ゲーム紹介:スチーモポリス(Steamopolis / Gerhard Hecht / Corax Games / 2019)

 「塔に作られた都市で、次期市長となるために市民のために経済活動に勤しむ」という一風変わった舞台、テーマを持つのが、この「スチーモポリス」。そして、テーマに負けないくらいの独自性の高いワーカープレイスメントのシステムを持ったゲームです。
 加えて、地味!渋い!苦しい!という三拍子揃った、なんともマニア心をくすぐるタイトルなのです。

舞台は、塔に作られた都市、そして行き交う飛行船

 まず、特徴的なゲームの舞台、テーマを紹介しましょう。
 舞台となるのは、ゲームのタイトルにもなっている街「スチーモポリス」。この街は、塔自体が街となっているという少し変わった街なのです。
 塔自体が街になっていることもあり、この街では移動手段として飛行船が用いられています。この飛行船で各階層を行き来することになるわけです。
 そして、プレイヤーは、このスチーモポリスの街の次期市長候補となり、住民から信頼を得るために、経済活動を行うことになります。

特徴的な縦長のメインボード

メインシステムは独自性の高いワーカープレイスメント

 ゲームのメインシステムは、いわゆる「ワーカープレイスメント」。自分の駒を行いたいアクションに置いてく、アクションの早取りと駒のマネージメントがキモとなる、ゲーム好きにはお馴染みのシステムです。
 ちょっと変わった舞台とテーマの割に王道的なシステムが採用されていることを意外に思われた方もいるかもしれません。しかし、この「スチーモポリス」では、王道的なシステムに一工夫も二工夫も加えられており、それがこのゲームの面白さのキモとなっているのです。

 「スチーモポリス」では、各プレイヤーは、それぞれが自分用の個人ボードを持っています。
 この個人ボードは、このゲームの主役とも言える飛行船をイメージしたものとなっており、中央に蒸気用のパイプが描かれています。この蒸気用のパイプに置かれた蒸気駒が、アクションを選択、実行するための、いわゆるワーカー駒になっています。
 この蒸気駒をメインボードに配置することで、アクションを選択するのですが、自由に置けるわけではありません。
 メインボードの各アクションは、階層ごとに割り振られ、階層がより高いほど強力なアクションが用意されています。しかし、高い階層に用意されたアクションを選択するためには、蒸気駒の蒸気圧を高めた状態でなければなりません。「蒸気駒にパワーを溜め、そのパワーを用いてアクションを選択する」というイメージです。蒸気圧は、蒸気駒ごとに異なるため、まんべんなく蒸気圧を高めていくか、それとも特定の駒の蒸気圧を高めていくかの判断が求められます。
 
 さあ、蒸気圧を高めたら、いよいよアクションの選択です。
 「スチーモポリス」では、この後の蒸気の使い方がとても重要です。そして、もっとも特徴的とも言えるものになっています。
 飛行船内、蒸気用のパイプの下には、さまざまな設備のタイルが置かれています。蒸気駒を配置する際、蒸気に余裕があったならば、その蒸気をパイプから各設備に流し、設備タイルに描かれたアクションを実行できるのです。
 例えば、蒸気圧7の蒸気駒を用いて、必要な蒸気圧が5のアクションを実行するとします。このとき、余裕のある「2」分の蒸気をパイプから流し、設備に流用することができるのです。ただし、そう単純な話ではありません。蒸気圧を減らす際に、その真下にある設備にしか流用できないのです。7から6へ減らす際に7と6の間にある設備、6から5へ減らす際に6と5の間にある設備、というようにです。
 これは、パイプのどの位置に設備タイルを置き、どのように蒸気圧をマネージメントするかということの重要性を非常に高めています。
 設備タイルをたくさん並べれば、溜めた蒸気をどんどんパイプへ流し、立て続けにアクションを実行することができますが、メインボードのアクション選択の幅は狭まるでしょう。
 間を開けつつもまんべんなく設備タイルを配置すれば、どのような状況にも対応できるかもしれませんが、蒸気圧を無駄にしてしまうことも多いかもしれません。
 これがキモとなることは、ゲームバランスにも現れています。
 冒頭に書いたように、「スチーモポリス」のゲームバランスは、非常にタイトなものになっています。
 たかが一回の設備タイルのアクションができるかできないか。それによってゲーム展開は大きく異なってくるのです。

