【ゲーム紹介】タバヌシ:ウルの建築士たち(Tabannusi: Builders of Ur / David Tascini, David Spada / Board&Dice / 2021)

 シモーネ・ルチアーニと組んで発表した「ツォルキン」、「マルコポーロの旅路」といったタイトルでゲーマーから熱い支持を集め、その後も精力的に作品を発表し続けるデビッド・タッシーニによる2021年新作です。(デビッド・スパダとの共作)

 これまで、タッシーニの作品で見られた「パラメーター上げ」を今作でも中心に据え、ダイスの出目に翻弄されつつのアクション選択と資源獲得、建築競争による陣取りなどを取り入れ、今作もまたゲーム好きを唸らせる一作となっています。

資源と移動……悩ましすぎるダイス選択

 ゲームの中心に据えられたメカニクスは、「ダイス選択」です。
 まず、プレイヤーは各手番において、自分の駒が置かれた区画に用意されたダイスを選び取ることになります。
 このゲームでは、このダイスに大きな二つの役目が割り当てられており、どちらを重視したダイスを選択するか……いや、いずれもおろそかにできないため、そのダイス選択はとても悩ましいものになっているのです。
 
 まず、一つ目の役目は「資源」です。
 「タバヌシ」においても、他のゲームと同様、さまざまなアクションを実行するために資源が要求されることになります。
 しかし、それぞれの区画には、対応した色のダイスしか置かれていません。
 欲しい色の資源があるならば、それを踏まえ、区画を移動する必要があります。

 では、どのように区画を移動するのでしょうか。
 それが、二つ目の役目、「区画の移動」です。
 区画には1~5が割り当てられており、この区画の番号はダイス目に対応しています。ゲーム中、選び取ったダイス目に対応した区画へ移動することになるのです。
 もちろん、この区画は、単に対応したダイスが置かれているだけの場所ではありません。
 区画ごとにアクション(3つか4つ用意されています)と、さまざまなゲームの要素が割り当てられており、どの区画に行って、どのようにアクションを実行し、どう得点へアプローチしていくかをしっかりと見極めなければなりません。

 しかし、当然、ダイスである以上、その目による揺らぎが存在します。
 決算のたびに資源としてダイスを区画へと戻すことになるのですが、その際にダイスは振られ、その目が決定されます。
 狙った通りに資源を獲得し、区画を訪れ、アクションの効果を積み上げていけるか。ダイス目に翻弄されつつも、的確に手を進めなればならないでしょう。

区画内での建築による陣取り……と同時に、これはパラメーター上げへの挑戦的なアプローチだ

 「タバヌシ」における得点へのアプローチでもっとも重要なものは、区画1、2、3での建築競争です。
 それぞれのエリアで建築を行うためには、まず、計画タイルを配置し、区画内に用意されたマス目のどの場所にどの色の建物を建築するかをあらかじめ決める必要があります。
 その後、その計画タイルに基づいて建物を建築、配置することになります。

 建物を建築するために使う計画タイルは、必ずしも自分のものではなくていいというのが、「タバヌシ」の面白く難しいところです。
 建物の建築は、得点へのアプローチで重要であることは先に触れた通りですが、自分の計画タイルを使って他のプレイヤーが建築を行ったとしても、悪いことばかりではありません。
 他のプレイヤーの建築に自分の計画タイルを使われたプレイヤーは、熟練トラックと呼ばれるパラメーターを上げることができるのです。
 この計画タイルと建築の関係により、自分の狙い通りの建築を進めつつ、他のプレイヤーが建築を狙っているところへうまく介入するというプレイが求められることになります。

 各区画の建築可能な場所(マス)は決して多くありません。また、「水域」、「庭園」といった得点へのさらなるアプローチへの足がかりとなるタイルも用意されており、それらを配置することも重要な要素となっています。
 そのため、必然的に陣取り的な駆け引きが繰り広げられることになり、それもまた大いに悩ましいところです。

 計画タイルの配置によってマス目を確保していく際にボーナスが描かれたタイルに配置をしたならば、そのボーナスを得ることができます。
 どのマスに計画タイルを配置するか、得点へのアプローチや陣取りの駆け引きだけでなく、ボーナスも踏まえた配置が求められることになるわけです。

 この計画タイルの配置とその後の建築は、「パラメーター上げ」メカニクスにおける新たなアプローチと言えるかもしれません。
 単にトラックを上げるだけでなく、縦と横、どのように配置を行うか、どのように広げて行くか、極めて自由度の高いパラメーター上げのように思えるのです。
 これまで、数多くのパラメーター上げタイトルを手掛けてきたタッシーニによる挑戦と言ったら大げさでしょうか。

能力アップとジッグラト建築も軽視するべからず

 「タバヌシ」にはもちろん、その他の要素もしっかりと用意されています。
 
 「港」での家の建築や船の獲得は、さらなる勝利点や、アクションのパワーアップをプレイヤーにもたらしてくれます。例えば、ある船を獲得した際には「庭園タイルを置くたびに2勝利点を得る」という能力を得ることができるのです。

 「ジッグラト」の建築を進めるならば、得点計算時にボーナス点をもたらす条件を開放することができます。また、開放した後も同様に建築を進めるならば、
ボーナス点の得点効率を上げることができるため、なんとなく実行するのではなく、自分の戦略に合致した条件であったならば、積極的にジッグラト建築に関わるべきかもしれません。

 こうして、ダイス選択とアクション実行を繰り返し、ある区画からダイスがなくなったならば、その区画での決算を行います。アクションが積極的に行われた区画ほど決算へと近づくわけです。
 決算時に重要な処理が一点あります。決算が行われた区画に対応した資源を手元に持っていたならば、その資源を失うことになります。失うことで、トラック上での前進や、タイルの獲得といった利益を得ることができるのですが、場合によっては戦略に大きく影響が出ることもあるでしょう。
 決算のタイミングを見極めることもまた重要なのです。

「テオティワカン」、「テケン」と異なるタッシーニ流ヘビーユーロ!

 ダイス目に応じたアクション効果の幅とロンデル的なアクション選択、そしてブロック積み上げ要素が特徴的だった「テオティワカン、さまざまなアクションが複雑に絡み合い、解きほぐすかのようなプレイングが新鮮だった「テケン」に続き、タッシーニがBoard&Dice社から発表した「タバヌシ」は、ダイスとパラメーター上げが重要なウエイトを占めつつも、まったく新しいアプローチが見られるタイトルに仕上げられています。
 
 中でも区画内で繰り広げられる建築競争は、陣取り的な駆け引きとあいまって、展開のダイナミックさを感じることもできます。

 2021年の年末年始を代表する一作と言って間違いないでしょう。

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