ゲーム紹介:12王国の玉座(King of 12 / Rita Modi / Corax / 2020)

「あー、よくあるヤツね」

 「12王国の玉座」は、キャラクターカードの特殊効果を活用することで、ダイス目を操り、バッティングを避けながら、繰り返される出目勝負に勝ち、最終的な勝者となることを目指す、手軽に盛り上がれる読み合いのゲームです。

 と、よくある概要から入りましたが、この概要を読んで「あー、よくあるヤツか」とあまり魅力を感じられなかったあなたは、すでに多くのゲームを遊んだことのある、いわゆる「ゲーマー」、「ゲームファン」かもしれません。もし、あなたがその一人であったなら、ここで読むのをやめず、この紹介をぜひとも最後まで読んでほしいところです。(-もちろん、そう思わなかったあなたにも、もちろん、読んでもらいたいのはかわりません)

 ダイス勝負、バッティング、特殊効果と、それをもとにした読み合い。こういったシステムを取り入れたゲームは、すでに数多くリリースされーそして、それほどそれぞれのゲームから差異を感じられなかったが故に-「あー、よくあるヤツか」と言いたくなる気持ちもわかります。
 ですが、この「12王国の玉座」は、さまざまなところに見え隠れするバッティングを前提とした読み合いの妙味と、それを十分に味わえる内容に仕上げたチューニングによって、2020年に遊ぶべき新作としてのゲームに仕上げられており、決して「よくあるヤツ」ではないのです。

基本的な流れと、その中でのバッティング要素

 では、実際の内容を見てみましょう。
 「12王国の玉座」は、「ターン」と呼ばれるダイス勝負を複数回行うことで「ラウンド」の勝者を決め、ラウンドを二本先取したプレイヤーが最終的なゲームの勝者となります。
 各ラウンドのはじめ、プレイヤーはダイスを振り、基本となるダイス目「値」を、まずは持つことになります。
 その後、それぞれのダイス目を踏まえた上で、固有の能力を持った6枚のキャラクターカードの中から、使いたい能力のキャラクターを一枚選び、裏向きで出します。
 全員のキャラクターカードが出されたところで一斉公開。その能力をダイスの値に適用したところで、そのターンの勝負が行われます。
 もっとも大きな値だったプレイヤーは2点、次点のプレイヤーは1点を獲得します。
 8点を獲得したプレイヤーか、手持ちのキャラクターカードが1枚になったところでラウンドの勝者を決めます。

 非常にオーソドックスなルールですが、このゲームでは、要所要所でバッティングの判定が行われ、これが実に妙味を生むことになります。
 まず、キャラクターカードの公開において、バッティングの判定が行われます。もし、複数のプレイヤーが同じキャラクターカードを出していた場合、そのキャラクターカードは打ち消され、効果を発動しません。
 続いて、ダイス目の「値」での勝負におけるバッティングの判定です。もし、複数のプレイヤーが同じ値だった場合、それらのプレイヤーのダイスは打ち消され、値がどうであれ、得点獲得に至ることはありません。

 まず、各ターンで行われるこのバッティング判定が、実に巧くゲームに作用し、妙味に繋がっています。
 「12王国の玉座」におけるキャラクターカードの効果は、実に多種多様です。値を単純に決まった数増やすもの、減らすもの、一定の数にするもの。加えて、勝負の基準を変えるもの-「最小値のプレイヤーが勝つ」というようにです。
 
 例えば、3人プレイにおいて、各プレイヤーが次のような値だったとします。
 A:12
 B:7
 C:1
 普通であれば、Aが勝利、Bが次点となります。
 ここでCは「最小値のプレイヤーが勝つ」というキャラクターカードを出すことを考えるかもしれません。
 -そして、それを読んでAは同じカードを出し、バッティングによる打ち消しを狙うかもしれません。
 -さらに、それを読んだBは「勝者は次点になり、次点が勝者となる」キャラクターカードを出すかもしれません。
 -であるならば、と思ったCは「最小値のプレイヤーが勝つ」というカードを出さずに、応用力が高く、また、以降の勝負を踏まえ、ダイス目自体を変える「隣接している5面のうちのひとつにする」を出すことを選択する。
 
 これだけ見ると、バッティングゲームでよく受ける印象のひとつである「結局、じゃんけん?」という印象を持つ方がいるかもしれません。
 たしかに、この一回の局面だけ見ればそうかもしれませんが、「12王国の玉座」では、「キャラクターカードは(そのラウンドにおいては)使い切り」、「ラウンド中では、ダイス振り直さない(一部、ダイスに直接作用するキャラクターカードの能力以外では、ダイスの目自体は変わらない)」の二点により、うまく解消されているように思います。
 要するに、ラウンド中に繰り返される勝負では、どのカードが残っているのか、そして、(基本的に変更されない)ダイス目ということが、駆け引きに対して、とても大きく作用しているのです。
 上記の例では、キャラクターカードのバッティングのみに絞っていますが、ここに「値」のバッティングが加わることで、さらに複雑な読み合いが繰り広げられることは言うまでもありません。

