ゲーム紹介:ニャー(MEOW / Reiner Knizia / Cranio Creations / 2020)

 前回紹介した「メカネ」に引き続き、2020年秋のクラニオクリエーションズ新作の紹介です。
 名ゲームデザイナー、ライナー・クニツィアの新作カードゲーム「ニャー」です。
 ゲームジャンルとしては「トリックテイキング」。日本でもファンの多いジャンルですが、もともとトリックテイキングに馴染みのあるヨーロッパと違い、日本ではイマイチ馴染みが薄く、場合によっては「マニア向け」と取られることも多く、少し抵抗感を抱いている人もいるかもしれません。
 しかし!この「ニャー」は、そういった人にこそ遊んで欲しい、広くオススメできるトリックテイキングなのです。

 誤解を恐れず言うならば、「トリックテイキング」とは、「カードの数比べを繰り返していくゲーム」なので、本来は非常に簡単なゲームです。
 配られた手札のカードから、全員が一枚ずつカードを出していきます。この一周が「トリック」。そして、出されたカードの数を比べ、そのトリックの勝者(基本的には数字の大きい人)となります。ざっくり言うと、トリックを取りあうから「トリックテイキング」なのです。
 そして、基本的な「トリックテイキング」において、もう一つ大事なのが「フォロー」のルールです。
 「ニャー」では、「マストフォロー」というルールが採用されており、カードを一枚ずつ出す際に、最初に出されたカードと同じ色のカードを出さなければなりません。(同じ色のカードを持っていない場合は、好きな色を出すことができます)
 フォローが出来ない場合は、基本的にそのトリックにおいては「負け」になるのです。
 だだし、そこでもう一つの基本的なルールである「切り札」が大事なポイントになります。ある色が「切り札」となっており、最初に出されたカードと異なる色のカードであったとしても、「切り札」は常に「より強いカード」として扱われるのです。例えば、「赤の8」が最初に出されたトリックにおいて、「緑の2」は異なる色であっても「赤の8」よりも強いのです。

少し変わったデザインのカード

 「ニャー」では、赤・青・緑の三色、1~18の各18枚でゲームを行います。マストフォローで、切り札は常に「緑」です。そして、さらにそれぞれの色で「1」は、同じ色の「18」には勝てるというルールがあります。
 「トリックテイキング」としては、非常にオーソドックスと言えるものじゃないでしょうか。

 ここまで読んで「オーソドックスだから、広くオススメできるトリックテイキングなの?」と思われた方もいるかもしれません。
 もちろん、オーソドックスだから、ということも理由のひとつではありますが、「ニャー」は決してそれだけのゲームではありません。

 では、どんなところがオススメポイントなのか。
 ここで、カード構成を詳しく見てみます。
 3色、18枚。色の数が少なく、それぞれの色のカードがとても多いという構成になっています。
 マストフォローのトリックテイキングでは、ある特定の色のカードを手札からなくし、カードを少し自由に出せるようにすることがプレイのコツとしてあります。
 しかし、「ニャー」では、そのカード構成から、ある特定の色のカードを無くすということが出来にくくなっているのです。
 そして、このカード構成と得点の仕組みが相乗効果を生むことになります。
 「ニャー」は、3ラウンドに渡ってゲームを行います。
 それぞれのラウンドの開始時に、トリック数分のチップが並べられ、このチップを順番に、各トリックにおける勝者が取っていくことになります。
 このチップの得点配分がいやらしくも面白く作られています。
 チップは、プラスだけでなく、マイナスも用意され-むしろ、マイナスになりやすいバランスで構成されているのです。
 すなわち、トリックは、ただ勝てばいいのではなく、そのチップに応じて勝たないようにすることも大事なのです。
 前述のカード構成と組み合わさることで、ここに妙味が生まれるのです。
 特定の色をなくしにくく、それぞれの色における数字の強弱は幅広いため、各トリックで勝ちを狙うのか、勝たないようにするのか。また、どの数のカードを出すのか。異なる色を交えた手札のコントロールというよりも、そのトリックごとの押し引きとその見極めのウエイトがとても大きいのです。そして、だからこそ、特定の色をなくし、切り札も踏まえた手札のコントロールが出来るようになった時のアドバンテージも大きく、それがゲームをよりエキサイティングなものにしてくれているとも言えます。

さて、どんな風にカードを出していこうか・・・

 加えて、「ニャー」では、各ラウンド9トリック(手札9枚)と決まっているため、6人プレイ以外のプレイ人数においては、使用されないカードがあることになります。
 トリックテイキングでは、出されたカードを覚えておくことで、その後のプレイに活かすという「カウンティング」というテクニックがあります。
 このカウンティングがハードルの高さとして感じられることも多いのですが、この「ニャー」では使われないカードがあることで、それを緩和させてくれていると言えるでしょう。(もちろん、カウンティングは魅力でもあるため、一部のカードをはじめから抜く、上級ルールも用意されています)
 これもまた得点チップと組み合わされることで、アクシデント性が高まり、ゲームをよりエキサイティングなものにしてくれています。
 特に、「マイナスチップを一枚打ち消す魚チップ」、「一枚ならマイナスにならないものの、二枚取ってしまうと大きくマイナスとなる割れた花瓶チップ」を、意外なカードで取ったり、取らされたりの時は、おおいに盛り上がります。
 また、盛り上がりという点では、最強のカード「18」に勝つことのできる「1」のカード抜きで語ることはできません。「1」で勝つ、勝たされてしまうこと、決して少なくないですよ!

「割れた花瓶」はとてもいいアクセント!

 「ニャー」は、テクニカルな部分を極力廃し、遊びやすさ、そして、なによりゲーム的な盛り上がりに特化させたトリックテイキングと言えるでしょう。
 ポーチタイプのパッケージや愛らしい猫のイラストに惹かれて手に取ったとしても、そのままの軽い気持ちで十分楽しめるタイトルになっていると思います。
 ありそうでなかった「ファミリー向けトリックテイキング」として楽しむのもいいかもしれません。
 とにかく広くオススメできる一作です。
 

スタッフ神田の視点

「ニャー」は、「チグリス・ユーフラテス」「ラー」など様々な名作で知られるライナー・クニツィアのトリックテイキングゲームです。出版社は「バラージ」「ロレンツォ・イル・マニーフィコ」などを送り出しているCranio Creations。

 この両者がタッグを組むことで一体どんなゲームが生まれるのか!? 1トリテファンでもあるぼくは、このゲームの初報を聞いてテンションが跳ね上ったことを覚えています。と、同時に数寄ゲームズで「ブードゥープリンス」の日本語版の発売を控えていたぼくは「クニツィア唯一の本格トリテ!」という売り文句が使えなくなったことにガッカリもしてたのでした。まあ、それはさておいて。

◆ゲームの概要

 ゲームの詳しいあらましはタナカマさんの記事を読んでいただくとして、こちらの記事ではトリテをある程度知ってる人向けに一段飛ばしで概要を述べていきます。

 カードは全部で54枚、内訳は3スート18ランクで、トランプの4スート13ランクと比べて1スートが長いのが特徴的なカード構成です。

 ゲームの準備として27枚のご褒美トークンをよく混ぜ、そのうち9枚を表にして一列にして並べます。トリックに勝ったプレイヤーはこの列の一番左のご褒美トークンを獲得するのですが、ご褒美トークンには「得点となるトークン」、「失点となるトークン」、「失点トークンを1枚だけ捨てられるトークン」、「2枚集めると-20点になるトークン」の4種があり、単純にトリックに勝てばいいだけでなく、時にはトリックに負けなければならない時もあります。このトークンの獲得に纏わる手札のハンドリングがこのゲームのキモと言える部分です。

 トリックテイキングとしてはマストフォローで切り札は緑スートで固定、最高ランクの18がプレイされた場合だけランク1が最強になるというツイストもありますが、基本的には極めてオーソドックスな作りです。

 プレイヤーには9枚のカードが手札として配られ、1ディールは9トリックで構成されます。ゲームは3ディールを通して行うので全部で27トリック。これはご褒美トークンと同じ数なので、すべてのご褒美トークンがちょうど1度だけゲームに登場することを意味しています。
 得点計算の後、最も多くの得点を獲得したプレイヤーがゲームに勝利します。トリテを嗜んでいる人なら、これだけでどんなゲームか想像がつくほどに、シンプルな構造のトリテと言えます。

◆シンプルなだけのトリテなのか?(反語)

 少し長くゲームを嗜んでいる人ならご存知のように「ご飯に塩を振っただけ」というゲームも密かに多いのがクニツィア。シンプルな作りを身上とするクニツィアのゲームは、一歩間違えると味気なさが先立つこともままあるのですが、「ニャー」もそんなゲームの一つなのでしょうか?

 実際に遊んでみると上記の通りシンプルな作りのゲームにも関わらず、トリテ特有の勝ち負けの楽しさが存分に味わえる作りになっています。これがまさにクニツィアならではの魔法の種なのですが、とにかく得点配分が絶妙で、控えめな存在感の得点トークンに対して、失点トークンは7点や10点など強烈なインパクトを持つものが多く、得点をコツコツと積み上げるよりも、一撃死の失点をなんとか避ける方向に意識が向く得点体系になっています。
 これによって「このトリックは絶対に取りたい!/取りたくない!」という気持ちをプレイヤー全員に浸透させ、その上で必ず勝者と敗者が生まれる非情の勝負を行わせるので、そりゃドッカンドッカンと盛り上がるワケです。「はい、ここで盛り上がってくださいねー」と合図するクニツィアの幻影すら見えてきます。

 他にも2枚取ると-20点になる花瓶のトークンもうまい作りで、1枚取るだけなら「まあ、1枚ならセーフだし」と余裕ぶっていられるのですが、いざ2枚目を目にした時の緊張感はとんでもないものです。「パチンコでリーチがかかると当たった時と同じ興奮作用がある」という話がありますが、まさにそれと似た人間の心理の機微を活用しているワケです。

 また、地味ながら匠の技を思わせるのが、ゲームを通して得点計算が1回だけという省力設計。トリテの得点計算は意外と手間ではあるので、ならば途中の計算はいっそ省いてしまえ、とするのは合理的なクニツィアらしい考えとも言えます。

 一方で難点として、カードのデザインがこなれていない点が挙げられます。独特の小判型のカードは「猫に小判」と言わせたかったのでしょうか、ユニークな形状ではありますが、やや大ぶりで子供の手には持ちづらく、ランクもカードの内側に寄っているので思いっきり開かないとランクが見づらい場合があります。
 せっかく子供でも持ちやすい手札9枚のトリテなのに、惜しい……!