さまざまな設備で飛行船を構築していく

アクションの実行順も超重要

 「スチーモポリス」では、蒸気駒を配置、即アクション実行というわけではありません。
 手番が来た時に、アクション実行を選択することで、アクションを実行することになります。
 この時、アクションの実行順がとても重要となります。
 「あるアクションでリソースを得てから、そのリソースを別のアクションで使う」なんて言う場合はもちろんですが、加えて、ボーナス点を狙うためにも重要なのです。
 飛行船が移動してアクションを実行するという設定になっており、この際に、乗客を運ぶことができるのです。乗客には、どの階層で乗り、どの階層で降りるのかが設定されています。例えば、「階層1で乗り、階層4で降りる」という乗客を運ぶためには、「階層1でアクションを行った後で、階層4でアクションを実行する」必要があります。アクション効率や条件を満たすために、この逆順でアクションを実行しなければならないこともありますが、もちろん、その場合は、乗客を運ぶことでのボーナス点を得ることはできないのです。
 また、乗客は、下半分の階層に住む人と上半分の階層に住む人が用意されています。下半分の階層に住む人は乗るのも降りるのも下半分、上半分の階層に住む人は乗るのも降りるのも上半分です。ワーカーとなる蒸気駒は複数あるとはいえ、この上下を踏まえるとなると、決して安易に駒を置くことは許されないでしょう。
 「たかがボーナス点一回のために、どれだけ苦しい思いをさせられるの!もう、無視しちゃえ!」と思われるかもしれませんが、ここでもシビアなゲームバランスが効いてきます。この積み重ねも決しておろそかにできず、そして、これがやはり面白さに繋がっているのです。

苦しい!キツい!面白い!

 ここまでの説明でも何回か出ていますが「スチーモポリス」のゲームバランスは、極めてキツく、タイトなものに設定されています。
 キツいものをいくつか紹介してみましょう。

 まず、先に説明した蒸気圧の部分。
 この蒸気圧は上がりにくく、アクション実行時に無駄に消費してしまうことが非常に多いです。
 ワーカーのアクション選択の幅を広げてくれるパワーであり、場合によっては設備のアクションにも用いることができるリソースでもある蒸気圧。この蒸気圧は、定期収入のような形で自然と増えていくことはありません。基本的には、蒸気圧を上げるアクションを実行してあげるのです。特定のアクションによって、手番ごとに蒸気圧を上げるような効果を得ることもできますが、効果を得ることができるのは一回の機会につき蒸気駒一個ごとに限られる上に、恒久的なものでなくその効果はいともたやすく失われるのです。また、こうしてせっかく上げた蒸気圧も、設備タイルに流用できない限りは、蒸気駒を配置した時点で余った分は無情にも無駄になるのです。

 リソースも簡単には貯めさせてくれません。
 このゲームでは、クリスタルと歯車という二種類の資源がリソースとして登場します。
 この資源駒、個人ボードである飛行船駒に用意された収納箱と呼ばれる保管スペースの数までしか保管できません。
 勘のいい人ならおわかりかもしれませんが、この収納箱、もともと用意されているもの以外は、設備タイルで増やすしかありません。設備タイルは特殊なアクションをもたらすだけでないことは、とても重要な点でしょう。
 かつ、資源が貯まりにくい上に、メインの使い道となる設備タイルの獲得に必要なバランスもシビア。資源が二種類とは言え、その重みは計り知れません。

 さて、重要な設備タイル、ですが、これもあっさり失ってしまうこともあります。
 というのも、ゲームが進むことによって登場するより強い設備タイルの獲得条件の中に、「設備タイルを一枚捨てる」というものがあるのです。
 これにより、その時々で獲得しやすい設備タイルを獲得すればいい、というわけにはいかないのです。

 これでも十分に苦しくキツいゲームバランスのことが伝わったかと思いますが、もちろん、これだけではありません。
 得点バランスのタイトさ、至る所に用意された「早取り」の要素などなど、そのゲームバランスを一通り挙げるだけでも、かなりの文量になるでしょう。

これだけ貯められれば・・・しかしアクションが少ない!

