【スタッフ神田の視点】ファウンダーズ・オブ・テオティワカン

 このエントリーは、テンデイズゲームズスタッフ神田が、自らの視点でゲーム内容を読み解き、紹介していきます。

◆「テオティワカン」と同テーマのスピンオフタイトル

 「ファウンダーズ・オブ・テオティワカン」は、Board & Diceの人気ゲーム「テオティワカン:シティ・オブ・ゴッド」と同テーマのゲームです。しかしながら、この両者はテーマこそ同じものの、実は作者もシステムも全く異なる二作なのです。まずはこの点に触れていきましょう。
 「テオティワカン」の作者は「ツォルキン」「マルコポーロの旅路」の共作者として知られるDaniele Tasciniです(ちなみにTasciniの作品はほとんどが共作で、「テオティワカン」は珍しい単著のタイトルです)。独創性のある仕掛けを盛り込むことに定評のあるデザイナーで、歯ごたえのあるゲーマーズゲームを多数世に送り出してきました。
 かたや今作の作者Filip Głowaczは、いくつかの著作はあるものの、あまりその名前を知られてはいないデザイナーです。同社の「Mandala Stones」が一番名前を知られているかも? くらい。
 そういった事情もあり、個人的には新人デザイナーのチャレンジングな新作に、保険として人気IPのガワを載せたのかなーといった印象を抱きもしました。あるいは「テオティワカン・ダイスゲーム」とか「テオティワカン・カードゲーム」といった本歌取りの内容なのかも……とも推測を働かせたりもして。
 しかも、見た目は個人ボードにポリオミノタイルを敷き詰めていくパズル的な内容。これも今となってはいささか新鮮味の薄れたビジュアルではあり、正直、事前の期待感はそれほど高くはありませんでした。
 ですが、実際遊んでみたら予想外の完成度でビックリしたのです。「え、このゲーム『テオティワカン』と全然違うぞ!? しかもめっちゃ作りが巧みなんだけど!?」
 予想に反してこのゲーム、実によく練り込まれた作品だったのです。なので、「なるほど、これならテオティワカンシリーズに並べたくなる気持ちもわかるなー」と頷いてしまったんですね。
 では、この作品はどこに見どころがあるのか。それをこれから述べていきたいと思います。

◆配置タイミングを計るワーカープレイスメント

 各ラウンドにおいて、各プレイヤーは数枚のディスクをワーカーとして持っています。手番にディスク1枚をアクションスペースに配置することでプレイヤーはアクションポイントを貰い、即座にそれを仕払って対応するアクションを行います。貰ったお小遣いでお買い物をするイメージとでもいいましょうか。
 原理としてはワーカープレイスメントと言っていい……かとも思うのですが、排他性は薄く、メカニズムの力点が多少異なるのでこれは別物と言ってもいいかもしれません。
 というのはこのゲーム、すでにディスクが置かれているアクションスペースにも新しくディスクを重ねてアクションを実行することができるのです。この時、プレイヤーは「積み重ねたディスクの枚数+1点」のアクションポイントを貰えます。つまり、後乗せを狙って効率的にアクションポイントを貰いたいゲームなのです。
 とは言え、それぞれのアクションスペースにはディスクを置ける上限数が決まっているので、アクションスペースが「育つ」のを待っていても自分の手番が回ってくるまでに定員オーバーになってしまうかもしれません。また、アクションで獲得する要素自体は早いもの勝ちなので、ワーカープレイスメント特有のダッチオークション的な趣は健在です。
 また、手番にパスを行うとそのラウンドはもうアクションを行うことができなくなるので、下家を利してしまうことがわかっていても已む無くアクションを選択せざるを得ない局面もあります。このように、本作はアクションを選択するタイミングにインタラクションとジレンマを仕込んだゲームなのです。
 では、最初にアクションを踏むのは不利なのかと思いきや、各アクションスペースにはそれぞれボーナスディスク1枚が配置されていて、最初にアクションを踏んだプレイヤーはこのボーナスを得ることもできるのです。しかもこのボーナスの効果はなかなかに強力です。
 各アクションスペースに置けるディスクの上限は3枚なのでx枚目にディスクを置くことで貰える効果の対応関係は下記の通りとなります。
1枚目:2アクションポイント+ボーナスディスクの効果
2枚目:3アクションポイント
3枚目:4アクションポイント
 一見してちょっとお得感に欠けるのは2枚目の配置ですかね。できれば1枚目の配置でボーナスを貰うか、3枚目の配置で4アクションポイントを貰いたいところです。
 しかしながら、そうそう都合よく手番が回ってくるとも限らず「やりたいけど今じゃないんだー!」と歯ぎしりすることもしばしば。逆に選ぶつもりのなかったアクションが偶然育ったまま目の前に出てきて悩むこともあり。トスのインタラクションを交えたこのプレイ感覚は計画性とアドリブ性の両方を求められて、なかなかにユニークです。

◆ユニークで悩ましい資源管理

 アクションの1つ「建物の建設」では、アクションポイントと同サイズのポリオミノタイルを取って個人ボードに配置できます。こうして配置されたポリオミノタイルは種類に応じて木・石・金の3種の資源のいずれかを産出します。「建物の建設」という名前ではありますが、機能的にはいわゆる資源獲得アクションと言えるでしょう。
 ここでちょっと面白いのが、資源は配置したポリオミノタイルに隣接するすべての空きマスに湧き出す点です。そのため、例えばサイズ1のタイルであれば、最大で上下左右の空きマス4つに資源が湧きますし、凸型のポリオミノタイルであれば、1度で最大8個の資源が得られるワケです。
 つまり、このゲームではタイルを隙間なくピッチリ噛み合わせるのではなく、むしろそれぞれにある程度余裕を持たせて配置した方が効率的に資源を集められるのです。このシステムは単独でもかなり面白い仕組みで、ちょっと違った脳の使い方を要求されて刺激的ですね。
 すでに資源が置かれているマスに新しくポリオミノタイルを配置すると、その資源は消滅してしまうというルールもうまい作りで、資源を使う順番にもプレイングの余地があります。
 さらにボード上には仮面シンボルが記された一まとまりのスペースがあり、それをポリオミノタイルで埋めきることで仮面タイルが貰えます。仮面タイルはいわゆる早取り要素で、即時で得点を得られるため、これもなるべくなら狙っていきたい要素です。
 しかしながら、先述の通り、ポリオミノタイルに覆われた資源は消滅してしまうため、もし仮面シンボルの上に資源が置かれていた場合、その資源を手早く使うか、消滅を覚悟で埋めるかしないといけないのです。この辺りのポリオミノタイルと資源の関係は実に悩ましく、よくできています。

◆ゲームのキーとなる存在「建築士」

 「建物の建設」で獲得した資源は、主に2つのアクションによって消費されます。それが「神殿の建設」と「ピラミッドの建設」です。
 「神殿の建設」では、「建物の建設」で獲得した資源を支払って緑・青・赤の3色のポリオミノタイルをボード上に配置します。
 神殿はこのゲームにおける得点源の一つです。神殿は、建物と同様のポリオミノタイルなので、建物とはボード上の空きマスを奪い合うライバル関係となります。
 そのため、ボード上の限られた空きスペースを資源(建物)に割くか、得点(神殿)に割くかというジレンマがあり、ゲーム中は用地の使い道に頭を悩ませることになるでしょう。
 「ピラミッドの建設」では、ボードの中央部分にピラミッドタイルを配置することができます。ピラミッドは神殿と並ぶ得点源の一つです。こちらも神殿と同様に緑・青・赤の3種がありますが、ピラミッドタイルはポリオミノタイルではないため、建物や神殿とは干渉しません。
 ピラミッドは最大で3段まで建てることができます。1段目には33の9枚、2段目は22の4枚、3段目は1枚のピラミッドタイルを配置することができます。ピラミッドは上段ほど価値が高いので、なるべく高いピラミッドを作りたいところですが、建設には貴重な資源である金が大量に必要となるため、ピラミッドの完成はなかなかに困難です。
 さて、このゲームには都合「建物」「神殿」「ピラミッド」と3種の建築物があるのですが、これら全ては「建築士」駒の位置によって配置可能な位置を制限されています。この建築士の存在は、ある種このゲームの一番のキモと言っても過言ではありません。
 ゲーム中、建築士は個人ボードの4つの辺のいずれかの辺に面しています。手番中プレイヤーはあらゆる建築物を建築士の面する側の辺の2象限、個人ボードの半分の範囲にしか建築物を配置できません。
 手番が終わると建築士は時計回りに次の辺に移動します。そのため、手番によって建設可能な範囲が90度ずつ移り変わっていきます。
 この建築士駒による配置制限は大変いやらしく、「ピラミッドを建てたいんだけどそこじゃない!」というような場面が頻発するのです。計画的に建築物を建てるためには数手先の展開を見越して準備を整えておく必要があります。

◆シンプルながら頭を悩ませる得点システム

 個人ボードは4つの象限で分割されています。ゲーム終了時、それぞれの象限においてプレイヤーは建てられた神殿タイルの数にピラミッドタイルから算出される倍数をかけ合わせた得点を得ます。このゲームには仮面タイルなどのいくつかの得点要素がありますが、メインの得点源となるのがこの神殿とピラミッドの掛け算によるものです。
 神殿とピラミッドはそれぞれが緑・青・赤の3色のいずれかの色に属し、緑の神殿×緑のピラミッド、青の神殿×青のピラミッドのように、同色の神殿とピラミッドだけを掛け算します。
 従って1つの象限には同色の神殿・ピラミッドを集めるのが基本……なのですが、ここがまた心憎いことに、2つの象限を跨ぐ神殿とピラミッドは両方の象限で得点計算を行えるというウマ味要素があるのです。
 そのため可能ならば象限を跨いでタイルを配置したいのですが、先述の建築士駒の制限により、象限を跨ぐ建設は機会が限られているためラクして儲けるのはなかなかに難しいのです。効率的に得点を獲得しようとするならば、相当なグランドデザインが要求されるゲームと言えましょう。

◆オリジナリティに満ちた硬質なゲーマーズゲームをぜひ

 とまあ、主要な要素を書き出してみましたが、どこをどう切り出しても悩ましさが湧き出てくるゲームです。得点システムがシンプルな掛け算なのでプレイの道筋は極めて明瞭なのですが、先述の建築士駒の制限や資源の確保、使う順番などを考えると一筋縄では行きません。
 4人プレイならゲームを通して12手番と手番数もタイトなため、寄り道している暇もなく、あれが足りない、これが足りないと言ってる間にラストスパートに突入する印象です。
 また、結構なボリュームを備えつつも「テオティワカン」からの借り物要素はまったくなく、独自のゲーマーズゲームとしてハイレベルな仕上がりとなっているのは特筆すべきポイントです。共通点は資源を集めてピラミッドを建てる……くらい?
 「テオティワカン」は、コンボ感強めで資源をドバドバ手に入れてドバドバ使うバブリーな作りなのに対して、こちらも資源はドバッと手には入るんですけど、それを効率的に使うには一苦労という出口戦略の難しさがあり、プレイ感は相当に異なります。
 運要素はタイルのめくりとボーナスタイルの並び順ぐらいで全体としてはかなりドライでメカニカルな手触りです。個人ボードいじりがメインなのでインタラクションはそこまで濃くはないのですが、ディスク配置とタイルの先取りに関して絡みは十分で、狙っているタイルの色が被ると手番順のアヤで泣くこともあり、要所要所でボードゲームならではの駆け引きを感じられる内容です。
 一か所難点を上げるとすると、手番最後に建築士駒の移動を忘れやすいという点があります。ここは何かしらコンポーネント上の補助があってもよかったかもしれません。
 他プレイヤーに影響を及ぼさない箇所なのでうっかりを見落としやすい点ですが、前述の通り、建築士駒の制約が効いたゲームなので、参加者全員でチェックを行うなどして防いだほうがよいでしょう。
 といった感じで、「ファウンダーズ・オブ・テオティワカン」は、大変に見どころが多いゲームです。正直無名に近いデザイナーの作品に「テオティワカン」の名前を与えるのは結構なチャレンジではないかとも最初は思ったのですが、遊んでみるとやすやすとハードルを越えていて、これは凄いことをやっているんじゃないかと思います。これはBoard & Diceのデベロップの腕前なのかしら……?
 本家「テオティワカン」に比べると処理もスッキリしてますし、一回りコンパクトになったプレイ時間でお手頃感もあります。どちらが遊びやすい内容かと言えば、これは本作で間違いないでしょう。
 とは言え、「テオティワカン」も完成度が高く、乗りこなし甲斐のある戦略ゲームなので、ゲーム好きの皆様にはぜひ両者を遊び比べて頂いて、どちらがより自分好みかを確かめて頂きたいです。
 また、本作ではBoard & Dice製品ではお馴染みの感もあるソロプレイモードも搭載しています。AI「最初の創設者たち」を相手取り、スコアアタックに挑みましょう。
 実際に遊んでみることで「なるほど、そういうことか!」と膝を打つ部分が多いゲームなので、ルール確認がてら挑戦してみるのもいいかもしれません。

