プレイ人数:1~6人
プレイ時間:60分
対象年齢:10歳~
小売希望価格:8800円(税込)
◆1vs1の直接対戦を繰り返し決勝戦を目指す
「ゴールデンカップ」は、架空の球技「ファンタスフィア(カードイラストからするとバレーボールサイズのボールをバットで打つ球技っぽい?)」に熱狂するファンタジー世界を舞台にしたゲームです。プレイヤーは監督となって選手のスカウトからチームの運営まで様々な業務を行い、タイトルでもある優勝トロフィー「ゴールデンカップ」の獲得を目指します。

本作は手軽にTCG大会の楽しさを味わえることで人気を博した「チャレンジャーズ」を強く意識しているタイトルです。プレイ人数に関わらず試合では1vs1の対戦を同時並列的に行い、シリーズを通して積み上げた勝ち点の上位2名が決勝戦を行って最終的な勝者を決めます。
ただ、「チャレンジャーズ」と明確に異なるのは、こちらはサッカーや野球などと言ったチームスポーツ運営シミュレーションというコンセプトを持つところでしょうか。先述の通り、このゲームは架空の球技「ファンタスフィア」にまつわるゲームとなっていますが、既存のチームスポーツの運営面をゲーム化する狙いがあったんじゃないかなと思わせる内容となっています。
そのため、本作には簡潔ながら拡大再生産的な経営要素が盛り込まれていて、手持ちのリソースを新戦力のスカウトや施設の改善などにどう割り振るかのジレンマがあります。試合での得失点差が直接勝ち点に結び付く得点システムも相まって、「ここは経営に専念して次節に勝負をかけよう」とか「相手の補強が間に合わなさそうだからここで得点を稼ごう」といった、押し引きのタイミングを考える余地があります。
また、カードの追加とそこからの圧縮に独自のバランス感覚が求められた「チャレンジャーズ」に対して、本作は新戦力の獲得がそのままチーム力の強化に繋がるストレートな作りとなっています。チームの強化方法として様々な手段が用意されてはいますが、ユーロ文脈のゲームに親しんでいる人であればすぐにコツが掴めるでしょう。
◆戦力を伸ばすかしゃがむかのジレンマ「購入キャンペーン」
ゲームでは全6ラウンドで構成され、各ラウンドは「購入キャンペーン」と「試合」の2つのフェイズから成り立っています。1つ目の「購入キャンペーン」はチーム強化の様々な施策を行うフェイズ、2つ目の「試合」は強化したチーム同士で実際の試合を行うフェイズとなります。
「試合」は半自動的に進む作りとなっているため、ゲームのキモとなるのは前者の「購入キャンペーン」となります。「購入キャンペーン」は他プレイヤーとの絡みがないため、それぞれがやりたいことを同時進行で行います。
「購入キャンペーン」のフェイズでは、「新たなチャンピオンのスカウト」「チャンピオンのプレイ」「スカウト能力の向上」「スタジアムの向上」「チームのトレーニング」「新たな戦術の獲得」の6つのアクションが選べます。1ラウンド中に各アクションを何度でも実行できますが、どれもコストとしてコインが必要になります。
まずは「新たなチャンピオンのスカウト」。1コインを支払って手札を好きなだけ捨てて、その後手札が3枚になるように新しい選手をドローします。時にはまだ見ぬ新戦力を求めての手札全捨てギャンブルもアリでしょう。選手にはブロンズ、シルバー、ゴールドの3クラスがあり、最初は最弱のブロンズチャンピオンだけがドローできます。シルバー、ゴールドをドローする方法は……また後程。

「チャンピオンのプレイ」では、3コインを支払って手札から選手をプレイします。各選手はこの手のゲームにつきものの即時効果や永続効果、ゲーム終了時得点など様々な効果を持っています。