そして、ラウンド終了に待つもう一つのバッティング

 いずれのプレイヤーも「8点」獲得することなく、ラウンド終了となったならば、そのラウンドでの獲得点数を比べ、勝者を決めることになります。
 このとき、またバッティングの判定が行われることになります。
 それは「獲得点数」のバッティングです。
 もし、複数のプレイヤーが同一得点だった場合、その得点(とプレイヤー)は打ち消され、残ったプレイヤーの中で勝者が決められることになります。
 この得点のバッティングについては、「やりすぎ」、「なんじゃそら」と思われる方も少なくないように思います。
 しかし、「12王国の玉座」では、このバッティングも実に巧く駆け引きのポイントとして盛り込んでおり、ゲームを盛り上げてくれるのです。

 例えば、5点、4点、3点という状況で、あるラウンドの最終ターンを迎えていたとします。
 3点のプレイヤーは、非常に望みの薄い状況ですが、得点のバッティングがあることで、極めて低いながらも勝利のチャンスは残されています。
 5点プレイヤーが1点、4点プレイヤーが2点を獲得した場合、6点、6点、3点となり、バッティングにより、勝利が舞い込んでくるのです。
 そのために、3点プレイヤーは、自分が負けつつ、4点をダイス勝負に勝たせるようなプレイを狙うことになります。
 もしくは、全員を5点横並びにして、このラウンドはドローとすることもありかもしれません。
 この読み合いの熱さたるや、かなりのものです。

 ルールを読んだだけでは「はたしてこれは・・・」と思わされるような点も、実は非常によく考えられたゲームになっているのです。

 もちろん、「高いダイス目にものを言わせ、まっすぐ勝利を狙う」ことが非常に有用であることは前提としてあります。
 決して、「バッティング」の部分だけを掘り下げたゲームでないことは強調しておきます。

生粋のゲーム好きも満足できる希有なバッティングゲーム

 「12王国の玉座」のルールは、ゲームの準備やカードの説明を含んでも4ページ、実質2ページしかありません。(しかも判型は小さいです)
 そしてそのルールはシンプルそのもの。「よくあるヤツ」であることに違いありません。
 しかし、わかりやすくもツボを押さえたキャラクターカードの効果、バッティング判定のポイントといったルール運用の面で、練りに練られたゲームと言えると思います。
 
 「12王国の玉座」は、ダイスの値が大きいことが有利なのは間違いなく、バッティングがもたらすアクシデント性を純粋に楽しむだけでもとても楽しめるゲームではあります。
 しかし、それを大前提としつつも、勝負所を読み、さまざまキャラクターカードがどのような効果を及ぼし、どう作用するのかをイメージし、自分の思った通りに場をコントロールできるか、そんなところを実に巧く盛り込み、ゲーム好き-いわゆる「ゲーマー」でも納得できるゲームとして、手に取る価値のあるゲームになっています。
 ここまで懐の深いタイトルはあまりなく、多くの人に、大いにオススメできるタイトルではないでしょうか。

スタッフ神田の視点

◆12面ダイスと人物カードを使ったバッティングゲーム

 「12王国の玉座」は、ダイスとカードを使ったバッティングゲームです。全員が同じ人物カード7枚1組を手札として持ち、ダイスの出目の大小を競います。
 TRPGではお目にかかる機会があるものの、ボードゲームでは珍しい12面ダイス(クリア? マーブル? ちょっと不思議な質感のダイスです)が特徴的な内容物。それに特殊能力を持つ(良く知られているところでは「ラブレター」、最近で言えば「オリフラム」のような)人物カードを組み合わせた小箱のダイス&カードゲームです。

 ゲームの流れとしては、

1.ダイスを振って
2.カードの特殊効果でダイスの出目に修正を加えて
3.ダイスの出目の高い人が得点!