【スタッフ神田の視点】タバヌシ

 このエントリーは、テンデイズゲームズスタッフ神田が、自らの視点でゲーム内容を読み解き、紹介していきます

◆ウルの街で最高の建築士を目指す

 「タバヌシ:ウルの建築士たち」は、「ツォルキン」「テオティワカン」「テケン」など複雑かつ独創性のあるゲーマーズゲームで知られるDaniele TasciniのTシリーズ最新作です。Simone Luciani、Dávid Turczi、Federico Pierlorenziなどパートナーにも恵まれる彼は、今回は新人David Spadaとタッグを組んで新境地の開拓を図りました。
 「タバヌシ」において、プレイヤーは大建築士となり、5つの区画に分かれたウルの都市建築に従事します。プレイヤーは、家を立て、庭園を造り、港を支配し、ジッグラドに祭壇を建築し、ウルで最も偉大なる建築士になることを目的とします。
 このゲームは、独特なダイスの扱いによるゲームエンジンを主軸に据えたゲーマーズゲームで、モダンゲームらしい高度な計画性を要求しつつも、古典的かつ濃厚なインタラクションを備えた、贅沢でハイカロリーなゲームです。Tasciniの諸作を楽しんでいる方でも新鮮さを感じられる一風変わったゲームと言えましょう。
 ちなみに表題の「タバヌシ」は、シュメール語でいうところのBuild、つまり建築を意味する言葉だそうで、全部日本語にすると「建築:ウルの建築士たち」という意味になるようです。サルサソースみたいですね。

◆ダイスピックで移動先が決まる独特のエンジン

 さて、Board&Diceで出版された「テオティワカン」「テケン」において独特なダイスの扱いを見せたTasciniは、この「タバヌシ」においてもその手腕を存分に発揮しています。
 ゲームの舞台となるウルの街は5つの区画に分割されています。それぞれの区画には対応する色のダイスが規定数配置され、プレイヤーはそのうち1つをピックして区画に対応するアクションを行います。ピックされたダイスはそれ自体がリソースとなり、以降のアクションのコストとして用いられます。
 しかしながら! 初手こそ自由にダイスをピックできるものの、2手目以降のダイスピックからは強烈な制限がかかってきます。それは、ピックしたダイス目によって次に選択できる区画が決まってしまうという縛りです。
 先程、ウルの街は5つの区画に分割されていると述べましたが、ダイス目1~5は、それぞれ区画1~5に対応しているんですね。なので、出目1のダイスをピックしたら次回のアクションでは区画1でダイスをピックしてアクションすることが確定してしまうのです。
 当然、次のアクションで選択したダイスによって次次回の区画も決まりますし、その結果、次次次回の区画も……となるため、プレイヤーは常に2手3手先を読む計画性を求められます。今やりたいアクションと次にやりたいアクションをどう折り合わせるかがこのゲームの最初のジレンマと言っていいでしょう。
 ちなみに出目6のダイスは「場にないダイス目として扱える」特殊なダイスです。場にあるダイスが少なくなるほど使える幅が広くなるという扱いは、細かいながら工夫の効いたルールです。
 また、オールマイティな資源「黄金」を支払うことでダイス目の制約を一時的に無視することもできます。とは言え、「黄金」は大事な資源なので、基本的にはダイス目の流れに乗って計画を実行する必要があるでしょう。

◆濃厚なインタラクション。計画? 建築? それとも庭園?

 さて、このゲームは、一言で言えば、リソースを集めて建物を建築することで勝利を目指すリソースマネジメントゲームです。戦略ゲームとしては極めて王道的な組み立てとも言える本作ですが、作者はそこに大きなツイストを持ち込みました。
 それは建物の建築を「計画」と「建築」の二段階の工程に分割したことです。しかも、これは単純に工程を増やしただけではなく、「計画」と「建築」がそれぞれ違うプレイヤーによって行われることもある、という所有権の分割をもツイストとして持ち込んでいるのです
 プレイヤーAが「計画」した建築予定地にプレイヤーBが建物を「建築」するというような、協力、相乗りのインタラクションがこのゲームでは頻繁に発生します。「計画」と「建築」両方を自分1人で行うこともできるのですが、自分で「計画」した建築予定地に建物を「建築」する場合、余分なコストがかかる縛りがあるため、基本的には
・自分が「計画」した建築予定地に他人に建物を「建築」してもらう
・他人が「計画」した建築予定地に自分が建物を「建築」させてもらう
のいずれかが効率的な動き方になります。最終的には自分の所有する建物をボード上により多く建てたいのですが、建物の建築に絡むこと自体に特有のメリットがあるため、他人との相乗りを積極的に狙っていく方がよい結果に結びつく場合が多いです。
 こうした他プレイヤーとの濃厚な絡み合いは二次産業をベースとした経済ゲームではしばし散見されるのですが、このような建築ゲームではなかなか珍しい仕組みです。
 Tasciniの諸作を見ても、例えば「テオティワカン」などはピラミッドの建築次第で他プレイヤーにチャンスを与えるトスのインタラクションがありましたが、他プレイヤーの介在をここまで強烈に意識させるメカニクスではありませんでした。あるいはこれはパートナーのDavid Spadaの持ち味なのかもしれません。
 さらにこのゲームでは、これらの建築のインタラクションをより悩ましくさせる「庭園」という要素もあります。これは独自のアクションによって区画上に配置することができるタイルです。
 庭園は、その周囲の建物により多くの得点機会を与えるため、庭園に隣接させて建物を建築できれば単純にオトクです。しかしながら、そうして建物を建築した場合、庭園の持ち主にも特有のボーナスが与えられます。
 つまり、庭園の持ち主と建物の建築主、両方が庭園に隣接させて建物を建築するメリットがあるのですね。
 どちらも自分のものであれば話は簡単ですが、それぞれ持ち主が異なる場合、自分が得るメリットと他人に与えるメリットを勘案する局面も生まれます。このように自分と他人の利益についてとにかく考える機会が多いゲームなのです。このインタラクションの濃密さはこのゲームの特筆すべき点の一つでしょう。

◆優先すべきは建物? 船? ジッグラト?

 さて、ゲームのメインとなる得点行動は先述の建物の建築です。これは5つに分割された区画のうち3つの区画において実行できる行動で、残りの2つの区画、港とジッグラドではまた異なる要素が用意されています。
 港区画では、資源の変換を容易にする木箱タイルを獲得できたり、持続能力をプレイヤーにもたらす船を獲得できます。どちらの要素もプレイヤーの選択肢を広げる効果があるため、早めに抑えたい要素ではあります。
 特に船は戦略の基幹になるような強力な効果を持つものもあるため、ゲームを始めて何をすればいいか迷ったらまずは船の効果を指針にして戦略を検討するのもいいでしょう(なお、船は建築の副産物として獲得することもできます)。
 ジッグラドでは、家駒を配置することで様々なセットコレクションの得点倍率を高めることができます。
 この区画は、単純に得点を獲得するために訪れる区画ではありますが、一般的な建築区画と異なり、他プレイヤーとの絡みなしに自分の家駒を配置できる点に独自の魅力があります。家駒の配置は後述の「布告カード」の達成条件にも関わってきます。

◆機会「不」均等な決算を乗りこなせるか?

 さて、先述のように、プレイヤーはこれら5つの区画を行き来しながら様々なアクションを行います。各区画で行うアクションは、基本的にその区画で得られる得点に繋がります。
 しかしながら、ただ建物を建築するだけ、船を獲得するだけ、ジッグラドに家を配置するだけでは得点を得ることはできません。
 プレイヤーが得点を得るにはその区画で決算を起こす必要があります。そして、この決算こそが、このゲームの最重要項目なのです。
 繰り返しになりますが、5つの区画には、それぞれに対応する色のダイスが規定数配置されます。これらのダイスはアクションの度にプレイヤーにピックされ、盤上から数を減らして行くワケですが、すべてのダイスがピックされた瞬間、「その区画のみ決算として得点計算を行います」。
 そして、重要なのは、ゲームを通してこの決算は5回しか行われないという点です!
 区画は5つ。決算は5回。ということは、ゲームを通して複数回の決算が行われる区画もあれば、その逆に1回も決算を行わないままゲームが終わる区画も出てくるということです。
 決算を行った区画には規定数のダイスが再配置されるため、特定の区画で何度も決算が行われる例はそれほど顕著ではありません。しかしながら、先述したようにダイス目によって次にアクションを行う区画はほぼ決まっているため、もし、あるダイス目が1つもなければ、その区画で決算を起こすのは極めて難しいということになります。盤上のダイス目を眺めるだけでも今後の流れを予測することができるでしょう。
 自分がどれだけ頑張ってその区画を発展させたとしても、その区画で決算が起こせなければ得点には結びつきません。となれば、1つの区画を独占するよりも他プレイヤーを呼び込んで共存共栄を図ったほうがその区画の決算を確実なものにできます。
 ここもまたやはりプレイヤー間の思惑が色濃く介在する部分で、このゲームでは建物の建築のみならず決算でも互いに協力、あるいは出し抜く必要があるのです。
 なお、ゲーム終了時には最後の得点計算として、全ての区画で1回ずつ決算を行います。なので、区画に投じたリソースがまったく無駄になることはありません。
 とは言え、ゲームを通して自分が注力した区画で重ねて決算を起こした方が得なのは言うまでもないので、全体の流れを読んで決算の起こりそうな区画でアクションを重ねたいものです。

◆「布告カード」誰よりも先んじて達成せよ

 区画の決算はゲームの大半を占める得点源です。そして、次に紹介する「布告カード」は補助的な得点源です。
 布告カードには達成するための条件と、達成した際に得られる得点やリソースが描かれていて、いわゆる目的カードとして機能します。
 特徴として、この布告カードはセットアップ時にのみ公開され、ゲーム中に補充されることがありません。また、布告カードを達成し、得点やリソースを得られるのは先着1名限りとなっています。この得点やリソースは結構な価値があるため、ゲーム中は布告カードを巡っての熾烈な争奪戦が展開されます。
 布告カードは「白の建物を3つ建築せよ」「茶色のジッグラドに家を3つ配置せよ」といった達成条件の組み合わせを持っていて、この組み合わせによってゲーム中の各アクションの価値が微妙に変化します。
 また、先程「独力で建物を計画して建築までするのは非効率的ですよ」と述べといてなんなんですが、布告カードの達成のためには無理矢理にでも自分1人で建物を建てる必要がある局面もあります。「達成条件を競り合って結局布告カードを取れなかった!」という展開が一番悲しいので、流れを捻じ曲げてでも布告カードを取りに行くか、それとも無理はせずに布告カードを見送るか、押し引きの判断は重要です。