例えば「シェイプシフター」は、即時効果として別の選手の即時効果をコピーする効果を持ちます(ややこしい)。

また、チャンピオンのカード右肩には1つか2つのタグがあります。「ドラゴンフライ・フェアリー」は獲得した青いタグ1つにつき防御トークンを1回強化できる永続効果を持ちます。同じタグを持つチャンピオンをプレイする度にこの効果を利用することができるので、こうした能力を持つチャンピオンを軸にプレイするとチームを効率的に強化できるでしょう(ちなみにこの効果では自身のタグもカウントするので、「ドラゴンフライ・フェアリー」をプレイしたタイミングで防御トークンを1回強化できます)。
続いて「スカウト能力の向上」。先述の通り、初期状態ではプレイヤーはブロンズクラスの選手しかスカウトすることができません。スカウト能力を向上させることで、プレイヤーはより強力なシルバーやゴールドの選手をスカウトできるようにもなります。拡大再生産の視点では明らかに重要なアクションなのですが、このアクション自体のコストが3コインとかなり重いので、どこまで初期投資をするかは悩ましいところです。
さらには「スタジアムの向上」。すべてのアクションにはコストとしてコインを支払う必要があります。スタジアムを向上させることでチームの収入を増やし、より多くのアクションが行えるようになります。スタジアムの向上を早期に行うことで永続的に高い収入を保つことができますが、ゲームの進行とともにスタジアムの建設コストは徐々に下がっていくのでどのタイミングでスタジアムの向上に着手するかは悩ましいところです。
「チームのトレーニング」や「新たな戦術の獲得」では、攻撃トークンや防御トークンの強化を行います。攻撃トークンや防御トークンの質と量は実質的なチームの戦闘力です。なんでしょうかね、チャンピオンはRPGでいうところのアクティブスキル、パッシブスキルといった位置づけで、攻撃トークンや防御トークンは攻撃力とか防御力といった基礎的なスタッツに相当するものでしょうか。一見、華々しい特殊能力に目が向きがちですが、チームの地力として如実に効いてくるのは地味な攻撃力、防御力そのものだったりもします。
大枠としては、このラウンドでのチームの戦闘力を高めるか、それとも以降の試合を見越してチーム力強化に努めるかのジレンマがプレイヤーへの課題となります。1ラウンド目に手元にあるのは4コインだけで、「チャンピオンのプレイ」や「スカウトの向上」「スタジアムの向上」といった真っ先にやりたいアクションはどれも3コインと高額です。自ずと取捨選択を迫られるため、明確な方向性を意識したチームビルディングが重要となります。
また、余ったコインはラウンド間で持ち越せないため、全てのコインは効率的に使い切る必要があります。
◆いざ決戦! バックドローとダイスの織り成す予想外の試合展開

さて、すべてのプレイヤーが「購入キャンペーン」を終えたら、いよいよ試合の開始です。対戦タイルにはこのラウンドで戦う相手チームが記されていて、2チーム同士の1vs1の対決を行います。プレイ人数が奇数の場合はNPCとなるオートマも参戦します。
試合では両チームの持つ攻撃トークン、防御トークン全てを1つの袋に入れ、それらをランダムにドローしていきます。攻撃トークンが引かれればそのチームの攻撃機会が発生! 既にドロー済みの相手チームの防御トークンの合計値と数値を比べ、攻撃側が上回っていれば攻撃成功となり、シュートの機会を得ます。
シュートの機会を得た攻撃側プレイヤーは次にダイスを振るのですが、先ほどの攻撃トークンと防御トークンの数値の差分が大きいほど成功率が高まります。例えば、差分が1の場合、攻撃側プレイヤーは6の出目を出さないとシュートが成功しません。逆に差分が4以上あれば、3~6の出目でシュート成功となるのです。