 これだけ! ゲームの流れはシンプルで、ルール説明はラクチンです。実際遊びながらでルール説明できるタイプ。

 あとは手札1枚になるか8点を獲得するまでこの流れを繰り返し、合計得点が高い人がラウンドの勝者になります。ラウンドを2回勝利すればゲームに勝利します(「髑髏と薔薇」のような感じ)。

 基本的にはダイス目が高い=強いなので、最初のダイスロールで高い出目を出した人はかなーり有利です。
 しかしながら、それだけでは勝ち切れない色々な仕掛けがこのゲームには施されていて、小箱のゲームではありながら相当に悩ましく頭を使う、歯応えのあるゲームに仕上がっています。

◆逆に今、新鮮味のあるバッティングゲーム

 バッティング(ここでは便宜的に「選択が被るとお互いの選択がキャンセルされるゲームメカニクス」を指します)は、とても面白いメカニクスである反面、面白すぎてなんでもバッティング味になってしまうという弱点が存在します。味噌ラーメンの弱点は味噌が調味料として旨すぎること、みたいな話です。

 そしてバッティングゲームの旨味を最大限引き出そうとすると、余計な要素はどんどん省いていくのが正解で、結果残るのは……あれ、これって「ハゲタカのえじき」だぞ、となるワケです。アレックス・ランドルフの、このシンプルかつ明瞭なゲームは、バッティングゲームの超大な山脈としてこのジャンルに厳然と聳え立っているワケです。

 そういったゲーム作りを避ける人が増えてきたのかどうなのか、実は最近バッティングゲームの光るゲームって見かけないんですよね。そんな空き家状態のこのジャンルにヌッと入り込んできたのがこの「12王国の玉座」というワケです。
 では、このゲームのどこに他にはない新味があるのでしょうか?

◆バッティングせよ! 然る後バッティングせよ!

 バッティングが面白いメカニクスであることは間違いありません。しかし安易な追随では「ハゲタカのえじき」のコピーになってしまう…… この難題を前に「12王国の玉座」のデザイナーは、どう考えたのか。

 「そうだ、だったら徹底的にバッティングさせたらいいんじゃないか!?」

 これはかなりぶっ飛んだ着想です。なんとこのゲームではバッティング判定の機会が3ヶ所もあるのです。

・全員がカードを伏せてプレイ! その結果、同じカードが公開されたらバッティング!
・カードの効果でダイス目に修正が入る! その結果、同じ出目があったらバッティング!
・ラウンド終了! その結果、同じ得点のプレイヤーがいたらバッティング!

 夥しいバッティング、バッティング、バッティング。
 ここまで徹頭徹尾バッティングというメカニクスを使い尽くしたゲームって珍しいのではないでしょうか。新作ゲームが毎日出版されるとも言われるこの飽和の時代において、このコンセプトの明瞭さ、お見事というよりありません。

◆ハンドマネジメントも重要な独特なプレイフィール

 面白いバッティングゲームは、その特徴として各人の選択の導線となるヒントが盤上に散りばめられています。
 「12王国の玉座」でその役割を果たすのがダイスの出目です。基本的に最も大きな出目のダイスを持っているプレイヤーがゲームの主導権を握りますが、他のプレイヤーも虎視眈々と逆転の機会を窺っています。

 逆転手段としてわかりやすいのが「騎士」のカード。このカードは「最も高い出目のプレイヤーが勝負に勝つ」というゲーム本来のルールを捻じ曲げ、「最も低い出目のプレイヤーが勝負に勝つ」という真逆のルールを適用させるカードです。
 では、大きな出目のダイスを持つプレイヤーはこれをバッティングで潰すために自分も「騎士」をプレイするべきでしょうか?
 いや、相手はそれを見越して「騎士」の使用を遅らせるかもしれませんし、(自分の出目を-7にする)「寄生者」を使ってくるかもしれません。正解はどれだ!?

 さて、このゲームではラウンドの最中にダイスを振り直す機会が限られています。これが実にうまい作りで、ラウンド中の1ターン1ターンに途切れることのない連続性を与えて、ラウンドを通したハンドマネジメントをプレイヤーに要求してくるんですね。

 例えば、自分は最強の出目12のダイスを持っているからまずは(出目を2倍にする)「錬金術師」で1勝、次に(出目を+7にする)「からくり人形」で2勝目を狙おう。

 その次は敢えて「巫女」でダイスを振り直して、その次は「騎士」で逆転の1勝を狙い…… といった長期的なプランニングが立つんです。

 それぞれのカードが固有の強力な効果を持ち、なおかつ使い所を誤れば効果を発揮せず立ち消えてしまうという多大なリスクも孕むため、カードを選択する指はいつも緊張感でこわばります。

 この「1回の勝負に勝つ」という短期目標だけでなく、「ラウンドを通してどこで勝負を仕掛けるか」という長期目標をも提示しているのがこのゲームの巧みなところで、基本1回1回の勝負の関連性は薄いバッティングゲームにおいて、独特なプレイフィールを生み出しています。

◆最終得点までバッティング!?

