【ゲーム紹介】ゴーレム(Golem / Flaminia Brasini, Virginio Gigli, Simone Luciani / Cranio Creations / 2021)

インパクト大のパッケージ

パラメーター上げモンスター爆誕!

 いまやイタリアを代表するデザイナーの一人として、常に注目を集める存在となったシモーネ・ルチアーニと、イタリアのゲームシーンを世界に知らしめた第一人者ともいえるデザイナーチームのアッキトッカが手を組んで発表した最新作が、今回紹介する「ゴーレム」です。

 ゲームの概要としては、プレイヤーは、ゴーレム伝説発祥の街「プラハ」を舞台に、プレイヤーは「ゴーレム」に命を吹き込み、街の中でさまざまなアクションを実行させ、より高い得点を獲得することを目指すというもの。しかし、勝手に街を闊歩するゴーレムを常に支配下に置いておかねばならず、これは決して簡単ではないのです。

 さて、この「ゴーレム」、メインとなるシステムは「パラメーター上げ/パラメーターコントロール」。「パラメーター上げ/パラメーターコントロール」を簡単に説明すると、ルチアーニを人気デザイナーに押し上げたタッシーニとの共作「ツォルキン」でも見られたシステムで、ゲームを通じ、さまざまなトラックを進めていくことで、得点効率を上げたり、ボーナスを獲得したり、収入レベルを押し上げたりを行っていくことになるというもの。
 この「パラメーター上げ/パラメーターコントロール」は、他のシステムと組み合わされ……例えば、ワーカープレイスメントをメインに据えつつ、アクションの結果としてパラメーター上げがあるというようなことが多いのですが、今回の「ゴーレム」は、「パラーメーター上げ/パラメーターコントロール」が、ガツンと主役に据えられたゲームになっているのです。
 いや、「主役」という表現でも生ぬるいかもしれません。「パラメーター上げ/パラメーターコントロール」に偏執的なまでのこだわりが感じられる「パラメーター上げモンスター」と言ってもいいくらいの内容なのです。

どこを見てもパラメーターと開放要素があるのみ!

 普通のゲーム紹介であれば、アクションがどうだとか手番がどうだという話をするところなのですが、「ゴーレム」においては、それは相応しくないでしょう。
 というわけで、このゲームの主役となる「パラメーター」、また、改良することで開放される要素を見ていきたいと思います。

 「ゴーレム」に用意されたパラメーターと改良、その効果は以下の通りとなります。

個人ボード
・研究トラック(「知識」収入アップ、場に出せる書物の数アップ)
・研究進展タイル(書物を出せる場の開放)
・ゴーレム向上タイル(ゴーレムの特殊効果開放)
・ゴーレムトラック(「得点」収入アップ)
・アーティファクト(さまざまな収入の開放)

メインボード
・三列ある街の「通り」(通りに対応する種類の収入アップ)

 と端から端までがパラメーターなり開放要素となっています。さらに、これらはほぼすべてが最終得点にも関連してくるため、ゲーム終了時を見据えて上げたり開放していく必要があります。
 プレイヤーは、ゲームを通じ、これらをひたすら上げ、開放するためにアクションを繰り返していくことになるのですが……このあたりの詳細はのちほど詳しく紹介するとして、それぞれのパラメータと改良について、さらに掘り下げてみたいと思います。

要素が詰まった個人ボード

 まず、「知識」に関連した研究トラックと研究進展タイルです。
 この研究トラックを上げることで、「知識」の収入がアップすると同時に、場に出せる書物の数そ増やすことができます。
 書物は、獲得し場に出すことで、特別なボーナスを得ることができる特殊カードなのですが、同じ色の書物は同じ場に出すことになり、場に出す度にそれまでに出していた書物のボーナスも再び得ることができるのです。研究トラックを進めることで、場に出せる数も増えることになります。「コンボ数を増やす」と考えるとわかりやすいでしょうか。
 しかし、もちろん、そう易々とは許してくれません。
 まず、そもそも書物を出す場を開放しなければ、そもそも同じ色の書物しか出すことができず、著しくプレイの幅は狭くなってしまうのです。
 研究進展タイルによる改良は、その場を増やしてくれるのです。さらに、タイルごとに固有のボーナスもあり、単に場を増やすにとどまりません。どのようにゲームを進めていくかを見据えて改良することが重要です。
 場を開放し、数を増やし、収入を増やし、さらなるアプローチをする―研究トラックと進展タイルひとつとっても、この一連の流れを作らなければならないところに、「ゴーレム」の難しさと面白さがあるのです。

 次は、ゴーレム向上タイルとゴーレムトラックです。
 このゲームのタイトルにもなっている「ゴーレム」は、町中でさまざまなアクションを実行できるものの、そのほかに特別な能力や、もたらしてくれる恩恵はありません。しかし、ゴーレム向上タイルの改良することで、ゴーレムに新たな力を付与し、より強力な存在へと押し上げてくれるのです。
 また、ゴーレムトラックを進めることで、収入として得点を得ることができるようになります。タイトルになっているだけあって、ゴーレムの強さは即ち勝利への近道というところでしょうか。
 しかし、概要でも触れたように、ゴーレムを支配下に置いておかなければなりません。ゴーレムトラックを進めることにより、街にいるゴーレムは通りをより早く進むようになってしまい、結果、プレイヤーの支配力を容易く超えるようになってしまうのです。

 プラハは、錬金術でも有名な街です。錬金釜を用いてアーティファクトを作ることで、プレイヤーは収入の内容を自分なりに決めることが出来ます。
 まず、決められた黄金駒を大釜に配置することで、まず、ボードに用意された収入を開放することになります。
 次に、そのアーティファクトを改良することで、異なる内容でいくつか用意された改良タイルを配置することになり、ボードに用意された収入に改良タイルの効果を組み合わせることで、収入の内容を自分なりに決めることが出来るのです。
 自分の戦略にあったものを伸ばすのか、自分の弱いところを補うのか―ここまで説明してきた研究トラック、ゴーレムトラックにも当てはまるのですが、改良と開放において提示される選択肢は、常にプレイヤーを悩ませてくれるでしょう。

独特な色使いのメインボード

 さらにメインボードにもプラハの「通り」として表現されたトラックが用意されています。
 それぞれの通りに置かれた助手を薦めることで、基本的なリソースの収入を増やすことができます。
 また、各通りにはゴーレムも置かれることになります。ここまでゴーレムを支配下に置くことが重要であることは触れましたが、この通りにおいて、助手がいるマスまでに置かれたゴーレムであれば、支配下に置くことができます。コストを支払えば、助手よりも先に置かれたゴーレムも支配下に置くことはできますが、もちろん、そのコストを安易に支払っているようであれば勝利は遠いものとなるでしょう。
 この通りに置かれたゴーレムもトラックと言っていいかもしれません。ですが、趣は大分異なります。というのも、ゴーレムは命を与えられた存在だけあり、プレイヤーの意思とは別に自らの足で進んでいくのです。
 通りの各マスにはアクションの描かれたタイルが置かれており、ゴーレムを働かせることでゴーレムがいるマスのアクションを実行することができます。
 しかし、ゴーレムが自らの足で進んでいく以上、魅力的なアクションが目の前にあるにも関わらず、狙って実行できると限りません。これは、プレイヤーにとってアンコントローラブルな要素ではあるのですが、決してストレスを受けるようなランダム要素ではありません。むしろ、アンコントローラブルであるが故、今、提示されているアクションを実行することでどれだけ自分に利があるのかを考えるのは、このゲームならではの妙味と言え、この揺らぎを大胆にゲームに取り入れているところにルチアーニとアッキトッカの凄みさえ感じると言っても言い過ぎではないでしょう。

すべては3アクションに凝縮されている

 ここまで各種のパラメータ、開放要素を紹介してきましたが、では、それらの要素にどのようにアプローチしていくのかを次に紹介していきます。
 プレイヤーは、各ラウンドで通常のアクション選択といえる「マーブルアクション」を2回、プレイヤーの分身でもある「ラビ(神父)」と呼ばれるワーカー駒を用いた「ラビアクション」を1回の計3アクションを実行することになります。そして、これを4ラウンドに渡って行うことになります。
 そうです。たったの12アクションで、前述のパラメーターを上げ、開放要素を開放していかなければならないのです。この辺りにも、私が「ゴーレム」を「パラメーターコントロールモンスター」と評する理由があります。
 
 これだけのボリュームと真っ向勝負でアクションを選択していく悩ましさだけでも面白さは十二分ですが、「ゴーレム」は、このアクション選択自体にもしっかりと面白さを盛り込んでいます。

 まず、通常のアクションに該当するマーブルアクション。
 各ラウンドで、ユダヤ教の会堂の名が付けられた「シナゴーグ」と呼ばれるコンポーネントに色つきの球「マーブル」を入れることになります。入れられたマーブルは、アクションが割り当てられたレーンにランダムで振り分けられることになります。
 それぞれのレーンからマーブルを選び取り、対応したアクションを実行するのがマーブルアクションです。
 このとき、重要なのが、振り分けられたマーブルが多いアクションほど、アクション効果が高くなるということです。すなわち、4個のマーブルのあるアクションのほうが、2個のマーブルがあるアクションよりも効果的となるわけです。
 自分の実行したいアクションにマーブルがより多く振り分けられていればいいのですが、そうでないことも多いでしょう。
 また、アクションを実行する際には、マーブルを選び取ることになるため、アクションが実行されるごとにマーブルが減ることになり、対応したアクションの効果は弱められることになります。
 マーブルの個数と、アクションの実行順に気を配り、より効果的にアクションを実行しなければなりません。なにせ、4ラウンドで8回しかマーブルアクションを実行することができないのです。
 さらには、マーブルの色にも注意しなければなりません。各ラウンドごとに用意された人物カードのボーナスを得るためには、カードに描かれた組み合わせでマーブルを取らなければならないのです。
 手番数が少ないことから、ボーナスを取れたかどうかの差が相対的に大きくなることはおわかりかと思います。どのアクションを実行するかはもちろんのこと、マーブルの色もまた軽視できないのです。
 しかし、ただ、考えるポイントを増やし、窮屈なだけではありません。他のレーンのアクションを実行できる「模倣」アクションや、マーブルが減ってしまうもののラウンドの最後にマーブルを入れ直した上でアクションを選択する権利を得る「パス」が用意され、プレイヤーはじっくりと自分の戦略と向き合えるように作られているのです。

人物カードにも注目すべし

 各ラウンド、1回ずつ実行することにある「ラビアクション」ももちろん重要です。
 いずれも特殊な効果が用意された、この「ラビアクション」、どのようなアクションが出てくるのか、なんと、引かれたタイル次第という、ランダム要素になっているのです。それも、ラウンドごとに異なるアクションが出てくることになるのです。
 オーソドックスなマーブルアクションに対し、特殊な効果ばかりのラビアクションは、活かすことができれば強力なアクションですが、それだけに選択の難しさもあるのです。

いずれも独特な効果を持つラビアクション

もちろん、ゴーレムの存在感は大!

 ここまで軽く触れてきましたが、タイトルにもなっている「ゴーレム」についても今一度、しっかりと紹介しておきましょう。
 ゲームのセットアップ時、そして、ゲーム中に作られたゴーレムは、ボード上の通りにあるマスに置かれます。
 このゴーレムは、マーブルアクションの「労働」によって働かせることで、各マスに対応したアクションを実行させることができます。
 労働アクションにおけるマーブル数は、そのまま「働かせることが出来る(=アクションを実行することができる)ゴーレムの数」になるため、各プレイヤーに用意されたゴーレム4体すべてをボード上に置いていれば、アクション数にものを言わせることができるようになるのですが、さきに説明した通り、ゴーレムを支配下においておくことは「ゴーレム」において難しいポイントであるため、「ゴーレム」をいたずらに増やすことは危険かもしれません。
 支配下におけるかどうかは、各通りに置かれた助手次第。助手が置かれたマスと同じか、手前までのゴーレムは支配下に置いていると見なされます。助手をより進めているかがすなわちゴーレムへの支配力になるわけです。
 しかし、助手をどれだけ進められるかもアクションの効果に依るところである上に、通常のマーブルアクションでは進めることはできません。限られた機会の中で助手を進め、その上でゴーレムを確実に活用するのは、決して簡単なことではないでしょう。
 さらに、ゴーレムは、プレイヤーに恩恵をもたらすほどに、支配下に置くことも難しいものになっていきます。
 ゴーレムに対応するゴーレムトラックを進めることで、収入として得点を得ることができるようになるのですが、と同時に、ゴーレムはよりボード上を早く進むようになっていきます。そして、それは、支配下に置くのをより難しくすることを意味するのです。

 扱いが難しくとも、大きな力を秘めたゴーレムですが、ゴーレム自信の力を開放することで、さらに強大な存在になっていきます。
 支配に置きやすくなったり、労働をより多く実行する機会を得たりと、開放することで得られる効果はいずれも強力です。どの効果をどのような順番で開放していくかもまた悩ましいものとなるでしょう。

 手に余るようになってしまったゴーレムは、解体することで取り除くことが可能です。
 解体することで得られるボーナスも用意されているため、積極的に解体したほうがいい状況も少なくないでしょう。
 しかし、支配に頭を悩ませつつもゴーレムを置いておいたほうがいいのか、それとも解体し、支配にかかる労力を他に割いたほうがいいのか。
 ここにも悩ましい選択が待っています。

そして最終得点計算へ……パラメーター上げの醍醐味、ここにあり

 こうして4ラウンドを行った後、ゲームは終了となり、最終得点計算へと進みます。
 ゲーム中、さまざまな要素を開放すると同時に、各カテゴリーに対応した「燭台」を獲得することになります。
 カテゴリーごとに、「対応した燭台の数」と「各カテゴリーでの得点に関係する要素(例えば完成させたアーティファクトの数など)」を掛け合わせたものを最終得点計算中に獲得します。
 ゲーム中に進めたり開放した要素が最終得点に直結する仕組みになっていることで、いわゆる「得点行動」を積極的に取らずとも最終結果に繋がるように作られているのは、非常に気持ちのいいポイントです。もちろん、進めること、開放すること自体がとても難しくはあるのわけですが……。
 
 最終得点計算において、「目標カード」も無視できません。
 描かれた条件を達成することができていたかどうかでボーナス点を得ることができるのですが、異なる種類、系統の目標カードを達成していたならば、その種類数に応じて追加ボーナスを獲得できるのも大きなポイントです。
 もし、目標カードを戦略の柱のひとつにするならば、なにかの要素に特化するだけでなく、満遍なくさまざまな要素に注力する必要が出てくるのです。
 ここまで読んできた方なら、それは決して容易いことではないのはおわかりでしょう。