◆インタラクションてんこ盛り。Tasciniの新たな側面。

 とまあ、「タバヌシ」の各要素について触れてきましたが、どこをどう取っても他プレイヤーとのインタラクション抜きには語ることのできない、インタラクションの塊のようなゲームです。
 特に不均等な決算は、先進的なモダンユーロよりも古典的なドイツゲームによく見られる仕掛けで、プレイヤー間の強烈な駆け引きを誘発する要素です。決算を発生させたプレイヤーはマルチリソースである黄金を獲得できるオトクさもあるため、決算間近の区画に誰が飛び込むのか睨み合う構図が生まれたりもします。
 一方で、メインとなるダイスピックのエンジンは自分のリソースをスムーズに繋げて得点を伸ばしていくパズル感強めの要素ではあり、各要素をうまくコンボさせていく快感は今風のゲームのそれなんですよね。そのため、外向きの要素と内向きの要素が巧みにミックスされた一作ではあります。
 総合的には、TasciniがBoard&Diceで展開してきた一連のシリーズの中でも際立ってインタラクションの強い一作と言えます。「テオティワカン」「テケン」と作を重ねるにつれ、そうした傾向は少しずつ色濃くなってはいたのですが、このゲームでは特にその風味が強いです。
 なので、Tasciniの過去作が好きな人も苦手な人にも触ってみて欲しいゲームではあります。過去作とは明確に勝負どころの異なるゲームなので、「これが好き」も「これは苦手」も両方あり得ると思います。もちろん、Tasciniのゲーム特有の要素の多さは健在ではあるので、トゥーマッチに感じる方はいるでしょう。
 ただ、要素は膨大ながら実際遊んでみると圧迫感を覚えるような重さはなく、意外とスッキリしてる印象です。「テオティワカン」「テケン」のような処理の枝葉もまあまああって、手番の最後に建築士駒を動かす処理忘れは割と頻発するんですが、これは見た目で処理忘れと一発でわかるので補正が効くのはあるのかもしれません。
 また、他プレイヤーの行動によってオトクな区域やアクションがコロコロ変わるのでアドリブ性、即応力が要求されるゲームではあります。なので、プレイの経験値だけで勝負が決まるような直線勝負だけのゲームではないですね。
 その点も懐が深いというか、1回遊んで底が見えるようなゲームではありません。逆に言えば、乗りこなすにはなかなかの修練がいる暴れ馬ということでもありますが。
 また、実は運要素がそれほど高くないのも興味深いところで、これだけダイスを数多く使うゲームなのだからさぞかしアンコントローラブルなのではないか、と思いきや、ダイス目の修正にも使える黄金が手軽に手に入るので割と行動のコントロールが効くんですね。それ以外の要素となるとセットアップ以降でランダム性のある要素が皆無なので、「テケン」と比べると触感としてはかなりドライです。
 インタラクションとパズル性。アドリブ性と計画性。要素は多くともプレイ感スッキリ。背反する要素をこれだけいっぺんに抱えるゲームはユニークで、よくぞまとめ上げたなと感嘆させられる芸術点の高いゲームと言えましょう。
 特にモダンなゲームが好きだけどソロプレイは好みではないというインタラクション重視な方にはぜひ遊んでもらいたいタイトルです。

【ゲームプレビュー】アーク・ノヴァ-新たなる方舟-

 昨年のエッセンシュピールでの販売が少部数だったにも関わらず、現地の人気投票「スカウトアクション」で一位となり、その後もBoardGameGeekの注目ランキング「THE HOTNESS」でも常に上位(というより、ほぼ一位!)に位置している「アーク・ノヴァ」。
 その「アーク・ノヴァ」日本語版が、いよいよ2月中旬~下旬の発売となります。
 詳細な紹介はあらためて行う予定ですが、簡単な紹介を少し早くお届けいたします。

 日本語ルールをこちらにアップロードいたしましたので、合わせてご覧いただけると参考になるかと思います。→アーク・ノヴァ日本語版ルール

 まず、この「アーク・ノヴァ」は、「どんなゲームなのか」ですが、プレイヤーは、科学的に管理された動物園の運営者となり、動物の生態に応じた囲い地を用意し、さまざまな動物を保護するための保全活動を進めることになります。しかし、そのためには動物園としての人気を高め収入に繋げたり、いろいろな後援者を頼ったりする必要もあります。これらを200枚を超えるカード、個人ボードなどで表現した本格的な戦略ゲームが「アーク・ノヴァ」なのです。

 さて、その「アーク・ノヴァ」、一回目の紹介ではありますが少しマニアックに進めて行きたいと思います。
 というのも、この「アーク・ノヴァ」は、これまでに発表されてきたさまざまなゲームのさまざまな要素をこれでもか!ミックスしたとも言えるタイトルになっており、例えば、BoardGamesGeekでも、このような画像が投稿されていたりします。→リンク
 そこで、このプレビューでは、これまでに発表されてきたタイトルと合わせて、「実際のところどうなんだ?」という形で紹介していきたいと思います。

テラフォーミングマーズ的カードプレイが面白い!

 世界で圧倒的人気を獲得し、今や2010年代~20年代を代表するボードゲームとなった「テラフォーミングマーズ」。
 膨大な枚数が用意されたカードを組み合わせてプレイし、ゲームごとに異なる展開が楽しめる点、それらが生み出すシナジー効果を活かす面白さは、「テラフォーミングマーズ」の影響下にあると言っていいでしょう。
 200枚を超えるカードは、主役でありゲーム展開の主軸となる「動物カード」、永続的なものも含めてより特徴的な特殊効果を持ち活用の仕方が腕の見せ所となる「後援者カード」、ボーナス得点に繋がる「保全計画カード」があり、カードを見ているだけでもゲーム好きにとっては刺激的、やはり一番の魅力と言えるのではないでしょうか。

シヴィライゼーション:新たな夜明け的アクション選択が悩ましい!

 「アーク・ノヴァ」でプレイヤーは、各手番、5種類のアクションカードの中から一種類を選び、そのアクションを実行することになります。
 このアクションカードは、手札と言うわけではなく、個人ボードに用意されたスロットに並べられています。
 スロットは、左から右へ1から5が割り当てられ、そのスロットの数値に応じた強さでアクションを行うことができます。すなわち、1よりも3、3よりも5にあるカードの方がより強力ということになるわけです。
 そして、使用したアクションカードは、それまで置かれていたスロットから1のスロットへと移します。他のカードは、そのカードが置かれていたカードを埋めるように右へと詰めることになります。
 この仕組みにより、同じアクションを効果的に続けて行うことは難しく、どのタイミングでアクションを実行するかの判断がポイントとなるわけです。
 これは、「シヴィライゼーション:新たな夜明け」でも見られた仕組みで、非常にシンプルな仕組みでありながら、アクションの組み立ての面白さ、悩ましさは十二分に感じられるものになっているかと思います。

ブルゴーニュ、オーディン的タイル配置パズルが奥深い!

 カードプレイと並んで、もう一つのメインとなるのが個人ボード上にさまざまな大きさの囲い地やは虫類館、鳥類館、ふれあい動物園と言った動物を飼うための施設や、ロープウェイ、特殊なサル山などの特別な建物のタイルを配置していく、動物園を作り上げるという要素です。
 ボード上をタイルで埋め切ることはもちろんのこと、埋めることによってボーナスを獲得できるマスもあり、いくつかの制限の中で効率よくタイルを配置していくパズル的な面白さがあり、この部分だけでも「一要素」という枠に収まらない奥深さがあります。
 

テラミスティカ的開放システムが気持ちいい!

 さまざまなカードの効果が積み重なることによって、より手が加速、拡大していくのはもちろんですが、「テラミスティカ」や「ハンザテウトニカ」のように個人ボード上に用意された収入や効果が開放されていくことで、さらに手が進むような仕組みも用意されています。
 収入を増やしたり、特別なトークンを獲得したり、アクションカードをレベルアップさせたり、ワーカーである職員を増やしたり……一つ一つの効果はそれほど大きな効果ではありませんが、これらの効果の多くはゲームを通して影響があるため、着実に開放していくことはとても重要です。
 また、それによりプレイの自由度、戦略の幅が広がるため、プレイングの気持ちよさにも繋がっているのです。

ガンジスの藩王的得点システムに痺れる!

 こうして、それぞれのプレイヤーの動物園は拡大し、保全計画も推進していくことになります。
 しかし、「アーク・ノヴァ」の得点システムは非常に凝ったものになっており、どのように動物園を拡大し、保全計画を推進していくか、安易に行っていては決して勝利することは出来ないのです。
 そのポイントは、二つの勝利点トラックにあります。
 それが動物園の人気、アピール力を表す「訴求点」と、どれだけ動物の保全に関わり学術的な貢献を行ったかを示す「保全点」です。
 最近、日本語版も出版された「ガンジスの藩王」でも見られた仕組みですが、「アーク・ノヴァ」でも、この二つの得点トラックを逆のサイドから進めていき、交わったところでゲーム終了となるのです。
 訴求点は、人気の高い、愛らしい動物や勇ましい動物を飼う(カードをプレイする)ことで上がることが多く、収入の底上げに繋がっています。
 保全点は、直接的な得点行動である保全活動を行ったり、希少な動物を飼うことで上がることが多く設定されています。
 訴求点は、比較的上げやすく収入にも繋がるため注力しがちなのですが、保全点のほうが最終的な得点に直結するように作られているため、注意が必要です。 
 このバランスに気を配りつつのプレイが大きなカギとなるでしょう。

強く断言します!ただ盛り込んだだけの安直なゲームではありません!

 ゲームには得てして「オリジナリティ」が求められることがあります。
 そういう点では、この「アーク・ノヴァ」はいささか分が悪いかもしれません。
 しかし、これだけの要素をこれだけ高いレベルでまとめ上げたゲームは他になかなか見ることはできないのではないでしょうか。
 そういう意味では、「アーク・ノヴァ」は唯一無二の存在感を放っており、2022年、間違いなく注目すべきタイトルだと思います。

 このブログでは、「アーク・ノヴァ」の魅力や面白さをさらにお伝えしていく予定です。
 ぜひ、ご期待ください。

【ゲーム紹介】ゴーレム(Golem / Flaminia Brasini, Virginio Gigli, Simone Luciani / Cranio Creations / 2021)

インパクト大のパッケージ

パラメーター上げモンスター爆誕!

 いまやイタリアを代表するデザイナーの一人として、常に注目を集める存在となったシモーネ・ルチアーニと、イタリアのゲームシーンを世界に知らしめた第一人者ともいえるデザイナーチームのアッキトッカが手を組んで発表した最新作が、今回紹介する「ゴーレム」です。

 ゲームの概要としては、プレイヤーは、ゴーレム伝説発祥の街「プラハ」を舞台に、プレイヤーは「ゴーレム」に命を吹き込み、街の中でさまざまなアクションを実行させ、より高い得点を獲得することを目指すというもの。しかし、勝手に街を闊歩するゴーレムを常に支配下に置いておかねばならず、これは決して簡単ではないのです。

 さて、この「ゴーレム」、メインとなるシステムは「パラメーター上げ/パラメーターコントロール」。「パラメーター上げ/パラメーターコントロール」を簡単に説明すると、ルチアーニを人気デザイナーに押し上げたタッシーニとの共作「ツォルキン」でも見られたシステムで、ゲームを通じ、さまざまなトラックを進めていくことで、得点効率を上げたり、ボーナスを獲得したり、収入レベルを押し上げたりを行っていくことになるというもの。
 この「パラメーター上げ/パラメーターコントロール」は、他のシステムと組み合わされ……例えば、ワーカープレイスメントをメインに据えつつ、アクションの結果としてパラメーター上げがあるというようなことが多いのですが、今回の「ゴーレム」は、「パラーメーター上げ/パラメーターコントロール」が、ガツンと主役に据えられたゲームになっているのです。
 いや、「主役」という表現でも生ぬるいかもしれません。「パラメーター上げ/パラメーターコントロール」に偏執的なまでのこだわりが感じられる「パラメーター上げモンスター」と言ってもいいくらいの内容なのです。

どこを見てもパラメーターと開放要素があるのみ!

