ゲーム紹介:ジェネシア(Genesia / Eric Lebouze / Super Meeple / 2020)

スケールの大きさを感じさせるボックスアート

 いつもであれば、記事の冒頭で「このゲームは、ジェネシアと呼ばれる島を舞台に~」というような書き出しで始めるのですが、今回の「ジェネシア」を紹介するにあたって、まず、これを声に出して言いたいところです。

 「ジェネシア」は、カードドラフト+マルチ感溢れる陣取りを基にした文明発展のゲームです

 この一文に惹かれる方であるなら、試してみる価値極大と言っていいでしょう。
 かく言う私もその一人。
 スーパーミープルとのミーティングの中で、はじめて概要を聞いた時点で直感的に「これは!」と強く思わされたのです。
 そして、その後、実際にプレイしたわけなのですが、今、その直感は正しかったとはっきりと言うことができます。
 であればこそ、先に書いた一文に惹かれたのであれば、ぜひ、試してみてもらいたいのです。
 もちろん、それ以外の方にもオススメであることには違いありません。
 では、あらためて詳しく紹介していきたいと思います。

ゲームの背景、大まかな流れ

 「ジェネシア」は、ジェネシア島という島を舞台に、カードドラフト、カードによる文明発展や都市の建設、他の一族の土地の征服などを通じ、より高い得点獲得を目指す戦略ゲームです。
 プレイヤーは、ある氏族として、三つの時代に渡って自分の氏族を繁栄させることになります。
 各時代では、ドラフトによるカード獲得、そのカードを用いた氏族の発展と拡大、そして他の氏族への攻撃が行われます。
 まず、ラウンドのはじめに収入を得て、「配られたカードから一枚選んでは隣のプレイヤーへ渡す」を繰り返すドラフトを行います。。
 その後、実際のカードプレイや、ボード上の駒を増やす「雇用」が行われ、攻撃を経て、時代の終了となります。
 これを三時代に渡って行うわけです。

ゲームの中心となるのはカード

  戦略の基本となるのは、やはり、ドラフトによって獲得することになるカードでしょう。
 ドラフトで選択することになるカードは、ボード上への駒の配置や、使い方によっては強力な効果を持つ「発展」、ボード上で駒を移動させるための「拡大」、名前の通り攻撃時に効果を発する「攻撃」、時代ごとのボーナス点をもたらす「時代の終了」という四種類が用意されています。
 各ラウンド、ドラフトを行った後、発展~拡大~攻撃~時代の終了の順番で進められます。それぞれのカードは、対応する決められたタイミングでプレイすることになるわけです。
 
 発展カードは、自国の発展のために駒をボード上に配置するカードがほとんどですが、臨時収入に繋がるカードや、追加でカードを獲得したり支払いコストを軽減するような効果を持ったカードがあり、各ラウンドにおける戦略のベースとなることが多いでしょう。
 拡大カードは、配置された駒をボード上のエリアからエリアへと進め、領土を拡大するためのカードです。単にカードに描かれた移動力を得られるカードもありますが、多くが「何かを基準に移動力を算出する」というものになっており、他のカードやボード上の状況とのシナジーを前提にカードを選ぶことが、より効果的、かつ効率的な拡大に繋がることは言うまでもありません。
 攻撃カードは他の氏族との領土を賭けた戦いに用いられることになります。単純に攻撃力を上げるようなカードはなく、攻撃に関するルールを変更するという趣のカードになります。例えば、「任意の地域を攻撃対象に選べなくなる」というようにです。枚数も少ないですが、このゲームおける攻撃は「攻め込んだ側の駒が攻め込まれた側が配置している駒よりも多ければ勝利(攻め込んだ側は配置してあった駒と同数を失う)」という、ごくごく単純なものだけに、攻撃カードの存在感は決して低くはありません。
 時代の終了カードは、時代の終了時に書かれた条件に基づいてボーナス点を獲得するためのカードです。各ラウンドにおいて、駒を沢山配置し、積極的に移動、征服を行ったとして、それが得点に繋がるかどうかは、この時代の終了カード次第なのです。もちろん、かなり重要なカードと言えるでしょう。

 それぞれのカードには、効果だけでなく、プレイするためのコストや得点が設定されていることも多く、それらを踏まえての選択も鍵となります。

三人プレイの例

ジェネシアを制するのは誰だ!?