 パラーメーターのひとつひとつ、開放要素のひとつひとつ、そのすべてがゲームの結果に直結しているというのは当たり前のことかもしれません。しかし、この手応えこそがゲームの醍醐味であり、それを存分に味合わせてくれるのは、「ゴーレム」の、いや、パラメーター上げゲームの強みと言えるでしょう。

ルチアーニ&アッキトッカが放つモンスターに真正面からぶつかれ

さまざまな形で用意されたパラメーターと開放要素に、限られた手番数の中、どうアプローチしていくか。
 ただ着実に積み重ねていくだけでも簡単ではないでしょう。
 しかし、「ゴーレム」に用意された各要素は、必要なコストと進めること、開放することで得られるリターンとのバランスや、ゴーレムに見られるような扱いの難しさなど、隅々まで考えられたものになっており、ただアクションを積み重ねるだけの要素には留まりません。
 
 さらには、マーブルの振り分けやラビアクション、書物カードに見られるランダム性にどう対処していくかという点で、臨機応変さも求められることになります。
 もちろん、このランダム性は、リプレイビリティーにも繋がっていることは言うまでもありません。

 そのボリュームと随所に見られるこだわりから「モンスター」と評しましたが、決してややこしいだけのゲームではありません。
 むしろ、ルチアーニとアッキトッカが「世のコアゲーマーをなんとしてでも満足させるぞ」という意気込みのもと、過剰なサービス精神で作られたゲームのように思えるのです。
 ぜひ、彼らの渾身の一作であるだろう「ゴーレム」を真正面から受け止めてみてください。

「ゴーレム」は、一月下旬発売予定です。

【ゲーム紹介】タバヌシ:ウルの建築士たち(Tabannusi: Builders of Ur / David Tascini, David Spada / Board&Dice / 2021)

 シモーネ・ルチアーニと組んで発表した「ツォルキン」、「マルコポーロの旅路」といったタイトルでゲーマーから熱い支持を集め、その後も精力的に作品を発表し続けるデビッド・タッシーニによる2021年新作です。(デビッド・スパダとの共作)

 これまで、タッシーニの作品で見られた「パラメーター上げ」を今作でも中心に据え、ダイスの出目に翻弄されつつのアクション選択と資源獲得、建築競争による陣取りなどを取り入れ、今作もまたゲーム好きを唸らせる一作となっています。

資源と移動……悩ましすぎるダイス選択

 ゲームの中心に据えられたメカニクスは、「ダイス選択」です。
 まず、プレイヤーは各手番において、自分の駒が置かれた区画に用意されたダイスを選び取ることになります。
 このゲームでは、このダイスに大きな二つの役目が割り当てられており、どちらを重視したダイスを選択するか……いや、いずれもおろそかにできないため、そのダイス選択はとても悩ましいものになっているのです。
 
 まず、一つ目の役目は「資源」です。
 「タバヌシ」においても、他のゲームと同様、さまざまなアクションを実行するために資源が要求されることになります。
 しかし、それぞれの区画には、対応した色のダイスしか置かれていません。
 欲しい色の資源があるならば、それを踏まえ、区画を移動する必要があります。

 では、どのように区画を移動するのでしょうか。
 それが、二つ目の役目、「区画の移動」です。
 区画には1~5が割り当てられており、この区画の番号はダイス目に対応しています。ゲーム中、選び取ったダイス目に対応した区画へ移動することになるのです。
 もちろん、この区画は、単に対応したダイスが置かれているだけの場所ではありません。
 区画ごとにアクション(3つか4つ用意されています)と、さまざまなゲームの要素が割り当てられており、どの区画に行って、どのようにアクションを実行し、どう得点へアプローチしていくかをしっかりと見極めなければなりません。

 しかし、当然、ダイスである以上、その目による揺らぎが存在します。
 決算のたびに資源としてダイスを区画へと戻すことになるのですが、その際にダイスは振られ、その目が決定されます。
 狙った通りに資源を獲得し、区画を訪れ、アクションの効果を積み上げていけるか。ダイス目に翻弄されつつも、的確に手を進めなればならないでしょう。

区画内での建築による陣取り……と同時に、これはパラメーター上げへの挑戦的なアプローチだ

 「タバヌシ」における得点へのアプローチでもっとも重要なものは、区画1、2、3での建築競争です。
 それぞれのエリアで建築を行うためには、まず、計画タイルを配置し、区画内に用意されたマス目のどの場所にどの色の建物を建築するかをあらかじめ決める必要があります。
 その後、その計画タイルに基づいて建物を建築、配置することになります。

 建物を建築するために使う計画タイルは、必ずしも自分のものではなくていいというのが、「タバヌシ」の面白く難しいところです。
 建物の建築は、得点へのアプローチで重要であることは先に触れた通りですが、自分の計画タイルを使って他のプレイヤーが建築を行ったとしても、悪いことばかりではありません。
 他のプレイヤーの建築に自分の計画タイルを使われたプレイヤーは、熟練トラックと呼ばれるパラメーターを上げることができるのです。
 この計画タイルと建築の関係により、自分の狙い通りの建築を進めつつ、他のプレイヤーが建築を狙っているところへうまく介入するというプレイが求められることになります。

 各区画の建築可能な場所(マス)は決して多くありません。また、「水域」、「庭園」といった得点へのさらなるアプローチへの足がかりとなるタイルも用意されており、それらを配置することも重要な要素となっています。
 そのため、必然的に陣取り的な駆け引きが繰り広げられることになり、それもまた大いに悩ましいところです。

 計画タイルの配置によってマス目を確保していく際にボーナスが描かれたタイルに配置をしたならば、そのボーナスを得ることができます。
 どのマスに計画タイルを配置するか、得点へのアプローチや陣取りの駆け引きだけでなく、ボーナスも踏まえた配置が求められることになるわけです。

 この計画タイルの配置とその後の建築は、「パラメーター上げ」メカニクスにおける新たなアプローチと言えるかもしれません。
 単にトラックを上げるだけでなく、縦と横、どのように配置を行うか、どのように広げて行くか、極めて自由度の高いパラメーター上げのように思えるのです。
 これまで、数多くのパラメーター上げタイトルを手掛けてきたタッシーニによる挑戦と言ったら大げさでしょうか。

能力アップとジッグラト建築も軽視するべからず

 「タバヌシ」にはもちろん、その他の要素もしっかりと用意されています。
 
 「港」での家の建築や船の獲得は、さらなる勝利点や、アクションのパワーアップをプレイヤーにもたらしてくれます。例えば、ある船を獲得した際には「庭園タイルを置くたびに2勝利点を得る」という能力を得ることができるのです。

 「ジッグラト」の建築を進めるならば、得点計算時にボーナス点をもたらす条件を開放することができます。また、開放した後も同様に建築を進めるならば、
ボーナス点の得点効率を上げることができるため、なんとなく実行するのではなく、自分の戦略に合致した条件であったならば、積極的にジッグラト建築に関わるべきかもしれません。

 こうして、ダイス選択とアクション実行を繰り返し、ある区画からダイスがなくなったならば、その区画での決算を行います。アクションが積極的に行われた区画ほど決算へと近づくわけです。
 決算時に重要な処理が一点あります。決算が行われた区画に対応した資源を手元に持っていたならば、その資源を失うことになります。失うことで、トラック上での前進や、タイルの獲得といった利益を得ることができるのですが、場合によっては戦略に大きく影響が出ることもあるでしょう。
 決算のタイミングを見極めることもまた重要なのです。

「テオティワカン」、「テケン」と異なるタッシーニ流ヘビーユーロ!

 ダイス目に応じたアクション効果の幅とロンデル的なアクション選択、そしてブロック積み上げ要素が特徴的だった「テオティワカン、さまざまなアクションが複雑に絡み合い、解きほぐすかのようなプレイングが新鮮だった「テケン」に続き、タッシーニがBoard&Dice社から発表した「タバヌシ」は、ダイスとパラメーター上げが重要なウエイトを占めつつも、まったく新しいアプローチが見られるタイトルに仕上げられています。
 
 中でも区画内で繰り広げられる建築競争は、陣取り的な駆け引きとあいまって、展開のダイナミックさを感じることもできます。

 2021年の年末年始を代表する一作と言って間違いないでしょう。

【ゲーム紹介】オリジンズ:ファーストビルダーズ(Origins: First Builders / Adam Kwapiński / Board&Dice / 2021)

概要をまとめるとよくある……が、しかし

 「オリジンズ:ファーストビルダーズ」は、2018年に発表した「ネメシス」で一躍脚光を浴びることとなったポーランドの新進気鋭ゲームデザイナー、Adam Kwapińskiによる2021年の新作ストラテジーゲームです。
 
 さて、このあと、システムを簡単にまとめつつ、ゲームの概略を説明していくわけですが、その前にあらかじめはっきりと伝えておきます。
 この概略を読んだだけでは多くの方が既視感を覚え、結果、「オリジンズ:ファーストビルダーズ」の面白さはまったく伝わらないかと思います。
 しかし、この「オリジンズ:ファーストビルダーズ」には、システムの話を中心とした概略だけでは伝わらない「その先の面白さ」が詰まっているのです。
 ぜひ、最後まで読んでみてください!これは強く言っておきます。

 というわけで、まずはシステムをゲームの設定と共に簡単に紹介していきたいと思います。
 舞台となるのは古の時代の、おそらく地球。
 プレイヤーは、まだ近代的な文明が興るよりも遙か昔の時代の指導者となり、自らの文明を発展させていくことを目指します。
 発展させていくために、さまざまなアクションを実行していくことになるのですが、ややSF仕立ての設定となっており、このアクションをもたらすのが宇宙より飛来した超自然的な存在なのです。その存在がもたらしてくれる力というのが、すなわちアクションを実行して得られるさまざまな効果ということになります。
 メインとなるシステムは「ダイスプレイスメント」です。
 プレイヤーは、ワーカーに見立てたダイスをボード上へ置くことで、そこに用意されたさまざまなアクションを実行していきます。
 ダイスの目と色の要素がアクション選択における制限やボーナスに関係があるものの、それ以外の部分はごくごくオーソドックスで、各アクションを実行できる数に制限はなく(いわゆる早取りの要素がない)、むしろ他のゲームと比べると緩すぎるほどかもしれません。

 アクションがもたらす効果も極めてオーソドックスです。
 「特定の資源を3個得る」、「神殿トラックを進める」、「軍事力トラックを進める」、「ワーカー駒を獲得する」、「建物を建てる」……いずれの処理においても例外的な処理もほとんどなく、「アイコンに描いてある通り」というわかりやすさです。

 全員がパスを行うまでが一ラウンドとなり、終了フラグが切られるまで繰り返されることになります。
 
 ラウンドが進む際に、ワーカー駒として使われたダイスの目が「1」増えることになります。これにより次のラウンドでは、そのダイスを用いたアクション選択の自由度はやや増すのですが、「6」の目だった駒はワーカーとしての役目を終え、「助言者」としてプレイヤーボードに置かれることになります。
 この助言者は得点と、ワーカー駒でもある支配者「アルコン」に若干の優位性をもたらしてくれることになるのですが、ダイス自体はワーカーとしての役目を終えているため、ラウンド中に実行できるアクション数が減ってしまうことになるのは注意が必要です。
 「助言者」として役目が変わるタイミングを踏まえた戦略の組み立ては、ごくごくオーソドックスな「オリジンズ:ファーストビルダーズ」にあって、少し特徴的なところかもしれません。とはいえ、そこまで独自性が強いわけではないのですが……。
 
 ここまでが「オリジンズ:ファーストビルダーズ」の基本的な進行をまとめた概略です。
 
 しかし、「オリジンズ:ファーストビルダーズ」の面白さのキモとなる部分は、この概略からは推し量れないところに用意されているのです!

得点へのアプローチが「オリジンズ:ファーストビルダーズ」の真骨頂!あなたは得点を「爆発」させることができるか!?

 概略でも触れたように「オリジンズ:ファーストビルダーズ」のゲーム進行は、非常にオーソドックスです。
 ある程度ゲームに慣れた人であれば、「手なり」で進めること、まあまあ自分のやりたいように進めることも難しくないでしょう。
 しかし、それらの選択を「高得点」に繋げようとした途端、この「オリジンズ:ファーストビルダーズ」のゲームデザインの巧みさ、難しさに気付かされるはずです。

 この「オリジンズ:ファーストビルダーズ」に用意された得点方法、そのシステム自体は、とてもオーソドックスです。
 しかし、その得点スケールは、ある種変態的とも言えるものに設定されています。

 例えば、「神殿トラック」。
 神殿トラックは三本用意され、それぞれで駒をどれだけ進めることが出来たかによって得点を獲得することができます。
 1マス進めると「0点」です。
 2マス進めると「1点」になります。
 3マス進めると「3点」に増えます。
 これが、最終到達点である12マス目まで進めると「70点」になります。
 一つの得点要素でこれだけの差が設定されたゲームは、他に類を見ないと言っていいでしょう。
 「あれ、意外と簡単じゃない?」と思った方もいるかもしれません。
 しかし、三本のうち一本のトラックを闇雲に進めればいいというわけではないのです。
 最終的な得点は「三本のうち、もっとも進んでいるトラックを除いた二本から得点獲得」なのです。
 これは、もし、ある一本の神殿トラックから「70点」を得ようと思ったならば、少なくとも二本の神殿トラックを最終到達点まで進めないといけないということを意味しています。
 さらに、残ったもう一本から「それなり」の得点を得ようと思ったならば、さらに神殿トラックを進めると言うことが重要となるでしょう。

 他の得点要素も見てみましょう。
 「ダイスの色ごとに用意された塔」という最終得点要素があります。
 それぞれの塔には高さの概念があり、建設を繰り返すことで得点を増やすことが出来ます。
 一階建てなら1点、二階建てなら2点、三階建てなら3点、四階建てなら4点……そう、この塔はあくまで「素点」なので、塔の高さが直接もたらす得点はそれほどでもないのです。
 ですが、そこに、それぞれの色に対応した「権力者」が関係してくることで、様相は大きく変わります。
 ゲーム中、配置した都市タイルによって、2×2の地区を形成させることができます。
 その際、ワーカー駒だったダイスを「権力者」として地区に配置することになります。
 この権力者として置かれたダイスの目を、そのダイスと同じ色の塔の素点に掛けたものが塔から得られる得点になるのです。
 漠然と塔を高くしても決して高得点は得られません。
 塔を高くしつつ、都市タイルをうまく配置し地区を形成し、「目が大きくなった」適切なタイミングでダイスを権力者として送り込むことで、はじめてしっかりとした得点に繋げることができるのです。

 そのほか、「コンスタントに得点獲得が狙えるものの、他のプレイヤーと比べ抜きん出る必要がある」軍事トラック、「地区の形成時に決められた建物の種類で構成されているならば大きなボーナスが得られる」地区カードなど、どの得点要素も扱いの難しさはあるものの、その分のリターンは魅力的なものばかりです。
 
 そして、それらは手なりのプレイでは決して得ることはできません。
 他のプレイヤーよりも優位にアクションを実行するためには、ダイスの色とアクションマスに割り当てられた色の関係にも気を配る必要が出てきます。
 建物の特殊効果を発動させる機会を増やす、活かすには、より練られたマネージメントが必要となります。

 オーソドックスなシステムだけに、アクション一回当たりの差はわかりにくいかもしれません。
 しかし、それらのアクションをどう得点に結びつけられたか―その結果は、アクションをどう積み重ねたによるものにほかなりません。
 それを「オリジンズ:ファーストビルダーズ」は、否応なしに突きつけてくれるのです。
 あなたは「爆発的な得点力」を味わうことが出来るでしょうか?