だからこそ、挑戦しがいあり!

 さて、この「スチーモポリス」、ここまで読んでいただいたあなたには魅力的に映ったでしょうか?
 いや、ここまで読まれた方なら、とても魅力的に映ったはずです。
 苦しくキツい・・・だからこそ、うまくマネージメントし、ゲームに勝つことが出来た時の興奮はかなりのもの。
 
 個人ボードである飛行船の構築と、プロット的な側面もあるアクション選択、蒸気圧の独特のマネージメント、どの要素も抜かりなく、作り込まれた印象のある「スチーモポリス」、このゲームはある意味、デザイナーからゲームファンへの挑戦かもしれません。
 最後まで読んだあなたは、この挑戦を受けて立つ資格のあるゲーマーと言えるでしょう。
 ぜひ、じっくりと味わってみてください!

スタッフ神田の視点

◆新興パブリッシャーと技巧派デザイナーのマリアージュ

 「Steamopolis / スチーモポリス」は、ヘンテコながら独自性が光るドイツの新興出版社Corax Gamesと、2013年に「カシュガル」、近年では「アンドールの伝説」のスピンオフゲーム「災いの島の冒険」「リートブルグ攻城戦」をデザインしたGerhard Hecht /ゲルハルト・ヘフトがタッグを組んで送り出した重量級ゲームです。

 目敏い方なら2019年エッセンシュピールのスカウトアクションでこのゲームがチラリと顔を見せたこともご存知かもしれません。そこからも分かる通り、このゲームは新興出版社の野心と技巧派デザイナーの創意工夫が噛み合ったキラリと光る一作です。

 とは言え、公称60-100分というプレイ時間は誰でも気楽に楽しめるゲームとは言いかねる長さと重さではあります。実際、テストプレイの際にはあまりの要素の多さ、思考量の複雑さにグロッキー気味になるプレイヤーもいたほどですが、中期的計画、長期的視野を必要とする複雑巧緻なシステムは手強くも攻略のしがいがあり、ゲームシステムをハックすることに魅力を感じる(ぼくのような)タイプのプレイヤーにとってはトコトン弄くり甲斐のあるオモチャとも言えます。

 「ワーカープレイスメント」「エンジンビルド」と言った要素が好きな人なら、暴れ馬のような独自のシステムを乗りこなすことに大きな快感と興奮を味わえることでしょう。

◆飛行船を強化し、縦横に都市を飛び回れ

 さて、このゲームは、歯車、蒸気、そして飛行船の町「スチーモポリス」において、次期市長候補たるプレイヤーたちが票(勝利点)を集めるために町を飛び回る、という内容になっています。アイコンたっぷりな大型ゲームボードや、飛行船を模した個人ボード(実はそれぞれアートが細かく異なる!)は見ているだけでワクワクしてくるド迫力です。

 プレイヤーが勝利点を獲得する方法は

・都市の特定の階層を訪れる
・乗客を輸送する
・装置を飛行船に組み込む
・飛行船からバナーを吊す
・特定の装置効果を発動させる

 の5種類があるのですが、基本的には個人ボードである飛行船を「装置」や「バナー」のタイルでデコレートすることがそのまま勝利点の獲得に繋がる仕組みになっています。

 「装置」や「バナー」のタイルを獲得するためには2種のリソース「歯車」「クリスタル」が必要です。従って、「歯車」「クリスタル」をまずは獲得し、それらを支払って「装置」や「バナー」のタイルを購入することが序盤の流れになるかと思います。

 しかしながらこのリソースもタイトな所持制限が課されており、所持制限を緩めるためには装置の購入が必要で、しかし装置を購入するにはリソースが必要で…… という鶏と卵のジレンマもあり、最初の一手から計画性を求められるシビアさです。