 普通のゲーム紹介であれば、アクションがどうだとか手番がどうだという話をするところなのですが、「ゴーレム」においては、それは相応しくないでしょう。
 というわけで、このゲームの主役となる「パラメーター」、また、改良することで開放される要素を見ていきたいと思います。

 「ゴーレム」に用意されたパラメーターと改良、その効果は以下の通りとなります。

個人ボード
・研究トラック(「知識」収入アップ、場に出せる書物の数アップ)
・研究進展タイル(書物を出せる場の開放)
・ゴーレム向上タイル(ゴーレムの特殊効果開放)
・ゴーレムトラック(「得点」収入アップ)
・アーティファクト(さまざまな収入の開放)

メインボード
・三列ある街の「通り」(通りに対応する種類の収入アップ)

 と端から端までがパラメーターなり開放要素となっています。さらに、これらはほぼすべてが最終得点にも関連してくるため、ゲーム終了時を見据えて上げたり開放していく必要があります。
 プレイヤーは、ゲームを通じ、これらをひたすら上げ、開放するためにアクションを繰り返していくことになるのですが……このあたりの詳細はのちほど詳しく紹介するとして、それぞれのパラメータと改良について、さらに掘り下げてみたいと思います。

要素が詰まった個人ボード

 まず、「知識」に関連した研究トラックと研究進展タイルです。
 この研究トラックを上げることで、「知識」の収入がアップすると同時に、場に出せる書物の数そ増やすことができます。
 書物は、獲得し場に出すことで、特別なボーナスを得ることができる特殊カードなのですが、同じ色の書物は同じ場に出すことになり、場に出す度にそれまでに出していた書物のボーナスも再び得ることができるのです。研究トラックを進めることで、場に出せる数も増えることになります。「コンボ数を増やす」と考えるとわかりやすいでしょうか。
 しかし、もちろん、そう易々とは許してくれません。
 まず、そもそも書物を出す場を開放しなければ、そもそも同じ色の書物しか出すことができず、著しくプレイの幅は狭くなってしまうのです。
 研究進展タイルによる改良は、その場を増やしてくれるのです。さらに、タイルごとに固有のボーナスもあり、単に場を増やすにとどまりません。どのようにゲームを進めていくかを見据えて改良することが重要です。
 場を開放し、数を増やし、収入を増やし、さらなるアプローチをする―研究トラックと進展タイルひとつとっても、この一連の流れを作らなければならないところに、「ゴーレム」の難しさと面白さがあるのです。

 次は、ゴーレム向上タイルとゴーレムトラックです。
 このゲームのタイトルにもなっている「ゴーレム」は、町中でさまざまなアクションを実行できるものの、そのほかに特別な能力や、もたらしてくれる恩恵はありません。しかし、ゴーレム向上タイルの改良することで、ゴーレムに新たな力を付与し、より強力な存在へと押し上げてくれるのです。
 また、ゴーレムトラックを進めることで、収入として得点を得ることができるようになります。タイトルになっているだけあって、ゴーレムの強さは即ち勝利への近道というところでしょうか。
 しかし、概要でも触れたように、ゴーレムを支配下に置いておかなければなりません。ゴーレムトラックを進めることにより、街にいるゴーレムは通りをより早く進むようになってしまい、結果、プレイヤーの支配力を容易く超えるようになってしまうのです。

 プラハは、錬金術でも有名な街です。錬金釜を用いてアーティファクトを作ることで、プレイヤーは収入の内容を自分なりに決めることが出来ます。
 まず、決められた黄金駒を大釜に配置することで、まず、ボードに用意された収入を開放することになります。
 次に、そのアーティファクトを改良することで、異なる内容でいくつか用意された改良タイルを配置することになり、ボードに用意された収入に改良タイルの効果を組み合わせることで、収入の内容を自分なりに決めることが出来るのです。
 自分の戦略にあったものを伸ばすのか、自分の弱いところを補うのか―ここまで説明してきた研究トラック、ゴーレムトラックにも当てはまるのですが、改良と開放において提示される選択肢は、常にプレイヤーを悩ませてくれるでしょう。

独特な色使いのメインボード

 さらにメインボードにもプラハの「通り」として表現されたトラックが用意されています。
 それぞれの通りに置かれた助手を薦めることで、基本的なリソースの収入を増やすことができます。
 また、各通りにはゴーレムも置かれることになります。ここまでゴーレムを支配下に置くことが重要であることは触れましたが、この通りにおいて、助手がいるマスまでに置かれたゴーレムであれば、支配下に置くことができます。コストを支払えば、助手よりも先に置かれたゴーレムも支配下に置くことはできますが、もちろん、そのコストを安易に支払っているようであれば勝利は遠いものとなるでしょう。
 この通りに置かれたゴーレムもトラックと言っていいかもしれません。ですが、趣は大分異なります。というのも、ゴーレムは命を与えられた存在だけあり、プレイヤーの意思とは別に自らの足で進んでいくのです。
 通りの各マスにはアクションの描かれたタイルが置かれており、ゴーレムを働かせることでゴーレムがいるマスのアクションを実行することができます。
 しかし、ゴーレムが自らの足で進んでいく以上、魅力的なアクションが目の前にあるにも関わらず、狙って実行できると限りません。これは、プレイヤーにとってアンコントローラブルな要素ではあるのですが、決してストレスを受けるようなランダム要素ではありません。むしろ、アンコントローラブルであるが故、今、提示されているアクションを実行することでどれだけ自分に利があるのかを考えるのは、このゲームならではの妙味と言え、この揺らぎを大胆にゲームに取り入れているところにルチアーニとアッキトッカの凄みさえ感じると言っても言い過ぎではないでしょう。

すべては3アクションに凝縮されている

 ここまで各種のパラメータ、開放要素を紹介してきましたが、では、それらの要素にどのようにアプローチしていくのかを次に紹介していきます。
 プレイヤーは、各ラウンドで通常のアクション選択といえる「マーブルアクション」を2回、プレイヤーの分身でもある「ラビ(神父)」と呼ばれるワーカー駒を用いた「ラビアクション」を1回の計3アクションを実行することになります。そして、これを4ラウンドに渡って行うことになります。
 そうです。たったの12アクションで、前述のパラメーターを上げ、開放要素を開放していかなければならないのです。この辺りにも、私が「ゴーレム」を「パラメーターコントロールモンスター」と評する理由があります。
 
 これだけのボリュームと真っ向勝負でアクションを選択していく悩ましさだけでも面白さは十二分ですが、「ゴーレム」は、このアクション選択自体にもしっかりと面白さを盛り込んでいます。

 まず、通常のアクションに該当するマーブルアクション。
 各ラウンドで、ユダヤ教の会堂の名が付けられた「シナゴーグ」と呼ばれるコンポーネントに色つきの球「マーブル」を入れることになります。入れられたマーブルは、アクションが割り当てられたレーンにランダムで振り分けられることになります。
 それぞれのレーンからマーブルを選び取り、対応したアクションを実行するのがマーブルアクションです。
 このとき、重要なのが、振り分けられたマーブルが多いアクションほど、アクション効果が高くなるということです。すなわち、4個のマーブルのあるアクションのほうが、2個のマーブルがあるアクションよりも効果的となるわけです。
 自分の実行したいアクションにマーブルがより多く振り分けられていればいいのですが、そうでないことも多いでしょう。
 また、アクションを実行する際には、マーブルを選び取ることになるため、アクションが実行されるごとにマーブルが減ることになり、対応したアクションの効果は弱められることになります。
 マーブルの個数と、アクションの実行順に気を配り、より効果的にアクションを実行しなければなりません。なにせ、4ラウンドで8回しかマーブルアクションを実行することができないのです。
 さらには、マーブルの色にも注意しなければなりません。各ラウンドごとに用意された人物カードのボーナスを得るためには、カードに描かれた組み合わせでマーブルを取らなければならないのです。
 手番数が少ないことから、ボーナスを取れたかどうかの差が相対的に大きくなることはおわかりかと思います。どのアクションを実行するかはもちろんのこと、マーブルの色もまた軽視できないのです。
 しかし、ただ、考えるポイントを増やし、窮屈なだけではありません。他のレーンのアクションを実行できる「模倣」アクションや、マーブルが減ってしまうもののラウンドの最後にマーブルを入れ直した上でアクションを選択する権利を得る「パス」が用意され、プレイヤーはじっくりと自分の戦略と向き合えるように作られているのです。

人物カードにも注目すべし

 各ラウンド、1回ずつ実行することにある「ラビアクション」ももちろん重要です。
 いずれも特殊な効果が用意された、この「ラビアクション」、どのようなアクションが出てくるのか、なんと、引かれたタイル次第という、ランダム要素になっているのです。それも、ラウンドごとに異なるアクションが出てくることになるのです。
 オーソドックスなマーブルアクションに対し、特殊な効果ばかりのラビアクションは、活かすことができれば強力なアクションですが、それだけに選択の難しさもあるのです。

いずれも独特な効果を持つラビアクション

もちろん、ゴーレムの存在感は大!

 ここまで軽く触れてきましたが、タイトルにもなっている「ゴーレム」についても今一度、しっかりと紹介しておきましょう。
 ゲームのセットアップ時、そして、ゲーム中に作られたゴーレムは、ボード上の通りにあるマスに置かれます。
 このゴーレムは、マーブルアクションの「労働」によって働かせることで、各マスに対応したアクションを実行させることができます。
 労働アクションにおけるマーブル数は、そのまま「働かせることが出来る(=アクションを実行することができる)ゴーレムの数」になるため、各プレイヤーに用意されたゴーレム4体すべてをボード上に置いていれば、アクション数にものを言わせることができるようになるのですが、さきに説明した通り、ゴーレムを支配下においておくことは「ゴーレム」において難しいポイントであるため、「ゴーレム」をいたずらに増やすことは危険かもしれません。
 支配下におけるかどうかは、各通りに置かれた助手次第。助手が置かれたマスと同じか、手前までのゴーレムは支配下に置いていると見なされます。助手をより進めているかがすなわちゴーレムへの支配力になるわけです。
 しかし、助手をどれだけ進められるかもアクションの効果に依るところである上に、通常のマーブルアクションでは進めることはできません。限られた機会の中で助手を進め、その上でゴーレムを確実に活用するのは、決して簡単なことではないでしょう。
 さらに、ゴーレムは、プレイヤーに恩恵をもたらすほどに、支配下に置くことも難しいものになっていきます。
 ゴーレムに対応するゴーレムトラックを進めることで、収入として得点を得ることができるようになるのですが、と同時に、ゴーレムはよりボード上を早く進むようになっていきます。そして、それは、支配下に置くのをより難しくすることを意味するのです。

 扱いが難しくとも、大きな力を秘めたゴーレムですが、ゴーレム自信の力を開放することで、さらに強大な存在になっていきます。
 支配に置きやすくなったり、労働をより多く実行する機会を得たりと、開放することで得られる効果はいずれも強力です。どの効果をどのような順番で開放していくかもまた悩ましいものとなるでしょう。

 手に余るようになってしまったゴーレムは、解体することで取り除くことが可能です。
 解体することで得られるボーナスも用意されているため、積極的に解体したほうがいい状況も少なくないでしょう。
 しかし、支配に頭を悩ませつつもゴーレムを置いておいたほうがいいのか、それとも解体し、支配にかかる労力を他に割いたほうがいいのか。
 ここにも悩ましい選択が待っています。

そして最終得点計算へ……パラメーター上げの醍醐味、ここにあり

 こうして4ラウンドを行った後、ゲームは終了となり、最終得点計算へと進みます。
 ゲーム中、さまざまな要素を開放すると同時に、各カテゴリーに対応した「燭台」を獲得することになります。
 カテゴリーごとに、「対応した燭台の数」と「各カテゴリーでの得点に関係する要素(例えば完成させたアーティファクトの数など)」を掛け合わせたものを最終得点計算中に獲得します。
 ゲーム中に進めたり開放した要素が最終得点に直結する仕組みになっていることで、いわゆる「得点行動」を積極的に取らずとも最終結果に繋がるように作られているのは、非常に気持ちのいいポイントです。もちろん、進めること、開放すること自体がとても難しくはあるのわけですが……。
 
 最終得点計算において、「目標カード」も無視できません。
 描かれた条件を達成することができていたかどうかでボーナス点を得ることができるのですが、異なる種類、系統の目標カードを達成していたならば、その種類数に応じて追加ボーナスを獲得できるのも大きなポイントです。
 もし、目標カードを戦略の柱のひとつにするならば、なにかの要素に特化するだけでなく、満遍なくさまざまな要素に注力する必要が出てくるのです。
 ここまで読んできた方なら、それは決して容易いことではないのはおわかりでしょう。

 パラーメーターのひとつひとつ、開放要素のひとつひとつ、そのすべてがゲームの結果に直結しているというのは当たり前のことかもしれません。しかし、この手応えこそがゲームの醍醐味であり、それを存分に味合わせてくれるのは、「ゴーレム」の、いや、パラメーター上げゲームの強みと言えるでしょう。