相対的な結果である勝敗に満足せず、より高みを目指せ!

 「オリジンズ:ファーストビルダーズ」は、ゲームである以上、得点が何点だたっとしても「順位」がつき、その結果に一喜一憂することはできるでしょう。
 しかし、この歪にも思えるほどに特徴的な得点スケールの中で、どれだけ高みを目指せるか―その点を競うことが出来るようになったならば、「オリジンズ:ファーストビルダーズ」の面白さは何倍にもなるはずです。

 最後に。
 「オリジンズ:ファーストビルダーズ」では、得点トラックを周回するたびに「100点」、「200点」といった得点を記録するためのトークンを受取ります。
 さて、この「200点」のトークン、ファーストプレイの後、あなたの目にはどのように映っているでしょうか?

【ゲームプレビュー】レス・アルカナ:拡張2 力の真珠

 トム・レーマンの人気シリーズ「レス・アルカナ」、二つ目の拡張セットです。

 大きな拡張要素としては2点あります。
 ひとつは、タイトルにもある新しいエッセンス「真珠」、もうひとつは勝利条件が「13点」に引き上げられるということです。

 「真珠」は、「真珠」として扱われるほかに、自分がアクションを行うタイミングで「黄金1個」か「(黄金と真珠以外の)エッセンス2個」へと変換することが可能という、とても強力なエッセンスなのです。
 このことにより、ゲーム中に得た「真珠」をその後の展開に応じてどうように使用するのか、という選択がプレイヤーに求められることになります。
 着実に手を進めるために1個ずつ使うのか、タイミングを見極めここぞという爆発力に繋げるのか―「真珠」をどう活かすかがプレイングのカギとなるのは間違いないでしょう。

 勝利条件が「10点」から「13点」に引き上げられたことも大きな変化です。
 これまでの「レス・アルカナ」が、初めてプレイする前のイメージをはるかに越える「鋭さ」を持ったゲームであることは、この記事を読んでいる人なら、よくおわかりかと思います。
 超高効率なシナジーを持ったエンジン/タブローを作ることが出来たならば、次のラウンドでは勝敗が決してしまう―この鋭さは「レス・アルカナ」の大きな魅力である一方で、自分で戦略を組み立て、じっくりと手を進めていくという点においてはやや物足りなさがあったことは否めないところです。
 今回、勝利条件が「13点」に引き上げられたことで、カード選び(ドラフト採用時)とエンジン構築の面白さに、さらには手を進めていく面白さも加えられたと言っていいでしょう。
 新たに加わった「真珠」のポテンシャルと、それをどう活かすかの応用力が求めらることと、この「13点」へ引き上げられたことはとても相性がよく、「面白さのシナジー効果」を生み出しており、ファンであるほどにその違いを感じられるのではないでしょうか。

 もちろん、力ある場所、アーティファクト、マジックアイテム、メイジカード、モニュメントカードも追加されます。

 ファン必携の拡張セット「力の真珠」は、10月9日発売予定です。

【ゲームプレビュー】パックス・パミール:第2版

 まもなくの発売を予定しているタイトルを、詳細な紹介に先駆けて簡単にお伝えする「ゲームプレビュー」。今回は、「パックス・パミール:第2版」です。

 「パックス・パミール:第2版」は、日本でも大きな話題となった「ルート」の作者、Cole Wehrleによるアフガニスタンの歴史的背景をテーマに据えた本格的な戦略ゲームです。

 プレイヤーは、アフガニスタンにおける有力者となり、「グレート・ゲーム」と呼ばれる19世紀から20世紀にかけて英露両国、そしてアフガニスタンに権力者によるアフガニスタンの争奪抗争を通じ、自らの影響力を高めることを目指します。

 ゲームは、ルールブック冒頭でも触れられているように「タブロービルド」と呼ばれる「カードを獲得し自分の場へプレイすることで、カード効果を得て自らを成長させ、より強力な手を打っていく」ことが主となるゲームシステムです。
 この「タブロービルド」は、「エンジンビルド」と非常に近く、同義の言葉として扱われることもありますが、「パックス・パミール」においては、拡大再生産、リソースの再利用といった効果を持つカードはなく、「エンジンビルド」的な側面は薄くなっています。
 代わりに、争奪抗争をテーマとしているだけに、ボード上への戦略的アプローチの選択肢を増やすことや、アクションの強さに関わってくることになります。

 この「パックス・パミール」のもっとも重要、かつ、面白さの元となっているのが、プレイヤー自らがイギリスやロシア、アフガニスタンの権力者になるわけではなく、あくまで有力者の一人として、それぞれの勢力の力を高めていくよう立ち回ることで、得点に繋げていくという点です。
 ボード上では、実際にイギリス、ロシア、アフガニスタンの権力者の駒が展開され、激しく戦いが繰り広げられるのですが、その結果、得点を得られるのは、「影響力のもっとも高い勢力(=得点獲得の権利が発生した勢力)と同盟を組んでいたプレイヤー」なのです。
 そのため、ある勢力と二人、三人のプレイヤーが同盟を組んでいたのであれば、それぞれのプレイヤーの得点機会となるわけです。
 加えて、この同盟関係はゲーム中に変えることもできます。ゲーム展開に応じ、どこと同盟を結ぶのか、大きな決断を迫られることになるかもしれません。

 一方で、ボード上には、プレイヤー自らの駒が置かれることもあります。もちろん、自らの駒がゲーム内において大きな影響があることは言うまでもありません。
 
 カードを獲得しプレイすることでアクションの質や効果を高め、自分の影響力を高めつつ、他の有力者の動向を見据えながら、同盟先を見定め、それら同盟の力を高めるよう、手を打っていく。
 この多層構造が「パックス・パミール」の魅力です。
 
 展開によってはサドンデス勝ちとなることもあり、ゲーム中は一瞬たりとも気が抜けません。
 多層構造かつ、緊張感の高いゲーム展開を、このクラスのゲームとしてはスマートなルールで見事に作り上げています。

 細かいフレーバーも丁寧に日本語化した美麗なカードを含んだ「パックス・パミール:第2版」は、10月下旬発売予定です。

 さらなる詳細なゲーム紹介は、発売の前後にお送りいたします。

※「グレート・ゲーム」の背景となっている英露両国のアジア進出や、アフガニスタンの歴史等を「ゲーム」のテーマとして扱うことの賛否はあるかもしれません。ルールブック巻末でも触れられている通り、デザイナーは真摯に取り組んでいます。

※発売後、この日本語版の売上の一部は、アフガニスタン復興のために寄付されます。

近日発売予定のタイトルミニ紹介

 先日配信しましたテンデイズTV「怒濤の新作紹介スペシャル2021July」でご覧いただいた通り、テンデイズゲームズではこれから年末にかけて多数のゲームを発売予定です。
 発売予定表は別記事として用意してありますが、その記事で書かれているのはあくまで発売予定だけになっています。
 もう少し詳しく知りたいという方も多いと思いますので、この記事では、まもなく発売を迎えるタイトルを、簡単なコメントとともにまとめて紹介していきます。(タイトルによっては発売時により詳細な紹介をさせていただく予定です)

※配信後に発売予定日が変更となったものがあります。
※テンデイズTVでの紹介順と同じではありません。

マグニフィセント:拡張 スヌー(7月23日発売予定)

 サーカスをテーマとした隠れた人気作「マグニフィセント」の拡張セットです。
 タイトルにもなっている「雪」をテーマにした新しい演目といくつかのルールが追加され、得点への異なるアプローチが出来るようになります。
 また、5人プレイに対応します。

 基本セットも再入荷いたしますので、気になっていた方は合わせてご検討ください。

おじゃまっシー(8月発売予定)

 湖に棲む怪獣たちの縄張り争いを描いたゲームです。
 体を模したピースを使って頭か尻尾を伸ばしていき、最後まで生き残ることを目指します。他の怪獣にブロックされたり、ボードの端まで行ってしまい、伸ばせなくなってしまったら脱落です。
 「高さ」があるのがポイントで、他の怪獣の体をまたぐように伸ばすことも可能。
 運要素のない(いわゆる)アブストラクトゲームに抵抗感のある方もいるかもしれませんが、思わぬところでブロックしたりブロックされたり。はたまたそれを乗り越えたり。ちょっとしたドタバタ劇感もあり、気楽に楽しめるのもポイントです。
 ちょっと変わった見た目もインパクト大な、楽しい一作です。

ドラゴミノ(7月下旬~8月中旬発売予定)

 今年のドイツ年間ゲーム大賞キッズゲーム部門を受賞した人気作「キングドミノ」の派生作です。
 ニマスで一枚となるドミノ状のタイルを手元に配置し得点を獲得していくという基本システムはそのままに、よりシンプルにまとめ、対象年齢が下げられました。
 最終的なタイル配置状況で得点計算を行っていましたが、こちらでは同じ地形の描かれたマスを繋げられたらただちに得点獲得のチャンスとなります。「たまご」タイルを引いて、ドラゴンが描かれた「当たり」を引くことが出来たら得点です。
 タイル配置の制限が大幅に緩くなっており、くじ引き方式の得点システムとの組み合わせにより、子どもから大人まで気軽に楽しめるタイル配置ゲームになっています。

グラスロード(8月発売予定)

 人気デザイナー、ウヴェ・ローゼンベルクの2013年発売作が待望の再版となります。
 「リソースマネージメントによる田舎の集落の発展」がテーマと聞くと、ローゼンベルクのゲームとしてはお馴染みなイメージがありますが、バッティング要素が盛り込まれたアクション選択がゲームの軸に据えられており、近年のローゼンベルク作としては、やや異色な位置づけとなっています。
 バッティングを基調としていることもあってか、プレイ時間も60分とほどよくまとめられており、多くの方にオススメできるタイトルになっています。
 2013年の発売後に発表されたミニ拡張を含んでの再版です。(ミニ拡張単体での発売も予定しております)

ベニス(8月~9月発売予定)

 ベニスの街を舞台に、ゴンドラ船でボード上を巡りながらさまざまな仕事をこなし得点を獲得していきます。
 色鮮やかなボード、凝った作りのゴンドラ船やワーカーといった駒はとても華やかでそれも大きな魅力ですが、数多くのタイトルのソロルールを手掛けつつ自身も作も多いターツィ、ルーマニアという地からチャレンジングなゲームを発表するノヴァックのコンビ作だけに、油断のならない一作になっています。というのも、得点を稼ぐ一方でそれらの仕事には汚い部分もあるという設定で、得点が高くともあまりに汚いことを積み重ねると最終的に脱落してしまうのです。
 王道的ながら少し変わった感触のゲームを楽しみたい方にオススメと言えるでしょう。

パックスパミール(8月発売予定)

 「グレート・ゲーム」と呼ばれる19世紀のアフガニスタンにおける権力闘争の時代を描いたマルチゲームです。プレイヤーは、イギリス、ロシア、そしてアフガニスタンの三者のいずれかと同盟を組みつつ、権力基盤を築いていくのです。
 さまざまな効果を持ったカードを獲得し自分の場に並べることによる効果の組み合わせを活用しゲームを進めていく「タブロー・ビルド」システムのゲームで、その中心的な仕組みはシンプルかつスタンダードなものながら、時代背景をしっかりと描いたヒストリカルな部分や他プレイヤーとの絡みは「濃く」作られており、コアゲーマーに向けたものであることには違いありません。
 しかし、ボード上に描かれた地域は6つのみ、基本となるアクションはカードの購入とプレイの二種類と、非常にスマートに作られており、多く方にとって挑戦する価値のタイトルとも言えます。

 100枚にも及ぶ当時の背景をしっかりと記述したフレーバー盛り沢山のカード、抜群の雰囲気を持った駒とボード、日本でも話題となった「ROOT」の作者によるゲームデザインなど、見るべきところの多いテンデイズゲームズが贈るこの夏一番の自信作です。

 ※限定でメタルコインとのセット販売も予定しております。

オリジンズ:ファーストビルダー(8月~9月発売予定)

 豊富な内容物が含められたスケールの大きなパッケージとSFホラーの雰囲気が詰まったゲーム内容で注目を集めた「ネメシス」のデザイナーによる戦略ゲームです。
 テーマは、宇宙からやってきた知的生命体との遭遇と都市の発展というスケールの大きなもの。
 基本的な進行は、ダイスをワーカーとして使ってアクションを実行していくというもの。加えて、都市の発展におけるタイル配置のパズル的な要素、他プレイヤーと差があればあるほど恩恵が得られる軍事力や神殿へのアプローチのためのパラメータ上げなど、ゲーム好きの心をくすぐる要素が多分に含まれ、ボリュームのある作りになっています。
 ポーランドを代表する隠れた実力派デザイナーによる注目の新作と言えるでしょう。

ゲーム紹介:キャピタルラックス2(Captal Lux2 / Eilif Svensson, Kristian Amundsen Ostby / 2020)

 ノルウェーの名デザイナーコンビによる2016年の隠れた逸品に、スケールを大幅にアップさせた続編が登場しました。

基本は二択。しかし、超強烈。

 ゲームでは、異世界の発展と勢力争いが描かれます。
 共通の場となる「首都」に出されたカードを「発展」と見立て、その発展度合いに対し、対応する各勢力(色)のカードをいかに「本拠地」となる手元に出せるかということを競います。
 各勢力は首都に人材を派遣し発展に貢献しつつ、自分の本拠地をより充実させていくというイメージです。
 
 ゲームは三ラウンドに渡って行われます。
 各ラウンド、配られたカードを元に「選び取っては次のプレイヤーに回す」形でのドラフトを行い、各プレイヤーの手札が決まります。

 基本的に手番で行うことはシンプルそのもの。
 手札からカードを「場に出す」か「手元に出す」かの二択です。
 しかし、シンプルでありながら、いや、シンプルゆえに、一手番一手番がとても悩ましいものになっています。
 まず、得点の基本に触れておきましょう。
 得点の基本となるのは、各ラウンド終了時に手元に出されているカードの数比べです。色ごとに自分の手元に出されているカードの数値を合計し、もっとも高い数値だったプレイヤーが、場の中央に出されている同色のカードから得点となるカードを受取ることができます。
 「じゃ、どんどん手元にカードを出していけばいいじゃないか」と思う方もいるかもしれません。しかし、もちろん、そんなに簡単は話ではありません。
 冒頭で書いた通り、場となる「首都」に出されたカードは発展度合いを表しています。この発展度合いが、首都のキャパシティーとなるのです。
 勘のいい方なら気付いたかもしれません。
 そう、各プレイヤーの手元に出されているカードの数値合計は、このキャパシティー(首都上限)までしか許されないのです。
 しかも、首都上限を超えた時のペナルティーはかなりキツいもの。ラウンド中に一時的に超えるのは許されているのですが、得点計算時に、もし超えているようであれば、せっかく手元に出したその色のカード、すべてを捨てなければならないのです。

 一方で、場に安易にカードを出すことができないことは言うまでもありません。
 「場にカードを出す」ということは、すなわち、他のプレイヤーにとっても手元にカードを出しやすくなるということに繋がるからです。

 さらに、各ラウンドの手札となるカードはたったの6枚。一枚一枚の価値たるや、他のゲームの比ではありません。
 
 この強烈な悩ましさ、ジレンマは、間違いなく「キャピタルラックス2」最大の魅力と言えるでしょう。

ゲームごとに異なるパワー、その影響を読み解け!