 また、ゲーム展開として手札とトークンがどうしても噛み合わない状況が発生することがままあります。トークンの並びが得点ばかりなら、トリックを取れるハイランクのカードや切り札が欲しいのですが、トークンの並びとは関係なしに手札は無作為に配られるので、手札を見て「あ、どうしようもない」と思ってしまう場合もあるにはあります。

 1ディール目から大量失点を食らった場合、劣勢を挽回できるルールが欲しくもなりますが、今回は敢えてそうした付け足しは省いて、粗さはあっても手軽さを優先したんだと思います。軽いんだから負けたらもう1ゲームやればいいじゃない!

◆クニツィア諸作との比較で見る「ニャー」

 さて、クニツィアにとってこの「ニャー」は、「ブードゥープリンス」に続く、本格トリテの2作目という位置づけになるのですが、実は広義のトリックテイキングとしては、「陰陽/フィフティ・フィフティ」や「革命万歳!」のようなゲームもあり、それっぽい手札回しのゲームを結構作ってるデザイナーではあるんですよね。
 で、「ブードゥープリンス」はかなり本格的なトリテの文脈に寄せた1作だったんですが、この「ニャー」はもっと「陰陽」や「革命万歳!」に寄せたカジュアルな数字比べの趣が強いゲームのように思えます。
 すごく極端な言い方をすると「3スートにした『陰陽』」ぽいゲームでもあります。「陰陽」は手札と場札を見比べながらトリックの取る/取らないを選択するゲームで、これが感覚としてはかなり似てるんですね。
 「ニャー」の独特な3スート18ランクのカード構成は、手札のスートを枯らしにくく、基本的には数字の大小で勝負をつける場面が多いです。なので、同じ「捨てるトリック」にしても捨て方を問われると言うか、5を捨てるべきか8を捨てるべきか、手札のマネジメントを問うゲームになってるんですね。
 「ニャー」は、1ディールが終わった後で「あの時5じゃなくて8を捨てておけばなー」という振り返りがすごく多いゲームで、失着がわかりやすいのは、ゲーム自体がわかりやすいということなんだと思います。本格的なトリテだと自分の敗因を探るのって結構慣れがいるんですよ。

◆国産トリックテイキング「フリップオーバー」

 さて、「ニャー」をさらに語る上で外せないゲームの1つが国産トリックテイキングの「フリップオーバー」です。このゲームはトリックの勝ち負けによって得点/失点トークンを獲得するという、まさに「ニャー」と同じコンセプトを持つゲーム!
 「さてはクニツィア、パクったな……?」と思ったトリテ好きもいるとかいないとか(※クニツィアはゲームデザインの剽窃に対して極めて厳格な態度を取ることで知られるデザイナーです)。
 しかもこの「フリップオーバー」は得点トークンのウラオモテが「10点/-10点」のように同じ絶対値で正負が反転した作りになっていて、普通に1ディールを遊んだ後に、同じ手札で反転した得点トークンで2ディール目を遊ぶ…… つまり、前半でバカスカ得点を取れるような強い手札は、後半で失点までバカスカ取るハメになりかねない…… 手札運へのエクスキューズまで備えたトリテなのです。これはエポックではないですか?
 とは言え、両者を比較してみると遊びやすさで言えば「ニャー」に軍配が上がるところもあり、ここは重視するのがガチ感かパーティー感かで好みが分かれるところなのかなと思います。同じコンセプトながら仕上がりが全く違う方向を向いているのがゲームデザインの面白いところですね。
 そんな「フリップオーバー」は、テンデイズゲームズでも2546円(税込)で販売しているので、気になる方はどうぞ「ニャー」と一緒にご検討頂ければと思います(露骨な宣伝)。

https://tendaysgames.shop/?pid=129650087

◆シンプルなトリテと侮るなかれ!

 さて、ここまで「ニャー」の特徴について色々と触れてきましたが、総論としては「クニツィアらしいわかりやすくシンプルに纏めたファミリーゲーム」であり、「ツボを抑えた設計でドカンと盛り上がる抜け目のないトリックテイキングゲーム」と言えます。
 「ブードゥープリンス」でも、シンプルなルールでプレイヤーを一喜一憂させる技巧を見せつけたクニツィアですが、この「ニャー」でもその手腕は健在と言えそうです。
 それでいて「ブードゥープリンス」よりもルール量はより少なく、よりカジュアルな方向に舵を切られているゲームなので、初めてトリックテイキングを触る人にもうってつけのゲームと言えるのではないでしょうか。一方でトリテ好きの方には手札配りきりの上級ルールが用意されていて、カウンティングを交えたトークンのやりとりもこれまた熱そうです。
 「ニャー」は見た目以上に感情が揺れ動かされる手強くも楽しいトリテです。ぜひぜひ一度遊んでみてください。

ゲーム紹介:メカネ(MEKHANE / Alessio Calabresi, Roberto Grasso / Cranio Creations / 2020)

今や、「イタリアの」と付ける必要もないくらい、今のゲームシーンを代表する一出版社として広く知られるようになったクラニオクリエーションズ。
シモーネ・ルチアーニの「ニュートン」、「バラージ」といった重めの戦略ゲームで人気の出版社ですが、今年秋の新作は、ストーリーテリングゲームの「メカネ」とクニツィアによるお手軽トリックテイキング「ニャー」という、少し意外な二作となりました。
今回は、そのうちの一作、「メカネ」を紹介したいと思います。

プレイヤーは、運命を司る神

「メカネ」でプレイヤーが行うのは、神となり、ゲームの登場人物の運命を司ることです。
一人は悲運(を司る)プレイヤー、そのほかは(普通の)神々のプレイヤーです。
悲運プレイヤーが、このゲームの登場人物をラウンドごとに一人、また一人と「死」を与えていく中で、他のプレイヤーは自分の運命カードで示された登場人物をどうにか生き残らせるように運命を操っていきます。

どこでどのような危機が登場人物を襲うのか

ゲーム開始直後

ゲーム開始の際には、テーブル上には、人物カード、場所カード、危機カードが並べられます。
そして、悲運以外のプレイヤーは、運命カードと数枚の物語カードを受取ります。この運命カードには数字が書かれており、その数字に対応した人物カードを最後まで生き残らせることが悲運以外のプレイヤーの目的となります。悲運プレイヤーは、運命カードに対応した人物を一人も生き残らせないことが目的となります。と、一応、ゲームとしての目的、勝利条件はあるものの、このゲームを楽しむという点において、そこにこだわることは少し野暮かもしれません-それがどうしてなのかは、この紹介を読み進めていただければおわかりいただけるかと思います。
そして、この準備とゲームにおいて重要となるのが、人物カードの上に並べられた二枚カードです。この二枚の「場所カード」、「危機カード」は、今回の物語の設定となる「どこで」、「どのような危機」が登場人物たちを襲うことになったのかが描かれているのです。

さて、今回の設定は・・・

ここで悲運プレイヤーは、この二枚のカードをもとに自由な発想で物語の導入部を決め、それを発表します。
例えば、上記の写真に写っている二枚のカード、「町外れにあるスクラップ工場、そこに住む一家が突然武器を手に、町の住人を襲うのだった」というような感じでしょうか。

物語カードで、登場人物を運命を操れ

この危機に対し、神々プレイヤーは、ゲーム開始時に配られた物語カードで、道場人物の運命を操ることになります。
登場人物一人の下に物語カードを出し、その物語カードに描かれたものが、どのようにその人物に作用し、どのような出来事が起きたのかを語ることになります。

自由な発想で物語カードを出しましょう

「メカネ」で面白いところは、ここで自分の生き残らせたい登場人物に有益となるような物語に限らず、どうなっても構わない登場人物が明らかにピンチとなるような物語を語ってもいいということです。
「自転車」のカードを出し「逃げるために乗った自転車。しかし、自転車のタイヤはパンクしていた!」というふうにです。
ドラマティックな展開でも、地味目な展開でも、「ホラー映画あるある」的な展開でも、とにかく自由に物語を語りましょう。
神々プレイヤーが一枚ずつカードを出したら、いよいよ悲運が彼らを襲います。(その前に、一枚もカードが出されなかった登場人物にはランダムで物語カードが出され、悲運プレイヤーが彼らの物語を語ることになります)
悲運プレイヤーは、語られた物語をもとに、どのプレイヤーがこの危機の犠牲者になったのかを決め、発表します。
物語カードを出す~物語が語られる~犠牲者を決める~この流れを、一人の登場人物が生き残りとなるまで繰り返します。
最後まで生き残った登場人物に対応した運命カードをもっている神々がいたなら、そのプレイヤーが勝利者となります。もし、どの運命カードにも対応していない登場人物が生き残っていたならば、悲運プレイヤーの勝利となるのです。

さまざまな出来事が・・・
そして、生き残った登場人物は・・・

ダークな雰囲気が最高

ここまで読んで、ゲーム慣れした人であれば、「勝利者を決める」という点においてはあまりシステマティックでなく・・・というより「機能してないんじゃないか?」と思った方もいるかもしれません。
たしかに、「勝利者を決める」という点においては、その通りで「ゲーム的なシステムとしての弱さ」は認めざるを得ないでしょう。
しかし、「魅力的な世界観で物語を紡ぐ」という点においては、ゲーム的なシステムの弱さを差し引いても、非常に魅力的に作られているのです。
全体的にとてもダークにまとめられたイラストは、複数のイラストレーターに描かれており、カード一枚一枚が美しく、かつゾクゾクとさせる力強さも備わっており、とても魅力的です。
物語カードに描かれたいろいろなものも同様です。見るからに強力そうな「武器」、存在感ある「動物」、呪術的なイメージをもった「アイテム」、さらなるピンチに繋がりそうな「怪異」のようなもの・・・その種類、内容はとても豊富です。もちろん、物語カードに描かれたイラストもとても個性的です。
場所、危機、人物、物語・・・用意されたカードそれぞれが、想像力を刺激してくれることは間違いありません。
ゲーム的なシステムの弱さを補ってあまりある雰囲気の魅力は、冒頭でも少し触れたように「勝利にこだわるのは野暮」と思わせるに充分なものがあり、それこそがこのゲーム最大の魅力ではないでしょうか。
また、すべてのカードが自然とダークでホラーな展開に自然と繋がりそうなものに統一されている点は、得手不得手が出やすいストーリーテリングというジャンルのハードルを下げていることに繋がっているように感じられ、「メカネ」の長所と言えるでしょう。
ぜひ、自由な発想で物語を語ってみてください。


スタッフ神田の視点

ここからはテンデイズゲームズスタッフの一人、(「円卓」こと)神田の視点での紹介になります。

 Cranio Creationsの2020年新作ゲームが、このMEKHANE/メカネです。タイトルのMEKHANEは元々は4,5世紀にギリシャの演劇で使われた木造のクレーンを指し示しているようで、当時はこのクレーンで神々を演じる役者を空中飛行させていたそうです。つまり当時のワイヤーアクション。ギリシャの科学力すごい!