ルチアーニ&アッキトッカが放つモンスターに真正面からぶつかれ

さまざまな形で用意されたパラメーターと開放要素に、限られた手番数の中、どうアプローチしていくか。
 ただ着実に積み重ねていくだけでも簡単ではないでしょう。
 しかし、「ゴーレム」に用意された各要素は、必要なコストと進めること、開放することで得られるリターンとのバランスや、ゴーレムに見られるような扱いの難しさなど、隅々まで考えられたものになっており、ただアクションを積み重ねるだけの要素には留まりません。
 
 さらには、マーブルの振り分けやラビアクション、書物カードに見られるランダム性にどう対処していくかという点で、臨機応変さも求められることになります。
 もちろん、このランダム性は、リプレイビリティーにも繋がっていることは言うまでもありません。

 そのボリュームと随所に見られるこだわりから「モンスター」と評しましたが、決してややこしいだけのゲームではありません。
 むしろ、ルチアーニとアッキトッカが「世のコアゲーマーをなんとしてでも満足させるぞ」という意気込みのもと、過剰なサービス精神で作られたゲームのように思えるのです。
 ぜひ、彼らの渾身の一作であるだろう「ゴーレム」を真正面から受け止めてみてください。

「ゴーレム」は、一月下旬発売予定です。

【ゲーム紹介】タバヌシ:ウルの建築士たち(Tabannusi: Builders of Ur / David Tascini, David Spada / Board&Dice / 2021)

 シモーネ・ルチアーニと組んで発表した「ツォルキン」、「マルコポーロの旅路」といったタイトルでゲーマーから熱い支持を集め、その後も精力的に作品を発表し続けるデビッド・タッシーニによる2021年新作です。(デビッド・スパダとの共作)

 これまで、タッシーニの作品で見られた「パラメーター上げ」を今作でも中心に据え、ダイスの出目に翻弄されつつのアクション選択と資源獲得、建築競争による陣取りなどを取り入れ、今作もまたゲーム好きを唸らせる一作となっています。

資源と移動……悩ましすぎるダイス選択

 ゲームの中心に据えられたメカニクスは、「ダイス選択」です。
 まず、プレイヤーは各手番において、自分の駒が置かれた区画に用意されたダイスを選び取ることになります。
 このゲームでは、このダイスに大きな二つの役目が割り当てられており、どちらを重視したダイスを選択するか……いや、いずれもおろそかにできないため、そのダイス選択はとても悩ましいものになっているのです。
 
 まず、一つ目の役目は「資源」です。
 「タバヌシ」においても、他のゲームと同様、さまざまなアクションを実行するために資源が要求されることになります。
 しかし、それぞれの区画には、対応した色のダイスしか置かれていません。
 欲しい色の資源があるならば、それを踏まえ、区画を移動する必要があります。

 では、どのように区画を移動するのでしょうか。
 それが、二つ目の役目、「区画の移動」です。
 区画には1~5が割り当てられており、この区画の番号はダイス目に対応しています。ゲーム中、選び取ったダイス目に対応した区画へ移動することになるのです。
 もちろん、この区画は、単に対応したダイスが置かれているだけの場所ではありません。
 区画ごとにアクション(3つか4つ用意されています)と、さまざまなゲームの要素が割り当てられており、どの区画に行って、どのようにアクションを実行し、どう得点へアプローチしていくかをしっかりと見極めなければなりません。

 しかし、当然、ダイスである以上、その目による揺らぎが存在します。
 決算のたびに資源としてダイスを区画へと戻すことになるのですが、その際にダイスは振られ、その目が決定されます。
 狙った通りに資源を獲得し、区画を訪れ、アクションの効果を積み上げていけるか。ダイス目に翻弄されつつも、的確に手を進めなればならないでしょう。

区画内での建築による陣取り……と同時に、これはパラメーター上げへの挑戦的なアプローチだ

 「タバヌシ」における得点へのアプローチでもっとも重要なものは、区画1、2、3での建築競争です。
 それぞれのエリアで建築を行うためには、まず、計画タイルを配置し、区画内に用意されたマス目のどの場所にどの色の建物を建築するかをあらかじめ決める必要があります。
 その後、その計画タイルに基づいて建物を建築、配置することになります。

 建物を建築するために使う計画タイルは、必ずしも自分のものではなくていいというのが、「タバヌシ」の面白く難しいところです。
 建物の建築は、得点へのアプローチで重要であることは先に触れた通りですが、自分の計画タイルを使って他のプレイヤーが建築を行ったとしても、悪いことばかりではありません。
 他のプレイヤーの建築に自分の計画タイルを使われたプレイヤーは、熟練トラックと呼ばれるパラメーターを上げることができるのです。
 この計画タイルと建築の関係により、自分の狙い通りの建築を進めつつ、他のプレイヤーが建築を狙っているところへうまく介入するというプレイが求められることになります。

 各区画の建築可能な場所(マス)は決して多くありません。また、「水域」、「庭園」といった得点へのさらなるアプローチへの足がかりとなるタイルも用意されており、それらを配置することも重要な要素となっています。
 そのため、必然的に陣取り的な駆け引きが繰り広げられることになり、それもまた大いに悩ましいところです。

 計画タイルの配置によってマス目を確保していく際にボーナスが描かれたタイルに配置をしたならば、そのボーナスを得ることができます。
 どのマスに計画タイルを配置するか、得点へのアプローチや陣取りの駆け引きだけでなく、ボーナスも踏まえた配置が求められることになるわけです。

 この計画タイルの配置とその後の建築は、「パラメーター上げ」メカニクスにおける新たなアプローチと言えるかもしれません。
 単にトラックを上げるだけでなく、縦と横、どのように配置を行うか、どのように広げて行くか、極めて自由度の高いパラメーター上げのように思えるのです。
 これまで、数多くのパラメーター上げタイトルを手掛けてきたタッシーニによる挑戦と言ったら大げさでしょうか。

能力アップとジッグラト建築も軽視するべからず

 「タバヌシ」にはもちろん、その他の要素もしっかりと用意されています。
 
 「港」での家の建築や船の獲得は、さらなる勝利点や、アクションのパワーアップをプレイヤーにもたらしてくれます。例えば、ある船を獲得した際には「庭園タイルを置くたびに2勝利点を得る」という能力を得ることができるのです。

 「ジッグラト」の建築を進めるならば、得点計算時にボーナス点をもたらす条件を開放することができます。また、開放した後も同様に建築を進めるならば、
ボーナス点の得点効率を上げることができるため、なんとなく実行するのではなく、自分の戦略に合致した条件であったならば、積極的にジッグラト建築に関わるべきかもしれません。

 こうして、ダイス選択とアクション実行を繰り返し、ある区画からダイスがなくなったならば、その区画での決算を行います。アクションが積極的に行われた区画ほど決算へと近づくわけです。
 決算時に重要な処理が一点あります。決算が行われた区画に対応した資源を手元に持っていたならば、その資源を失うことになります。失うことで、トラック上での前進や、タイルの獲得といった利益を得ることができるのですが、場合によっては戦略に大きく影響が出ることもあるでしょう。
 決算のタイミングを見極めることもまた重要なのです。

「テオティワカン」、「テケン」と異なるタッシーニ流ヘビーユーロ!

 ダイス目に応じたアクション効果の幅とロンデル的なアクション選択、そしてブロック積み上げ要素が特徴的だった「テオティワカン、さまざまなアクションが複雑に絡み合い、解きほぐすかのようなプレイングが新鮮だった「テケン」に続き、タッシーニがBoard&Dice社から発表した「タバヌシ」は、ダイスとパラメーター上げが重要なウエイトを占めつつも、まったく新しいアプローチが見られるタイトルに仕上げられています。
 
 中でも区画内で繰り広げられる建築競争は、陣取り的な駆け引きとあいまって、展開のダイナミックさを感じることもできます。

 2021年の年末年始を代表する一作と言って間違いないでしょう。

【ゲーム紹介】オリジンズ:ファーストビルダーズ(Origins: First Builders / Adam Kwapiński / Board&Dice / 2021)

概要をまとめるとよくある……が、しかし

 「オリジンズ:ファーストビルダーズ」は、2018年に発表した「ネメシス」で一躍脚光を浴びることとなったポーランドの新進気鋭ゲームデザイナー、Adam Kwapińskiによる2021年の新作ストラテジーゲームです。
 
 さて、このあと、システムを簡単にまとめつつ、ゲームの概略を説明していくわけですが、その前にあらかじめはっきりと伝えておきます。
 この概略を読んだだけでは多くの方が既視感を覚え、結果、「オリジンズ:ファーストビルダーズ」の面白さはまったく伝わらないかと思います。
 しかし、この「オリジンズ:ファーストビルダーズ」には、システムの話を中心とした概略だけでは伝わらない「その先の面白さ」が詰まっているのです。
 ぜひ、最後まで読んでみてください!これは強く言っておきます。

 というわけで、まずはシステムをゲームの設定と共に簡単に紹介していきたいと思います。
 舞台となるのは古の時代の、おそらく地球。
 プレイヤーは、まだ近代的な文明が興るよりも遙か昔の時代の指導者となり、自らの文明を発展させていくことを目指します。
 発展させていくために、さまざまなアクションを実行していくことになるのですが、ややSF仕立ての設定となっており、このアクションをもたらすのが宇宙より飛来した超自然的な存在なのです。その存在がもたらしてくれる力というのが、すなわちアクションを実行して得られるさまざまな効果ということになります。
 メインとなるシステムは「ダイスプレイスメント」です。
 プレイヤーは、ワーカーに見立てたダイスをボード上へ置くことで、そこに用意されたさまざまなアクションを実行していきます。
 ダイスの目と色の要素がアクション選択における制限やボーナスに関係があるものの、それ以外の部分はごくごくオーソドックスで、各アクションを実行できる数に制限はなく(いわゆる早取りの要素がない)、むしろ他のゲームと比べると緩すぎるほどかもしれません。

 アクションがもたらす効果も極めてオーソドックスです。
 「特定の資源を3個得る」、「神殿トラックを進める」、「軍事力トラックを進める」、「ワーカー駒を獲得する」、「建物を建てる」……いずれの処理においても例外的な処理もほとんどなく、「アイコンに描いてある通り」というわかりやすさです。

 全員がパスを行うまでが一ラウンドとなり、終了フラグが切られるまで繰り返されることになります。
 
 ラウンドが進む際に、ワーカー駒として使われたダイスの目が「1」増えることになります。これにより次のラウンドでは、そのダイスを用いたアクション選択の自由度はやや増すのですが、「6」の目だった駒はワーカーとしての役目を終え、「助言者」としてプレイヤーボードに置かれることになります。
 この助言者は得点と、ワーカー駒でもある支配者「アルコン」に若干の優位性をもたらしてくれることになるのですが、ダイス自体はワーカーとしての役目を終えているため、ラウンド中に実行できるアクション数が減ってしまうことになるのは注意が必要です。
 「助言者」として役目が変わるタイミングを踏まえた戦略の組み立ては、ごくごくオーソドックスな「オリジンズ:ファーストビルダーズ」にあって、少し特徴的なところかもしれません。とはいえ、そこまで独自性が強いわけではないのですが……。
 
 ここまでが「オリジンズ:ファーストビルダーズ」の基本的な進行をまとめた概略です。
 
 しかし、「オリジンズ:ファーストビルダーズ」の面白さのキモとなる部分は、この概略からは推し量れないところに用意されているのです!

得点へのアプローチが「オリジンズ:ファーストビルダーズ」の真骨頂!あなたは得点を「爆発」させることができるか!?