 次に特徴的なボードを紹介します。
 このゲームでは、人数に応じてボードが変わる方式を採用しており、中央部となる「ジェネシア」のボードの外側に、色分けされたプレイヤーごとの領土となるボードが配置されることになります。
 このボードは、さらに細かい地域に分けられており、その地域ごとに駒の配置や地域をまたいでの駒の移動が行われます。
 地域に駒を配置し征服していれば地域ごとに設定された得点を得られますし、最終ボーナスの条件によっては自分や他人の領土にどのように駒が配置されているかによっても得点を得ることができます。
 どの得点を狙うにせよ、そう簡単にはいかないのですが、中でも、地域の征服での得点獲得において、中央部のジェネシアがもっとも熾烈な争いが繰り広げられることになります。
 というのも、地域の征服による得点、この中央部のジェネシアが、突出して高く設定されているのです。
 ボードの中心であり、得点も高く、自分の駒を送り込むために必要な移動力もより多く必要となるジェネシアをどう攻略するか。
 攻める場合も、守る場合も、このゲームの「陣取り」としての側面を見た場合、ジェネシアは圧倒的に重要なポイントとなるのです。

さまざまな思惑が入り交じる-戦争か平和か

 このゲームの重要な要素として「陣取り」がある以上、他のプレイヤーとの取ったり取られたり激しい戦いを避けることはできません。冒頭で述べたように、この「ジェネシア」は、他のプレイヤーとのインタラクション、マルチ感がとても強いタイトルなのです。

 さて、各時代、配置や移動の後、いよいよ戦争の機会が訪れます。
 この「ジェネシア」では、この戦いに一工夫があり、それがシンプルながら、ゲームをより一層アツくさせるものになっています。
 攻撃では、各プレイヤー、戦争の意思があるかどうかを「戦争・平和」のトークンを使って一斉に宣言することになります。
 もし、戦争を選んでいるプレイヤーが一人でもいれば、それらの戦争を実行した後で、さらに戦争をするかどうか、全員が決定、宣言を行います。その後、戦争を選んでいるプレイヤーが一人でもいるのであれば、これが繰り返されます。
 一方、戦争を選んでいるプレイヤーが一人もいなかった場合、そこで攻撃は終了となり、時代の終了へと進みます。

 このゲームでの戦争は、前述したように非常に単純です。しかも、戦争の後、ボード上の駒は明らかに減少することになります。
 ここに、このゲームにおける戦争の意思決定と実行のプロセスの醍醐味があります。
 戦争によって駒の減少が明らかである以上、三つ巴でにらみ合いの続くある地域を征服したい場合、他のプレイヤーが戦争を行い-そして駒が減少した後で-戦争を行うことが有利であることは明白です。
 とはいえ、簡単に「平和」を選択することができないことは、このゲームの紹介をここまで読んだ方であれば、容易に想像できるかと思います。
 もし、全員が「平和」を選択したならば、すぐに終了となってしまうからです。
 もちろん、ある一地域でのみ、そういった状況となっているこはまれでしょう。
 一回の戦争で争いを仕掛けられるのは、一地域、一回のみ。ボード上のさまざまな地域でにらみ合いが続いているようであれば、どの地域に対して戦争をしかけるのか。その選択も重要となるのです。

 この戦争のプロセスは、二者択一の読み合いという要素をゲームに加えるだけでなく、展開と選択によって引き起こされかねない「泥沼化」を避けることにも繋がっており、とてもよく出来ています。
 また、駒の数、配置状況が「抑止力」として働くことも多く、にらみ合いの中で生まれる緊張感がとてもいいエッセンスになっています。

勝者は?そして、さらなる楽しみ方

 三時代を終えると、ゲーム終了となります。
 ゲーム中の得点に加え、他プレイヤーの土地に拡大していることによる得点や地域の征服点、そしてゲーム開始前に配られた「秘密の目的」の達成度合いによる得点が加えられ、勝者が決まります。
 「秘密の目的」に用意された条件は実にさまざまで、その条件にどうアプローチしていくかを考えることがプレイのガイドになっており、ボード上の駒の配置や拡大の仕方に自然と差が生まれることで陣取りとしての妙味も増している印象です。
 