各スロットの上部に書かれた数字が数値の差分。その下に示されたダイス目がシュート成功に必要な出目となります。
ダイスを振って見事高い目が出ればシュート成功! 攻撃側が1点を獲得してこのシークエンスは終了し、再び袋からトークンを引く処理に戻ります。バックドローとダイスという2つのランダマイザが用意されているため、試合展開がなんとも予想しづらく、結果としてチップの引き、ダイスの一振りに対する一喜一憂が大きくドラマチックです。展開次第では格上の対戦相手を完封することもあったりして、こうしたスポーツにつきものの勝負のアヤを肌で感じさせる作りになっています。
こうしてトークンを引き続け、ラウンドごとの所定の枚数まで溜まると試合は時間切れ終了となります。試合終了時点でより多く得点を得たチームが試合に勝利し、得失点差に等しい名声点に加えてスカウトレベルに応じた名声点を得ます。
プレイヤーは選手を最大で4人までベンチに配置できるのですが、4つのベンチには最初から仮の選手が配置されています。仮の選手でもシュートなどの判定にマイナス補正を受けるようなことはないのですが、仮の選手がシュートを行う場合、1名声点を失ってしまいます。
試合中のシュートの機会は思ったよりも多く訪れるため、なるべく早くチャンピオンを配置してベンチを埋めたいところです。1ラウンド目でチャンピオンをプレイしないとマイナス点が積みあがることもあり……

チャンピオンの中にはシュートのダイスを複数振れる選手もいます。「ストロングホーン」は追加で2個のダイスを振って(合計3個)いずれかのダイスが目標値を達成していれば得点できる優秀なストライカーです。ただ、こうした選手にシュートを多く打たせるために1から4のどのベンチに置くかは悩ましいところです。せっかくの名選手でもパスが回ってこないことにはシュートチャンスがないという……
◆決勝を勝ち切るチーム作りが悩ましい! 監督の苦悩と喜びを体感しよう
こうして「購入キャンペーン」と「試合」を繰り返し、6ラウンドが終了したところでシリーズ戦は終了します。試合による名声点の他、チャンピオンから得られる得点、経済力となる資金マーカーの位置、目標カードとなるサポーターカードからの得点を合計し、上位の2名だけが決勝戦に進みます。

ちなみに目標カードはこんな感じ。このカードであればプレイしたチャンピオンの青いタグを数え、3個あれば2点、4個以上あれば5点と言った感じ。得失点差で5点をつけるのはなかなか難しいのでこれは結構デカいです。
決勝戦でも通常の試合と同様に試合を行い、この一戦に勝利したプレイヤーが最終的なゲームの勝者となります。決勝戦で勝つのが最終的な目標ではありますが、「名声点を稼げるチーム」と「試合に勝てるチーム」にはベクトルに微妙に差があるため、どのようにチーム力を伸ばすか悩ましいところです。
様々なチャンピオンのシナジーを活かして自分ならではのチームを組み上げる楽しさがこのゲームの最たる魅力と言えるでしょう。チャンピオンの選択自体もそうですし、シンプルながら経営要素もあるので毎ラウンド悩ましい限りです。各プレイヤーが組み上げた色とりどりのチームとわんこそば感覚で対戦できるので、基本的には多人数で遊ぶ方がワイワイと楽しめるでしょう。
バックドロー&ダイスロールの二重の運試しでなかなか勝敗予測が難しい作りということもあり、一戦一戦が本物のスポーツ観戦のようにドキドキできる内容となっています。テーマ的にはファンタスフィアという架空の球技を扱ったゲームではありますが、点が入るか入らないかのブレの大きさや得失点のボリューム感はサッカーに近しい雰囲気がありますね(クラニオクリエーションズはイタリアのメーカーだしなあ……)。
こういうスポーツ経営シミュレーションゲームはボードゲームでは隠れた名作が多いジャンルではありまして「ゴールデンカップ」もそうした匂いがヒシヒシと感じられるゲームと言えます。個人的にも好きなジャンルなのですが、いかんせんスポーツものボードゲームは絶対数自体が希少なので、こうしたジャンルに目のない方にはぜひご注目頂きたいタイトルです。「これぞ最強!」というチームを作り上げ、決戦に挑む緊張感と楽しさをぜひ味わって貰えればと思います。