 そんなステージマシンの名前からイメージを含まらせたのでしょう、このゲーム、MEKHANEは、神々の気まぐれによって悲運に見舞われる登場人物の生死を見届ける即興劇を模したコミュニケーションゲームです。Cranio Creationsと言えば、「バラージ」「ニュートン」「ロレンツォ・イル・マニーフィコ」などルチアーニの諸作から戦略ゲームを多く出版する会社というイメージもありますが、パオロ・モリの「アンユージュアルサスペクツ」なんかもこの会社なので、この路線もなるほどという感じです。

 このゲームでプレイヤーは1人の「悲運プレイヤー」とその他の「神々プレイヤー」に分かれて物語を作ります。
 神々プレイヤーは登場人物がこれから直面する物語を綴り、悲運プレイヤーは物語を総括してどの登場人物が死ぬかを判断します。
 悲運プレイヤーは舞台を設定し、登場人物の生死をジャッジする、一種のゲームマスター的な立場を務めます。

 ゲームの構図としては悲運プレイヤーvs神々プレイヤーという形になりますが、最終的な勝者は全員のうち1人だけという個人戦のゲームです。
 悲運プレイヤーと神々プレイヤーでは勝利条件が異なり、神々プレイヤーの勝利条件は「運命カード」によって秘密裏に決まる登場人物の生存です。
 全ての神々プレイヤーが勝利条件を満たせなかった場合、悲運プレイヤーがゲームに勝利します。
 つまりゲームとしては登場人物に秘密裏に肩入れして生き残らせようとする神々プレイヤーと、その思惑を探って阻止する悲運プレイヤーという正体隠匿ゲーム的な構図にもなりますが、「誰が勝ったかに関係なく、楽しんで素晴らしい物語を紡ぐことこそが重要なのです!」とルールブックにあるように、それ以上に全員参加で素敵な物語を綴ることがゲームの目的となるでしょう。

 セットアップとしては、まず7枚の「人物カード」が公開されます。また、神々プレイヤーには「人物カード」に対応する「運命カード」を配られ、どの「人物カード」を生き残らせるかが秘密裏に決まります。

 次に物語の舞台となる「場所カード」、登場人物の脅威となる「危機カード」を1枚公開します。
 この「場所カード」と「危機カード」の詳しい内容は悲運プレイヤーが決めます。カードは印象的なアートで解釈の幅も大きく、悲運プレイヤーの想像力に委ねられています。

 最後に神々プレイヤーに、手札として「物語カード」を6枚、個人的物語デックとして3枚の「物語カード」を配れば準備は完了です。

 ゲームはスタートプレイヤーから順番に「物語カード」をプレイして、生存中の登場人物いずれか1人の物語を話します。
 「物語カード」はなんらかのアイテムを表現しており、基本的には登場人物がアイテムを利用してこの危機にどう対処したかを表明する形になります。
 神々プレイヤーが手番としてそれぞれ1枚ずつ「物語カード」をプレイしたところでラウンドには一区切りが入り、登場人物全員の物語を綴ったところで悲運プレイヤーがどの登場人物が死ぬかをジャッジします。
 こうして1ラウンドに1人の登場人物が召され、全6ラウンドを通して7人の登場人物のうち1人の生存者が決まるまでゲームは続きます。
 そして、自分の肩入れする登場人物が生存すればその神々プレイヤーが勝利し、誰も残らなかった場合は悲運プレイヤーが勝利します。

 この「手札を使って危機を脱する」構造は「キャットアンドチョコレート」にも似ていますが、このゲームのツイストは「登場人物を生かすのではなく殺す方向にアイテムを演出してもいい」という点です。
 というのは、神々プレイヤーは自分の守護する登場人物にはなんとしても生き残って欲しいのですが、それ以外の登場人物が死ぬのは一向に構わないワケで、自分のキャラに肩入れして目論見がバレるよりは、他人のキャラを死に追いやって自分のキャラを間接的に生かす方がより勝利に近づきやすいんですね。
 「1ラウンドに登場人物が1人だけ死ぬ」ということは逆に言えば「1ラウンドに登場人物は1人しか死なない」ということでもあり、他人に強烈な死亡フラグを建設することで悲運プレイヤーのジャッジから逃れようとするのはマルチ力学的に正しい算段と言えましょう。

 「拳銃」や「金属バット」のように明らかな殺傷力を持つアイテムがある一方で「ちくわしか持ってねえ!」と思わず叫んでしまうような変なアイテムも数多く、こうしたアイテムをキャラのバックボーンを捏造して物語に繋げられると愉快な達成感があります。
 やはり同じアイテムにしても演出次第で危機を切り抜けることも、より危険な状況に登場人物を追い込むこともできるのが面白いところで、例えば「拳銃」なら、「迫ってくるゾンビたちを射撃の名手であるこのキャラ(勝手な後付設定)はバッタバッタと撃ち倒していった!」と演出することもできますし、「キャラは弾丸を撃ち尽くしてしまい、もはや絶体絶命だ」という演出もできます。なんなら「絶望したキャラは自分のこめかみに銃口を当て、引き金を引いた」なんて演出も可能です。

 ただし、その演出が本当にキャラの生存に結びつくかは悲運プレイヤーの嗜好によるところが大きいです。迫りくるゾンビに対し、自転車を使って逃走を図るのは常識的に考えれば有効な策なんですが、「仲間を見捨てて真っ先に逃げ出すのはこの手の話の死亡フラグだよね?」と悲運プレイヤーがジャッジすれば、逃げ延びた先に突如ゾンビが溢れてきて殺されてしまうのです。
 この一般的に生存に有効な手段が、見方によって一転死亡フラグに反転する瞬間には妙なカタルシスがあって、唯一無二の即興ドラマがリアルタイムで展開されているワクワク感があります。
 また、生死の全権を握る悲運プレイヤーの趣味嗜好に寄せていくと生存に有利になるというのは、この手のコミュニケーションゲームの基本線、王道を外さない作りです。ゲームを通して、お互いの趣味の理解が深まるというオマケもある……かもしれません。

 まあ、中には「このアイテムでどないせえと……」という場面もあるにはあるんですが、このゲームを楽しむ上で大事なのは「頑張ってオチをつけようとしない」ことです。人間どうしてもピンチを切り抜けるために、面白いこと、上手いこと、カッコイイことを言いたくなるんですが、どうにも無理な時は「ゾンビに囲まれた登場人物はふと昔のことを思い出した。そう言えば、昔旅先で食べたピザがおいしかったなあ。あれはどこの店だっただろうか……」とか唐突な過去回想に入るのも手かもしれません。……走馬灯じゃねえか!

 ゲーム好きの視点では、キャラクターの生死を左右する決定力のあるカードは死ぬ確率が上がる後半のためにとっておき、序盤はゆるいカードを活用してなんとか自キャラを生き延びさせるという、(物語生成系のゲームとしては変な話ですが)勝つための手札のマネジメント要素があるのがちょっとニヤリなポイントです。
 手札は最初に配られる6枚だけで基本的に補充がなく、1ラウンドに1枚を使って6ラウンドで使い切る形なので、ここぞ!というタイミングで有用なカードを使うのがテクニックです。
 このゲームは「あくまで勝敗は二の次」、楽しい時間を過ごすためのアクティビティの趣が強いゲームではありますが、一方で素直に勝利を目指すことが様々な選択の補助線にもなる作りで、「ただのアクティビティに終わらせないぞ」という密かなデザイナーの野心をぼくは感じます。まあ、気のせいかもしれませんが。

 とは言え、これらのツイストによってアイテムカードは使い道が広く、この手のゲームとしては、かなり柔軟なプレイができる点は白眉かと思います。
 逆に言えば、自分の守るべきキャラが他人の思惑で危機に瀕することもあるはずです。で、そういうときは特殊アクションとして、手番外の物語の付け足しも可能です。
 この時、プレイヤーは自分の個人的物語デックから物語カードを1枚引いて手札に加え、その後、手札から任意の1枚をプレイして物語を綴ることができます。1回のゲームで、この特殊アクションを3回まで使うことができます。緊急避難的に使うのが一番わかりやすい用法でしょうが、他人の死亡フラグをさらに強化することもできるでしょう。

 とまあ、こんな感じで、世に物語生成系のゲームは数多く存在するのですが、勝利条件の設定や脱落のルールで一風変わったユニークなゲーム性を持つタイトルに仕上がっています。
 1ラウンドで1人だけ死ぬという「クク(カンピオ)」と似たような構造は「最弱にさえならなければセーフ」という自由度の源泉でもあり、この手のゲームにありがちな「なんか面白いこと言わなキャラが死んでまう……」というプレッシャーから割と縁遠いのが2020年の試みだなという感じです。まあ、時にはやっぱりそういう場面も出てくるんですけども……
 基本的には他人の死亡フラグを無責任にズンドコズンドコ立てまくるのが楽しい遊び方ではないかなと思います。「コイツが生き残る(死ぬ)と面白いよね?」をその場の全員で合意形成していくゲームなんではないかなと。

 これは喜悲劇を作る神々のお遊びなんですよね。そして神々の手のひらの上で生死を転がされるキャラクターたち。命が軽~い。
 で、このメタな構造を俯瞰するとやはり演劇に纏わるMEKHANEというタイトルはドンピシャなんじゃないかと思えてきます。プレイヤーはデウスエクスマキナなんですね。

 プレイ人数は3-8人となっていますが、1人はゲームマスター的な悲運プレイヤーを担当するので、神々プレイヤーがある程度多い4人以上が面白そうかなと思います。
 8人プレイだと勝利条件の設定から悲運プレイヤーが勝つのは不可能になるんですが、まあ、神々プレイヤーにしても早々に勝利条件がなくなることも多いので、これは勝敗を気にせずに面白いお話を作るゲームだと考えたほうがよいかと思います。また、悲運プレイヤーも自分が勝つために誰を殺すかを決めるよりも、物語の面白さを優先してジャッジした方が全体としての満足度は高くなると思います。
 そこはルールとコンセプトにコンフリクトがあって、多少フワフワしたゲームなのは否めないんですが、表面的なアクティビティに終始するゲームも多い昨今、そこからもう一歩ゲーム側に踏み込もうとする明確な挑戦を感じられるのはよいです。

 もちろんアートの独自性は際立っていて、見る人によっては堪らない内容なのではないでしょうか。カードを眺めているだけでも面白いです。
 ぼくはアート界隈はあまり詳しくないので突っ込んだことは語れないのですが、バンドデシネっぽさもありますね。が、まあ、これはイタリアのゲームなのでどこまで影響があるかは謎……
 見た目からは相当な色物タイトルかと思いきや、ゲームデザインとしてはユニークな試みが随所にあって見どころもあり、一度遊ぶ価値のある攻めたタイトルではないかと思います。「死亡フラグを立てるゲーム」という言葉に魅力を感じる人はぜひ一度お試しを!