 さらに、ルールブックでは、上級ルールとしてチーム戦ルールや、バランス変更の提案、ソロプレイルールについても述べられており、いろいろなバリエーションに挑戦することができるようになっています。

 カードドラフトがメインに据えられているだけに、プレイ感はそこまで重くなく、とはいえ、本気の陣取りが楽しめる「ジェネシア」。
 時代が進むごとに自然と強力になっていくカードによる展開のダイナミズム。
 「戦争」のプロセスにおける対人ゲームとしての読み合いの面白さ。
 テキストの記述の荒さ-これは我々の力不足の部分も多分にあります-、ボードの視認性など、欠点と言える箇所もありますが、それを補って余りある魅力の詰まった一作ではないでしょうか。
 カードのアートワークも美しく、フレーバーテキストも雰囲気満点。
 ぜひ、手に取っていただきたい一作です。

スタッフ神田の視点

◆古代から未来まで、人類の辿る長い旅路を感じさせる壮大なパッケージ

 「ジェネシア」は、カードドラフトをメインエンジンに据えた陣取りゲームです。プレイヤーは最初の人類の子孫の一人となり、自らの氏族や都市を広めて世界を征服することを目指します。

 出版社のSuperMeepleはクラマー&キースリングの怖い顔三部作のリメイクや「アッティカ」リメイク作「U.S.テレグラフ」、「ルイ14世」リメイク作「マフィオズー」など、作品のチョイスや製造品質でメキメキと頭角を現してきたフランスの出版社です。SuperMeepleについて知りたい方はタナカマ店長のこちらの記事をどうぞ。

 そんなSuperMeepleの一つの集大成とも言えるのがこの「ジェネシア」です。タイトルにもなっているジェネシアはゲーム内に登場する架空の島々の名前で、プレイヤーがその支配権を巡って争い合うメインの舞台となります。
 プレイヤーのスタート地点となる「大陸」から等距離に離れたこのジェネシアは、大航海時代における新大陸を彷彿とさせる存在です。ゲーム的には高得点が設定されているため、終盤では熾烈な争いが繰り広げられることでしょう。このタイトルはまさにゲームのクライマックスシーンを冠した形になります。

 ゲームは3つの時代(ラウンド)に分かれ、主に発明品カードから得られる「進歩点」、氏族駒や都市駒の配置によって得られる「拡大点」「征服点」、秘密の目的カードから得られる「目的点」の合計によって最終的な得点を競います。
 つまり、より多くの技術を発見し、より多くの土地を獲得すれば勝利に近づくという構造のゲームで、勝利への道筋は極めて明瞭です。しかしながら、他プレイヤーを出し抜いて勝利を得るためには、それぞれが特別な効果を持つ時代カードの活用が必須となるでしょう。

◆時代カードのドラフト

 後述するメインフェイズ「年代記ステージ」でもいくつかの意思決定の機会はありますが、ゲームのメインエンジンとして用意されているのが「時代カードのドラフト」です。
 ゲームは大きく3つの時代に分かれています。古代、中世、そして未来です。それぞれの時代では対応する「時代カード」で山札を作り、ランダムに配った6枚のカードから5枚のカードをドラフトします。ドラフトの仕組み自体はこの手のゲームに触れたことがある人なら特に説明の必要もないスタンダートなものです。
 これらのカードは後述する4つのフェイズに紐付けられ、それぞれのフェイズに関連した効果を持ち、基本的なアクションをより効率的に実行するものや特別な効果を発動します。強力なカードはコストとしてお金を払う必要があります。

 例えば「車輪の発明」は、氏族駒を移動させる「拡大」フェイズでのみプレイできるカードです。このカードはプレイすることで7移動力を獲得・使用できますが、コストとして2金を支払う必要があります。
 さて、通常、移動には1移動力につき1金のコストが必要です。となると、このカードは普通に7移動力を得るよりも5金分ものオトクがあることになります。ラウンドごとに貰えるお金は15金と決まっているので、5金の節約はデカい!
 さらにこのカードは電球アイコンが付属した「発明品」でもあり、こういった「発明品」カードをプレイすることでプレイヤーは得点となる「進歩点」も獲得することもできます。これもまた見逃せないオトク要素ですね。
 こういったオトク要素が散りばめられたユニークカードが各時代に30枚ずつ、全部で90枚(さらにプロモカードが9枚)もあるので、手元に来たカードのどれを確保し、どれを相手に渡すのを阻止するかを考えるのは楽しくも苦しい時間となるでしょう。