 もちろん、強烈な悩ましさだけが「キャピタルラックス2」の魅力ではありません。
 ゲームごとに変化を加えてくれる「パワー」も忘れてはいけないでしょう。

 ゲーム開始時に、各色ごとに特別な「パワー」が用意されることになります。
 この「パワー」は、ゲームを通してさまざまな効果をもたらすことになります。
 場となる「首都」にカードが出された場合、その色に対応した「パワー」の効果が発生します。
 「パワー」は、追加手番、カード補充と言ったシンプルなものから、他プレイヤーと完全に異なる駆け引きをもたらすものまで、幅広く、とてもユニークです。

 例えば、上の写真の「悲観論者」。
 彼はこの世の中に何か強い不安を抱えているのでしょう。その自分の不安の矛先を「時限爆弾」による破壊に向けてしまっています。
 桃色のカードを場に出す度に、時限爆弾のカウントダウンを表すタイルを一枚めくります。合計が4までであれば何もおきませんが、5以上になるとドカーン!場に出されているカード、各色ごとに1枚ずつ捨て札となってしまうのです。

 例えば、「商人」。
 プレイヤーは、黄色のカードを場に出す度、金貨を受取ります。
 各ラウンドの終了時、もし、首都上限を手元のカードの数値を超えていたならば、この金貨を支払うことで、(自分にだけ作用するように)首都上限を引き上げることができます。
 さながら、取引で得た財力にものを言わせるイメージでしょうか。

 そのほか、場に出すか手元に出すかによって内容が変わる特別なカードを補充することの出来る「二元論者」、ランダムで退いた特別なタイルによって首都上限を(自分だけがその数値を知った状態で)増減することができる「工作員」、完全版と言える「キャピタルラックス2:ジェネレーションズ」にはロケット発射計画を推し進める「発見者」などなど、各色ごとに4種類ずつ(廉価版「ポケット」では3種類)用意され、その組み合わせのバリエーションは256種類(ジェネレーションズ)にも及ぶのです。

 ベースとなるルールが、非常にシンプルだけに、その効果はシンプルなものであっても、もたらされる影響はかなりものです。
 タイルの効果、ゲームにもたらす影響をしっかりと読み解き、カードを適切、かつ効果的にプレイするのも、「キャピタルラックス2」の醍醐味です。

唸らされる「油断のならないポイント」

 ここまで大きな二つの魅力を書いてきましたが、「キャピタルラックス2」を優れたゲームにしている、というよりも、ゲーム好きにとってはたまらない油断のならないポイントは他にもあります。

 まず、ラウンドの終了タイミングと残った手札の扱いです。
 各ラウンド、あるプレイヤーの手札がつきた時、他のプレイヤーはもう一手番ずつプレイして終了となります。
 ラウンド開始時は、同じ枚数の手札を持っていることになるのですが、「パワー」効果によっては手札枚数が均一ではなくなります。
 そのため、ラウンド終了となった時点で、まだ手札が残っているプレイヤーが出ることも少なくありません。
 この残った手札は、問答無用でそれぞれのプレイヤーの手元に置かれることになります。
 手元に置かれたカードの数値が大きければ大きいほど得点のチャンスに繋がるこのゲームにあって、手元に置かれるカードの枚数が肝心ではあるのですが、前述の通り、首都上限を超えた時のペナルティーはとても大きいため、むしろ手元に置きたくないケースも多々あります。
 このルールにより、手元にどのカードをキープするかという悩ましさ、カードを出すタイミングの見極めのシビアさが増しているのです。

 続いては、ゲーム終了時の得点獲得方法です。
 3ラウンド目の得点計算が行われた後、ゲーム終了の得点獲得があります。
 各プレイヤーは、その数値の大小にかかわらず、手元に置かれていたカードをすべて得点として獲得することになります。
 各ラウンドでは、色ごとの数比べを制したとしても、得点として獲得できるのはカード一枚のみです。
 このゲーム終了時の得点ウエイトが大きく設定されているわけです。
 また、この得点獲得があるため、「ある色を捨てる」、「ある色に絞る」ようなプレイは、無効ではないものの、もたらされる得点を考えると有効的とは言えないでしょう。
 そしてプレイヤーは、どのような状況であっても、出来るだけギリギリ首都上限ギリギリを攻めたい、そんな風に思わされるのです。

 また、冒頭で簡単に触れましたが、各ラウンド、手札は「ドラフト」によって決まります。
 悩ましいゲームだけに、他のプレイヤーに回したカードというのは、極めて重要な情報となるでしょう。もちろん、回ってきたカードから推測することも重要です。
 あくまで数字のみが描かれているのみのカードでありながら、そして手札は6枚と少ないながら、ラウンド開始時点でのドラフトから、シビアな駆け引きは始まっているのです。

まとめ

 「キャピタルラックス2」は、構成する要素が主に「二択のカードプレイ」、「ゲームごとに異なる特殊効果タイル」の二要素だけに、とてもシンプルなゲームです。
 得点のシステムも、「色ごとのマジョリティ争い」という、非常にオーソドックスなものです。
 しかし、悩ましさが詰まったゲームプレイ、至るところに用意されたプレイヤー間の駆け引き、ゲームごとに異なる特殊効果の組み合わせから生まれる展開の妙、これらがとてもセンス良く組み上げられたタイトルです。
 そして、シンプルゆえに「凄み」を感じられるゲームデザインにもなっているように思うのです。

 クワンチャイ・モリヤの魅力的なアートワークにより、ルールブックなどでは深く語られていないながらも、その世界観がうまくゲームにも彩りを与えてくれてもいます。

 「キャピタルラックス2」は、間違いなく多くの方に触れてもらいたいタイトルです。

※「キャピタルラックス2」は、完全版といえる「ジェネレーションズ」と廉価版「ポケット」の二種類があります。「ジェネレーションズ」では、「ポケット」と比べ、「パワー」が各色1つずつ多く用意されています。また、「ジェネレーションズ」では、ソロプレイ用のルールと内容物が含まれています。

スタッフ神田の視点

◆全体に貢献しつつも個人の最大利益を目指す

 「キャピタル・ラックス2」において、プレイヤーは未来の首都「ラックス」の有力者として、カードで示される4種の人物を首都か本拠地に派遣(プレイ)します。ゲーム中、プレイヤーは、カードを首都にプレイして公共の利益に貢献するか、あるいはカードを自分の本拠地にプレイして利益を独占するかの二者択一を迫られます。
 もちろん、大変なだけの公共事業は他人に任せて、自分の利益だけを追求できれば最高です。しかしながら、公益を軽視して蓄財に励んでいることが露見してしまえば、これまで築き上げてきたすべての利得を没収されてしまうでしょう。
 したがって、プレイヤーは公共の利益と、自分の利益を天秤にかけて、バランスよく両者を発展させていく必要性があります。その上で、ゲームに勝利するためには他者を出し抜いて自分だけが利益を独占する立ち回りが必要になるでしょう。

 「キャピタル・ラックス2」は2016年に発売された「キャピタル・ラックス」のアップデート版です。基本的なルールにも若干の見直しが入りましたが、それ以上に着目すべきは固定式だった4種の特殊効果が組み換え可能になったことで、「ポケット」版なら81通り、「ジェネレーションズ」版は256通りのセットアップが可能になりました。
 「キャピタル・ラックス2」の各バージョンの違いについてはタナカマ店長の記事にて紹介されているので、そちらをご覧ください。

◆ゲームの流れはごくごくシンプル

 「キャピタル・ラックス2」は、カードドラフトとカードプレイの2つのエンジンによってラウンドが構成されたゲームです。

 ラウンドの始めにはカードのドラフトを行います。全員がカードを6枚引き、同時に2枚をピックして残りを左隣に渡し、また2枚をピックして渡し、最終的に6枚の手札を構築します。
 その後、スタートプレイヤーから手番を行います。手番ですることは手札からカードを1枚選んでプレイするだけです。
 カードは本拠地(自分の場札)へプレイするか、首都(全員共有の場札)へプレイするかのいずれかを選び、どちらの場合でも、プレイされたカードは場札として蓄積されていきます。また、共有の場札にプレイした場合、カードの色に応じた特殊効果が発動します。

 誰か1人の手札が尽きるとラウンド終了のトリガーが引かれます。他のプレイヤーは最後の1手番を行い、余った手札はすべて自分の場札に加えます。

 ラウンドの最後には、4色のカードそれぞれについて得点計算を行います。ここでは自分の場札の数値の合計と共有の場札の数値の合計を比べるのですが、自分の場札の合計値が共有の場札の合計値を上回ってしまった場合、自分の場札をすべて捨てなければなりません。
 その後、それぞれの色について場札の合計値のマジョリティを比較し、勝ったプレイヤーが共有場札から最も高いカード1枚を得点ボーナスとして獲得します。

 こうした流れのラウンドを3回繰り返したところでゲームは終了します。ゲーム中に獲得した得点ボーナス、自分の場札の数値の合計、金貨トークンの得点を合算して最も多くの得点を得たプレイヤーがゲームに勝利します。

◆明瞭平易なゲームデザインの奥に隠された工夫の数々

 こうして文章にしてみると極めて簡素な展開のゲームですが、実際にプレイしてみるとルールの裏側に潜んでいる匠の技の数々に気づかされます。

 まず、着目すべきはその得点システム。プレイヤー共有の場札によって上限値が決まり、ラウンド終了時までにその範囲内に自分のカードの合計値を収める。ここにはチキンレース、バーストの要素があり、まず1つ目のジレンマになります。
 そして、さらにこのバーストをくぐり抜けたとしてもそれだけでは得点には結びつきません。その中でさらに合計値で1位を目指さなければならない。これが2つ目のジレンマになります。
 バースト+マジョリティの組み合わせはバーストの「上限値を越えてはならない」特性と、マジョリティの「最大多数を目指さなければならない」特性が噛み合い、両者が両者の特性を補完する極めて筋の良いメカニクスです。昆布とカツオの掛け合わせみたいなもので、旨味と旨味が足し算ではなく掛け算になる、言わば黄金の組み合わせなのです。

 さらにマジョリティはその機能上、後手が極めて有利なゲームです。なぜなら先手の行動に対して、後手はそれを(時にはちょっと無理して)上回ることも、勝てないと見限って勝負を降りることもできるからです。
 このゲームではプレイヤーは「手番に必ずカードを1枚プレイしなければなりません」。他人の動きを見てから判断を下したいのにルールがそれを許してくれないのです。これが3つ目のジレンマになります。

 さらにラウンド終了時に余った手札は「すべて自分の場札としてプレイしなければなりません」。それがバーストの引き金になるとしても避けることはできないのです。もうお分かりの通り、これが4つ目のジレンマです。
 従ってバーストの危険性があるカードは早めに共有の場札に送り込まなければなりません。しかしバーストの上限値が緩んで喜ぶのは得てして他プレイヤーです。自分のウィークポイントはなるべくポーカーフェイスで隠しつつ、できれば他プレイヤーが上限値を緩めるのを待って、それから自分の場札を増やしたい…… そんな思惑がプレイヤー同士で間断なく巡ります。ルールは平易ながら非常に一手が重いゲームなのです。

 また、ラウンド開始時のドラフトも上手い仕掛けです。自分が流したカードは下家のプレイヤーが確実に持っていて、必ずどこかの局面で登場するのです。4人プレイの場合、ラウンドに登場する24枚のカードのうち、プレイヤーは12枚を既知の情報として持っています。
 この相互作用の強いゲームにおいてドラフトによって得られる情報の果たす役割は非常に大きく、ゲーム展開を予想し、またコントロールする補助線として大きく機能しています。我慢比べの末に他人の動きを見切った時には「してやったり」の気分になることでしょう。
 また、このドラフト自体も6枚から2枚をピックするちょっと変わったシステムで、この工夫により大幅なスピードアップが図られています。なにせ6枚から1枚ずつピックするドラフトのピック回数は5回ですが、このシステムだとピック回数がたったの2回で済みます。
 この高速ドラフトはゲームの密度を高め、記憶負荷への低減を図り、コントロール性を高める一石三鳥の秀逸な仕組みと言えましょう。

 ルールの一つ一つにそれぞれ意味があり、それぞれが有機的に結合して互いが互いを引き立てています。この機械仕掛けのようなシステムの噛み合わせの妙こそがノルウェー人ゲームデザイナーコンビ、エイリフ・スヴェンソンとクリスチャン・オストビーの最たるところです。

◆アブストラクトでもない、アメリトラッシュでもない秀逸なバランス感覚

 また、最初に少し触れた通り、共有場札にカードをプレイした場合、その色に応じた特殊効果が発生します。元々の「キャピタル・ラックス」もこの特殊能力がいい味を出していたのですが、「キャピタル・ラックス2」では、この特殊効果のパターンが大幅に増えています。

 骨組み自体はシンプルながら、この特殊効果の影響も踏まえて手札をやりくりする必要があるため、このゲームはアブストラクトめいた無味無臭には陥らず、モダンなゲームらしいスパイシーさも兼ね備えています。かと言ってアメリトラッシュを思わせる破壊的な効果は意図して避けられていて、このバランス感覚も特筆に値する点です。

 共有場札にカードをプレイすることは直接的には得点に結びつかないため、そのリバランスでもあるのでしょう、特殊効果は基本的にはプレイヤーに有利に働いたり、ゲーム展開に影響を与えるものが多いです。「キャピタル・ラックス2」では、使い方によってはプレイヤーの不利に大きく働く特殊効果も盛り込まれ、さらに尖った展開が約束されています。特殊効果の有利不利によっては共有場札へプレイするマインドにも変化が生じるので、ドラフトはより慎重さが必要になるかもしれません。

◆逆転性を演出する得点システムも必見

 このゲームには膝を叩くルールがいくつもあるのですが、「ラウンド終了時に共有場札の一番大きな数値のカード1枚をボーナス得点として与える」というのもこれまた非常に秀逸なルールで、これによってギリギリまで自分の場札を溜め込んだ優位なプレイヤーは強制的にバースト危険度MAXの状態に押し込まれる羽目になります。
 自分の場札が少ないプレイヤーにとってこの状況は、逆に自分の場札を溜め込む大きなチャンスです。なにせバーストの危機に瀕しているプレイヤーは高確率で共有の場札を増やし、上限値を緩めてくれることでしょうから。
 これだけのシンプルなルールで自然と次の緊張状態を作るとともに逆転の余地を生み出しているのはさすがの一言です。

 また、最終ラウンドではこれまでのラウンドと同様のボーナス得点を得つつ、最後に自分の場札の合計値がすべて得点として計上されます。ゲームを通してこれが得点源として非常に大きなウェイトを占めています。
 したがって最終ラウンドでバーストしてしまうと、その損害は甚大なものになるでしょう。逆に言えば最後まで逆転のチャンスは残されているのです。自分の得点を確保するだけでなく、他人の得点を失わせるための立ち回りも時には重要になるでしょう。

 得点にインフレを持たせつつ、クライマックスを最後に持ってくる得点メカニクスは同作者コンビの手による「アベニュー」と同コンセプトで別アプローチを体現した形でしょう。得点システムにおいてゲームデザイナーは常に「ゲームの最後まで逆転の可能性を残さなければならない」「かと言ってゲーム中の得点要素が疎かであってはならない」という二律背反の命題に悩まされているのですが、スヴェンソン&オストビーはいとも明快に、そして鮮烈に命題への回答を導き出しているのです。
 というか、「キャピタル・ラックス」と「アベニュー」を同時に出した2016年の両者はエグすぎますね!