ゲーム紹介:ニューヨークズー(New York Zoo / Uwe Rosenberg / Feuerland Spiele / 2020)

「テラミスティカ」、「ガイアプロジェクト」、「オーディンの祝祭」重め戦略ゲームでお馴染みのフォイヤーラントシュピールから発表のウヴェ・ローゼンベルクによる新作です。

ウヴェ・ローゼンベルクは、「アグリコラ」や「アルルの丘」のようなワーカープレイスメントを中心に据えた重め路線と、「パッチワーク」や「コテージガーデン」のようなタイル配置パズル路線が最近のリリースでは目立つのですが、今回は後者、タイル配置パズル路線の新作となります。(私個人としては、新機軸カードゲーム路線も復活してほしいところではあります)
この路線では、ワーカープレイスメント路線との融合でもある「オーディンの祝祭」は別として、比較的ライトな作品が多いのですが、今回の「ニューヨークズー」もボリュームとしては中量級にかかるかかからないかというところのファミリー向け戦略ゲームになります。

重め路線のタイトルに比べ、タイル配置パズル路線のタイトルはゲームマニアの方々にとってはマンネリ感を感じる方もいるかもしれませんが、なかなかどうして、それぞれのタイトルごとに見るべきところがしっかりとあり、それぞれがやはり注目に値するものだと思うのです。

では、今回の「ニューヨークズー」はどうでしょうか。
明るいイラストと華やかな動物駒が魅力的なファミリーゲーム?
もちろん、そうです。
ですが、実は遊ぶほどに味の出てくる通好みの駆け引きが盛り込まれたゲームでもあるのです。

目的はストレート。動物園をいち早く完成させよう!

ゲームの目的としては非常にストレート。
プレイヤーは、自分の動物園の建設予定地となる個人ボードを持ちます。
個人ボード上の空きマスを、いち早くタイルで埋め切ったプレイヤーが勝利となります。

手番に行うことも非常にわかりやすいものになっています。
手番が来たら、フィールドを周回する全プレイヤーで共通となる駒を1~3マス進め、進めた先のマスによって「タイルを獲得しボードに配置する」か「新たな動物駒を獲得する」かのいずれかとなります。(「繁殖」が行われることもありますが、これについては後述します)

ゲームの目的が「ボード上をタイルで埋める」というものだけに、「タイルの獲得と配置」は、このゲームでもっとも重要かつ基本的なアクションとなるでしょう。
タイルは、4マス分~7マス分のものが用意されおり、ゲーム序盤は7マス分のものが獲得できるようになっており、ゲームが進むにつれマスの数が減っていくように調整されています。
マスの多いタイルが圧倒的に有利であることには違いありませんが、タイルの形はいびつ、かつ、まちまちであるため、当然、常に有用とは限りません。
また、実は、このゲームではマスの少ないタイルをどう活かすかが勝利の鍵を握っているとも言えます。それが、動物駒に関するルールです。

並べられたタイルからより効果的なものを獲得しよう

タイルを動物駒で埋めよう!

さきに説明したタイルは、それぞれが動物を飼育するための囲い地となっています。
プレイヤーは、タイルを獲得した際や、動物駒を獲得した際に、それぞれのタイルの上に動物駒を配置することになります。
そして、それぞれのタイルのマスを動物駒で埋めることができると、そのボーナスとして、追加で動物園を彩るアトラクションタイルを獲得することができます。
アトラクションタイルは、ボードを一気に埋めることが出来る強力な8マスで構成されているものや、ボード上の隙間を埋めるために役に立つ2マス、1マスのものがあり、ゲーム序盤から終盤までゲームを通して常に重要でありつづけるのです。

タイルか動物駒か。それが問題だ。

ゲームの骨子となるのは、冒頭で触れたように、また、ここまで説明した通り「タイルの獲得と配置」、「動物駒の獲得と配置」のみということもあり、非常にわかりやすいものです。
しかし、ゲーム性が低いかというと、決してそんなことはありません、むしろ、唸らされるバランスにまとめられており、遊ぶほどに駆け引きが豊かなゲームであることに気付かされます。

では、どのように駆け引きが用意されているのかを詳しく見ていきたいと思います。
序盤、選択肢が多いうちにマスの多いタイルを優先的に獲得していくことは基本戦略と言えるでしょう。ゲームの目的が「ボードをタイルで埋める」ことである以上、これは間違いありません。
しかし、そのタイルの形状から、ボード上すべてを通常の囲い地タイルで埋めることは不可能と言えるでしょう。
タイルを動物駒で埋めることで得られるアトラクションタイルをどこでどのように獲得していくかが鍵となるのです。
ゲーム序盤で獲得できる(そして、極めて強力な)マスの多いタイルは、そのマスの多さゆえ動物駒で埋めるまでとても時間がかかるのは言うまでもありません。
一方、マスの少ないタイルは、少なければ少ないほど動物駒で埋めるのは簡単です。
ここで、マスの少ないタイルをどんどん動物駒で埋めて、アトラクションタイルによって手を進めるという戦略が成立するようになっています。
タイルも動物駒も、手番中に獲得できるのは一つです。
ここで重要となってくるのが「繁殖」のルールです。

主役となる動物たち

動物たちを繁殖させよう!

ボード上に動物の種類ごとに用意された特定のタイミングで、プレイヤー全員は、該当する動物の「繁殖」の処理を行うことになります。
「繁殖」は、動物駒を二個以上置いている囲い地において、置かれている駒を一つ増やすという効果があります。
これが極めて重要なのです。このゲームにおいて、プレイヤーが得られる駒やタイルの数をブースト、底上げしてくれる要素は、この「繁殖」と、その先にあるボーナスタイル「アトラクションタイル」しかありません。またこの「繁殖」は、アクションとして実行されるわけではなく、処理として実行されるため、繁殖可能な体制を取ってさえいれば、自然と配置される駒が増えていくことになります。繁殖で増える駒は一つ。たかが一つ、されど一つ。繁殖が出来るものとできないもの、その差はジワジワと広がっていくのです。

基本となる部分は「タイルの置く、タイルの上に動物を置く」だけでありながら、勝利に近づくためには「どの動物駒を獲得するか」、「どの囲い地にどの動物駒を置くか」、「どのタイミングで繁殖出来る状態を作るのか」をしっかりと踏まえなければなりません。
そして、これはゲームが今、序盤なのか、中盤なのか、終盤なのかによっても変わってくるでしょう。
-マスの多いタイルを取りたい序盤。だけど他のプレイヤーより早くタイルを埋めて広いアトラクションタイルを狙ってもいいかも。今なら競争相手もいないし。
-思った以上に他のプレイヤーはタイルを狙っているぞ。遅れをとらないようにタイルを取りにいくべきか。そのためにも繁殖出来る体制をとっておこう。
-そろそろ空きマスのいびつさが気になってきたな。積極的にタイルを駒で埋めてアトラクションタイルを狙っていこう。
-ラスト一マス!あとはいかに早くタイルを駒で埋めるかだ。
こんな風に、プレイヤーが勝利に近づくために考えることはそこかしこに用意されているのです。

いよいよ終盤

とにかく懐の深いタイトルです!

私がゲームマニアということもあり、また、このブログの性質上、ゲームとしての面白さを掘り下げた紹介となってしまいましたが、「ニューヨークズー」はやはりファミリーゲームとしての側面が強いタイトルです。
このゲームのために用意された特別な動物駒たちは、いずれも可愛らしく目を引きます。
駆け引きのポイントがわかりにくい(渋い)く、差がつきにくいと感じられる方もいるかもしれません。
しかし、勝利条件が「いち早くボードを埋める」という早上がり方式になっていることで、終盤まで一手一手がどれだけ的確だったかを感じられるようになっており、非常にスリルが味わえるようになっています。
また、誰と遊んでもいい勝負になりやすいという風にも言え、動物園がタイルと駒によって賑やかになっていく様は、それだけで楽しく、そこを純粋に楽しんでいたとしてもいい勝負になりやすいというのは、むしろ、ファミリーゲームとしては大きな利点と言えるでしょう。
そんな懐の深いタイトルと言っていいのではないでしょうか。

ウヴェ・ローゼンベルクのデザインセンスを感じるには充分過ぎる一作だと思います。

ゲーム紹介:テケン:太陽のオベリスク(Tekhenu: Obelisk of the Sun / Daniele Tascini, David Turzi / Board&Dice / 2020)

パッケージにも燦然と輝くオベリスク

「さまざまな要素が組み合わされた戦略ゲームです」
ボードゲームをよく遊ばれている方は、ネット上でレビューなどを読んだ時に、このような一文を目にしたことは一度や二度ではないでしょう。
「テケン:太陽のオベリスク」、まさに「さまざまな要素が組み合わされた戦略ゲーム」なのですが、そのほかのゲームを一笑に付するような、そんな究極のごった煮感を持った、圧倒的な「さまざまな要素が組み合わされた戦略ゲーム」なのです。