 そしてこのゲーム最大の大大大技は、ラウンド終了時の得点計算の際にも、同点のプレイヤー同士がバッティングすることです。「いや、それでゲームが成立するの!?」と驚く人もいるかもしれませんが、しかしこれが最後の大決戦・大逆転を演出していて、個人的にはアリだと感じています。

 例えば、最後の勝負で他プレイヤーが4点、3点、2点、そして自分が0点の場合でも、上手いこと立ち回って全員を4点タイにしてバッティングさせてしまえば、なんと0点でもそのラウンドに勝利できてしまうのです。
 もちろんそうならないように他プレイヤーは読みを凝らしてバッティングを回避すべく立ち回るのですが、この読み合いがまさに最終決戦という緊迫感があって熱い!

 一見、これは理不尽なルールに思えるかもしれませんが、それ以上に最初のダイス目が理不尽な格差として存在しているゲームではあります。高い出目のプレイヤーは有利だし、低い出目のプレイヤーは不利。どれだけカードで逆転が狙えると言ってもこの構図自体は変わりません。また構図が強固だからこそ読みのヒント足り得るのです。
 なので、ダイス目の理不尽を制するためのバッティングの理不尽と言いますか、「化け物には化け物をぶつけるんだよ!」という発想と言いますか、このゲームの発想はとかく色々ぶっ飛んでるんですが、冷静に考えてみるとなるほど納得できる論拠があって、作者はどこまで計算してこのゲームを作ったのか不思議な気持ちになります。

 リーチをかけると手札のカードを1枚封印しなければならないのもちょっとした工夫に見せて相当に色々な効果を織り込んだ作りで、デザイナーにセンスがあるのか、デベロップが巧みなのか、とかく見るべきところのある不思議なゲームです。

◆3人でも面白いバッティングゲーム

 また、バッティングゲームの常として「人数が多い方が楽しい」という話があります。そりゃ2人でバッティングゲームをやっても面白くはないですし、多人数の方が単純にバッティングが起きる頻度が増えるので盛り上がるワケです。

 しかしながら、このゲームは3人でも十分な絡み合いがあり、濃厚な読み合いを楽しめるところが便利です。4人ともなるとそれぞれの思惑を読み切るのは困難で、バッティングゲームならではのカオスな展開を楽しめることでしょう。
 なので、知的な読み合いを楽しむなら3人プレイを、パーティーライクに盛り上がりたいなら4人プレイをオススメします。特に4人プレイだと最後の得点計算のバッティングが起こりやすく、このゲームの醍醐味であるピタゴラスイッチめいた玉突き事故を存分に味わえることでしょう。

◆日本向けのドイツ産ゲームをご賞味あれ

 ということで、ここまで「12王国の玉座」について紹介してきたワケですが、みんな大好き人物カードによる特殊能力と、みんな大好きバッティングの組み合わせが楽しくないはずがありません。もちろん元々バッティングゲームが苦手な人、肌に合わない人にはオススメしづらいのですが、ルールは簡単、プレイ時間は短く、特殊効果の使い所が重要、と、日本でウケる要素の詰まったゲームという印象を受けます。
 また、このゲームはドイツ産なんですが、ドイツの静的な機械っぽさは幾分ナリを潜めているというか、フランスやアメリカの匂いの混じったドイツゲームという感じがします。新興パブリッシャーならではの無国籍ハイブリッド感はユーロ趣味とアメリカ趣味の混ざった日本のゲームシーンに合うように思うんですね。

 また、カードは1組12枚あり、1回のゲームでは固定の1枚+6枚しか使いません。組み合わせによって異なる戦い方を求められるのでリプレイアビリティもあり、さらに今ならプロモカードが追加で2枚ついてくるので組み合わせ自体も相当に増えます。
 プロモカードのうち1枚はめっちゃ強力なんですが、それでもゲームバランスはおそらく崩れない…… このゲームのシステム上、強力なカードを導入しても対人バランスが崩れることがないのは、ゲーム自体の強度の高さを感じます。

 ということで、うまく行った時はしてやったり、裏をかかれた時は悔しさに呻き、予想外のバッティングに大爆笑と、至るところで感情を大いに揺さぶってくるゲームです。
 「最近バッティングゲームって遊んでないなあ」とお思いの方、久々にやってみると、やっぱり笑ってしまうので楽しいです。時々一方的な展開になってしまうことがあるのもまた愛嬌で。なんとかして勝ってやろうという必死さも、無慈悲な展開の前では笑いのスパイスになります。

 あと、インストのコツとして、「ダイスを振ったり、実際に出目をいじるのはラウンドの開始時とカードに記述があるときだけ」という説明の徹底をオススメします。
 ついつい出目をいじったりダイスを振り直したりしたくなるんですが、このゲーム、ダイスを使うゲームにも関わらず、ダイスをいじる機会は希少なのです!

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