 また、不要なカードは捨て札にすることで4金に替えることもできます。
 あれ、ということは「車輪の発明」は実質1金分のオトクしかない……? いやまあ、「発明品」の得点もありますし……
 果たして何をピックしたら一番オトクなのか…… それともお金に替えるべきなのか…… 多数のユニークカードの性能を精査するのもこの手のゲームの楽しみどころでしょう。

◆3つのフェイズ「年代記ステージ」

 ゲームは3時代を通して行われますが、1つの時代は「時代の開始」「年代記」「時代の終了」の3つのステージから成り立っています。「時代の開始」ではお金を貰ってドラフトを行い、「年代記」ではフェイズの進行に沿って様々な選択を行い、「時代の終了」では都市の建設や得点計算、手番順決定などの自動処理を行います。
 ゲームのメインとなるのが2番目の「年代記」ステージで、これはさらに分割された3つのフェイズで構成されています。
 「年代記」ステージは、新しい氏族駒を買い入れて配置する「発展」フェイズ、配置した氏族駒を移動させる「拡大フェイズ」、他プレイヤーの土地を攻撃して征服する「攻撃」フェイズの3フェイズからなり、ドラフトで獲得した時代カードのプレイを交えて自分の氏族の拡大と発展を図ります。

 「発展」フェイズでは2金につき氏族駒を1個買うことができます。
 「拡大」フェイズでは、発展フェイズと同様の氏族駒の雇用に加えて、1金につき氏族駒を1個移動させることができます。

 この2つのフェイズは資金のやりくりこそ悩むかもしれませんが、やるべきことはできる限り氏族駒を雇って、できる限りそれを広範にばら撒くだけなので、さほど難しくはありません。
 プレイヤーの手腕を真に問われるのは3つ目の「攻撃」フェイズでしょう。

◆ユニークな進行。戦争か?和平か? 「攻撃」フェイズ

 いよいよこの手のゲームの花形、戦争のお時間です。
 各プレイヤーはオモテ/ウラにそれぞれアイコンが記されている戦争/平和タイルを1枚持っています。「攻撃フェイズ」に入ると、各プレイヤーはこの戦争/平和タイルを手のひらに隠して、一斉に公開します。
 その結果、全員が平和の面をオモテにしていた場合のみ「攻撃フェイズ」は終了します。しかし、戦争の面をオモテにしていたプレイヤーがいたら、「そのプレイヤーだけ」攻撃を行います。うわエグ。
 そして、ちょうど1回だけの攻撃を行った後、もう1回この処理を頭から繰り返します。全員が平和面をオモテにして「攻撃フェイズ」を終わらせるまで延々と攻撃を繰り返します。終わりなき暴力の連鎖や……

 攻撃のルールはシンプルです。自分の氏族駒を隣接する他プレイヤーの支配地域に送り、同じ数だけ駒を対消滅させます。結果、他プレイヤーの駒がすべて消滅したら、さらに無料で氏族駒を送り込んでその地域を獲得することができます。
 駒数イコール戦力で、かつサイコロなどのランダマイザもないので攻撃の成否はパッと見でわかります。時代カードにも突然核ミサイルが飛んできて戦力が壊滅するようなぶっ飛び効果も(ほぼ)ないので、戦闘回りは「ディプロマシー」まで時計の針を巻き戻すかのようなシックな味わいです。

 ちなみにルール上は自分の駒数より少ない隣接地域にしか攻撃を仕掛けることはできないので、(ぼくと同じく)平和を愛する皆様は自国防衛のために近隣諸国と同数の兵力だけ配備しときましょう。
 え、なにかの拍子に隣国の駒数が減ったら? それはまあ…… ごちそうさまです。