ゲームデザイナーは、ルチアーニとの共作「ツォルキン」、「マルコポーロの旅路」や「テオティワカン」などでお馴染みのダニエレ・タスチーニと、「アナクロニー」、「ダイスセトラーズ」のTurczi(すみません。読みがよくわかりません)。

プレイヤーは、古代エジプトの貴族となり、彫像や円柱を神殿に建て、生産力を上げたり、人口を増やし-そして住民の幸福度にも気を配りながら-、都市を発展させていく中で得点を競います。
王道とも言えるゲーム背景を、タスチーニたちはどのように圧倒的なごった煮感を持ったゲームに仕上げたのでしょうか。

基本となるのはダイスドラフト-そしてオベリスクの影

まずは、ゲームの基本的な進め方を見ていきましょう。
ゲームの中核をなすシステムは、ボード上に置かれたダイスを選び取り、アクションを実行する「ダイスドラフト」です。
プレイヤーは、手番ごとにダイスを選び取り、さまざまな特殊効果を持つ「神アクション」か「資源の生産」を行うことになります。
このとき、「神アクション」の場合は、選んだダイスが置かれていた区画に応じたアクションをダイスの目に従って行うことになり、「資源の生産」ではダイスの色に応じた資源をダイスの目の数だけ生産することになります。

オベリスクが目を引くゲームボード

このとき、「テケン:太陽のオベリスク」では、もう一つ重要となる要素があります。
ゲームボード上にひときわ目立つ形で建てられたオベリスクの影による影響です。
オベリスクの周囲を取り囲むようにダイスを置く区画が用意されているのですが、それぞれの区画は、ターンごとに日向、薄暗がり、日陰に分けられ、ダイスの色によって、ダイスはさらに純潔なダイス、汚れているダイス、禁じられたダイスに分けられるのです。
禁じられたダイスは選び取ることが出来ず、純潔なダイスと汚れているダイスは、アクションを実行したのちに、各プレイヤーボードに用意された天秤の対応するいずれかの皿に置かれることになります。
この天秤の左右のバランスは、ゲーム中にチェックする場面があり、いずれか一方に偏っていると、得点にペナルティを受けたり、手番順が遅くなることになります。
すなわち、ダイスを選び取る際には、置かれる皿を踏まえ、天秤の左右のバランスも考慮することが重要となるのです。
アクションの内容や質を優先させるのか、天秤のバランスを優先させるのか。
ただでさえ悩ましいダイス選びが、さらに一段、二段、悩ましいものになっています。

オベリスクの影による影響は、単に天秤のバランスの悩ましさを増すに留まりません。
影は時間の経過と共に-つまりゲーム進行と共に-動くことになります。
このことにより、(選び取ることの出来なかった)禁じられたダイスが、ゲームが進むと選び取れるように、またはその逆で選ぶことのできていたダイスが選び取れなくなるようになることを意味しています。
影によってダイスが受ける影響はボード上から読み取れるため、先を見据えた戦略を持たせることにも成功していると言えるでしょう。

ダイスドラフトが基本となるだけに「テケン:太陽のオベリスク」においてダイス選びは非常に重要な要素ではあるのですが、重量級のゲームだけに、ただ翻弄されるだけのゲームではありません。
ゲーム中に得ることのできる「書記官」を支払うことで、ダイスの目を増減したり、影の影響や区画を踏まえずにダイスを選び取ることでできるのです。
ゲームを通して非常に価値の高い「書記官」をどう獲得し、どう活用していくかもまたとても重要なのです。

それぞれが濃密なさまざまな神アクション

ダイスを選んだら、神アクションの実行です。
「テケン:太陽のオベリスク」において、神アクションひとつとっても、いずれも濃厚。
単に駒を置く、カードを取るというようなことだけでなく、「どう置くのか」というような選択や、あるアクションの効果がのちの他の効果に及ぼす影響がとても大きいことも多いことなどから、ひとつひとつがとても悩ましいものになっているのです。
そんなわけで、ここですべてを語るのはとても難しいため、特徴的なアクションを中心に、ざっとではありますが、紹介していきたいと思います。

まずは、「彫像の建設」を行うホルスアクション。
資源を支払い、彫像を建てる-と聞くととても単純なアクションですが、どこに建て、どのような効果を狙うかの選択肢が多岐にわたり、これだけでもめちゃくちゃに悩ましいアクションなのです。
具体的な選択肢としては、主に「オベリスクの周りに建てる」か「神殿複合体に建てる」か「工房か石切場に建てる」の三つ。
オベリスクの周りに建てた場合は、その彫像が置かれた区画のアクションを誰かが実行した時に(「おこぼれ」のような)恩恵を得ることができます。
神殿複合体に建てた場合は、「円柱の建設」を行うラーアクションとの組み合わせにより得点を狙うことができます。
工房か石切場に建てた場合は、それぞれの場所での建設数を競う-そしてそれによっての得点を獲得出来る-マジョリティ争いで優位に立つことができます。
「彫像を建てる」だけでも、その時に踏まえるべき要素や、その先に見据えるべき展開は、とても幅広いのです。

続いて、神殿複合体内に「円柱を建てる」ラーアクション。
ダイス目に応じて、建てるタイルを選び、資源を支払い、円柱を建てることになります。
このアクションでは、パズル的な思考を問われることになります。
神殿複合体内は、5×5のグリッドになっており、建てる場所によって得点や資源を得られることになります。
また、加えて、タイルのフチは色分けされており、神殿複合体内の外周やすでに配置済みの他のタイルのフチの色と合わせることで、より高い得点を獲得することができるようになっています。
そのため、どこに建てるかを考える時に、グリッド上の位置だけでなく、ゲームごとに異なることになるタイルの配置状況を踏まえる必要があるのです。
そのほか、建てるタイミングによって得られるボーナスや、前述の彫像や、後述のハトホルアクションによる建物との絡みによって得られる得点もあり、どれを狙っていくか。これもまたとても悩ましいのです。

円柱を建てる際には場所、タイルの向きが超重要(円柱駒の上下が逆です。すみません)

続いては、「建物の建設」ハトホルアクション。
神殿複合体内の外側に用意されたマスに建物を建設し、得点に繋がるアクションで、「テケン:太陽のオベリスク」において、比較的オーソドックスなものになっています。
とはいえ、それぞれのマスは、建物がひとつしか建てられないことによる早取りの駆け引きや、建物を建てることで増える人口は、他の要素にも関わってくるため、決して軽んじることはできません。

人々が増えたら幸福度にも気を配らなければなりません。
彼らの幸福度を上げるのはバステトアクションです。
いわゆる「パラメータ上げ」の要素となるバステトアクション、選んだダイス目の数だけ幸福度を上げ、どこまで到達したか(しているか)によって、ボーナスを得ることができます。さらに、後述のトトアクションにおいて選択肢を増やすためににも非常な重要な要素なります。
しかし、上げることができるのは人口と等しい数まで。
前述のハトホルアクションとのバランスも重要となるのです。

人口と幸福度

続いて、「カードの獲得」トトアクションです。
「テケン:太陽のオベリスク」に用意されたカードは、即時効果「祝福カード」、持続効果「技術カード」、最終ボーナス「布告カード」の三種類。
これらのカードをボード上から獲得することになります。
このとき、前述の幸福度が極めて重要になります。
ボード上のカード市場は4つの区画にわけられ、どこから得られるか、その選択肢の広さは幸福度に比例しているのです。
しかも、カード市場の区画によっては、選べないカードの種類があり、例えば、最終ボーナス「布告カード」は展開によって極めて多きな得点が狙えるものの、幸福度を上げていなければ、そもそも獲得することができないのです。
もちろん、布告カードのみならず、「祝福カード」や「技術カード」もおろそかにすることができないのが「テケン:太陽のオベリスク」の難しいところであり、面白いところ。
というのも、このゲームでの手番数は16。16アクションしか行えないのです。
限られたアクション数の中での即時効果や持続効果(アクションを増やせるものもあり)は、使い方によっては、ゲーム終了時の大きなボーナス得点以上の効果をもたらすのは言うまでもありません。
これらのカードは、ほぼユニークと言ってもいいくらいの種類となっていることも相まって、選択肢の広さは狙ったカードを取るために、非常に重要なのです。

カード市場にはさまざまなカードが並ぶ

最後の神アクションは「工房、石切場の建設」オシリスアクションです。
いわゆる「拡大再生産」的な要素を担う箇所となっており、建物を建てることで、メインとなるリソース4つの生産許容量を上げることができます。
「テケン:太陽のオベリスク」では、選んだダイス目の分、資源を生産できるのですが、獲得できるのは工房、石切場の建設数に応じた生産許容量までとなり、超えた分は獲得できないばかりか、天秤のバランスを崩し、ペナルティに繋がる場合があります。
そのため、さまざまなアクションで充分な支払うコストのために、また、ペナルティを避けるために、一回の資源の生産アクションの質を高めるオシリスアクションは、やはり軽視することはできないのです。
加えて、それぞれの工房、石切場に建てた建物の数を競うマジョリティー争いの要素があり、ほかのプレイヤーの動向に気を配る必要もあるのです。

マジョリティを意識しつつ生産力を上げる

驚きの盛り込みっぷり!