 概略でも触れたように「オリジンズ:ファーストビルダーズ」のゲーム進行は、非常にオーソドックスです。
 ある程度ゲームに慣れた人であれば、「手なり」で進めること、まあまあ自分のやりたいように進めることも難しくないでしょう。
 しかし、それらの選択を「高得点」に繋げようとした途端、この「オリジンズ:ファーストビルダーズ」のゲームデザインの巧みさ、難しさに気付かされるはずです。

 この「オリジンズ:ファーストビルダーズ」に用意された得点方法、そのシステム自体は、とてもオーソドックスです。
 しかし、その得点スケールは、ある種変態的とも言えるものに設定されています。

 例えば、「神殿トラック」。
 神殿トラックは三本用意され、それぞれで駒をどれだけ進めることが出来たかによって得点を獲得することができます。
 1マス進めると「0点」です。
 2マス進めると「1点」になります。
 3マス進めると「3点」に増えます。
 これが、最終到達点である12マス目まで進めると「70点」になります。
 一つの得点要素でこれだけの差が設定されたゲームは、他に類を見ないと言っていいでしょう。
 「あれ、意外と簡単じゃない?」と思った方もいるかもしれません。
 しかし、三本のうち一本のトラックを闇雲に進めればいいというわけではないのです。
 最終的な得点は「三本のうち、もっとも進んでいるトラックを除いた二本から得点獲得」なのです。
 これは、もし、ある一本の神殿トラックから「70点」を得ようと思ったならば、少なくとも二本の神殿トラックを最終到達点まで進めないといけないということを意味しています。
 さらに、残ったもう一本から「それなり」の得点を得ようと思ったならば、さらに神殿トラックを進めると言うことが重要となるでしょう。

 他の得点要素も見てみましょう。
 「ダイスの色ごとに用意された塔」という最終得点要素があります。
 それぞれの塔には高さの概念があり、建設を繰り返すことで得点を増やすことが出来ます。
 一階建てなら1点、二階建てなら2点、三階建てなら3点、四階建てなら4点……そう、この塔はあくまで「素点」なので、塔の高さが直接もたらす得点はそれほどでもないのです。
 ですが、そこに、それぞれの色に対応した「権力者」が関係してくることで、様相は大きく変わります。
 ゲーム中、配置した都市タイルによって、2×2の地区を形成させることができます。
 その際、ワーカー駒だったダイスを「権力者」として地区に配置することになります。
 この権力者として置かれたダイスの目を、そのダイスと同じ色の塔の素点に掛けたものが塔から得られる得点になるのです。
 漠然と塔を高くしても決して高得点は得られません。
 塔を高くしつつ、都市タイルをうまく配置し地区を形成し、「目が大きくなった」適切なタイミングでダイスを権力者として送り込むことで、はじめてしっかりとした得点に繋げることができるのです。

 そのほか、「コンスタントに得点獲得が狙えるものの、他のプレイヤーと比べ抜きん出る必要がある」軍事トラック、「地区の形成時に決められた建物の種類で構成されているならば大きなボーナスが得られる」地区カードなど、どの得点要素も扱いの難しさはあるものの、その分のリターンは魅力的なものばかりです。
 
 そして、それらは手なりのプレイでは決して得ることはできません。
 他のプレイヤーよりも優位にアクションを実行するためには、ダイスの色とアクションマスに割り当てられた色の関係にも気を配る必要が出てきます。
 建物の特殊効果を発動させる機会を増やす、活かすには、より練られたマネージメントが必要となります。

 オーソドックスなシステムだけに、アクション一回当たりの差はわかりにくいかもしれません。
 しかし、それらのアクションをどう得点に結びつけられたか―その結果は、アクションをどう積み重ねたによるものにほかなりません。
 それを「オリジンズ:ファーストビルダーズ」は、否応なしに突きつけてくれるのです。
 あなたは「爆発的な得点力」を味わうことが出来るでしょうか?

相対的な結果である勝敗に満足せず、より高みを目指せ!

 「オリジンズ:ファーストビルダーズ」は、ゲームである以上、得点が何点だたっとしても「順位」がつき、その結果に一喜一憂することはできるでしょう。
 しかし、この歪にも思えるほどに特徴的な得点スケールの中で、どれだけ高みを目指せるか―その点を競うことが出来るようになったならば、「オリジンズ:ファーストビルダーズ」の面白さは何倍にもなるはずです。

 最後に。
 「オリジンズ:ファーストビルダーズ」では、得点トラックを周回するたびに「100点」、「200点」といった得点を記録するためのトークンを受取ります。
 さて、この「200点」のトークン、ファーストプレイの後、あなたの目にはどのように映っているでしょうか?

【ゲームプレビュー】レス・アルカナ:拡張2 力の真珠

 トム・レーマンの人気シリーズ「レス・アルカナ」、二つ目の拡張セットです。

 大きな拡張要素としては2点あります。
 ひとつは、タイトルにもある新しいエッセンス「真珠」、もうひとつは勝利条件が「13点」に引き上げられるということです。

 「真珠」は、「真珠」として扱われるほかに、自分がアクションを行うタイミングで「黄金1個」か「(黄金と真珠以外の)エッセンス2個」へと変換することが可能という、とても強力なエッセンスなのです。
 このことにより、ゲーム中に得た「真珠」をその後の展開に応じてどうように使用するのか、という選択がプレイヤーに求められることになります。
 着実に手を進めるために1個ずつ使うのか、タイミングを見極めここぞという爆発力に繋げるのか―「真珠」をどう活かすかがプレイングのカギとなるのは間違いないでしょう。

 勝利条件が「10点」から「13点」に引き上げられたことも大きな変化です。
 これまでの「レス・アルカナ」が、初めてプレイする前のイメージをはるかに越える「鋭さ」を持ったゲームであることは、この記事を読んでいる人なら、よくおわかりかと思います。
 超高効率なシナジーを持ったエンジン/タブローを作ることが出来たならば、次のラウンドでは勝敗が決してしまう―この鋭さは「レス・アルカナ」の大きな魅力である一方で、自分で戦略を組み立て、じっくりと手を進めていくという点においてはやや物足りなさがあったことは否めないところです。
 今回、勝利条件が「13点」に引き上げられたことで、カード選び(ドラフト採用時)とエンジン構築の面白さに、さらには手を進めていく面白さも加えられたと言っていいでしょう。
 新たに加わった「真珠」のポテンシャルと、それをどう活かすかの応用力が求めらることと、この「13点」へ引き上げられたことはとても相性がよく、「面白さのシナジー効果」を生み出しており、ファンであるほどにその違いを感じられるのではないでしょうか。

 もちろん、力ある場所、アーティファクト、マジックアイテム、メイジカード、モニュメントカードも追加されます。

 ファン必携の拡張セット「力の真珠」は、10月9日発売予定です。

【ゲームプレビュー】パックス・パミール:第2版

 まもなくの発売を予定しているタイトルを、詳細な紹介に先駆けて簡単にお伝えする「ゲームプレビュー」。今回は、「パックス・パミール:第2版」です。

 「パックス・パミール:第2版」は、日本でも大きな話題となった「ルート」の作者、Cole Wehrleによるアフガニスタンの歴史的背景をテーマに据えた本格的な戦略ゲームです。

 プレイヤーは、アフガニスタンにおける有力者となり、「グレート・ゲーム」と呼ばれる19世紀から20世紀にかけて英露両国、そしてアフガニスタンに権力者によるアフガニスタンの争奪抗争を通じ、自らの影響力を高めることを目指します。

 ゲームは、ルールブック冒頭でも触れられているように「タブロービルド」と呼ばれる「カードを獲得し自分の場へプレイすることで、カード効果を得て自らを成長させ、より強力な手を打っていく」ことが主となるゲームシステムです。
 この「タブロービルド」は、「エンジンビルド」と非常に近く、同義の言葉として扱われることもありますが、「パックス・パミール」においては、拡大再生産、リソースの再利用といった効果を持つカードはなく、「エンジンビルド」的な側面は薄くなっています。
 代わりに、争奪抗争をテーマとしているだけに、ボード上への戦略的アプローチの選択肢を増やすことや、アクションの強さに関わってくることになります。

 この「パックス・パミール」のもっとも重要、かつ、面白さの元となっているのが、プレイヤー自らがイギリスやロシア、アフガニスタンの権力者になるわけではなく、あくまで有力者の一人として、それぞれの勢力の力を高めていくよう立ち回ることで、得点に繋げていくという点です。
 ボード上では、実際にイギリス、ロシア、アフガニスタンの権力者の駒が展開され、激しく戦いが繰り広げられるのですが、その結果、得点を得られるのは、「影響力のもっとも高い勢力(=得点獲得の権利が発生した勢力)と同盟を組んでいたプレイヤー」なのです。
 そのため、ある勢力と二人、三人のプレイヤーが同盟を組んでいたのであれば、それぞれのプレイヤーの得点機会となるわけです。
 加えて、この同盟関係はゲーム中に変えることもできます。ゲーム展開に応じ、どこと同盟を結ぶのか、大きな決断を迫られることになるかもしれません。

 一方で、ボード上には、プレイヤー自らの駒が置かれることもあります。もちろん、自らの駒がゲーム内において大きな影響があることは言うまでもありません。
 
 カードを獲得しプレイすることでアクションの質や効果を高め、自分の影響力を高めつつ、他の有力者の動向を見据えながら、同盟先を見定め、それら同盟の力を高めるよう、手を打っていく。
 この多層構造が「パックス・パミール」の魅力です。
 
 展開によってはサドンデス勝ちとなることもあり、ゲーム中は一瞬たりとも気が抜けません。
 多層構造かつ、緊張感の高いゲーム展開を、このクラスのゲームとしてはスマートなルールで見事に作り上げています。

 細かいフレーバーも丁寧に日本語化した美麗なカードを含んだ「パックス・パミール:第2版」は、10月下旬発売予定です。

 さらなる詳細なゲーム紹介は、発売の前後にお送りいたします。

※「グレート・ゲーム」の背景となっている英露両国のアジア進出や、アフガニスタンの歴史等を「ゲーム」のテーマとして扱うことの賛否はあるかもしれません。ルールブック巻末でも触れられている通り、デザイナーは真摯に取り組んでいます。

※発売後、この日本語版の売上の一部は、アフガニスタン復興のために寄付されます。

近日発売予定のタイトルミニ紹介

 先日配信しましたテンデイズTV「怒濤の新作紹介スペシャル2021July」でご覧いただいた通り、テンデイズゲームズではこれから年末にかけて多数のゲームを発売予定です。
 発売予定表は別記事として用意してありますが、その記事で書かれているのはあくまで発売予定だけになっています。
 もう少し詳しく知りたいという方も多いと思いますので、この記事では、まもなく発売を迎えるタイトルを、簡単なコメントとともにまとめて紹介していきます。(タイトルによっては発売時により詳細な紹介をさせていただく予定です)

※配信後に発売予定日が変更となったものがあります。
※テンデイズTVでの紹介順と同じではありません。

マグニフィセント:拡張 スヌー(7月23日発売予定)

 サーカスをテーマとした隠れた人気作「マグニフィセント」の拡張セットです。
 タイトルにもなっている「雪」をテーマにした新しい演目といくつかのルールが追加され、得点への異なるアプローチが出来るようになります。
 また、5人プレイに対応します。

 基本セットも再入荷いたしますので、気になっていた方は合わせてご検討ください。

おじゃまっシー(8月発売予定)

 湖に棲む怪獣たちの縄張り争いを描いたゲームです。
 体を模したピースを使って頭か尻尾を伸ばしていき、最後まで生き残ることを目指します。他の怪獣にブロックされたり、ボードの端まで行ってしまい、伸ばせなくなってしまったら脱落です。
 「高さ」があるのがポイントで、他の怪獣の体をまたぐように伸ばすことも可能。
 運要素のない(いわゆる)アブストラクトゲームに抵抗感のある方もいるかもしれませんが、思わぬところでブロックしたりブロックされたり。はたまたそれを乗り越えたり。ちょっとしたドタバタ劇感もあり、気楽に楽しめるのもポイントです。
 ちょっと変わった見た目もインパクト大な、楽しい一作です。

ドラゴミノ(7月下旬~8月中旬発売予定)

 今年のドイツ年間ゲーム大賞キッズゲーム部門を受賞した人気作「キングドミノ」の派生作です。
 ニマスで一枚となるドミノ状のタイルを手元に配置し得点を獲得していくという基本システムはそのままに、よりシンプルにまとめ、対象年齢が下げられました。
 最終的なタイル配置状況で得点計算を行っていましたが、こちらでは同じ地形の描かれたマスを繋げられたらただちに得点獲得のチャンスとなります。「たまご」タイルを引いて、ドラゴンが描かれた「当たり」を引くことが出来たら得点です。
 タイル配置の制限が大幅に緩くなっており、くじ引き方式の得点システムとの組み合わせにより、子どもから大人まで気軽に楽しめるタイル配置ゲームになっています。