 とまあ、そんな感じでルールはシンプルですが、結構な疑心暗鬼発生マシーンと言いますか、囚人のジレンマの邪法的活用とも言えるこの「攻撃」フェイズ。なかなか他では見ない仕組みでありながら、手番順の絡みも含めて様々な展開を巻き起こす悶絶必至なルールです。
 願わくば平和裏にゲームを終えたいものですが、勝利こそがゲームの第一目的ですので、プレイヤーは核ボタンに手をかけて睨み合う国家元首の立場を追体験することになるのですね。悲しいなあ。

 ……とまあ、なんやかやで3時代を終えるとゲームも終了となります。非公開の「秘密の目的カード」は、12枚中11枚が領土拡張で追加得点が得られるカードなので、このゲームにおいて支配地域を広げるのは大正義ということになります。攻撃を躊躇う理由はミジンコほどにもないのでどんどん他プレイヤーを殴りましょう。

◆文明発展テーマのゲームとの比較で見る「ジェネシア」のコンセプト

 さて、メインメカニクスにドラフトを採用した点や文明発展テーマの選択から「ジェネシア」は「世界の七不思議」への強いオマージュが見て取れるように感じます。Super Meepleもフランスの出版社ということもあり、フランス人ゲームデザイナー、アントワーヌ・ボゥザへの意識があるのかもしれません。

 では、「ジェネシア」の提示するこのゲームならではのコンセプトとはなんでしょうか? これは割と一目瞭然で、全体ボードを通した攻撃的なインタラクションであると言えましょう。
 「世界の七不思議」は他プレイヤーとのインタラクションを削ぎ落として、同テーマのゲームとしては異質な軽快さを生み出したところにエポックがあったワケですが、すべてのプレイヤーとのインタラクションを間接的にしか持たせない作りは当時から賛否両論ありました。それを一般的なマルチゲームの文脈に沿ってもう一度組み立てようという試みが「ジェネシア」からは感じられます。
 ゲーム内に存在するリソースはお金のみというシンプルな構造もまた「世界の七不思議」を強く連想させる要素です。なんか割と「世界の七不思議」のエポックさを褒め称える内容になりがちなんですが、まあ、それは一つの事実として、そうした「世界の七不思議」の美点を守りつつ、独自の色を出そうとする挑戦を「ジェネシア」からは感じます。1人あたり20分というプレイ時間はこの手のテーマとしてはかなり軽い部類です。

 また、文明発展テーマのゲームにしては異質な点として、このゲームが拡大再生産要素を持たないことが挙げられます。カードにしても、永続的な効果はその時代のみに限定され、次の時代では効果を失ってしまいます。後の時代のカードの方が強力ではあるものの、前の時代の投資が後の時代で効いてくるといった要素は希薄です。発明品カードは時代を跨いでも継続的に効果を発揮し続けますが、これは得点をもたらすだけで、行動回数やリソース収入を増やすような効能はありません。
 また、プレイヤーは2つの氏族駒を1地域に配置することで時代の終了ステージで都市駒を無料で配置できます。都市駒は戦争の際に戦力にカウントできる防壁のような機能、遠い地域に氏族駒を配置できる拠点のような機能を持ちますが、普通のゲームならありそうな収入を増やしたり人口を増やしたりする効果はありません。
 拡大再生産は確かに楽しい要素ではありますが、一度出遅れると挽回が難しく、上手いプレイヤーがより上手く経済系を回してリードを広げていく要素です。そこを切り捨てて陣取りだけに注力しているのはかなり大胆なゲームデザインと言えます。
 やはりこういったテーマのゲームはあれもこれもと取り入れて史上最高最大最強のゲームを作りたくなるところではありますが、そこをグッと堪えて遊びやすさ、わかりやすさに振ったところにデザイナーや出版社の美意識を感じられます。骨組みだけ見る分には相当にシンプルなルールなので、こういったテーマのゲームを初めて触れる人でも勘所が掴みやすいのではないかと思います。

◆マルチゲームの文脈から見る「ジェネシア」

 そうは言っても「ジェネシア」ってマルチなんでしょ? とお思いの方もいるかと思います。あ、いや、こんな質問してくる人は別にそこで躊躇せんか…… ええと、まずはマルチ……マルチゲームについてご説明しましょう。