神アクションを一通り見てみたところで、もう一度、各要素をざっと見てみましょう。

・基本的なゲームプレイ
ダイスドラフト、リソース獲得、技術カードなどの特殊効果

・神アクション
‐ホルスアクション(彫像の建設)
他プレイヤーへのアクション便乗、マジョリティ争いへのアプローチ、得点へのアプローチ

‐ラーアクション(円柱の建設)
タイル配置パズル、得点へのアプローチ

‐ハトホルアクション(建物の建設)
パラメータ上げ、得点へのアプローチ

‐バステトアクション(幸福度アップ)
パラメータ上げ、カード獲得の際の選択肢アップ、得点へのアプローチ

‐トトアクション(カード獲得)
特殊カード獲得(即時効果、永続効果、最終ボーナス)

‐オシリスアクション(建物の建設)
拡大再生産、場所の早取り、マジョリティ争い

本当にざっと挙げただけでもこのように多岐にわたっています。
ダイスドラフトではダイスの置かれている場所、その目がもちろん重要となるのは、前述したとおりですし、加えて、ほとんどのアクションではさまざまなリソースを要求されることになり、そのリソース管理はもちろん重要です。
また、すでにさまざまなところで述べているように、多くの要素が異なる要素に影響を与えたり、与えられたりと、綿密にからみあっているのです。
これらを16回という少ない手番の中で、かつ、オベリスクの影や、天秤のバランスに翻弄、気を配りながら、効率よく行い、絡み合った要素の糸を解きほぐすようにアクションを組み立てていく面白さはたまらないものがあります。
冒頭に書いた「究極のごった煮」感は、しかし、決してなんでもかんでも放り込んだような雑なものではなく、緻密に混じり合った上でのものであることには驚かされるはずです。

今、体験すべき価値のあるゲーム

さまざまな要素が組み合わされたゲームは、今や、ボードゲームの王道的なものであり、決して珍しいものではありません。
しかし、ここまで多岐にわたった要素が盛り込まれ、ここまで綿密に組み上げられたゲームは、極めて少ないと言って間違いないでしょう。
人によっては明らかに要素が多く、「トゥーマッチ」だと感じる人も少なくないはずです。
しかし、数多くの重厚なユーロゲームを発表し、人気となっているタスチーニが、どのようにこれだけの要素をまとめ上げたのか、それを味わうだけでも十分に遊ぶ価値のあるゲームだと思います。
ボタンカーメン(ボット+ツタンカーメン)との対戦形式のソロプレイルールも用意され、抜かりなし。
大げさでなく、現代的なボードゲームのある種の到達点と言える作品かもしれません。
「テケン:太陽のオベリスク」、2020年夏、もっとも注目すべきタイトルと自信を持ってオススメする一作です。

ちなみに私は、テストプレイがあまりに面白く、そのあと、同じ日にさらに二回連続で遊んでしまいました。

テケン:太陽のオベリスク
プレイ人数:1~4人(1人ゲームは対ボット戦)
対象年齢:14歳~
プレイ時間:60~120分
ルール:32ページ

ゲーム紹介:マラカイボ(Maracaibo / Alexander Pfister / Game’s Up / 2019)

2019年のエッセンシュピールで発表された多くの作品の中で、Boardgamegeekのランキングにおいて、もっとも高いランクに位置している話題作が、今回紹介する「マラカイボ」です。

ヨーロッパ諸国がその覇権を争っていた17世紀のカリブ海を舞台に、プレイヤーは、冒険者としての顔も持つ船乗りとして、富と名声を求め、さまざまな戦略を駆使し、目的を達成させ、より高い得点獲得を目指します。

作者は、アレクサンダー・プフィスター。
「アイル・オブ・スカイ」、「ブルームサービス」と言った中量級のゲームも得意とするデザイナーですが、今回の「マラカイボ」は「モンバサ」、「グレートウエスタントレイル」、「ブラックアウト香港」と言った重量級ユーロストラテジーの流れにある作品で、非常にゲーマー心をくすぐる一作になっています。

カリブの島、町、村を巡れ

ゲームの基本的な流れは、マスとして描かれたカリブ海の島にある町、村を巡りつつ、アクションを実行することです。町には町ごとに特別なアクションが用意され、村ではベーシックなアクションを実行することができます。(加えて、計画カードによって、自分の助手を配置することでさらに特別なアクションを実行できるようになります。後述)
村に止まった際に、非常に重要となることがあります。手番ごとに船駒を進めることになるのですが、このとき、その村に止まるまでに進めたマス数が、村で実行することのできるアクション数に関わってくるのです。
ならば、一気に進めたほうが有利のように思いますが、そこにはもちろん制約があります。それぞれのマス、ルートは一方通行になっており、戻ることができないのです。この点に関しては、「グレートウエスタントレイル」の流れを汲むと言っていいでしょう。
どのくらい船を進め、どのようにアクションを実行するか、一手ごとの選択はとても重要となるのです。
また、カリブ海を一周することがラウンド終了も意味しており、ゲーム全体の流れにも大きく影響を及ぼすのです。

計画カードに注目せよ

「船を進め、アクションを実行する」、ゲームのベースとなる部分は、非常にシンプルと言えるかもしれません。
そこに多様性を加えてくれる大きな要素といえるのが、150枚を超える枚数が用意された「計画カード」です。

さまざまな職業や人物の描かれた「計画カード」を自分の場に出すことで、プレイヤーは、カードごとのさまざまな恩恵を得ることができます。
こういったゲームでお馴染みの収入増加や即時効果もありますが、「マラカイボ」で特徴的なものとして「シナジートークンとの組み合わせによる相乗効果」、「助手アクション」といったものがあります。
まず、「シナジートークンとの組み合わせによる相乗効果」です。プレイヤーは、特定のカードをプレイした際に、それぞれのカードを象徴するアイコンが描かれた「シナジートークン」を得ることがあります。シナジートークンは、それ単独では効果を持ちません。しかし、そのシナジートークンを持つことが前提条件として描かれたカードがプレイされると、プレイヤーにさらなる恩恵をもたらしてくれるようになるのです。いわゆる「コンボ」を可視化させたような特徴的なものと言えるでしょう。
より特徴的と言えるのが「助手アクション」です。助手アクションが用意されたカードをプレイすると、指定されたマスに助手駒を置くことになります。以後、その助手駒の置かれたマスに船駒が止まった際に、そのカードに描かれた特別なアクションを実行できるようになるのです。ボード上にある町のアクションは共通のアクションとなるのですが、「助手アクション」があることで、ゲームが進むにつれ、プレイヤーごとにボード上で実行できるアクションも変化していくことになります。これは、船駒の進め方のルールと相まって、戦略に大きな影響を及ぼすことになるでしょう。
「グレートウエスタントレイル」でも見られた手法ではあるのですが、「村や町に助手がいることで、その場所を訪れた時に協力が得られる」という設定は、ゲームの雰囲気をより一層高めてくれ、テーマ派のプレイヤーにとって大いに魅力に感じてもらえるはずです。

もう一点、計画カードには重要な要素があります。
それは「リソースも兼ねている」ということです。
ボリュームのあるゲームではありますが、実は、基本となるリソースは「ダブロン」と呼ばれるお金だけです。
ですが、「クエストタイル」や「ストーリータイル」と呼ばれる「目的」を達成するために、計画カードが大きな意味を持つことになります。
カードにはさまざまなシンボルが描かれ、このシンボルが描かれたカードを指定された分だけ出すことで、目的を達成することになるからです。
カードは基本的に手番ごとに補充されるとは言え、それをどのように活用するのか、そしてその取捨選択はとても悩ましく、決してそれぞれのカードを安易に扱うことは出来ないのです。

自分の船をより強力にせよ

手を有利に進めるために計画カードが重要であることは述べたとおりです。
ですが、もちろん、それだけではありません。
加えて重要となるのが、自分の船をより強力にすることです。
プレイヤーは、ゲーム開始時に、自分だけの船ボードを受取ります。
船ボードには、非常に多くのさまざまなアクションや効果が描かれています。
しかし、ゲーム開始時点では、これらのアクションや効果にはディスクが置かれ、ロックされた状態になっています。
ゲーム中に、「ディスクを取り除く」という効果を得た時に、それぞれのディスクは取り除かれ、徐々に船ボード上のアクションや効果がアンロックされていくのです。
単純な収入増や得点獲得はもちろんのこと、手札の上限枚数増加や村での基本アクションの効率アップなど、戦略の根幹に関わってくるものも用意されています。
どのタイミングでどのアクションや効果をアンロックしていくか、ここでもまたシビアな選択が求められることになります。

昨今のゲームでは非常に基本的な要素として含んでいることの多い「拡大再生産」。
「マラカイボ」でも、「拡大再生産」的な箇所はもちろんありますが、「お金」だけ、といってもいいほど、拡大再生産の存在感は薄いと言っていいでしょう。
しかし、計画カードや船の強化などにより、「さまざまな効果を積み重ね、プレイヤー自身をアップグレードしていく」ことで高揚感や興奮が得られるようになっており、要素の取捨選択にみられるゲームデザインの巧みさには唸らされます。

さまざまな得点獲得方法を活かせ

では、そのようにプレイを進めていき、その先、実際にどのように得点を獲得していくのでしょうか。

まず、一番基本となるのが収入としての得点です。ラウンド間での決算時、収入として得点を獲得することができます。もちろん、その収入はさまざまなカードによって増加させることができます。先に述べた特定のカードと「シナジートークン」の組み合わせによってはとても大きな得点獲得にも期待できるでしょう。
もちろん、ほかの多くのゲームと同様に、プレイしたカードも得点をもたらします。カード左上に描かれた得点にも注目してカードをプレイしていきましょう。
計画カード以外にも、最終得点ボーナスにもたらす「名声建物カード」の獲得も狙ってみましょう。大きな得点を期待できますが、限られた枚数しかなく、いち早く獲得する必要があります。

もちろん、プフィスターのこと、まだまだ得点手段は用意されています。
「探険トラック」を進めることも、そのひとつです。
ゲーム中、効果として探険トラックを進める機会を得ることがあります。そして、プレイヤーは、ボード上に用意された探険トラックにおいて、自分の探検家駒を進めることになります。
探険トラックの各マスには、さまざまな恩恵が用意されており、その中にもちろん得点もあります。
基本的に進めてさえいけば、それだけで恩恵を得ることができます。しかし、特定のマスにいち早く到達したかどうかでの追加得点もあるため、他のプレイヤーの動向にも注意すべきでしょう。
加えて、ところどころ、分岐点も用意されています。ここでもまたプレイヤーは選択を迫れることになります。
ある種のパラメーター上げとも言える「探険トラック」もまた「マラカイボ」では重要な要素なのです。

さらに重要な得点要素として、世界観と結びついて重要なヨーロッパ諸国への影響力があります。
カリブ海では、フランス、イギリス、スペインが覇権を争い、戦いを繰り広げています。
プレイヤーは、この覇権争いにも身を投じることになります。
勃発する戦いの際に、どの国に加担し、そして影響力を持っていくのか、戦いごとの各国の戦闘力、自らの船の戦闘力、そしてなによりも最終的な得点を見据え、選択を迫られます。
それぞれの国がカリブ海で存在を増していくことは、一種のマジョリティ争いにもなっており、それぞれの国に対しプレイヤーがどのくらい影響力を持ってるかによって最終得点計算においてとても大きな意味を持つことになるため、ゲームを通して常に頭に留めておく必要があるでしょう。

そのほか、個人ごとの目標ともいえる「経歴カード」もあり、得点方法ひとつをとってみても、このゲームのボリュームの大きさを感じ取れるのではないでしょうか。

「マラカイボ」最大の注目点、ストーリーカード!