グラスロード(8月発売予定)

 人気デザイナー、ウヴェ・ローゼンベルクの2013年発売作が待望の再版となります。
 「リソースマネージメントによる田舎の集落の発展」がテーマと聞くと、ローゼンベルクのゲームとしてはお馴染みなイメージがありますが、バッティング要素が盛り込まれたアクション選択がゲームの軸に据えられており、近年のローゼンベルク作としては、やや異色な位置づけとなっています。
 バッティングを基調としていることもあってか、プレイ時間も60分とほどよくまとめられており、多くの方にオススメできるタイトルになっています。
 2013年の発売後に発表されたミニ拡張を含んでの再版です。(ミニ拡張単体での発売も予定しております)

ベニス(8月~9月発売予定)

 ベニスの街を舞台に、ゴンドラ船でボード上を巡りながらさまざまな仕事をこなし得点を獲得していきます。
 色鮮やかなボード、凝った作りのゴンドラ船やワーカーといった駒はとても華やかでそれも大きな魅力ですが、数多くのタイトルのソロルールを手掛けつつ自身も作も多いターツィ、ルーマニアという地からチャレンジングなゲームを発表するノヴァックのコンビ作だけに、油断のならない一作になっています。というのも、得点を稼ぐ一方でそれらの仕事には汚い部分もあるという設定で、得点が高くともあまりに汚いことを積み重ねると最終的に脱落してしまうのです。
 王道的ながら少し変わった感触のゲームを楽しみたい方にオススメと言えるでしょう。

パックスパミール(8月発売予定)

 「グレート・ゲーム」と呼ばれる19世紀のアフガニスタンにおける権力闘争の時代を描いたマルチゲームです。プレイヤーは、イギリス、ロシア、そしてアフガニスタンの三者のいずれかと同盟を組みつつ、権力基盤を築いていくのです。
 さまざまな効果を持ったカードを獲得し自分の場に並べることによる効果の組み合わせを活用しゲームを進めていく「タブロー・ビルド」システムのゲームで、その中心的な仕組みはシンプルかつスタンダードなものながら、時代背景をしっかりと描いたヒストリカルな部分や他プレイヤーとの絡みは「濃く」作られており、コアゲーマーに向けたものであることには違いありません。
 しかし、ボード上に描かれた地域は6つのみ、基本となるアクションはカードの購入とプレイの二種類と、非常にスマートに作られており、多く方にとって挑戦する価値のタイトルとも言えます。

 100枚にも及ぶ当時の背景をしっかりと記述したフレーバー盛り沢山のカード、抜群の雰囲気を持った駒とボード、日本でも話題となった「ROOT」の作者によるゲームデザインなど、見るべきところの多いテンデイズゲームズが贈るこの夏一番の自信作です。

 ※限定でメタルコインとのセット販売も予定しております。

オリジンズ:ファーストビルダー(8月~9月発売予定)

 豊富な内容物が含められたスケールの大きなパッケージとSFホラーの雰囲気が詰まったゲーム内容で注目を集めた「ネメシス」のデザイナーによる戦略ゲームです。
 テーマは、宇宙からやってきた知的生命体との遭遇と都市の発展というスケールの大きなもの。
 基本的な進行は、ダイスをワーカーとして使ってアクションを実行していくというもの。加えて、都市の発展におけるタイル配置のパズル的な要素、他プレイヤーと差があればあるほど恩恵が得られる軍事力や神殿へのアプローチのためのパラメータ上げなど、ゲーム好きの心をくすぐる要素が多分に含まれ、ボリュームのある作りになっています。
 ポーランドを代表する隠れた実力派デザイナーによる注目の新作と言えるでしょう。

ゲーム紹介:キャピタルラックス2(Captal Lux2 / Eilif Svensson, Kristian Amundsen Ostby / 2020)

 ノルウェーの名デザイナーコンビによる2016年の隠れた逸品に、スケールを大幅にアップさせた続編が登場しました。

基本は二択。しかし、超強烈。

 ゲームでは、異世界の発展と勢力争いが描かれます。
 共通の場となる「首都」に出されたカードを「発展」と見立て、その発展度合いに対し、対応する各勢力(色)のカードをいかに「本拠地」となる手元に出せるかということを競います。
 各勢力は首都に人材を派遣し発展に貢献しつつ、自分の本拠地をより充実させていくというイメージです。
 
 ゲームは三ラウンドに渡って行われます。
 各ラウンド、配られたカードを元に「選び取っては次のプレイヤーに回す」形でのドラフトを行い、各プレイヤーの手札が決まります。

 基本的に手番で行うことはシンプルそのもの。
 手札からカードを「場に出す」か「手元に出す」かの二択です。
 しかし、シンプルでありながら、いや、シンプルゆえに、一手番一手番がとても悩ましいものになっています。
 まず、得点の基本に触れておきましょう。
 得点の基本となるのは、各ラウンド終了時に手元に出されているカードの数比べです。色ごとに自分の手元に出されているカードの数値を合計し、もっとも高い数値だったプレイヤーが、場の中央に出されている同色のカードから得点となるカードを受取ることができます。
 「じゃ、どんどん手元にカードを出していけばいいじゃないか」と思う方もいるかもしれません。しかし、もちろん、そんなに簡単は話ではありません。
 冒頭で書いた通り、場となる「首都」に出されたカードは発展度合いを表しています。この発展度合いが、首都のキャパシティーとなるのです。
 勘のいい方なら気付いたかもしれません。
 そう、各プレイヤーの手元に出されているカードの数値合計は、このキャパシティー(首都上限)までしか許されないのです。
 しかも、首都上限を超えた時のペナルティーはかなりキツいもの。ラウンド中に一時的に超えるのは許されているのですが、得点計算時に、もし超えているようであれば、せっかく手元に出したその色のカード、すべてを捨てなければならないのです。

 一方で、場に安易にカードを出すことができないことは言うまでもありません。
 「場にカードを出す」ということは、すなわち、他のプレイヤーにとっても手元にカードを出しやすくなるということに繋がるからです。

 さらに、各ラウンドの手札となるカードはたったの6枚。一枚一枚の価値たるや、他のゲームの比ではありません。
 
 この強烈な悩ましさ、ジレンマは、間違いなく「キャピタルラックス2」最大の魅力と言えるでしょう。

ゲームごとに異なるパワー、その影響を読み解け!

 もちろん、強烈な悩ましさだけが「キャピタルラックス2」の魅力ではありません。
 ゲームごとに変化を加えてくれる「パワー」も忘れてはいけないでしょう。

 ゲーム開始時に、各色ごとに特別な「パワー」が用意されることになります。
 この「パワー」は、ゲームを通してさまざまな効果をもたらすことになります。
 場となる「首都」にカードが出された場合、その色に対応した「パワー」の効果が発生します。
 「パワー」は、追加手番、カード補充と言ったシンプルなものから、他プレイヤーと完全に異なる駆け引きをもたらすものまで、幅広く、とてもユニークです。

 例えば、上の写真の「悲観論者」。
 彼はこの世の中に何か強い不安を抱えているのでしょう。その自分の不安の矛先を「時限爆弾」による破壊に向けてしまっています。
 桃色のカードを場に出す度に、時限爆弾のカウントダウンを表すタイルを一枚めくります。合計が4までであれば何もおきませんが、5以上になるとドカーン!場に出されているカード、各色ごとに1枚ずつ捨て札となってしまうのです。

 例えば、「商人」。
 プレイヤーは、黄色のカードを場に出す度、金貨を受取ります。
 各ラウンドの終了時、もし、首都上限を手元のカードの数値を超えていたならば、この金貨を支払うことで、(自分にだけ作用するように)首都上限を引き上げることができます。
 さながら、取引で得た財力にものを言わせるイメージでしょうか。

 そのほか、場に出すか手元に出すかによって内容が変わる特別なカードを補充することの出来る「二元論者」、ランダムで退いた特別なタイルによって首都上限を(自分だけがその数値を知った状態で)増減することができる「工作員」、完全版と言える「キャピタルラックス2:ジェネレーションズ」にはロケット発射計画を推し進める「発見者」などなど、各色ごとに4種類ずつ(廉価版「ポケット」では3種類)用意され、その組み合わせのバリエーションは256種類(ジェネレーションズ)にも及ぶのです。

 ベースとなるルールが、非常にシンプルだけに、その効果はシンプルなものであっても、もたらされる影響はかなりものです。
 タイルの効果、ゲームにもたらす影響をしっかりと読み解き、カードを適切、かつ効果的にプレイするのも、「キャピタルラックス2」の醍醐味です。

唸らされる「油断のならないポイント」

 ここまで大きな二つの魅力を書いてきましたが、「キャピタルラックス2」を優れたゲームにしている、というよりも、ゲーム好きにとってはたまらない油断のならないポイントは他にもあります。

 まず、ラウンドの終了タイミングと残った手札の扱いです。
 各ラウンド、あるプレイヤーの手札がつきた時、他のプレイヤーはもう一手番ずつプレイして終了となります。
 ラウンド開始時は、同じ枚数の手札を持っていることになるのですが、「パワー」効果によっては手札枚数が均一ではなくなります。
 そのため、ラウンド終了となった時点で、まだ手札が残っているプレイヤーが出ることも少なくありません。
 この残った手札は、問答無用でそれぞれのプレイヤーの手元に置かれることになります。
 手元に置かれたカードの数値が大きければ大きいほど得点のチャンスに繋がるこのゲームにあって、手元に置かれるカードの枚数が肝心ではあるのですが、前述の通り、首都上限を超えた時のペナルティーはとても大きいため、むしろ手元に置きたくないケースも多々あります。
 このルールにより、手元にどのカードをキープするかという悩ましさ、カードを出すタイミングの見極めのシビアさが増しているのです。

 続いては、ゲーム終了時の得点獲得方法です。
 3ラウンド目の得点計算が行われた後、ゲーム終了の得点獲得があります。
 各プレイヤーは、その数値の大小にかかわらず、手元に置かれていたカードをすべて得点として獲得することになります。
 各ラウンドでは、色ごとの数比べを制したとしても、得点として獲得できるのはカード一枚のみです。
 このゲーム終了時の得点ウエイトが大きく設定されているわけです。
 また、この得点獲得があるため、「ある色を捨てる」、「ある色に絞る」ようなプレイは、無効ではないものの、もたらされる得点を考えると有効的とは言えないでしょう。
 そしてプレイヤーは、どのような状況であっても、出来るだけギリギリ首都上限ギリギリを攻めたい、そんな風に思わされるのです。

 また、冒頭で簡単に触れましたが、各ラウンド、手札は「ドラフト」によって決まります。
 悩ましいゲームだけに、他のプレイヤーに回したカードというのは、極めて重要な情報となるでしょう。もちろん、回ってきたカードから推測することも重要です。
 あくまで数字のみが描かれているのみのカードでありながら、そして手札は6枚と少ないながら、ラウンド開始時点でのドラフトから、シビアな駆け引きは始まっているのです。

まとめ

 「キャピタルラックス2」は、構成する要素が主に「二択のカードプレイ」、「ゲームごとに異なる特殊効果タイル」の二要素だけに、とてもシンプルなゲームです。
 得点のシステムも、「色ごとのマジョリティ争い」という、非常にオーソドックスなものです。
 しかし、悩ましさが詰まったゲームプレイ、至るところに用意されたプレイヤー間の駆け引き、ゲームごとに異なる特殊効果の組み合わせから生まれる展開の妙、これらがとてもセンス良く組み上げられたタイトルです。
 そして、シンプルゆえに「凄み」を感じられるゲームデザインにもなっているように思うのです。

 クワンチャイ・モリヤの魅力的なアートワークにより、ルールブックなどでは深く語られていないながらも、その世界観がうまくゲームにも彩りを与えてくれてもいます。

 「キャピタルラックス2」は、間違いなく多くの方に触れてもらいたいタイトルです。

※「キャピタルラックス2」は、完全版といえる「ジェネレーションズ」と廉価版「ポケット」の二種類があります。「ジェネレーションズ」では、「ポケット」と比べ、「パワー」が各色1つずつ多く用意されています。また、「ジェネレーションズ」では、ソロプレイ用のルールと内容物が含まれています。