 「3つの階層でタイルが売り切れる」「乗客タイルの山札が尽きる」のいずれかが満たされるとゲームは終了に向かいます。最も多くの勝利点を獲得したプレイヤーが新しい市長となり、ゲームに勝利します。

◆独自スタイルのワーカープレイスメントに刮目せよ

 このゲームでは、手番で下記の3つのアクションのうちいずれか1つを選択します。

・蒸気圧の上昇
・蒸気の利用
・工場への飛行

 「蒸気圧の上昇」は、いわゆるワーカーである「蒸気トークン」を一時的にパワーアップさせるアクションです。蒸気トークンはそれぞれが蓄えられた「蒸気圧」(ワーカーのパワー)を示す蒸気トラックに配置されており、そのパワーの範囲内の「工場」(いわゆるアクションスペース)のみ利用することができます。

 このアクションを選択することで、プレイヤーはより多くの蒸気を蒸気トークンに蓄え、より高く飛行することができます。それはつまり利用できる工場の幅を広げてアクションの質を向上させたり、買い物の選択肢を広げることを意味しています。

 反面、このアクションはあくまで補助的なアクションではあって、勝利点やリソースを直接獲得できるアクションではないので、なるべく使用回数を抑えたいところです。とは言え、どうしても使用したい工場が高階層にある場合など、このアクションを使う必要のある場面は度々出てきます。

 「蒸気の利用」は、一般的なワーカープレイスメントのイメージに最も近いアクションで、蒸気トークンを工場に配置します。

 先程述べた通りに蒸気トークンは自分のパワーの範囲内の工場にしか配置できません。基本的に低階層の工場は利用しやすいものの効率が悪く、高階層の工場はその逆になります。

 この「蒸気の利用」では工場の予約だけを行い、工場アクションの実行は次の「工場への飛行」を待たなければなりません。「ケイラス」のようなワーカーの配置と実行が分離しているタイプのワーカープレイスメントです。

 ワーカープレイスメントの常として、すでに蒸気トークンが配置されている工場に重ねて蒸気トークンを配置することはできないので、必要な工場は相手に先んじて予約する必要があるのは言うまでもないでしょう。

 「工場への飛行」は、「蒸気の利用」で予約した工場を実際に稼働させる(もしくは同階層のタイルを購入する)アクションになります。配置済みの蒸気トークンを任意の順番で実行し、全ての蒸気トークンを回収します。

 「工場への飛行」1回で、配置した蒸気トークンの数に等しい工場を利用できるので、「蒸気の利用」ですべての蒸気トークンを配置してから「工場への飛行」を行うのが最も効率的です。

 しかしながら強力なタイルの奪い合いなど、要所では一手の差が明暗を分ける場合もあるので、時には蒸気トークンが手元に残っていても積極的に「工場への飛行」を選ぶ必要もあります。

 ということで、繰り返しになりますが、手番では「蒸気圧の上昇」「蒸気の利用」「工場への飛行」のアクションのうちいずれかを行います。

 基本的には「蒸気圧の上昇」でワーカーを強化し、「蒸気の利用」でワーカーを配置し、「工場への飛行」で効果を得る&ワーカーを回収する、という流れになります。

 最初の一手目から「工場への飛行」は選べませんし、すべての蒸気トークンを配置してしまえばあとは「工場への飛行」を選ぶしかなかったりと、選択が1択しかない場面も案外多いです。なので、本筋は結構シンプルな作りのゲームなんですね。

◆目指せ蒸気の有効活用! 装置の配置と運用に悶絶!

 大筋のアクション選択は結構シンプル…… そう、単純に「ワーカーのパワーの範囲内のアクションスペースにワーカーを配置して実行する」だけであれば、実のところ、それほど難しい話ではありません。

 このゲームをひときわ手強くさせているのは余剰のパワーを支払うことで効果を発揮する「装置」の存在です。

 実は先程、わざと説明を省略したのですが、2つ目のアクション「蒸気の利用」では、ワーカーをアクションスペースに配置する前に「パワーを支払って装置を利用するか否か」という選択を行います。

 なので、「蒸気の利用」は実質的には「ワーカーの持つパワーを装置起動用と工場配置用に振り分ける」というアクションなのです。制約のあるアクションポイントの振り分けのような感じとも言えるでしょうか。

 しかし、これが! このメカニクスが! プレイヤーに自由度を与える一方で爆発的に選択肢を増やし! 一手をめっちゃ悩ませてくれるのです!