 マルチゲームとは何か? これは「広義には3人以上のプレイヤーで遊ぶゲームを指し、狭義にはその中で特に殴り合いでバランスを取るゲーム」を指す用語です。2人で遊ぶTCGなんかは相手を殴り倒せばそれで済むワケですが、3人以上で遊ぶ場合、相手を殴り倒すと同時に背後から刺されないように気を払う必要が生まれます。この複数人プレイ特有の政治力学がマルチプレイをマルチゲーム足らしめるものです。
 とは言え、マルチプレイでポリティクスが存在することは当然なので、それをルール上で主体的な行為に変換できるかどうかが、マルチゲーム度の濃淡に繋がるのかもしれません。

 話が逸れました。で、「ジェネシア」のマルチ成分はどの程度かと言えば、結構エグいルールを用意してはいるものの、意外とサッパリしています。
 というのは、ゲーム開始時点では各プレイヤーは遠く離れた自分の本拠地に引きこもっていて、他文明との接触がありません。1時代目は他文明と接触しても戦う余力などなく、2時代目でようやくなんとか、3時代目はもうゲーム終了ですからそりゃやるべきことはやる、となると、ゲーム全体に占める殴り合いの時間はそれほど多くはないんですよね。
 ガッと殴ってサッと終わって後腐れがない。マルチゲーム特有の不毛さや疲労感が苦手な人(ぼくのことです!)もこれなら「あーあ、読みが外れたなー」で笑って終わる範囲なんじゃないかと思います。

 理不尽さが生じるとしたら、「秘密の目的カード」の得点条件に纏わる読みようがない攻撃ですが、まあ、得点がほぼ公開されている以上、明確なキングメーカーを避ける意味でもゲームデザイン上必要ではあるかと思います。ちなみに上級ルールでは、この「秘密の目的カード」を使わないことを選択することもできます。そんなんガチマルチじゃん……
 カード効果にしても、「攻撃」フェイズで使用できるカードが1,2時代目には実は存在せず(!)、3時代目に存在する「攻撃」フェイズ用カードの多くは侵略にペナルティを与える用途を持つため、ゲームデザインとしては安易な殴り合いをむしろ嫌っているフシもあります。ここがまさにマルチとは一線を画すクラシカルなユーロゲームの数々をリメイクしてきたこの出版社の美学なのではないかなと感じています。

 それでいて囚人のジレンマのような戦争/平和タイルのやりとりはマルチでこそ輝くルールです。
 複数のプレイヤーがジェネシアを囲んで睨み合っている中、誰かが最初に攻撃を仕掛け、その疎かになった足元を第三者が狙い、機は良しと見て守備側が反撃に転ずる……それはまるでピタゴラ装置のような複雑な運動体です。
 最大人数となる5人プレイでは戦いの帰趨を見定めることは極めて困難でしょう。それだけに勝利には指導者であるあなたの的確な舵取りが求められます。氏族の繁栄はあなたの手にかかっています!

◆軽と重、「ジェネシア」の重みと手触り

 自他共に認めるマルチ嫌いなぼくですが、マルチには1つだけ効能があって(認めがたいですが!)、それはマルチは「短いルールで濃厚なインタラクションを楽しめる」ということです。「ディプロマシー」を見ても分かる通り、プレイヤー同士の複雑なやりとりを表現するために、マルチという仕掛けは実によく作用するのです。

 またドラフトもルール自体はシンプルですが、カードテキストを読み解いたり、実際の強弱を推定するのは結構なゲーム勘が必要です。ドラフトもまた軽いのに重みがある、独特なボリューム感を持つメカニクスです。

 この軽くて重い、重くて軽い、不思議な手触りが「ジェネシア」のユニークな点だなとぼくは思います。そういう意味では(テキストを読み解くのは若干慣れがいるかもしれませんが)、見た目以上に幅広い層に楽しんで貰えるタイトルなんじゃないかなとも思っています。

 実際、最初の1時代目なんかはあっという間に終わってしまい、却って肩透かしを食うほどです。しかしながら2時代目、3時代目と進んでいくにつれ、このゲームが隠し持っている本性が顕になっていきます。
 「あ、なるほど、そういうゲームだったのか!」と気づいた時には、このゲームをもう一度プレイしたくなっていることでしょう。インタラクションの薄い多人数ソロプレイが主流となっている今、逆に気の知れた友達とバチバチやりあってみるのも乙ではないかと思います。

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