◆「緊張と緩和」が巡り巡るゲームデザイン

 ゲームデザインには「ゲームの面白さとは緊張とその緩和の繰り返しである」という理論があります。例えば「ダイスを振って1,2,3,4なら成功、5,6なら失敗」という場面は、成功か失敗のどちらが訪れるか判然としない「緊張」の状態であることがわかるでしょう。ダイスを振った後に訪れるのが対となる「緩和」です。ダイスの結果が成功でもあっても失敗であっても、もはや結果は一意に収束し、それ以上の揺らぎはありません。

 ゲームの面白さとは、このような緊張と緩和の状態の行き来によって演出されています。ハードルを設定し、それを飛び越えることで収束する。マッチポンプ的ではありますが、このハードルの高さと頻度をどのように設定するかがゲームデザイナーの腕の見せ所とも言えます。
 このゲームでは「バースト危機的状態」と「非バースト状態」の行き来がまさに「緊張と緩和」の状態遷移に該当します。4つの色それぞれにおいて「バースト危機的状態」と「非バースト状態」のフラグがあり、プレイヤーの一手番ごとにこれらの状態は頻繁に移り変わります。
 そこには自分が関与できない他人の選択による状態遷移も多く、時にはジェットコースターに身を委ねているかのような他律的なめまいに翻弄されます。しかしながら、裏を返せば棚ぼたのような幸運が幾度も訪れるということでもあります。
 シビアな選択に苦しめられるだけではなく、意外なタイミングで嬉しいイベントが転がり込んできて感情が大いに揺り動かされるところにこのゲームの起伏に富んだ楽しさがあります。これほど数多くの「緊張と緩和」を濃密に体感できるゲームは稀と言っていいでしょう。

 繰り返しになりますが、ルール上、手札にあるカードは必ず場札としてプレイされることになります。ですから悩むのは、どのカードをどの順番でどこに出すのか。このゲームは言ってしまえばそれだけなんですが、とにかくその選択が悩ましいゲームです。
 それは織り込まれた巧妙なジレンマの数々と、一手ごとに「緊張と緩和」の状態遷移が誘発される濃密なゲームデザインの為せる技です。
 それでいてプレイフィールはカオスに塗れることなく整然と秩序だっています。元々の骨組みからして抜群に面白かった「キャピタル・ラックス」が大幅なボリュームアップを遂げた今作、ゲーム好きを自負するならマストバイです!

ゲーム紹介:12王国の玉座(King of 12 / Rita Modi / Corax / 2020)

「あー、よくあるヤツね」

 「12王国の玉座」は、キャラクターカードの特殊効果を活用することで、ダイス目を操り、バッティングを避けながら、繰り返される出目勝負に勝ち、最終的な勝者となることを目指す、手軽に盛り上がれる読み合いのゲームです。

 と、よくある概要から入りましたが、この概要を読んで「あー、よくあるヤツか」とあまり魅力を感じられなかったあなたは、すでに多くのゲームを遊んだことのある、いわゆる「ゲーマー」、「ゲームファン」かもしれません。もし、あなたがその一人であったなら、ここで読むのをやめず、この紹介をぜひとも最後まで読んでほしいところです。(-もちろん、そう思わなかったあなたにも、もちろん、読んでもらいたいのはかわりません)

 ダイス勝負、バッティング、特殊効果と、それをもとにした読み合い。こういったシステムを取り入れたゲームは、すでに数多くリリースされーそして、それほどそれぞれのゲームから差異を感じられなかったが故に-「あー、よくあるヤツか」と言いたくなる気持ちもわかります。
 ですが、この「12王国の玉座」は、さまざまなところに見え隠れするバッティングを前提とした読み合いの妙味と、それを十分に味わえる内容に仕上げたチューニングによって、2020年に遊ぶべき新作としてのゲームに仕上げられており、決して「よくあるヤツ」ではないのです。

基本的な流れと、その中でのバッティング要素

 では、実際の内容を見てみましょう。
 「12王国の玉座」は、「ターン」と呼ばれるダイス勝負を複数回行うことで「ラウンド」の勝者を決め、ラウンドを二本先取したプレイヤーが最終的なゲームの勝者となります。
 各ラウンドのはじめ、プレイヤーはダイスを振り、基本となるダイス目「値」を、まずは持つことになります。
 その後、それぞれのダイス目を踏まえた上で、固有の能力を持った6枚のキャラクターカードの中から、使いたい能力のキャラクターを一枚選び、裏向きで出します。
 全員のキャラクターカードが出されたところで一斉公開。その能力をダイスの値に適用したところで、そのターンの勝負が行われます。
 もっとも大きな値だったプレイヤーは2点、次点のプレイヤーは1点を獲得します。
 8点を獲得したプレイヤーか、手持ちのキャラクターカードが1枚になったところでラウンドの勝者を決めます。

 非常にオーソドックスなルールですが、このゲームでは、要所要所でバッティングの判定が行われ、これが実に妙味を生むことになります。
 まず、キャラクターカードの公開において、バッティングの判定が行われます。もし、複数のプレイヤーが同じキャラクターカードを出していた場合、そのキャラクターカードは打ち消され、効果を発動しません。
 続いて、ダイス目の「値」での勝負におけるバッティングの判定です。もし、複数のプレイヤーが同じ値だった場合、それらのプレイヤーのダイスは打ち消され、値がどうであれ、得点獲得に至ることはありません。

 まず、各ターンで行われるこのバッティング判定が、実に巧くゲームに作用し、妙味に繋がっています。
 「12王国の玉座」におけるキャラクターカードの効果は、実に多種多様です。値を単純に決まった数増やすもの、減らすもの、一定の数にするもの。加えて、勝負の基準を変えるもの-「最小値のプレイヤーが勝つ」というようにです。
 
 例えば、3人プレイにおいて、各プレイヤーが次のような値だったとします。
 A:12
 B:7
 C:1
 普通であれば、Aが勝利、Bが次点となります。
 ここでCは「最小値のプレイヤーが勝つ」というキャラクターカードを出すことを考えるかもしれません。
 -そして、それを読んでAは同じカードを出し、バッティングによる打ち消しを狙うかもしれません。
 -さらに、それを読んだBは「勝者は次点になり、次点が勝者となる」キャラクターカードを出すかもしれません。
 -であるならば、と思ったCは「最小値のプレイヤーが勝つ」というカードを出さずに、応用力が高く、また、以降の勝負を踏まえ、ダイス目自体を変える「隣接している5面のうちのひとつにする」を出すことを選択する。
 
 これだけ見ると、バッティングゲームでよく受ける印象のひとつである「結局、じゃんけん?」という印象を持つ方がいるかもしれません。
 たしかに、この一回の局面だけ見ればそうかもしれませんが、「12王国の玉座」では、「キャラクターカードは(そのラウンドにおいては)使い切り」、「ラウンド中では、ダイス振り直さない(一部、ダイスに直接作用するキャラクターカードの能力以外では、ダイスの目自体は変わらない)」の二点により、うまく解消されているように思います。
 要するに、ラウンド中に繰り返される勝負では、どのカードが残っているのか、そして、(基本的に変更されない)ダイス目ということが、駆け引きに対して、とても大きく作用しているのです。
 上記の例では、キャラクターカードのバッティングのみに絞っていますが、ここに「値」のバッティングが加わることで、さらに複雑な読み合いが繰り広げられることは言うまでもありません。

そして、ラウンド終了に待つもう一つのバッティング

 いずれのプレイヤーも「8点」獲得することなく、ラウンド終了となったならば、そのラウンドでの獲得点数を比べ、勝者を決めることになります。
 このとき、またバッティングの判定が行われることになります。
 それは「獲得点数」のバッティングです。
 もし、複数のプレイヤーが同一得点だった場合、その得点(とプレイヤー)は打ち消され、残ったプレイヤーの中で勝者が決められることになります。
 この得点のバッティングについては、「やりすぎ」、「なんじゃそら」と思われる方も少なくないように思います。
 しかし、「12王国の玉座」では、このバッティングも実に巧く駆け引きのポイントとして盛り込んでおり、ゲームを盛り上げてくれるのです。

 例えば、5点、4点、3点という状況で、あるラウンドの最終ターンを迎えていたとします。
 3点のプレイヤーは、非常に望みの薄い状況ですが、得点のバッティングがあることで、極めて低いながらも勝利のチャンスは残されています。
 5点プレイヤーが1点、4点プレイヤーが2点を獲得した場合、6点、6点、3点となり、バッティングにより、勝利が舞い込んでくるのです。
 そのために、3点プレイヤーは、自分が負けつつ、4点をダイス勝負に勝たせるようなプレイを狙うことになります。
 もしくは、全員を5点横並びにして、このラウンドはドローとすることもありかもしれません。
 この読み合いの熱さたるや、かなりのものです。

 ルールを読んだだけでは「はたしてこれは・・・」と思わされるような点も、実は非常によく考えられたゲームになっているのです。

 もちろん、「高いダイス目にものを言わせ、まっすぐ勝利を狙う」ことが非常に有用であることは前提としてあります。
 決して、「バッティング」の部分だけを掘り下げたゲームでないことは強調しておきます。

生粋のゲーム好きも満足できる希有なバッティングゲーム

 「12王国の玉座」のルールは、ゲームの準備やカードの説明を含んでも4ページ、実質2ページしかありません。(しかも判型は小さいです)
 そしてそのルールはシンプルそのもの。「よくあるヤツ」であることに違いありません。
 しかし、わかりやすくもツボを押さえたキャラクターカードの効果、バッティング判定のポイントといったルール運用の面で、練りに練られたゲームと言えると思います。
 
 「12王国の玉座」は、ダイスの値が大きいことが有利なのは間違いなく、バッティングがもたらすアクシデント性を純粋に楽しむだけでもとても楽しめるゲームではあります。
 しかし、それを大前提としつつも、勝負所を読み、さまざまキャラクターカードがどのような効果を及ぼし、どう作用するのかをイメージし、自分の思った通りに場をコントロールできるか、そんなところを実に巧く盛り込み、ゲーム好き-いわゆる「ゲーマー」でも納得できるゲームとして、手に取る価値のあるゲームになっています。
 ここまで懐の深いタイトルはあまりなく、多くの人に、大いにオススメできるタイトルではないでしょうか。

スタッフ神田の視点

◆12面ダイスと人物カードを使ったバッティングゲーム

 「12王国の玉座」は、ダイスとカードを使ったバッティングゲームです。全員が同じ人物カード7枚1組を手札として持ち、ダイスの出目の大小を競います。
 TRPGではお目にかかる機会があるものの、ボードゲームでは珍しい12面ダイス(クリア? マーブル? ちょっと不思議な質感のダイスです)が特徴的な内容物。それに特殊能力を持つ(良く知られているところでは「ラブレター」、最近で言えば「オリフラム」のような)人物カードを組み合わせた小箱のダイス&カードゲームです。

 ゲームの流れとしては、

1.ダイスを振って
2.カードの特殊効果でダイスの出目に修正を加えて
3.ダイスの出目の高い人が得点!

 これだけ! ゲームの流れはシンプルで、ルール説明はラクチンです。実際遊びながらでルール説明できるタイプ。

 あとは手札1枚になるか8点を獲得するまでこの流れを繰り返し、合計得点が高い人がラウンドの勝者になります。ラウンドを2回勝利すればゲームに勝利します(「髑髏と薔薇」のような感じ)。

 基本的にはダイス目が高い=強いなので、最初のダイスロールで高い出目を出した人はかなーり有利です。
 しかしながら、それだけでは勝ち切れない色々な仕掛けがこのゲームには施されていて、小箱のゲームではありながら相当に悩ましく頭を使う、歯応えのあるゲームに仕上がっています。

◆逆に今、新鮮味のあるバッティングゲーム

 バッティング(ここでは便宜的に「選択が被るとお互いの選択がキャンセルされるゲームメカニクス」を指します)は、とても面白いメカニクスである反面、面白すぎてなんでもバッティング味になってしまうという弱点が存在します。味噌ラーメンの弱点は味噌が調味料として旨すぎること、みたいな話です。

 そしてバッティングゲームの旨味を最大限引き出そうとすると、余計な要素はどんどん省いていくのが正解で、結果残るのは……あれ、これって「ハゲタカのえじき」だぞ、となるワケです。アレックス・ランドルフの、このシンプルかつ明瞭なゲームは、バッティングゲームの超大な山脈としてこのジャンルに厳然と聳え立っているワケです。

 そういったゲーム作りを避ける人が増えてきたのかどうなのか、実は最近バッティングゲームの光るゲームって見かけないんですよね。そんな空き家状態のこのジャンルにヌッと入り込んできたのがこの「12王国の玉座」というワケです。
 では、このゲームのどこに他にはない新味があるのでしょうか?

◆バッティングせよ! 然る後バッティングせよ!