スタッフ神田の視点

◆全体に貢献しつつも個人の最大利益を目指す

 「キャピタル・ラックス2」において、プレイヤーは未来の首都「ラックス」の有力者として、カードで示される4種の人物を首都か本拠地に派遣(プレイ)します。ゲーム中、プレイヤーは、カードを首都にプレイして公共の利益に貢献するか、あるいはカードを自分の本拠地にプレイして利益を独占するかの二者択一を迫られます。
 もちろん、大変なだけの公共事業は他人に任せて、自分の利益だけを追求できれば最高です。しかしながら、公益を軽視して蓄財に励んでいることが露見してしまえば、これまで築き上げてきたすべての利得を没収されてしまうでしょう。
 したがって、プレイヤーは公共の利益と、自分の利益を天秤にかけて、バランスよく両者を発展させていく必要性があります。その上で、ゲームに勝利するためには他者を出し抜いて自分だけが利益を独占する立ち回りが必要になるでしょう。

 「キャピタル・ラックス2」は2016年に発売された「キャピタル・ラックス」のアップデート版です。基本的なルールにも若干の見直しが入りましたが、それ以上に着目すべきは固定式だった4種の特殊効果が組み換え可能になったことで、「ポケット」版なら81通り、「ジェネレーションズ」版は256通りのセットアップが可能になりました。
 「キャピタル・ラックス2」の各バージョンの違いについてはタナカマ店長の記事にて紹介されているので、そちらをご覧ください。

◆ゲームの流れはごくごくシンプル

 「キャピタル・ラックス2」は、カードドラフトとカードプレイの2つのエンジンによってラウンドが構成されたゲームです。

 ラウンドの始めにはカードのドラフトを行います。全員がカードを6枚引き、同時に2枚をピックして残りを左隣に渡し、また2枚をピックして渡し、最終的に6枚の手札を構築します。
 その後、スタートプレイヤーから手番を行います。手番ですることは手札からカードを1枚選んでプレイするだけです。
 カードは本拠地(自分の場札)へプレイするか、首都(全員共有の場札)へプレイするかのいずれかを選び、どちらの場合でも、プレイされたカードは場札として蓄積されていきます。また、共有の場札にプレイした場合、カードの色に応じた特殊効果が発動します。

 誰か1人の手札が尽きるとラウンド終了のトリガーが引かれます。他のプレイヤーは最後の1手番を行い、余った手札はすべて自分の場札に加えます。

 ラウンドの最後には、4色のカードそれぞれについて得点計算を行います。ここでは自分の場札の数値の合計と共有の場札の数値の合計を比べるのですが、自分の場札の合計値が共有の場札の合計値を上回ってしまった場合、自分の場札をすべて捨てなければなりません。
 その後、それぞれの色について場札の合計値のマジョリティを比較し、勝ったプレイヤーが共有場札から最も高いカード1枚を得点ボーナスとして獲得します。

 こうした流れのラウンドを3回繰り返したところでゲームは終了します。ゲーム中に獲得した得点ボーナス、自分の場札の数値の合計、金貨トークンの得点を合算して最も多くの得点を得たプレイヤーがゲームに勝利します。

◆明瞭平易なゲームデザインの奥に隠された工夫の数々

 こうして文章にしてみると極めて簡素な展開のゲームですが、実際にプレイしてみるとルールの裏側に潜んでいる匠の技の数々に気づかされます。

 まず、着目すべきはその得点システム。プレイヤー共有の場札によって上限値が決まり、ラウンド終了時までにその範囲内に自分のカードの合計値を収める。ここにはチキンレース、バーストの要素があり、まず1つ目のジレンマになります。
 そして、さらにこのバーストをくぐり抜けたとしてもそれだけでは得点には結びつきません。その中でさらに合計値で1位を目指さなければならない。これが2つ目のジレンマになります。
 バースト+マジョリティの組み合わせはバーストの「上限値を越えてはならない」特性と、マジョリティの「最大多数を目指さなければならない」特性が噛み合い、両者が両者の特性を補完する極めて筋の良いメカニクスです。昆布とカツオの掛け合わせみたいなもので、旨味と旨味が足し算ではなく掛け算になる、言わば黄金の組み合わせなのです。

 さらにマジョリティはその機能上、後手が極めて有利なゲームです。なぜなら先手の行動に対して、後手はそれを(時にはちょっと無理して)上回ることも、勝てないと見限って勝負を降りることもできるからです。
 このゲームではプレイヤーは「手番に必ずカードを1枚プレイしなければなりません」。他人の動きを見てから判断を下したいのにルールがそれを許してくれないのです。これが3つ目のジレンマになります。

 さらにラウンド終了時に余った手札は「すべて自分の場札としてプレイしなければなりません」。それがバーストの引き金になるとしても避けることはできないのです。もうお分かりの通り、これが4つ目のジレンマです。
 従ってバーストの危険性があるカードは早めに共有の場札に送り込まなければなりません。しかしバーストの上限値が緩んで喜ぶのは得てして他プレイヤーです。自分のウィークポイントはなるべくポーカーフェイスで隠しつつ、できれば他プレイヤーが上限値を緩めるのを待って、それから自分の場札を増やしたい…… そんな思惑がプレイヤー同士で間断なく巡ります。ルールは平易ながら非常に一手が重いゲームなのです。

 また、ラウンド開始時のドラフトも上手い仕掛けです。自分が流したカードは下家のプレイヤーが確実に持っていて、必ずどこかの局面で登場するのです。4人プレイの場合、ラウンドに登場する24枚のカードのうち、プレイヤーは12枚を既知の情報として持っています。
 この相互作用の強いゲームにおいてドラフトによって得られる情報の果たす役割は非常に大きく、ゲーム展開を予想し、またコントロールする補助線として大きく機能しています。我慢比べの末に他人の動きを見切った時には「してやったり」の気分になることでしょう。
 また、このドラフト自体も6枚から2枚をピックするちょっと変わったシステムで、この工夫により大幅なスピードアップが図られています。なにせ6枚から1枚ずつピックするドラフトのピック回数は5回ですが、このシステムだとピック回数がたったの2回で済みます。
 この高速ドラフトはゲームの密度を高め、記憶負荷への低減を図り、コントロール性を高める一石三鳥の秀逸な仕組みと言えましょう。

 ルールの一つ一つにそれぞれ意味があり、それぞれが有機的に結合して互いが互いを引き立てています。この機械仕掛けのようなシステムの噛み合わせの妙こそがノルウェー人ゲームデザイナーコンビ、エイリフ・スヴェンソンとクリスチャン・オストビーの最たるところです。

◆アブストラクトでもない、アメリトラッシュでもない秀逸なバランス感覚

 また、最初に少し触れた通り、共有場札にカードをプレイした場合、その色に応じた特殊効果が発生します。元々の「キャピタル・ラックス」もこの特殊能力がいい味を出していたのですが、「キャピタル・ラックス2」では、この特殊効果のパターンが大幅に増えています。

 骨組み自体はシンプルながら、この特殊効果の影響も踏まえて手札をやりくりする必要があるため、このゲームはアブストラクトめいた無味無臭には陥らず、モダンなゲームらしいスパイシーさも兼ね備えています。かと言ってアメリトラッシュを思わせる破壊的な効果は意図して避けられていて、このバランス感覚も特筆に値する点です。

 共有場札にカードをプレイすることは直接的には得点に結びつかないため、そのリバランスでもあるのでしょう、特殊効果は基本的にはプレイヤーに有利に働いたり、ゲーム展開に影響を与えるものが多いです。「キャピタル・ラックス2」では、使い方によってはプレイヤーの不利に大きく働く特殊効果も盛り込まれ、さらに尖った展開が約束されています。特殊効果の有利不利によっては共有場札へプレイするマインドにも変化が生じるので、ドラフトはより慎重さが必要になるかもしれません。

◆逆転性を演出する得点システムも必見

 このゲームには膝を叩くルールがいくつもあるのですが、「ラウンド終了時に共有場札の一番大きな数値のカード1枚をボーナス得点として与える」というのもこれまた非常に秀逸なルールで、これによってギリギリまで自分の場札を溜め込んだ優位なプレイヤーは強制的にバースト危険度MAXの状態に押し込まれる羽目になります。
 自分の場札が少ないプレイヤーにとってこの状況は、逆に自分の場札を溜め込む大きなチャンスです。なにせバーストの危機に瀕しているプレイヤーは高確率で共有の場札を増やし、上限値を緩めてくれることでしょうから。
 これだけのシンプルなルールで自然と次の緊張状態を作るとともに逆転の余地を生み出しているのはさすがの一言です。

 また、最終ラウンドではこれまでのラウンドと同様のボーナス得点を得つつ、最後に自分の場札の合計値がすべて得点として計上されます。ゲームを通してこれが得点源として非常に大きなウェイトを占めています。
 したがって最終ラウンドでバーストしてしまうと、その損害は甚大なものになるでしょう。逆に言えば最後まで逆転のチャンスは残されているのです。自分の得点を確保するだけでなく、他人の得点を失わせるための立ち回りも時には重要になるでしょう。

 得点にインフレを持たせつつ、クライマックスを最後に持ってくる得点メカニクスは同作者コンビの手による「アベニュー」と同コンセプトで別アプローチを体現した形でしょう。得点システムにおいてゲームデザイナーは常に「ゲームの最後まで逆転の可能性を残さなければならない」「かと言ってゲーム中の得点要素が疎かであってはならない」という二律背反の命題に悩まされているのですが、スヴェンソン&オストビーはいとも明快に、そして鮮烈に命題への回答を導き出しているのです。
 というか、「キャピタル・ラックス」と「アベニュー」を同時に出した2016年の両者はエグすぎますね!

◆「緊張と緩和」が巡り巡るゲームデザイン

 ゲームデザインには「ゲームの面白さとは緊張とその緩和の繰り返しである」という理論があります。例えば「ダイスを振って1,2,3,4なら成功、5,6なら失敗」という場面は、成功か失敗のどちらが訪れるか判然としない「緊張」の状態であることがわかるでしょう。ダイスを振った後に訪れるのが対となる「緩和」です。ダイスの結果が成功でもあっても失敗であっても、もはや結果は一意に収束し、それ以上の揺らぎはありません。

 ゲームの面白さとは、このような緊張と緩和の状態の行き来によって演出されています。ハードルを設定し、それを飛び越えることで収束する。マッチポンプ的ではありますが、このハードルの高さと頻度をどのように設定するかがゲームデザイナーの腕の見せ所とも言えます。
 このゲームでは「バースト危機的状態」と「非バースト状態」の行き来がまさに「緊張と緩和」の状態遷移に該当します。4つの色それぞれにおいて「バースト危機的状態」と「非バースト状態」のフラグがあり、プレイヤーの一手番ごとにこれらの状態は頻繁に移り変わります。
 そこには自分が関与できない他人の選択による状態遷移も多く、時にはジェットコースターに身を委ねているかのような他律的なめまいに翻弄されます。しかしながら、裏を返せば棚ぼたのような幸運が幾度も訪れるということでもあります。
 シビアな選択に苦しめられるだけではなく、意外なタイミングで嬉しいイベントが転がり込んできて感情が大いに揺り動かされるところにこのゲームの起伏に富んだ楽しさがあります。これほど数多くの「緊張と緩和」を濃密に体感できるゲームは稀と言っていいでしょう。

 繰り返しになりますが、ルール上、手札にあるカードは必ず場札としてプレイされることになります。ですから悩むのは、どのカードをどの順番でどこに出すのか。このゲームは言ってしまえばそれだけなんですが、とにかくその選択が悩ましいゲームです。
 それは織り込まれた巧妙なジレンマの数々と、一手ごとに「緊張と緩和」の状態遷移が誘発される濃密なゲームデザインの為せる技です。
 それでいてプレイフィールはカオスに塗れることなく整然と秩序だっています。元々の骨組みからして抜群に面白かった「キャピタル・ラックス」が大幅なボリュームアップを遂げた今作、ゲーム好きを自負するならマストバイです!