 当然ながら装置を利用するとワーカーのパワーは減り、選択できるアクションスペースは少なくなります。持ってるパワーちょうどのナイスなアクションスペースがあれば悩む必要もないんですが、パワーが余る場面も多く、その時に適切に装置を通してパワーを利用できると結構なオトク感があるんですね。

 逆にせっかく頑張って購入した装置がまったく使われずに置物と化してしまう物悲しい場面に遭遇することもままあります。

 このゲームの手強さを強めている一因として、ゲーム中に購入した装置はそのタイミングで飛行船に配置しなければならない点が挙げられます。どこに乗せればええんやこれ!?

 大体このゲーム、後になってから「あーっ、装置の置き場所間違えた!」と叫ぶことになるゲームです。刻々と移り変わる状況で適切なスロットに装置を設置して、効率的に稼働させるのは極めて難しい……

 でも次はなんかうまくできそうな気がするんだよなー。そう思わせてくれる遊びごたえのあるゲームなのも確かなのです。

◆これがホンマのエンジンビルドや!

 装置は飛行船を強化する一要素ではありますが、他にもワーカーの出力に関連する諸要素をいじり回すことができるのもこのゲームの特徴です。

 ゲームシステムとしては「エンジンビルド」に分類されるこのゲーム、文字通りに飛行船のエンジンを弄ることができるゲームでもあり、乗り物改造が大好きな男の子諸君には堪らない内容です。しかもエンジンの強化方法もバラエティに富み、どんな方針でエンジンを強化するかでまた悩んでしまうんですね。

・ワーカーの数は正義! まずはわかりやすく「蒸気トークン」の数を増やして手番効率UP!
・最低パワーを上げて対応力をUP! 「基礎圧力トークン」の強化で初期蒸気圧を底上げ!
・ちまちま蒸気を溜めるのが嫌ならスキップすればいいじゃない! 「昇圧器トークン」の購入で面倒な中盤を省略だー!
・「蒸気トークン」を裏返せば手番ごとに勝手に蒸気が溜まっていくぞ! でも高階層だけは簡便な!

 てな感じでエンジンを強化する手段は多岐に渡ります。パワーアップ手段が豊富なゲームはいいゲーム。

 しかもそれが飛行船テーマとマッチして強化度合いがイメージしやすいのがなおステキ。他人の強化済みエンジンがズルく見えちゃうのもいいゲームの証拠です。

 装置と工場の利用でなんぼでも蒸気は必要なので、エンジンの強化は必須です。きちんとエンジンを強化してやれば、ゲーム終盤では蒸気を溜める「蒸気圧の上昇」を選ぶ必要はなくなるほど。

 「いかに一手の効率を高めるか?」は、このゲームの最大の課題と言えましょう。

◆ゲーム終了ボーナスなにそれ? シビアな得点レースに食らいつけ!

 このゲーム、普通のゲームならよくあるゲーム終了時のボーナス得点の類が一切ありません。ゲーム中に獲得する得点が全てなのです。潔い……

 なので、一度得点差がつけられるとなかなか挽回が叶いません。ゲームの性格上、どうしてもエンジンの強化に目が行きがちではありますが、直線の短い競馬場のようなもので、ゲーム中も意識的に得点を獲得して好位をキープしないと最後の直線には絡めません。

 しかも1点1点が重く大きく、ロースコアで決着しやすいタイプのゲームです。飛行船の強化はアクションの選択肢を広げるだけでなく、どうやって得点に結びつけるかを逆算して考える必要があるでしょう。

 ゲーム中の得点源の1つが飛行船を飾り立てる「バナー」タイルです。バナーには「運んだ乗客に等しい数の得点を得る」など3種類があり、基本的に1点1点をちまちま稼ぐこのゲームにおいて、割と簡単に3-5点、条件によってはそれ以上の得点も見込める高効率の得点源です。