 バッティングが面白いメカニクスであることは間違いありません。しかし安易な追随では「ハゲタカのえじき」のコピーになってしまう…… この難題を前に「12王国の玉座」のデザイナーは、どう考えたのか。

 「そうだ、だったら徹底的にバッティングさせたらいいんじゃないか!?」

 これはかなりぶっ飛んだ着想です。なんとこのゲームではバッティング判定の機会が3ヶ所もあるのです。

・全員がカードを伏せてプレイ! その結果、同じカードが公開されたらバッティング!
・カードの効果でダイス目に修正が入る! その結果、同じ出目があったらバッティング!
・ラウンド終了! その結果、同じ得点のプレイヤーがいたらバッティング!

 夥しいバッティング、バッティング、バッティング。
 ここまで徹頭徹尾バッティングというメカニクスを使い尽くしたゲームって珍しいのではないでしょうか。新作ゲームが毎日出版されるとも言われるこの飽和の時代において、このコンセプトの明瞭さ、お見事というよりありません。

◆ハンドマネジメントも重要な独特なプレイフィール

 面白いバッティングゲームは、その特徴として各人の選択の導線となるヒントが盤上に散りばめられています。
 「12王国の玉座」でその役割を果たすのがダイスの出目です。基本的に最も大きな出目のダイスを持っているプレイヤーがゲームの主導権を握りますが、他のプレイヤーも虎視眈々と逆転の機会を窺っています。

 逆転手段としてわかりやすいのが「騎士」のカード。このカードは「最も高い出目のプレイヤーが勝負に勝つ」というゲーム本来のルールを捻じ曲げ、「最も低い出目のプレイヤーが勝負に勝つ」という真逆のルールを適用させるカードです。
 では、大きな出目のダイスを持つプレイヤーはこれをバッティングで潰すために自分も「騎士」をプレイするべきでしょうか?
 いや、相手はそれを見越して「騎士」の使用を遅らせるかもしれませんし、(自分の出目を-7にする)「寄生者」を使ってくるかもしれません。正解はどれだ!?

 さて、このゲームではラウンドの最中にダイスを振り直す機会が限られています。これが実にうまい作りで、ラウンド中の1ターン1ターンに途切れることのない連続性を与えて、ラウンドを通したハンドマネジメントをプレイヤーに要求してくるんですね。

 例えば、自分は最強の出目12のダイスを持っているからまずは(出目を2倍にする)「錬金術師」で1勝、次に(出目を+7にする)「からくり人形」で2勝目を狙おう。

 その次は敢えて「巫女」でダイスを振り直して、その次は「騎士」で逆転の1勝を狙い…… といった長期的なプランニングが立つんです。

 それぞれのカードが固有の強力な効果を持ち、なおかつ使い所を誤れば効果を発揮せず立ち消えてしまうという多大なリスクも孕むため、カードを選択する指はいつも緊張感でこわばります。

 この「1回の勝負に勝つ」という短期目標だけでなく、「ラウンドを通してどこで勝負を仕掛けるか」という長期目標をも提示しているのがこのゲームの巧みなところで、基本1回1回の勝負の関連性は薄いバッティングゲームにおいて、独特なプレイフィールを生み出しています。

◆最終得点までバッティング!?

 そしてこのゲーム最大の大大大技は、ラウンド終了時の得点計算の際にも、同点のプレイヤー同士がバッティングすることです。「いや、それでゲームが成立するの!?」と驚く人もいるかもしれませんが、しかしこれが最後の大決戦・大逆転を演出していて、個人的にはアリだと感じています。

 例えば、最後の勝負で他プレイヤーが4点、3点、2点、そして自分が0点の場合でも、上手いこと立ち回って全員を4点タイにしてバッティングさせてしまえば、なんと0点でもそのラウンドに勝利できてしまうのです。
 もちろんそうならないように他プレイヤーは読みを凝らしてバッティングを回避すべく立ち回るのですが、この読み合いがまさに最終決戦という緊迫感があって熱い!

 一見、これは理不尽なルールに思えるかもしれませんが、それ以上に最初のダイス目が理不尽な格差として存在しているゲームではあります。高い出目のプレイヤーは有利だし、低い出目のプレイヤーは不利。どれだけカードで逆転が狙えると言ってもこの構図自体は変わりません。また構図が強固だからこそ読みのヒント足り得るのです。
 なので、ダイス目の理不尽を制するためのバッティングの理不尽と言いますか、「化け物には化け物をぶつけるんだよ!」という発想と言いますか、このゲームの発想はとかく色々ぶっ飛んでるんですが、冷静に考えてみるとなるほど納得できる論拠があって、作者はどこまで計算してこのゲームを作ったのか不思議な気持ちになります。

 リーチをかけると手札のカードを1枚封印しなければならないのもちょっとした工夫に見せて相当に色々な効果を織り込んだ作りで、デザイナーにセンスがあるのか、デベロップが巧みなのか、とかく見るべきところのある不思議なゲームです。

◆3人でも面白いバッティングゲーム

 また、バッティングゲームの常として「人数が多い方が楽しい」という話があります。そりゃ2人でバッティングゲームをやっても面白くはないですし、多人数の方が単純にバッティングが起きる頻度が増えるので盛り上がるワケです。

 しかしながら、このゲームは3人でも十分な絡み合いがあり、濃厚な読み合いを楽しめるところが便利です。4人ともなるとそれぞれの思惑を読み切るのは困難で、バッティングゲームならではのカオスな展開を楽しめることでしょう。
 なので、知的な読み合いを楽しむなら3人プレイを、パーティーライクに盛り上がりたいなら4人プレイをオススメします。特に4人プレイだと最後の得点計算のバッティングが起こりやすく、このゲームの醍醐味であるピタゴラスイッチめいた玉突き事故を存分に味わえることでしょう。

◆日本向けのドイツ産ゲームをご賞味あれ

 ということで、ここまで「12王国の玉座」について紹介してきたワケですが、みんな大好き人物カードによる特殊能力と、みんな大好きバッティングの組み合わせが楽しくないはずがありません。もちろん元々バッティングゲームが苦手な人、肌に合わない人にはオススメしづらいのですが、ルールは簡単、プレイ時間は短く、特殊効果の使い所が重要、と、日本でウケる要素の詰まったゲームという印象を受けます。
 また、このゲームはドイツ産なんですが、ドイツの静的な機械っぽさは幾分ナリを潜めているというか、フランスやアメリカの匂いの混じったドイツゲームという感じがします。新興パブリッシャーならではの無国籍ハイブリッド感はユーロ趣味とアメリカ趣味の混ざった日本のゲームシーンに合うように思うんですね。

 また、カードは1組12枚あり、1回のゲームでは固定の1枚+6枚しか使いません。組み合わせによって異なる戦い方を求められるのでリプレイアビリティもあり、さらに今ならプロモカードが追加で2枚ついてくるので組み合わせ自体も相当に増えます。
 プロモカードのうち1枚はめっちゃ強力なんですが、それでもゲームバランスはおそらく崩れない…… このゲームのシステム上、強力なカードを導入しても対人バランスが崩れることがないのは、ゲーム自体の強度の高さを感じます。

 ということで、うまく行った時はしてやったり、裏をかかれた時は悔しさに呻き、予想外のバッティングに大爆笑と、至るところで感情を大いに揺さぶってくるゲームです。
 「最近バッティングゲームって遊んでないなあ」とお思いの方、久々にやってみると、やっぱり笑ってしまうので楽しいです。時々一方的な展開になってしまうことがあるのもまた愛嬌で。なんとかして勝ってやろうという必死さも、無慈悲な展開の前では笑いのスパイスになります。

 あと、インストのコツとして、「ダイスを振ったり、実際に出目をいじるのはラウンドの開始時とカードに記述があるときだけ」という説明の徹底をオススメします。
 ついつい出目をいじったりダイスを振り直したりしたくなるんですが、このゲーム、ダイスを使うゲームにも関わらず、ダイスをいじる機会は希少なのです!

ゲーム紹介:フォーリサローネ(Fuorisalone / Cristian Confalonieri, Lorenzo Tucci Sorrentino / Cranio Creations / 2018)

スタッフ神田の視点

 「Fuorisalone / フォーリサローネ」は、イタリアはミラノの「ミラノデザインウィーク」を堪能する観光客となって、さまざまな名所を巡りつつイベントに参加して目的カードの達成を目指すセットコレクション要素の強いファミリーゲームです。

 出版社のCranio Creationsは「バラージ」「ロレンツォ・イル・マニーフィコ」「ニュートン」など、重量級の戦略ゲームの数々で人気のあるイタリアのメーカーです。それが同社お馴染みのガイコツロゴを配置するのもちょっとためらうようなキャッチーなパッケージアート…… 一体これはどんなゲームなんでしょうか?

テーマにぴったりの華やかさ

◆そもそも「フォーリサローネ」とは?

 このゲーム、実は同名の家具とデザインの大規模イベント「フォーリサローネ」の公式ゲームらしく、同イベントの公式サイトで購入可能なゲームだったりします。ゲームのアートワーク全般を手がけているSilvia Gherraさんは、本職のアーティストの方で、このゲームで初めてボードゲームのアートを手がけたようです。

 もちろんゲームのUIに関わる部分は出版社のCranio Creationsがコントロールしていて遊びやすいデザインにはなっているんですけども、なかなか日本にはない組み合わせではあって、デザインに関心の高いイタリアならではのコラボレーションだなーと感心させられます。

 作中に登場する家具ブランドも実名表記ですし、カードに記されているQRコードを読み込むとそれぞれの名所の案内記事にリンクしてたりします。もちろんリンク先は英語/イタリア語ではあるんですが、ミラノの観光地紹介的な側面もあって興味深い内容です。

 で、「そもそもフォーリサローネってなんじゃ?」という話もあるんですけども、これもわたくし素人ながら「フォーリサローネ とは」でググってみたところ、元々「ミラノサローネ」という大規模なアートのイベントがあったところに、その出展費用を捻り出せない若い画家とか、ちょっとイベントとは気風の異なるアートをやる人達が、「ミラノサローネ」の周辺で勝手にアート作品を展示したところ、それが評判を呼んでどんどんと拡大していき「フォーリサローネ(サローネの外)」と呼ばれるようになったようです。

 で、今では「ミラノサローネ」とその周辺で開かれる「フォーリサローネ」を一纏めにしたものを「ミラノデザインウィーク」と呼んで家具とデザインの一大イベントとなっているんだとか。TOYOTA や CANON 、東芝、河合楽器、パナソニックなどの日本企業も参加しています。

 ゲーム好きに伝わるように例えるなら、「ゲームマーケットの出展費用高いなー」って思ってる人とか「わしゃ同人魂あふれるゲームを作りたいんじゃ!」って人が、ゲームマーケットの晴海棟の脇の広場でブルーシート広げてジップロック入りのゲームを販売し始めたらいつしかそれが盛況になって「フォーリゲムマ」として成立してしまい、ゲムマとフォーリゲムマで界隈が賑わうようになった……みたいな感じですよ。凄い話だな!

 で、その辺の事情を反映して「このゲームはゲリラ的にアート作品を出展して名声を高めたりするゲームなのか?」と言えば、実はそういう要素はまったくないんですが、調べてみたらめちゃくちゃすぎて面白かったのでこの場を借りてお伝えしておかねばと思った次第です。そりゃコラボゲームの1つや2つくらい作るわ…… アートだわ……

◆ミラノの名所を回ってカードを集める観光ゲーム

 ゲームは6日間に渡って午前、午後、夜の3手番を行い、全18手番でより多くの得点を獲得することを目指します。

 シンプルなルールのセットコレクションのゲームながら、長期的視野を必要としつつ、手番順による綾も随所に感じる渋いプレイ感のゲームです。

 やはりプロダクトの性格上「フォーリサローネに興味はあるけども、ユーロ文脈のボードゲームを遊んだことはない」という人をターゲットにしているのでしょう、テキストによる特殊効果もなく、これぞまさにおユーロと言った仕上がりの1時間程度で終わるファミリーゲームです。

 ゲームには大きく分けて2つの得点手段があり、1つはセットコレクション要素のある「目的カード」からの得点。もう1つは1日の終わりに発生する「人気のある地域」からの得点です。

 一つ目の得点要素、「目的カード」は、記されている2~5枚の組み合わせの「デザインアイコンカード」を支払うことで獲得し、得点化できます。「デザインアイコンカード」は、各地の「イベント」に参加することで獲得できるので、これを集めるためにプレイヤーはミラノの町を練り歩くことになります。

 イベントは、「場所カード」とボード上で示される時間(午前、午後、夜の3種のスペース)の組み合わせによって示され、「指定された時間に指定された場所に辿り着く」ことでイベントに参加する=デザインアイコンカードを獲得することができます。

 もう一つの得点要素、「人気のある地域」は、1日の終了時、つまり3手番ごとに起きる決算のようなもので、自分のいる地域で起きるイベント数に応じた得点が獲得できます。カードによる得点は結構渋いので、こちらの得点もバカにはできません。

 イベントは誰かが参加するたびにコロコロと開催地点が変わるので、人の動きを先読みすることで、将来的にイベントが集中開催されるエリアを見越すこともできる……かもしれません。

 基本的には「目的カード」の達成を目指す。~ために「デザインアイコンカード」を集める。~ために各地のイベントを渡り歩くゲームです。

 1日の終わりには「人気のある地域」で移動を終えたいので、ここにちょっと短期目標と中期目標のジレンマがあり、どういうルートで歩くのが最適なのかをパズルチックに検討する、目的は単純ながら悩みがいのあるゲームになっています。

◆手番はシンプルで簡単!? いや、むしろシンプルすぎてキツい……!?

 手番で行うことは、基本的には1スペース分を無料で移動するだけ(その場に留まることも可)。これ以上ないくらいのシンプルさ加減です。

 ……つまり言い換えると、これは1手で1歩だけ歩いてめちゃ広いミラノの町に点在するイベントに参加せえよとプレイヤーに求めているゲームなのです。えーっと、ぼくの行きたいイベント、夜に開催するんですけど、4歩先だと1日中歩き詰めても間に合わないですよね!?

 手番はシンプル! それゆえに逃げ場がない! なんか見た目に反して結構厳しい経路マネジメントを要求してきますこのゲーム。

 もちろん、それだけではゲームとしては工夫の余地がなさすぎて面白くありません。

 安心してください、Cranio Creationsと言えばルチアーニの諸作でお馴染みの出版社! ルチアーニに習ったのか、彼の得意技、フリーアクションがこのゲームにも導入されているワケですよ!

 それが「追加移動」。

 移動のあとに、プレイヤーは好きな回数の追加移動を行うことができます。やったね!

 しかし、追加移動をするためには「移動トークン」を3枚支払う必要があります。なんやて!?