一通り「マラカイボ」のシステムを紹介してきましたが、もっとも大事なことにまだ触れていませんでした。
それはストーリーカードによる物語性、ナラティブ要素です。
ゲームを開始する前に、「キャンペーン」としてプレイすることを選んだ場合、80枚弱の枚数が用意された「ストーリーカード」を用いることになります。

このストーリーカードには、カリブ海で繰り広げられる物語が書かれており、その内容に従い、それぞれのストーリーの鍵となるストーリータイル、クエストタイルを用意することになります。
ゲーム中、それぞれのタイルに描かれた条件を満たし、達成することで、ストーリーが進展していくことになります。
例えば、冒頭、ここカリブ海で伝染病が蔓延しはじめたことが語られます。
プレイヤーたちは、その伝染病に対処するため、ある町を訪れることになります。
町を訪れ、クエストを達成し・・・すると、一人の医者がキーマンとなることがわかるのですが・・・というように進んでいくのです。
時に、そのカードの内容によっては、大きな選択を迫られることになることもあります。
全プレイヤーでどの選択肢を選ぶべきか、そしてその行く末は・・・ゲームブックのように、どの選択肢を選んだかによって、次に読むべきストーリーが書かれたカードが指定されることになります。
さらには、特定のタイルがボード上に置かれることもあります。ボード上にタイルが置かれることで、ボード上に描かれたマスやルートが上書きされ、ボード上の構成が変わるのです。
ストーリーが進むにつれ、どのようにカリブ海の村や町が変貌を遂げていくのでしょうか。遊ぶほどに、その変化が気になっていくことでしょう。
もともと戦略ゲームとして懐の深い造りをしている「マラカイボ」だけに、普通にゲームを楽しむだけでも十分にリプレイ性の高いゲームになっているのは間違いありません。
しかし、キャンペーンを遊ぶことで、ランダムセットアップとはまた違った、非常に特徴的かつダイナミックな方法で高められたリプレイ性の高さを感じ取ってもらえるはずです。
また、興味深いストーリーを追いつつも対戦ゲームとして駆け引きを繰り広げるのは、とても新鮮なプレイ感があります。

この「キャンペーン」は、いわゆる「レガシー系」と呼ばれるゲームと近いシステムになっていますが、不可逆な変更が加えられることはなく、全体を通してのプレイは一回のみに限られているということはありません。
また、「キャンペーン」ではないプレイ方法も用意されているため、ストーリーにこだわらない、一般的なストラテジーゲームとして楽しむことも可能であり、ユーザーごとのプレイ環境に合わせて遊ぶことができるのです。

まとめ

「マラカイボ」、端々にプフィスターの過去作との繋がりのようなものを感じることができますが、決して過去作の寄せ集めということはありません。
要素によっては極力にシンプルにまとめられた箇所、そしてもちろんストーリーカードを用いたキャンペーンプレイなどに「今」のプフィスター作であるということを十分に感じることができるのではないでしょうか。

拡大再生産とはまた違った「能力や効果の底上げ」を積み重ねることでのプレイ中に味わえる独特な加速感、高揚感は、とても魅力的。
ボード上の駒の進め方やアクションの実行は自由度が高くとも、ヨーロッパ諸国の覇権争いを介しての駆け引き、クエスト達成や探険トラックといった「早い者勝ち」の要素など、インタラクション性も十分。
そしてもちろん「ストーリーカード」を用いたゲーム本来の展開とは異なるダイナミズムとリプレイ性の高さ。
オートマプレイヤー「ジーン」と相手にしての一人用ルールも用意され、抜かりなし。

ひょっとしたら、このボリューム感に難解さやハードルの高さを感じた方も少なくないかもしれません。
しかし、ルールは決して難解ではなく、24ページあるルールブックでも、メインとなるルールについては、半分の12ページで語られています。残りの12ページは、一人用ルールやカードやシンボルの詳細な解説です。
これは私見ですが「グレートウエスタントレイル」や「モンバサ」よりもルール理解の難易度は、低いように思います。
そういう意味では、プフィスターの作品に興味はあったものの、これまでなかなか手を出せなかった方にとっても、ぴったりなタイトルと言えるかもしれません。

2020年、絶対にプレイすべき一作であると自信を持って言えるタイトルです。

マラカイボ
プレイ人数:1~4人(1人ゲームはオートマプレイヤーとの対戦)
対象年齢:12歳~
プレイ時間:プレイヤー一人あたり30分
ルール:24ページ

ゲーム紹介:マスター・オブ・ルネッサンス-ルネッサンスの偉人たち(Master of Renaissance: Lorenzo il Magnifico – The Card Game / Simone Luciani, Nestore Mangone / Cranio Creations / 2019)

2018年に発表されスマッシュヒットとなった「ニュートン」のデザイナーコンビであるシモーネ・ルチアーニ&ネストレ・マンゴネが再びタッグを組み発表された新作が、今回ご紹介する「マスター・オブ・ルネッサンス-ルネッサンスの偉人たち」です。

プレイヤーは、フィレンツェの有力者となり、得た資源をもとにカードを獲得、使用することを繰り返し、教皇への信仰心も示しながら、より高い得点獲得を目指します。
ゲームのジャンルとしては、さまざまな効果を持つカードを獲得し、自分の場で組み合わせることでより効率的なリソース獲得や変換の仕組みを作り上げていく「エンジン/タブロービルド」。世界的ヒット作の「宝石の煌き」や「ウイングスパン」が、このジャンルの有名作と言えます。

今や最注目デザイナーの一人となったルチアーニと、パズル性を持った作品が得意なマンゴネが、その「エンジン/タブロービルド」を自作の中でどのように料理したのでしょうか。

収入か変換か

ゲームの進行はとてもシンプルに作られています。
手番が来たら、「市場から資源を得る」、「発展カードを1枚購入する」、「生産力を発動させる」の三つのアクションから1つを選んで実行します。(正確には、そのほかに特別なアクションとして指導者アクションがあります)

まず、なにはなくとも資源がなければはじまりません。
「市場から資源を得る」アクションを実行するこで、プレイヤーは資源を得ることができます。
市場は、マーブル(球)が並べられたトレイで表現され、余っているマーブル一個をトレイの段か列に押し込み、その時にその段か列に並んでいたマーブルに対応する資源を得ることができます。
マーブルを押し入れる、押し出すというギミックは目を引くことに加え感触的にも楽しく、このゲームの特徴になっていますが、決してギミック的な魅力だけに留まらず、ゲームシステム的にも面白いものになっています。
まず、列を選ぶか段を選ぶかで獲得できる資源の個数が3個なのか4個なのか変わり、どう押し出されていくかで資源の種類が刻一刻と変わるため、その選択には非常に妙味があるのです。

美しいマーブル

資源を得たら、発展カードを購入することになります。
カードは、示されている資源を支払えば購入することが出来ますが、カードは三つのレベルに分けられており、レベル2とレベル3のカードに関しては、すでに購入し所有している1と2のカードを上書きするようにしか購入することができないので、注意が必要です。
資源が豊富にあろうとなかろうと、自分の場は段階を経て強化していかなければならないのです。
また、これは、それまで使っていたカードの効果が使えなくなることも意味します。レベル2や3のカードは、単独で見ればより強い効果を持っていますが、その効果が実際に自分にとってより効果的なものかどうかはしっかりと見極める必要があるでしょう。
加えて、購入したカードを配置する「スロット」と呼ばれる場は、3つしかないため、そのスロット間のバランスも非常に重要なのです。

次に、購入したカードを発動させることになります。
カードを発動させることで、保有している資源を別の資源(もしくは信仰心)に変換することができます。
ここで重要なのは、発動させることでできるのは、あくまで「変換」だということです。1個の資源が異なる2個になることや、レベルの高いカードでは2個の資源が異なる5個の資源になり、結果個数が増えることはありますが、1個の資源が異なる1個に変換されるような効果を持つカードもあります。直接的な収入に繋がるようなカードは用意されていないのです。
エンジン/タブロービルドのゲームでは、直接的な収入増に繋がるカードが用意されていることも多く、拡大再生産的な要素を多分に含んでいることも珍しくないのですが、「マスター・オブ・ルネッサンス」においては、あまり当てはまりません。
むしろ、単に資源を増やしたければ、「市場から資源を得る」アクションの方が効率がいいことの方が多いのです。

さまざまなカードを組み合わせていく

貯蔵所と金庫がカギ

では、なぜ、発展カードの購入と発動が重要なのでしょうか。
その答えは、個人ボードに用意された貯蔵所と金庫にあります。
「マスター・オブ・ルネッサンス」では、市場から得た資源は、貯蔵所へと置かれることになります。
しかし、この貯蔵所は、3種類の資源をそれぞれ1、2、3個までしか保管することができないのです。しかも、同一の資源4個を1個と3個に分けておく、というようなこともできません。ゲームを進めるには、あまりにキツい制限が設けられているのです。
ここでカードを発動させることでの変換がとても大きな意味を持ってくることになります。
変換によって獲得した資源は、貯蔵所ではなく金庫へ置かれることになります。
金庫は、貯蔵所とは異なり、制限無くさまざまな資源をどれだけでも保管することが出来るのです。
ゲーム序盤こそ、貯蔵所の資源だけでもカードの購入は出来るものの、レベル2や3のカードは、金庫の資源を用いることが前提になっているので、金庫を含めたマネージメントは必須なのです。
すなわち、市場から獲得した資源を貯蔵所に保管しつつ、適宜、カード効果を用いて変換を行い、金庫へ移していくことが勝利のカギとなっているのです。

的確なマネージメントが必要な貯蔵庫と金庫

教皇への信仰心を示せ

プレイヤー間のインタラクションも見ていきましょう。
「マスター・オブ・ルネッサンス」でインタラクションが色濃く出ているのは、発展カードの購入と信仰トラックでしょう。
購入する対象となる発展カードの種類、枚数は、非常に限られており、他のプレイヤーとプレイの方向性が被った際には、狙ったカードをいち早く獲得できるかどうかが重要となるのは言うまでもありません。
次に信仰トラックです。
ゲーム中、信仰心を獲得するたびに、プレイヤーは、信仰トラック上で信仰マーカーを進めることになります。
信仰トラック上で、あるプレイヤーが教皇スペースと呼ばれるマスに到達、もしくは通過した際に、ほかのプレイヤーもマーカーの進行を確認することになります。
このとき、対応する一定の区間に到達していれば問題ないのですが、もし、一定の区間に到達できていない場合、教皇からの恩恵を得られなかったとして得点を逸してしまうのです。
また、最後の教皇スペースはゲームの終了条件にもなっており、ゲームの終了タイミングを見据えたプレイングを考えた時にも、非常に重要な要素になっています。
直接的なインタラクションではありませんが、他のプレイヤーがどの程度信仰を獲得しているのか、もしくは獲得できるようなエンジン/タブローを構成しているのかは常に把握する必要があるでしょう。