 しかしながらバナーの購入にはワーカーである蒸気トークンをコストの一部として支払う必要があり、購入の際には手番効率と得点を天秤にかけて悩むことになります。また、プレイヤー間での奪い合いも激しく、高得点のバナーの獲得を巡り、プレイヤー同士の激しい手番の駆け引きが繰り広げられます。

 「相手に先に手前のタイルを取らせて、自分はその奥からポロリしてきたおいしいバナーを獲得する」みたいな遅延の攻防は、少し懐かしい洗面器ゲームめいたユーロ味があり、作者の懐の深さを感じさせるデザインです。こうした洗面器ゲームは、4人でのプレイともなるとインタラクションが強すぎて成立が難しい(横槍が入るところまで計算できない)場合も多いのですが、このゲームでは1つの階層に関与できるプレイヤーの数を絞ることで局所的な1 on 1の対立構図を作り出しているところに巧さを感じます。

 「乗客の輸送」も見逃せない得点源の1つです。高階層にいる青い乗客は希望する階層に送り届けることで1点を与えてくれる存在です。

 このゲームにおいてコストの支払いなしに得点を獲得できるのは大きなアドバンテージなのですが、他プレイヤーが「乗客の輸送」を行った結果、乗客の位置と行き先がガラリ一変してしまうこともあります。運要素の控えめなこのゲームにおいては比較的アドリブ性が強くやや粗さも感じるのですが、同じアクションを繰り返すパターン防止の意味合いも含まれているのでしょう。

 また、「乗客の輸送」は1回の「工場への飛行」内で完結する必要があるので工場を利用する順番もよく考えないといけません。また考える要素が増えたぞオイ!

 装置の中には「乗客の輸送」に追加の得点をもたらすパッシブ効果を発揮するものもあり、そうした装置を組み込んだ場合は積極的に「乗客の輸送」に挑むべきでしょう。

◆運要素は控えめ、シンドいけどまた遊びたくなるゲーム

 個人的にこのゲームはかなり肌に合うタイプのゲームではあって、その理由の1つとして運要素が少ないことが挙げられます。これは人によっては窮屈さが先立つ点かもしれないのですが、パズルチックなエンジンビルド要素が盤面のドライな変化にマッチしていて、「長期的展望の元で入念な計画を練って実行に移す」重量級ゲームならではの醍醐味が存分に味わえる点をぼくは高く評価しています。

 タイルにはめくりによる伸るか反るかもあるのですが、一部のアクションにはおまけのようにタイルの裏をチラ見する効果も用意されていて、なるほど、これはそういうエクスキューズなんだなと感心させられたりもします。

 ただ、これまでのゲーム経験から、ぼくが「手応えあるなー」と感じるゲームは、多くの人にはトゥーマッチな場合も多く、このゲームもその例に漏れないとは思っています。テストプレイが終わった後は全員ぐったりしていました。

 しかしながら、後日このゲームの話をしていて「またやりたいんですよねー」と呟いたら、タナカマさんも「私もやりたいんですよ!」と食い気味に来たのにはビックリしました。なんかゲーム中は凄い辛そうだったのに……

 脳をずっとフル回転させる、疲れるゲームなのは確かなんですが、このゲームにはもう一度遊びたくなる麻薬的な何かがあるのかもしれません。

 さて、「スチーモポリス」はプレイヤーを試すかのような仕掛けが随所に施され、初見のプレイヤーを大いに惑わせる手強いゲームです。その最たる原因は独特のゲームエンジンの奇抜さ、斬新さによるところが大きいのでしょう。

 しかしながら直感性は損なわれておらず、舞台上の物理法則とシステム上の物理法則が違和感ない形で結合されています。そこに非合理感はないため、遊びにくさを感じる部分は少ないです(説明を省いたスパイボットの挙動はちょっと慣れがいるかも)。

 テストプレイでは本気でのめり込みすぎてタナカマさんに窘められたくらいに手応えのあるゲームです。システム好きのプレイヤーの皆様にはぜひチャレンジしていただきたい1作です。

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