 で、移動トークンの入手手段は2つあります。

 1つ目は毎朝の定期収入で1枚。ゲームは全部で6日間なので、6枚は確実に貰えるということになります。

 が、これはどちらかと言えば補助的な獲得手段で、ゲームボード上に配置されている移動トークンを拾い集めることが移動トークンの主な獲得手段となります。

 セットアップ時、ゲームボードのすべての地点には移動トークンが1枚だけ置かれます。そして、移動終了時にその地点に移動トークンが置かれていれば、移動トークンを獲得することができます。

 移動トークンはセットアップ時にのみマップに配置され、以降補充されることはないので、人に先んじて移動トークンを拾うことも重要です。

◆人の動きを観察せよ! バッティングを避けるか、敢えてぶつけるか?

 移動トークンの例からもわかるように、このゲームは先手の動きに倣うと途端に不利になるタイプのゲームです。そしてそれは得点に大きく絡む目的カードでも同様です。

 というのは、目的カードはゲームボード上の共通の場に表向きで置かれており、要求されるデザインアイコンカードをいち早く揃えたプレイヤーだけが獲得できる仕組みになっています。集めたデザインアイコンカード自体は非公開ですが、プレイヤーの動き方でどのカードを集めているかはなんとなく記憶できるので、目的が被ると緊張感が生まれます。

 誰かが目的カードを獲得すると、即座に新しい目的カードが公開されますが、そこに示されているデザインアイコンカードがこれまで集めていたものとうまく合致するかと言えば難しいものがあるでしょう。

 このゲームは一手の差が大きく明暗を分けるゲームです。相手より一歩でも先に動けるか、相手より一手でも先にカードを揃えられるか。そこまで見越した上で行動しないと無駄足を踏まされるハメになりかねません。

 逆に言えば、相手の先手を取れれば、相当に優位に立てます。路線変更の難しいこのゲームでうまく相手を出し抜けば、得られる利益は相当なものになります。

 従って手番順はかなり重要です。シンプルであるがゆえに手番順の綾がズドンと効いてくるゲームではあります。

 よくある時計回りにスタートプレイヤーが動くルールなので、快適な1番手の後は、忍耐の必要な4番手が回ってくるので、手番の違いでリスクの取り方も丁寧に変えていく必要があるでしょう。

◆コラボゲームとは思えない、安定感のある仕上がり

 冒頭でもご紹介した通り、このゲームは「フォーリサローネ」という題材ありきで作られたゲームではありまして、「実在する68ヶ所の名所をどーしてもゲームに取り入れなアカンのや!」みたいな制約が存在する中、制作の歪みを感じさせず要素を自然に取り込んで1個のユーロゲームとして着地させている点に編集力(ぢから)を感じさせます。

 言い忘れてたんですがこのゲームは新人デザイナーCristian Confalonieriと、「Dungeon Fighter」「Horse Fever」のデザインに名を連ねるLorenzo Tucci Sorrentinoの共作です。後者のSorrentinoはCranioの諸作で名前を見るので編集気質の人なんだと思います。

 一方でターゲッティングが普段ボードゲームを遊ばない人向けということで、斬新なメカニクスだったり数寄者(すきもの)が呻くようなツイストには欠ける点はありますが、誰でも遊びやすく楽しめる素直な一作に仕上げています。ここはボードゲームの現在の流行を捉えていると言えましょう。

 あんまり書きすぎると興が削がれるので省きますが、勝つために活用できる細かいテクニックも随所にありまして、よく考えて遊ぶとちょっとは有利になるよ、という作りにはなっています。そこはゲームメーカーならではのいい意味での底意地の悪さを感じて愉快ですね。

 一方でカードのめくりなど適度な運要素もありーので、予想外のポロリでキャッキャすることもありますし、もちろんゲームボードの描き込みの細かさなどアート面の尖りっぷりは言うまでもなく、見ているだけで気分がアガるゲームです。クリスマスを控えて家族で遊べるボードのしっかりしたゲームをお探しの方、この選択は結構アリなんじゃないでしょうか?

◆プリントアンドプレイのミニ拡張も見逃せない!

 話は変わって、テンデイズゲームズの「フォーリサローネ」販売ページでは、ミニ拡張のPnPファイルを公開しています。

https://tendaysgames.shop/?pid=155509057

 1つ目はプレイヤーごとに個別の能力をもたらすミニ拡張「あなたは私が誰か知らない!」(すげー翻訳調のタイトル)。

 2つ目のミニ拡張「雨だ!」は毎日起きる様々なイベントカードを提供します。

 これらはモジュール式で選択して入れることができるので、好みによって使い分けるのが好ましいでしょう。

 ミニ拡張「あなたは私が誰か知らない!」は、プレイヤーに非対称の特殊能力を付与する拡張です。アッパー調整で変化の入るキャラクター能力はゲームにさらなる華やかさを与えることでしょう。

 基本ゲームはかなりシンプルな作りではあるので、この記事を読んでるような重篤な人は最初からこのミニ拡張を入れて遊ぶのもよいかと思います。

 ミニ拡張「雨だ!」は、より観光っぽさを増すアクシデント性を高める拡張で、パーティ感を向上させ、より起伏のあるゲームプレイが楽しめることでしょう。ファミリー向けに遊びたい方ならこちらの拡張をオススメします。

ゲーム紹介:ジェネシア(Genesia / Eric Lebouze / Super Meeple / 2020)

スケールの大きさを感じさせるボックスアート

 いつもであれば、記事の冒頭で「このゲームは、ジェネシアと呼ばれる島を舞台に~」というような書き出しで始めるのですが、今回の「ジェネシア」を紹介するにあたって、まず、これを声に出して言いたいところです。

 「ジェネシア」は、カードドラフト+マルチ感溢れる陣取りを基にした文明発展のゲームです

 この一文に惹かれる方であるなら、試してみる価値極大と言っていいでしょう。
 かく言う私もその一人。
 スーパーミープルとのミーティングの中で、はじめて概要を聞いた時点で直感的に「これは!」と強く思わされたのです。
 そして、その後、実際にプレイしたわけなのですが、今、その直感は正しかったとはっきりと言うことができます。
 であればこそ、先に書いた一文に惹かれたのであれば、ぜひ、試してみてもらいたいのです。
 もちろん、それ以外の方にもオススメであることには違いありません。
 では、あらためて詳しく紹介していきたいと思います。

ゲームの背景、大まかな流れ

 「ジェネシア」は、ジェネシア島という島を舞台に、カードドラフト、カードによる文明発展や都市の建設、他の一族の土地の征服などを通じ、より高い得点獲得を目指す戦略ゲームです。
 プレイヤーは、ある氏族として、三つの時代に渡って自分の氏族を繁栄させることになります。
 各時代では、ドラフトによるカード獲得、そのカードを用いた氏族の発展と拡大、そして他の氏族への攻撃が行われます。
 まず、ラウンドのはじめに収入を得て、「配られたカードから一枚選んでは隣のプレイヤーへ渡す」を繰り返すドラフトを行います。。
 その後、実際のカードプレイや、ボード上の駒を増やす「雇用」が行われ、攻撃を経て、時代の終了となります。
 これを三時代に渡って行うわけです。

ゲームの中心となるのはカード

  戦略の基本となるのは、やはり、ドラフトによって獲得することになるカードでしょう。
 ドラフトで選択することになるカードは、ボード上への駒の配置や、使い方によっては強力な効果を持つ「発展」、ボード上で駒を移動させるための「拡大」、名前の通り攻撃時に効果を発する「攻撃」、時代ごとのボーナス点をもたらす「時代の終了」という四種類が用意されています。
 各ラウンド、ドラフトを行った後、発展~拡大~攻撃~時代の終了の順番で進められます。それぞれのカードは、対応する決められたタイミングでプレイすることになるわけです。
 
 発展カードは、自国の発展のために駒をボード上に配置するカードがほとんどですが、臨時収入に繋がるカードや、追加でカードを獲得したり支払いコストを軽減するような効果を持ったカードがあり、各ラウンドにおける戦略のベースとなることが多いでしょう。
 拡大カードは、配置された駒をボード上のエリアからエリアへと進め、領土を拡大するためのカードです。単にカードに描かれた移動力を得られるカードもありますが、多くが「何かを基準に移動力を算出する」というものになっており、他のカードやボード上の状況とのシナジーを前提にカードを選ぶことが、より効果的、かつ効率的な拡大に繋がることは言うまでもありません。
 攻撃カードは他の氏族との領土を賭けた戦いに用いられることになります。単純に攻撃力を上げるようなカードはなく、攻撃に関するルールを変更するという趣のカードになります。例えば、「任意の地域を攻撃対象に選べなくなる」というようにです。枚数も少ないですが、このゲームおける攻撃は「攻め込んだ側の駒が攻め込まれた側が配置している駒よりも多ければ勝利(攻め込んだ側は配置してあった駒と同数を失う)」という、ごくごく単純なものだけに、攻撃カードの存在感は決して低くはありません。
 時代の終了カードは、時代の終了時に書かれた条件に基づいてボーナス点を獲得するためのカードです。各ラウンドにおいて、駒を沢山配置し、積極的に移動、征服を行ったとして、それが得点に繋がるかどうかは、この時代の終了カード次第なのです。もちろん、かなり重要なカードと言えるでしょう。

 それぞれのカードには、効果だけでなく、プレイするためのコストや得点が設定されていることも多く、それらを踏まえての選択も鍵となります。

三人プレイの例

ジェネシアを制するのは誰だ!?

 次に特徴的なボードを紹介します。
 このゲームでは、人数に応じてボードが変わる方式を採用しており、中央部となる「ジェネシア」のボードの外側に、色分けされたプレイヤーごとの領土となるボードが配置されることになります。
 このボードは、さらに細かい地域に分けられており、その地域ごとに駒の配置や地域をまたいでの駒の移動が行われます。
 地域に駒を配置し征服していれば地域ごとに設定された得点を得られますし、最終ボーナスの条件によっては自分や他人の領土にどのように駒が配置されているかによっても得点を得ることができます。
 どの得点を狙うにせよ、そう簡単にはいかないのですが、中でも、地域の征服での得点獲得において、中央部のジェネシアがもっとも熾烈な争いが繰り広げられることになります。
 というのも、地域の征服による得点、この中央部のジェネシアが、突出して高く設定されているのです。
 ボードの中心であり、得点も高く、自分の駒を送り込むために必要な移動力もより多く必要となるジェネシアをどう攻略するか。
 攻める場合も、守る場合も、このゲームの「陣取り」としての側面を見た場合、ジェネシアは圧倒的に重要なポイントとなるのです。

さまざまな思惑が入り交じる-戦争か平和か

 このゲームの重要な要素として「陣取り」がある以上、他のプレイヤーとの取ったり取られたり激しい戦いを避けることはできません。冒頭で述べたように、この「ジェネシア」は、他のプレイヤーとのインタラクション、マルチ感がとても強いタイトルなのです。

 さて、各時代、配置や移動の後、いよいよ戦争の機会が訪れます。
 この「ジェネシア」では、この戦いに一工夫があり、それがシンプルながら、ゲームをより一層アツくさせるものになっています。
 攻撃では、各プレイヤー、戦争の意思があるかどうかを「戦争・平和」のトークンを使って一斉に宣言することになります。
 もし、戦争を選んでいるプレイヤーが一人でもいれば、それらの戦争を実行した後で、さらに戦争をするかどうか、全員が決定、宣言を行います。その後、戦争を選んでいるプレイヤーが一人でもいるのであれば、これが繰り返されます。
 一方、戦争を選んでいるプレイヤーが一人もいなかった場合、そこで攻撃は終了となり、時代の終了へと進みます。

 このゲームでの戦争は、前述したように非常に単純です。しかも、戦争の後、ボード上の駒は明らかに減少することになります。
 ここに、このゲームにおける戦争の意思決定と実行のプロセスの醍醐味があります。
 戦争によって駒の減少が明らかである以上、三つ巴でにらみ合いの続くある地域を征服したい場合、他のプレイヤーが戦争を行い-そして駒が減少した後で-戦争を行うことが有利であることは明白です。
 とはいえ、簡単に「平和」を選択することができないことは、このゲームの紹介をここまで読んだ方であれば、容易に想像できるかと思います。
 もし、全員が「平和」を選択したならば、すぐに終了となってしまうからです。
 もちろん、ある一地域でのみ、そういった状況となっているこはまれでしょう。
 一回の戦争で争いを仕掛けられるのは、一地域、一回のみ。ボード上のさまざまな地域でにらみ合いが続いているようであれば、どの地域に対して戦争をしかけるのか。その選択も重要となるのです。

 この戦争のプロセスは、二者択一の読み合いという要素をゲームに加えるだけでなく、展開と選択によって引き起こされかねない「泥沼化」を避けることにも繋がっており、とてもよく出来ています。
 また、駒の数、配置状況が「抑止力」として働くことも多く、にらみ合いの中で生まれる緊張感がとてもいいエッセンスになっています。

勝者は?そして、さらなる楽しみ方

 三時代を終えると、ゲーム終了となります。
 ゲーム中の得点に加え、他プレイヤーの土地に拡大していることによる得点や地域の征服点、そしてゲーム開始前に配られた「秘密の目的」の達成度合いによる得点が加えられ、勝者が決まります。
 「秘密の目的」に用意された条件は実にさまざまで、その条件にどうアプローチしていくかを考えることがプレイのガイドになっており、ボード上の駒の配置や拡大の仕方に自然と差が生まれることで陣取りとしての妙味も増している印象です。
 
 さらに、ルールブックでは、上級ルールとしてチーム戦ルールや、バランス変更の提案、ソロプレイルールについても述べられており、いろいろなバリエーションに挑戦することができるようになっています。

 カードドラフトがメインに据えられているだけに、プレイ感はそこまで重くなく、とはいえ、本気の陣取りが楽しめる「ジェネシア」。
 時代が進むごとに自然と強力になっていくカードによる展開のダイナミズム。
 「戦争」のプロセスにおける対人ゲームとしての読み合いの面白さ。
 テキストの記述の荒さ-これは我々の力不足の部分も多分にあります-、ボードの視認性など、欠点と言える箇所もありますが、それを補って余りある魅力の詰まった一作ではないでしょうか。
 カードのアートワークも美しく、フレーバーテキストも雰囲気満点。
 ぜひ、手に取っていただきたい一作です。

スタッフ神田の視点

◆古代から未来まで、人類の辿る長い旅路を感じさせる壮大なパッケージ

 「ジェネシア」は、カードドラフトをメインエンジンに据えた陣取りゲームです。プレイヤーは最初の人類の子孫の一人となり、自らの氏族や都市を広めて世界を征服することを目指します。

 出版社のSuperMeepleはクラマー&キースリングの怖い顔三部作のリメイクや「アッティカ」リメイク作「U.S.テレグラフ」、「ルイ14世」リメイク作「マフィオズー」など、作品のチョイスや製造品質でメキメキと頭角を現してきたフランスの出版社です。SuperMeepleについて知りたい方はタナカマ店長のこちらの記事をどうぞ。