間近に来た教皇スペース

まとめ

現在、人気ジャンルのひとつになっている「エンジン/タブロービルド」ですが、「マスター・オブ・ルネッサンス」では、拡大再生産的な部分をかなり大胆にそぎ落とし、「変換」の部分を掘り下げたことで、非常にタイトなゲームになっています。
収入の増加、インフレがもたらす高揚感はありませんが、だからこそ、組み上げたエンジンがうまくはまり、狙ったとおりの資源の獲得と活用が出来た時の快感は、このゲームならではのもの。そして、タイトなゲームであればこそ、より一層、その快感が味わえるものになっているのです。

基本アクションのシンプルさ、貯蔵庫と金庫における資源管理の悩ましさ、限られた3つのスロットをどのように活用していくかのプランニングとエンジンビルドの面白さ、信仰トラックにおける駆け引きとそれによる収束性の良さ、加えて、マーブルを用いた市場システムのキャッチーさ。
決してヘビーゲームではありませんが、ゲーム好きも唸らされる箇所を随所に感じられることができます。
ルチアーニ&マンゴネのデザインセンスが随所に光る、完成度の高い一作であると言えるでしょう。

マスター・オブ・ルネッサンス-ルネッサンスの偉人たち
プレイ人数:1~4人(1人ゲームはスコアアタック)
対象年齢:14歳~
プレイ時間:60分
ルール:8ページ

※5月下旬発売予定

ボードゲーム出版現場でのコロナウィルスの影響について

世界規模の感染拡大により多大な影響が出ているコロナウィルスですが、ボードゲーム業界においても、それは変わりなく、大きな影響が出つつあります。

普段、私は、「裏側」のようなこういったことを詳細にお伝えすることはないのですが、これから(ものによっては秋以降、年末といった遅いタイミングで)、その影響が目に見える形で、そしてお客様にも避けられない形で現れる可能性が高いことから、今回、どういった影響が出つつあるのか、また、今後考えられるのかをまとめてみました。

※この記事において言及されている事柄は、あくまでテンデイズゲームズとそれに関係するものであり、ボードゲーム業界、すべての出版社や商品に当てはまるものではありません。また、2020年4月20日時点でのものになります。

工場での製造について

いまや、ボードゲームに関しても、多くのタイトルの製造を担っているのは中国の工場です。
その中国の工場に関しては、春節の休み以降も、業務再開を見送っている工場がほとんどでしたが、現在は地域差はあるものの大多数の工場が製造再開出来ているように感じます。
ただ、本来、2月中旬から稼働する前提で組まれていたスケジュールが変更を余儀なくされてしまい、現時点でも、まだその変更の影響が大きく残っているようです。

ヨーロッパの工場は、操業が止まるということはなかったようで、製造自体に大きな影響は感じられませんが、工場の印刷用データ作成のスタッフなど、製造以外の作業を受け持つスタッフの仕事には影響があるようで、いつもより時間がかかっている印象です。

制作について

続いて、製造の前段階である、制作についてです。

ヨーロッパ各国の出版社は、そのほとんどが現在、在宅での仕事となっているようです。
多くの国で外出禁止措置がとられてから一ヶ月半程度経過していることもあり、在宅でもオフィスと同等の仕事が出来ている出版社が多い印象です。
ただ、製造と同様に、まだ、初期段階におい生じた影響をリカバーするには至っておらず、夏の発売に向けて組まれていたスケジュールに関しては影響が大きいままであり、これから具体的にその影響が見えてくると思います。
エッセンシュピール合わせで計画されていたタイトルについては、まだ、そのスケジュールについて言及されていない段階ではありますが、上記の夏発売タイトルの進行次第では、これから影響が出てくる可能性は高いと思います。

輸送について

船便については、そこまでの大きな影響は現時点ではありません。

航空便については、旅客機の減便により可能な輸送量が世界的に大きく減少しており、航空貨物の輸送費が平時と比べ3倍以上となっています。

これから考えられる影響

製造自体は、現在の工場の稼働具合から考えると、徐々にスケジュールも当初の通りのものに修正されていくように思います。ただ、夏頃までは発売予定日の急な変更なども多くなるかもしれません。

制作に関しては現在も色濃くその影響が残っており、今後もその影響は大きいと思いますが、まだユーザー向けにアナウンスされていないタイトルも多く、実際にお客様がその影響を感じる機会は今後も少ないかもしれません。 ただ、原版における制作の遅れなどの影響は、当然、日本語版にも及ぶため、すでに日本語版の制作スケジュールは、例年のそれよりもかなりタイトになっています。充分な作業時間が確保されない中での制作による影響が、(本来あってはならないことですが)誤訳やルールブックの誤字脱字といった形で現れる可能性も少なくないように思います。

輸送に関しては、船便の場合が多く、まとまった輸送であるためにボリュームメリットも出やすい「日本語版」については、影響は少ないままであると思っています。
一方で、少量での輸送が多い「輸入版」については、今後、輸送(入荷)機会が減る、輸送コスト高騰に起因して商品価格が上がってしまうこともあるかもしれません。

テンデイズゲームズとして

テンデイズゲームズとしては、輸送機会の減少に対応するためのまとまった流通量の確保や、輸送費の上昇を見込んだ上でそれを吸収するためのボリュームメリットを出せるよう、お客様に喜ばれる商品選定を前提としつつも、精力的な日本語版出版を進めたく思っております。
しかし、その一方で、上で述べたように、制作時間の確保の問題などもあり、お客様に不都合が及ぶ懸念も残されています。
そういったことのないよう、努めて制作を進めさせていただき、また、何かあった場合も出来るだけのサポートはさせていただきたく思っておりますが、あたたかい気持ちで見ていただけますと幸いです。

テンデイズラジオ 第80回「手稲さんに2016年のゲームを!」

ここ数年、ゲームから少し距離を置いていた手稲さんへ、距離を置いていた時期のゲームシーンを緩く紹介していくこのシリーズ、前々回、前回の「2015年」編に続いて、今回からは「2016年」編です。
まずは、ドイツ年間ゲーム大賞、ドイツゲーム賞を振り返り、タナカマの隠れたオススメを紹介していきます。

ゲーム紹介:クスコ(Cuzco / Michael Kiesling, Wolfgang Kramer / Super Meeple / 2018)

キースリング&クラマーの黄金コンビによる「ジャワ」がリメイクされました。
おなじくスーパーミープルからリメイクされた「メキシカ」、「ティカル」に続いてリメイクされたことで、日本では「怖い顔三部作」として知られる三作が揃ったことになります。

プレイヤーは、インカの民となり、山岳地帯において畑や村をつくり、神殿を建設し都市へと成長させ、祝祭を執り行い、太陽神を讃え、名声点を獲得していきます。

「怖い顔三部作」の他のタイトルと同様に、「クスコ」でもメインとなるシステムは、「アクションポイント」です。
プレイヤーは、毎手番、6ポイントのアクションポイントの中で、さまざまなアクションを組み合わせ実行していきます。
タイル配置による土地の拡大、自分の駒の配置と移動、灌漑池の造成など、どのアクションも重要で、アクションポイントが6ポイントあるとはいえ、その配分はとても悩ましいものになっています。

ボードに広がる大地

「クスコ」において、もっとも独自性のある要素となるのは「高さ」の概念があることでしょう。
タイルを配置する時は、ボードの上に直接置くだけでなく、すでに配置されているタイルの上へと配置することも可能です。
タイルが重ねられることで、ゲームが進んでいくと、ゲームボードには高低差が生まれます。
この高低差こそが、このゲームならではの要素なのです。
というのも、神殿の建設や拡大、灌漑池からの得点、ゲーム終了時の最終得点など、その権利を持つのは、対象となるそれぞれの箇所で、もっとも高い位置に駒を置いているプレイヤーなのです。
それぞれが勝利に直結しているのは言うまでもありません。
高さを制するものが「クスコ」を制するのです!

より高い地を目指せ

ここまで読んできた方でピンと来た方もいるかもしれませんが、「クスコ」は、同コンビによる「トーレス」と似た箇所の多いゲームです。これは私見ですが、「トーレス」を発展させたタイトルと言ってもいいかもしれません。
この「クスコ」では、「トーレス」で少し煩雑な印象のあった「城における面積と高さの関係」や、「移動時における登り降り」などを無くしたり、要素の切り分けを行うことで、とてもスマートなものにしているのは、それが強く感じられるポイントでしょう。
それだけでなく、ダイナミックなボード上の変化は「トーレス」よりも華やかで、また、テーマとも合致しており、見事というしかありません。
発売時期や日本での流通量の少なさもあり、「トーレス」と比べ、存在感の薄かった「クスコ(ジャワ)」ですが、その内容は、まったく遜色ないもの、人によってはより優れたものになっていると言っていいでしょう。

アクションポイント制であるがゆえ、ダウンタイムが長くなる傾向にあることや、運の要素が低く、ゲーム性としてはアブストラクト寄りであること(競りに似た「祝祭」という、アブストラクトっぽさを薄める要素も盛り込まれており、そのあたりはさすがのゲームデザインになっています)など、プレイヤーを選ぶゲームではありますが、時代を超える名作であることには違いありません。
スーパーミープルならではの豪華コンポーネントも大きな魅力です。

テンデイズラジオ 第79回「手稲さんに2015年にテンデイズゲームズが扱ったゲームを!」

先月、ここ数年ゲームから離れていた手稲さんに2015年のシーンを振り返りつつ、隠れたゲームを紹介したわけですが、今回は、その後編という位置づけで、テンデイズゲームズが扱った(日本語版、輸入版としてテンデイズゲームズが独自に展開したもの)ゲームから、思い出深いものを紹介していきます。
前回と聞き比べてみると、テンデイズゲームズがシーンに対してどのようにアプローチしたのか垣間見ることが出来るかも!?