ゲーム紹介:ニューヨークズー(New York Zoo / Uwe Rosenberg / Feuerland Spiele / 2020)

「テラミスティカ」、「ガイアプロジェクト」、「オーディンの祝祭」重め戦略ゲームでお馴染みのフォイヤーラントシュピールから発表のウヴェ・ローゼンベルクによる新作です。

ウヴェ・ローゼンベルクは、「アグリコラ」や「アルルの丘」のようなワーカープレイスメントを中心に据えた重め路線と、「パッチワーク」や「コテージガーデン」のようなタイル配置パズル路線が最近のリリースでは目立つのですが、今回は後者、タイル配置パズル路線の新作となります。(私個人としては、新機軸カードゲーム路線も復活してほしいところではあります)
この路線では、ワーカープレイスメント路線との融合でもある「オーディンの祝祭」は別として、比較的ライトな作品が多いのですが、今回の「ニューヨークズー」もボリュームとしては中量級にかかるかかからないかというところのファミリー向け戦略ゲームになります。

重め路線のタイトルに比べ、タイル配置パズル路線のタイトルはゲームマニアの方々にとってはマンネリ感を感じる方もいるかもしれませんが、なかなかどうして、それぞれのタイトルごとに見るべきところがしっかりとあり、それぞれがやはり注目に値するものだと思うのです。

では、今回の「ニューヨークズー」はどうでしょうか。
明るいイラストと華やかな動物駒が魅力的なファミリーゲーム?
もちろん、そうです。
ですが、実は遊ぶほどに味の出てくる通好みの駆け引きが盛り込まれたゲームでもあるのです。

目的はストレート。動物園をいち早く完成させよう!

ゲームの目的としては非常にストレート。
プレイヤーは、自分の動物園の建設予定地となる個人ボードを持ちます。
個人ボード上の空きマスを、いち早くタイルで埋め切ったプレイヤーが勝利となります。

手番に行うことも非常にわかりやすいものになっています。
手番が来たら、フィールドを周回する全プレイヤーで共通となる駒を1~3マス進め、進めた先のマスによって「タイルを獲得しボードに配置する」か「新たな動物駒を獲得する」かのいずれかとなります。(「繁殖」が行われることもありますが、これについては後述します)

ゲームの目的が「ボード上をタイルで埋める」というものだけに、「タイルの獲得と配置」は、このゲームでもっとも重要かつ基本的なアクションとなるでしょう。
タイルは、4マス分~7マス分のものが用意されおり、ゲーム序盤は7マス分のものが獲得できるようになっており、ゲームが進むにつれマスの数が減っていくように調整されています。
マスの多いタイルが圧倒的に有利であることには違いありませんが、タイルの形はいびつ、かつ、まちまちであるため、当然、常に有用とは限りません。
また、実は、このゲームではマスの少ないタイルをどう活かすかが勝利の鍵を握っているとも言えます。それが、動物駒に関するルールです。

並べられたタイルからより効果的なものを獲得しよう

タイルを動物駒で埋めよう!

さきに説明したタイルは、それぞれが動物を飼育するための囲い地となっています。
プレイヤーは、タイルを獲得した際や、動物駒を獲得した際に、それぞれのタイルの上に動物駒を配置することになります。
そして、それぞれのタイルのマスを動物駒で埋めることができると、そのボーナスとして、追加で動物園を彩るアトラクションタイルを獲得することができます。
アトラクションタイルは、ボードを一気に埋めることが出来る強力な8マスで構成されているものや、ボード上の隙間を埋めるために役に立つ2マス、1マスのものがあり、ゲーム序盤から終盤までゲームを通して常に重要でありつづけるのです。

タイルか動物駒か。それが問題だ。

ゲームの骨子となるのは、冒頭で触れたように、また、ここまで説明した通り「タイルの獲得と配置」、「動物駒の獲得と配置」のみということもあり、非常にわかりやすいものです。
しかし、ゲーム性が低いかというと、決してそんなことはありません、むしろ、唸らされるバランスにまとめられており、遊ぶほどに駆け引きが豊かなゲームであることに気付かされます。