 そんなSuperMeepleの一つの集大成とも言えるのがこの「ジェネシア」です。タイトルにもなっているジェネシアはゲーム内に登場する架空の島々の名前で、プレイヤーがその支配権を巡って争い合うメインの舞台となります。
 プレイヤーのスタート地点となる「大陸」から等距離に離れたこのジェネシアは、大航海時代における新大陸を彷彿とさせる存在です。ゲーム的には高得点が設定されているため、終盤では熾烈な争いが繰り広げられることでしょう。このタイトルはまさにゲームのクライマックスシーンを冠した形になります。

 ゲームは3つの時代(ラウンド)に分かれ、主に発明品カードから得られる「進歩点」、氏族駒や都市駒の配置によって得られる「拡大点」「征服点」、秘密の目的カードから得られる「目的点」の合計によって最終的な得点を競います。
 つまり、より多くの技術を発見し、より多くの土地を獲得すれば勝利に近づくという構造のゲームで、勝利への道筋は極めて明瞭です。しかしながら、他プレイヤーを出し抜いて勝利を得るためには、それぞれが特別な効果を持つ時代カードの活用が必須となるでしょう。

◆時代カードのドラフト

 後述するメインフェイズ「年代記ステージ」でもいくつかの意思決定の機会はありますが、ゲームのメインエンジンとして用意されているのが「時代カードのドラフト」です。
 ゲームは大きく3つの時代に分かれています。古代、中世、そして未来です。それぞれの時代では対応する「時代カード」で山札を作り、ランダムに配った6枚のカードから5枚のカードをドラフトします。ドラフトの仕組み自体はこの手のゲームに触れたことがある人なら特に説明の必要もないスタンダートなものです。
 これらのカードは後述する4つのフェイズに紐付けられ、それぞれのフェイズに関連した効果を持ち、基本的なアクションをより効率的に実行するものや特別な効果を発動します。強力なカードはコストとしてお金を払う必要があります。

 例えば「車輪の発明」は、氏族駒を移動させる「拡大」フェイズでのみプレイできるカードです。このカードはプレイすることで7移動力を獲得・使用できますが、コストとして2金を支払う必要があります。
 さて、通常、移動には1移動力につき1金のコストが必要です。となると、このカードは普通に7移動力を得るよりも5金分ものオトクがあることになります。ラウンドごとに貰えるお金は15金と決まっているので、5金の節約はデカい!
 さらにこのカードは電球アイコンが付属した「発明品」でもあり、こういった「発明品」カードをプレイすることでプレイヤーは得点となる「進歩点」も獲得することもできます。これもまた見逃せないオトク要素ですね。
 こういったオトク要素が散りばめられたユニークカードが各時代に30枚ずつ、全部で90枚(さらにプロモカードが9枚)もあるので、手元に来たカードのどれを確保し、どれを相手に渡すのを阻止するかを考えるのは楽しくも苦しい時間となるでしょう。

 また、不要なカードは捨て札にすることで4金に替えることもできます。
 あれ、ということは「車輪の発明」は実質1金分のオトクしかない……? いやまあ、「発明品」の得点もありますし……
 果たして何をピックしたら一番オトクなのか…… それともお金に替えるべきなのか…… 多数のユニークカードの性能を精査するのもこの手のゲームの楽しみどころでしょう。

◆3つのフェイズ「年代記ステージ」

 ゲームは3時代を通して行われますが、1つの時代は「時代の開始」「年代記」「時代の終了」の3つのステージから成り立っています。「時代の開始」ではお金を貰ってドラフトを行い、「年代記」ではフェイズの進行に沿って様々な選択を行い、「時代の終了」では都市の建設や得点計算、手番順決定などの自動処理を行います。
 ゲームのメインとなるのが2番目の「年代記」ステージで、これはさらに分割された3つのフェイズで構成されています。
 「年代記」ステージは、新しい氏族駒を買い入れて配置する「発展」フェイズ、配置した氏族駒を移動させる「拡大フェイズ」、他プレイヤーの土地を攻撃して征服する「攻撃」フェイズの3フェイズからなり、ドラフトで獲得した時代カードのプレイを交えて自分の氏族の拡大と発展を図ります。

 「発展」フェイズでは2金につき氏族駒を1個買うことができます。
 「拡大」フェイズでは、発展フェイズと同様の氏族駒の雇用に加えて、1金につき氏族駒を1個移動させることができます。

 この2つのフェイズは資金のやりくりこそ悩むかもしれませんが、やるべきことはできる限り氏族駒を雇って、できる限りそれを広範にばら撒くだけなので、さほど難しくはありません。
 プレイヤーの手腕を真に問われるのは3つ目の「攻撃」フェイズでしょう。

◆ユニークな進行。戦争か?和平か? 「攻撃」フェイズ

 いよいよこの手のゲームの花形、戦争のお時間です。
 各プレイヤーはオモテ/ウラにそれぞれアイコンが記されている戦争/平和タイルを1枚持っています。「攻撃フェイズ」に入ると、各プレイヤーはこの戦争/平和タイルを手のひらに隠して、一斉に公開します。
 その結果、全員が平和の面をオモテにしていた場合のみ「攻撃フェイズ」は終了します。しかし、戦争の面をオモテにしていたプレイヤーがいたら、「そのプレイヤーだけ」攻撃を行います。うわエグ。
 そして、ちょうど1回だけの攻撃を行った後、もう1回この処理を頭から繰り返します。全員が平和面をオモテにして「攻撃フェイズ」を終わらせるまで延々と攻撃を繰り返します。終わりなき暴力の連鎖や……

 攻撃のルールはシンプルです。自分の氏族駒を隣接する他プレイヤーの支配地域に送り、同じ数だけ駒を対消滅させます。結果、他プレイヤーの駒がすべて消滅したら、さらに無料で氏族駒を送り込んでその地域を獲得することができます。
 駒数イコール戦力で、かつサイコロなどのランダマイザもないので攻撃の成否はパッと見でわかります。時代カードにも突然核ミサイルが飛んできて戦力が壊滅するようなぶっ飛び効果も(ほぼ)ないので、戦闘回りは「ディプロマシー」まで時計の針を巻き戻すかのようなシックな味わいです。

 ちなみにルール上は自分の駒数より少ない隣接地域にしか攻撃を仕掛けることはできないので、(ぼくと同じく)平和を愛する皆様は自国防衛のために近隣諸国と同数の兵力だけ配備しときましょう。
 え、なにかの拍子に隣国の駒数が減ったら? それはまあ…… ごちそうさまです。

 とまあ、そんな感じでルールはシンプルですが、結構な疑心暗鬼発生マシーンと言いますか、囚人のジレンマの邪法的活用とも言えるこの「攻撃」フェイズ。なかなか他では見ない仕組みでありながら、手番順の絡みも含めて様々な展開を巻き起こす悶絶必至なルールです。
 願わくば平和裏にゲームを終えたいものですが、勝利こそがゲームの第一目的ですので、プレイヤーは核ボタンに手をかけて睨み合う国家元首の立場を追体験することになるのですね。悲しいなあ。

 ……とまあ、なんやかやで3時代を終えるとゲームも終了となります。非公開の「秘密の目的カード」は、12枚中11枚が領土拡張で追加得点が得られるカードなので、このゲームにおいて支配地域を広げるのは大正義ということになります。攻撃を躊躇う理由はミジンコほどにもないのでどんどん他プレイヤーを殴りましょう。

◆文明発展テーマのゲームとの比較で見る「ジェネシア」のコンセプト

 さて、メインメカニクスにドラフトを採用した点や文明発展テーマの選択から「ジェネシア」は「世界の七不思議」への強いオマージュが見て取れるように感じます。Super Meepleもフランスの出版社ということもあり、フランス人ゲームデザイナー、アントワーヌ・ボゥザへの意識があるのかもしれません。

 では、「ジェネシア」の提示するこのゲームならではのコンセプトとはなんでしょうか? これは割と一目瞭然で、全体ボードを通した攻撃的なインタラクションであると言えましょう。
 「世界の七不思議」は他プレイヤーとのインタラクションを削ぎ落として、同テーマのゲームとしては異質な軽快さを生み出したところにエポックがあったワケですが、すべてのプレイヤーとのインタラクションを間接的にしか持たせない作りは当時から賛否両論ありました。それを一般的なマルチゲームの文脈に沿ってもう一度組み立てようという試みが「ジェネシア」からは感じられます。
 ゲーム内に存在するリソースはお金のみというシンプルな構造もまた「世界の七不思議」を強く連想させる要素です。なんか割と「世界の七不思議」のエポックさを褒め称える内容になりがちなんですが、まあ、それは一つの事実として、そうした「世界の七不思議」の美点を守りつつ、独自の色を出そうとする挑戦を「ジェネシア」からは感じます。1人あたり20分というプレイ時間はこの手のテーマとしてはかなり軽い部類です。

 また、文明発展テーマのゲームにしては異質な点として、このゲームが拡大再生産要素を持たないことが挙げられます。カードにしても、永続的な効果はその時代のみに限定され、次の時代では効果を失ってしまいます。後の時代のカードの方が強力ではあるものの、前の時代の投資が後の時代で効いてくるといった要素は希薄です。発明品カードは時代を跨いでも継続的に効果を発揮し続けますが、これは得点をもたらすだけで、行動回数やリソース収入を増やすような効能はありません。
 また、プレイヤーは2つの氏族駒を1地域に配置することで時代の終了ステージで都市駒を無料で配置できます。都市駒は戦争の際に戦力にカウントできる防壁のような機能、遠い地域に氏族駒を配置できる拠点のような機能を持ちますが、普通のゲームならありそうな収入を増やしたり人口を増やしたりする効果はありません。
 拡大再生産は確かに楽しい要素ではありますが、一度出遅れると挽回が難しく、上手いプレイヤーがより上手く経済系を回してリードを広げていく要素です。そこを切り捨てて陣取りだけに注力しているのはかなり大胆なゲームデザインと言えます。
 やはりこういったテーマのゲームはあれもこれもと取り入れて史上最高最大最強のゲームを作りたくなるところではありますが、そこをグッと堪えて遊びやすさ、わかりやすさに振ったところにデザイナーや出版社の美意識を感じられます。骨組みだけ見る分には相当にシンプルなルールなので、こういったテーマのゲームを初めて触れる人でも勘所が掴みやすいのではないかと思います。

◆マルチゲームの文脈から見る「ジェネシア」

 そうは言っても「ジェネシア」ってマルチなんでしょ? とお思いの方もいるかと思います。あ、いや、こんな質問してくる人は別にそこで躊躇せんか…… ええと、まずはマルチ……マルチゲームについてご説明しましょう。

 マルチゲームとは何か? これは「広義には3人以上のプレイヤーで遊ぶゲームを指し、狭義にはその中で特に殴り合いでバランスを取るゲーム」を指す用語です。2人で遊ぶTCGなんかは相手を殴り倒せばそれで済むワケですが、3人以上で遊ぶ場合、相手を殴り倒すと同時に背後から刺されないように気を払う必要が生まれます。この複数人プレイ特有の政治力学がマルチプレイをマルチゲーム足らしめるものです。
 とは言え、マルチプレイでポリティクスが存在することは当然なので、それをルール上で主体的な行為に変換できるかどうかが、マルチゲーム度の濃淡に繋がるのかもしれません。

 話が逸れました。で、「ジェネシア」のマルチ成分はどの程度かと言えば、結構エグいルールを用意してはいるものの、意外とサッパリしています。
 というのは、ゲーム開始時点では各プレイヤーは遠く離れた自分の本拠地に引きこもっていて、他文明との接触がありません。1時代目は他文明と接触しても戦う余力などなく、2時代目でようやくなんとか、3時代目はもうゲーム終了ですからそりゃやるべきことはやる、となると、ゲーム全体に占める殴り合いの時間はそれほど多くはないんですよね。
 ガッと殴ってサッと終わって後腐れがない。マルチゲーム特有の不毛さや疲労感が苦手な人(ぼくのことです!)もこれなら「あーあ、読みが外れたなー」で笑って終わる範囲なんじゃないかと思います。

 理不尽さが生じるとしたら、「秘密の目的カード」の得点条件に纏わる読みようがない攻撃ですが、まあ、得点がほぼ公開されている以上、明確なキングメーカーを避ける意味でもゲームデザイン上必要ではあるかと思います。ちなみに上級ルールでは、この「秘密の目的カード」を使わないことを選択することもできます。そんなんガチマルチじゃん……
 カード効果にしても、「攻撃」フェイズで使用できるカードが1,2時代目には実は存在せず(!)、3時代目に存在する「攻撃」フェイズ用カードの多くは侵略にペナルティを与える用途を持つため、ゲームデザインとしては安易な殴り合いをむしろ嫌っているフシもあります。ここがまさにマルチとは一線を画すクラシカルなユーロゲームの数々をリメイクしてきたこの出版社の美学なのではないかなと感じています。

 それでいて囚人のジレンマのような戦争/平和タイルのやりとりはマルチでこそ輝くルールです。
 複数のプレイヤーがジェネシアを囲んで睨み合っている中、誰かが最初に攻撃を仕掛け、その疎かになった足元を第三者が狙い、機は良しと見て守備側が反撃に転ずる……それはまるでピタゴラ装置のような複雑な運動体です。
 最大人数となる5人プレイでは戦いの帰趨を見定めることは極めて困難でしょう。それだけに勝利には指導者であるあなたの的確な舵取りが求められます。氏族の繁栄はあなたの手にかかっています!

◆軽と重、「ジェネシア」の重みと手触り

 自他共に認めるマルチ嫌いなぼくですが、マルチには1つだけ効能があって(認めがたいですが!)、それはマルチは「短いルールで濃厚なインタラクションを楽しめる」ということです。「ディプロマシー」を見ても分かる通り、プレイヤー同士の複雑なやりとりを表現するために、マルチという仕掛けは実によく作用するのです。

 またドラフトもルール自体はシンプルですが、カードテキストを読み解いたり、実際の強弱を推定するのは結構なゲーム勘が必要です。ドラフトもまた軽いのに重みがある、独特なボリューム感を持つメカニクスです。

 この軽くて重い、重くて軽い、不思議な手触りが「ジェネシア」のユニークな点だなとぼくは思います。そういう意味では(テキストを読み解くのは若干慣れがいるかもしれませんが)、見た目以上に幅広い層に楽しんで貰えるタイトルなんじゃないかなとも思っています。

 実際、最初の1時代目なんかはあっという間に終わってしまい、却って肩透かしを食うほどです。しかしながら2時代目、3時代目と進んでいくにつれ、このゲームが隠し持っている本性が顕になっていきます。
 「あ、なるほど、そういうゲームだったのか!」と気づいた時には、このゲームをもう一度プレイしたくなっていることでしょう。インタラクションの薄い多人数ソロプレイが主流となっている今、逆に気の知れた友達とバチバチやりあってみるのも乙ではないかと思います。