのは得てして他プレイヤーです。自分のウィークポイントはなるべくポーカーフェイスで隠しつつ、できれば他プレイヤーが上限値を緩めるのを待って、それから自分の場札を増やしたい…… そんな思惑がプレイヤー同士で間断なく巡ります。ルールは平易ながら非常に一手が重いゲームなのです。

 また、ラウンド開始時のドラフトも上手い仕掛けです。自分が流したカードは下家のプレイヤーが確実に持っていて、必ずどこかの局面で登場するのです。4人プレイの場合、ラウンドに登場する24枚のカードのうち、プレイヤーは12枚を既知の情報として持っています。
 この相互作用の強いゲームにおいてドラフトによって得られる情報の果たす役割は非常に大きく、ゲーム展開を予想し、またコントロールする補助線として大きく機能しています。我慢比べの末に他人の動きを見切った時には「してやったり」の気分になることでしょう。
 また、このドラフト自体も6枚から2枚をピックするちょっと変わったシステムで、この工夫により大幅なスピードアップが図られています。なにせ6枚から1枚ずつピックするドラフトのピック回数は5回ですが、このシステムだとピック回数がたったの2回で済みます。
 この高速ドラフトはゲームの密度を高め、記憶負荷への低減を図り、コントロール性を高める一石三鳥の秀逸な仕組みと言えましょう。

 ルールの一つ一つにそれぞれ意味があり、それぞれが有機的に結合して互いが互いを引き立てています。この機械仕掛けのようなシステムの噛み合わせの妙こそがノルウェー人ゲームデザイナーコンビ、エイリフ・スヴェンソンとクリスチャン・オストビーの最たるところです。

◆アブストラクトでもない、アメリトラッシュでもない秀逸なバランス感覚

 また、最初に少し触れた通り、共有場札にカードをプレイした場合、その色に応じた特殊効果が発生します。元々の「キャピタル・ラックス」もこの特殊能力がいい味を出していたのですが、「キャピタル・ラックス2」では、この特殊効果のパターンが大幅に増えています。

 骨組み自体はシンプルながら、この特殊効果の影響も踏まえて手札をやりくりする必要があるため、このゲームはアブストラクトめいた無味無臭には陥らず、モダンなゲームらしいスパイシーさも兼ね備えています。かと言ってアメリトラッシュを思わせる破壊的な効果は意図して避けられていて、このバランス感覚も特筆に値する点です。

 共有場札にカードをプレイすることは直接的には得点に結びつかないため、そのリバランスでもあるのでしょう、特殊効果は基本的にはプレイヤーに有利に働いたり、ゲーム展開に影響を与えるものが多いです。「キャピタル・ラックス2」では、使い方によってはプレイヤーの不利に大きく働く特殊効果も盛り込まれ、さらに尖った展開が約束されています。特殊効果の有利不利によっては共有場札へプレイするマインドにも変化が生じるので、ドラフトはより慎重さが必要になるかもしれません。

◆逆転性を演出する得点システムも必見

 このゲームには膝を叩くルールがいくつもあるのですが、「ラウンド終了時に共有場札の一番大きな数値のカード1枚をボーナス得点として与える」というのもこれまた非常に秀逸なルールで、これによってギリギリまで自分の場札を溜め込んだ優位なプレイヤーは強制的にバースト危険度MAXの状態に押し込まれる羽目になります。
 自分の場札が少ないプレイヤーにとってこの状況は、逆に自分の場札を溜め込む大きなチャンスです。なにせバーストの危機に瀕しているプレイヤーは高確率で共有の場札を増やし、上限値を緩めてくれることでしょうから。
 これだけのシンプルなルールで自然と次の緊張状態を作るとともに逆転の余地を生み出しているのはさすがの一言です。

 また、最終ラウンドではこれまでのラウンドと同様のボーナス得点を得つつ、最後に自分の場札の合計値がすべて得点として計上されます。ゲームを通してこれが得点源として非常に大きなウェイトを占めています。
 したがって最終ラウンドでバーストしてしまうと、その損害は甚大なものになるでしょう。逆に言えば最後まで逆転のチャンスは残されているのです。自分の得点を確保するだけでなく、他人の得点を失わせるための立ち回りも時には重要になるでしょう。

 得点にインフレを持たせつつ、クライマックスを最後に持ってくる得点メカニクスは同作者コンビの手による「アベニュー」と同コンセプトで別アプローチを体現した形でしょう。得点システムにおいてゲームデザイナーは常に「ゲームの最後まで逆転の可能性を残さなければならない」「かと言ってゲーム中の得点要素が疎かであってはならない」という二律背反の命題に悩まされているのですが、スヴェンソン&オストビーはいとも明快に、そして鮮烈に命題への回答を導き出しているのです。
 というか、「キャピタル・ラックス」と「アベニュー」を同時に出した2016年の両者はエグすぎますね!

◆「緊張と緩和」が巡り巡るゲームデザイン

 ゲームデザインには「ゲームの面白さとは緊張とその緩和の繰り返しである」という理論があります。例えば「ダイスを振って1,2,3,4なら成功、5,6なら失敗」という場面は、成功か失敗のどちらが訪れるか判然としない「緊張」の状態であることがわかるでしょう。ダイスを振った後に訪れるのが対となる「緩和」です。ダイスの結果が成功でもあっても失敗であっても、もはや結果は一意に収束し、それ以上の揺らぎはありません。

 ゲームの面白さとは、このような緊張と緩和の状態の行き来によって演出されています。ハードルを設定し、それを飛び越えることで収束する。マッチポンプ的ではありますが、このハードルの高さと頻度をどのように設定するかがゲームデザイナーの腕の見せ所とも言えます。
 このゲームでは「バースト危機的状態」と「非バースト状態」の行き来がまさに「緊張と緩和」の状態遷移に該当します。4つの色それぞれにおいて「バースト危機的状態」と「非バースト状態」のフラグがあり、プレイヤーの一手番ごとにこれらの状態は頻繁に移り変わります。
 そこには自分が関与できない他人の選択による状態遷移も多く、時にはジェットコースターに身を委ねているかのような他律的なめまいに翻弄されます。しかしながら、裏を返せば棚ぼたのような幸運が幾度も訪れるということでもあります。
 シビアな選択に苦しめられるだけではなく、意外なタイミングで嬉しいイベントが転がり込んできて感情が大いに揺り動かされるところにこのゲームの起伏に富んだ楽しさがあります。これほど数多くの「緊張と緩和」を濃密に体感できるゲームは稀と言っていいでしょう。

 繰り返しになりますが、ルール上、手札にあるカードは必ず場札としてプレイされることになります。ですから悩むのは、どのカードをどの順番でどこに出すのか。このゲームは言ってしまえばそれだけなんですが、とにかくその選択が悩ましいゲームです。
 それは織り込まれた巧妙なジレンマの数々と、一手ごとに「緊張と緩和」の状態遷移が誘発される濃密なゲームデザインの為せる技です。
 それでいてプレイフィールはカオスに塗れることなく整然と秩序だっています。元々の骨組みからして抜群に面白かった「キャピタル・ラックス」が大幅なボリュームアップを遂げた今作、ゲーム好きを自負するならマストバイです!

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