では、どのように駆け引きが用意されているのかを詳しく見ていきたいと思います。
序盤、選択肢が多いうちにマスの多いタイルを優先的に獲得していくことは基本戦略と言えるでしょう。ゲームの目的が「ボードをタイルで埋める」ことである以上、これは間違いありません。
しかし、そのタイルの形状から、ボード上すべてを通常の囲い地タイルで埋めることは不可能と言えるでしょう。
タイルを動物駒で埋めることで得られるアトラクションタイルをどこでどのように獲得していくかが鍵となるのです。
ゲーム序盤で獲得できる(そして、極めて強力な)マスの多いタイルは、そのマスの多さゆえ動物駒で埋めるまでとても時間がかかるのは言うまでもありません。
一方、マスの少ないタイルは、少なければ少ないほど動物駒で埋めるのは簡単です。
ここで、マスの少ないタイルをどんどん動物駒で埋めて、アトラクションタイルによって手を進めるという戦略が成立するようになっています。
タイルも動物駒も、手番中に獲得できるのは一つです。
ここで重要となってくるのが「繁殖」のルールです。

主役となる動物たち

動物たちを繁殖させよう!

ボード上に動物の種類ごとに用意された特定のタイミングで、プレイヤー全員は、該当する動物の「繁殖」の処理を行うことになります。
「繁殖」は、動物駒を二個以上置いている囲い地において、置かれている駒を一つ増やすという効果があります。
これが極めて重要なのです。このゲームにおいて、プレイヤーが得られる駒やタイルの数をブースト、底上げしてくれる要素は、この「繁殖」と、その先にあるボーナスタイル「アトラクションタイル」しかありません。またこの「繁殖」は、アクションとして実行されるわけではなく、処理として実行されるため、繁殖可能な体制を取ってさえいれば、自然と配置される駒が増えていくことになります。繁殖で増える駒は一つ。たかが一つ、されど一つ。繁殖が出来るものとできないもの、その差はジワジワと広がっていくのです。

基本となる部分は「タイルの置く、タイルの上に動物を置く」だけでありながら、勝利に近づくためには「どの動物駒を獲得するか」、「どの囲い地にどの動物駒を置くか」、「どのタイミングで繁殖出来る状態を作るのか」をしっかりと踏まえなければなりません。
そして、これはゲームが今、序盤なのか、中盤なのか、終盤なのかによっても変わってくるでしょう。
-マスの多いタイルを取りたい序盤。だけど他のプレイヤーより早くタイルを埋めて広いアトラクションタイルを狙ってもいいかも。今なら競争相手もいないし。
-思った以上に他のプレイヤーはタイルを狙っているぞ。遅れをとらないようにタイルを取りにいくべきか。そのためにも繁殖出来る体制をとっておこう。
-そろそろ空きマスのいびつさが気になってきたな。積極的にタイルを駒で埋めてアトラクションタイルを狙っていこう。
-ラスト一マス!あとはいかに早くタイルを駒で埋めるかだ。
こんな風に、プレイヤーが勝利に近づくために考えることはそこかしこに用意されているのです。

いよいよ終盤

とにかく懐の深いタイトルです!

私がゲームマニアということもあり、また、このブログの性質上、ゲームとしての面白さを掘り下げた紹介となってしまいましたが、「ニューヨークズー」はやはりファミリーゲームとしての側面が強いタイトルです。
このゲームのために用意された特別な動物駒たちは、いずれも可愛らしく目を引きます。
駆け引きのポイントがわかりにくい(渋い)く、差がつきにくいと感じられる方もいるかもしれません。
しかし、勝利条件が「いち早くボードを埋める」という早上がり方式になっていることで、終盤まで一手一手がどれだけ的確だったかを感じられるようになっており、非常にスリルが味わえるようになっています。
また、誰と遊んでもいい勝負になりやすいという風にも言え、動物園がタイルと駒によって賑やかになっていく様は、それだけで楽しく、そこを純粋に楽しんでいたとしてもいい勝負になりやすいというのは、むしろ、ファミリーゲームとしては大きな利点と言えるでしょう。
そんな懐の深いタイトルと言っていいのではないでしょうか。

ウヴェ・ローゼンベルクのデザインセンスを感じるには充分過ぎる一作だと思います。

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