【ゲーム紹介】ドッガーランド( Doggerland / Laurent Guilbert, Jérôme D.Snowrchoff / SUPER MEEPLE / 2023 )

紀元前1万5千年、イギリス東側の北海には、「ドッガーランド」と呼ばれる肥沃な土地が存在した。プレイヤーはドッガーランドで生きる部族の長となります。日々生き延びるため狩猟や採取で食料を集め、住居を建設し、道具を製作していきます。新たな生命の誕生により、部族はさらに発展していくでしょう。そして、それらの偉大な功績をフレスコ画に刻み、巨石の建造し、後世へと語り継がれる部族となりましょう。

作者は本作が初となるLaurent GuilbertとJérôme Daniel Snowrchoffのコンビで、メーカーはSUPER MEEPLE。メーカーは過去の名作をリッチなコンポーネントでリメイク作(ティカルなど)が有名ではありますが、オリジナルの作品もいくつか出版しています。本作ドッガーランドは、オリジナルの最新タイトルです。
ドッガーランドはSUPER MEEPLEが非常に気合の入った作品であるのかなと個人的に思っています。マニュアルをご覧になった方はわかると思います。マニュアル内に挿入されているコミックスもそうですし、マニュアルの紙質も非常に良いもので印刷されています。ゲームの細部で気合の入り様の分かる作品に仕上がっています。 

原始時代をテーマに王道ワーカープレイスメントゲーム

ゲームのメカニクスは人気メカニクスの一つである「ワーカープレイスメント」を採用。中でもカードを使用したりといったワーカープレイスメント+αのメカニクスではなく、オーソドックスなワーカープレイスメントを基本に据えています。プレイヤーは、アクションを行える様々なスペースにワーカーを配置していきます。全員が配置終えると、手番順に一気にワーカーを手元に戻し、アクションを解決していきます。アクションの大半は排他的で、先に誰かが置いてしまうと、他のプレイヤーは配置できなくなります。アクションスペースには、ゲームボード上下や個人ボード上での住居地の建設、資源の獲得、工芸品の製作などがあります。ゲームの主となるアクションは、ゲームボード中央の様々なタイル上で、資源の採集や大型動物の狩猟を行うことです。 
そこで重要となる能力として、「移動力」と「輸送力」があります。「移動力」はそのまま、遠征に出かける際にテントからどれだけ離れた場所まで行けるかを表します。一方の「輸送力」は、遠征先で獲得した資源をどれだけ持ち帰れるかを表しています。両方とも、個人ボード上で能力の向上が行えます。多くのワーカーをタイルに配置すれば、多くの資源を得て、多くの資源を持ち帰られます。しかし、他にも先にやりたいアクションは数多くあります。先に述べた能力を向上だったり、アクション数を増やす部族の人数を増やしたりなどなど。ワーカーを上手く割り当て、アクションを組み立てるような細やかな計画性が必要となります。しかし、他のプレイヤーとアクション先が被ってしまうかもしれません。ほかのプレイヤーを出し抜くような大胆な一手も時には必要となるかもしれません。
ただし、注意しなければならないのは、他プレイヤーの動向だけではありません。季節にも注意が必要です。ゲームラウンドは夏と冬が交互に訪れ、冬に外で作業をしなければならないアクションには、夏には必要なかった追加のコストが必要となります。今のアクションだけでなく、次ラウンドとその先も見越したプランが必要となります。

ここまでの説明では特段変わった要素がないように感じるかもしれません。が、もちろんこれだけにはとどまりません。
ドッガーランドの大きな特徴はテーマの再現度の高さとテーマと非常にマッチしたゲームの流動性を上手くゲームに盛り込んだ点です。

流動的な盤面とテーマの再現の高さ

ドッガーランドは、原始生活のテーマ感とプレイ体験の親和性の高さが非常に魅力的です。ただ、再現度を高めただけではなく、ゲームシステムに上手く落とし込んでいて、ゲームを通して自然と体感できるのです。ゲームの目的は、部族の発展度に応じた勝利点の獲得になります。部族の人数や作成した工芸品、建立した巨石、書き残したフレスコ画など、様々なアクションを行った結果が部族としての功績となり、得点へと繋がります。 
ゲームの細かい要素に触れていくと、ゲームボード上のタイルには、木材や石材、食料となる果実や肉など様々なリソースが点在するのですが、それらの資源は有限になります。一定数使用されると、それらの資源は枯渇していき、テントの近場の資源はどんどん枯渇していくことになります。そこで、プレイヤーは新たな狩場を探していきます。遠征先で良い狩場を見つけることができれば、拠点となるテントを移設し、そこを軸にさらなる新天地を探しに出かけることもできるのです。ここで、新たに見つける資源もゲームシステムとの親和性の高さが見て取れるでしょう。端のタイル上で何らかのアクションをする場合、その隣に新たなタイルがめくられることになります。これは、未知な場所を探索することで、視界が開けていくことを上手く表現していると言えます。視界が開けていく体験とゲーム的な面白みの両方のワクワク感を提供してくれるのです。
また、ラウンド毎に、大型動物は、特定のルールに従って、移動を行います。大型動物はたくさんの資源が得られることに加え得点源にもなります。是非狩猟しておきたいところですが、ラウンド毎に住処を変えてしまうのです。それを見据えたタイミングも重要となります。
このように大型動物やプレイヤーの活動場所など、様々な点で流動的に盤面が変化していく―これは、原始生活がテーマであることを表現しているのです。農耕生活で定住する前の狩猟生活では、動物の足跡を追い、拠点の場所を次々と移動しつつ、狩りや採集で食料や資源を集め、生活していました。そんな世界観をボード上で表現しているのです。ドッガーランドは、テーマを上手く切り取り、ゲームシステムやルールに上手く落とし込んでいるのです。圧倒的没入感でゲームをプレイできるでしょう。

さらにリッチなコンポーネントは、没入感を高めるのに一役買っています。SUPER MEEPLEはティカルのようにテーマの再現度が高く立体感のあるコンポーネントを得意としており、本作でもコマの造形やプリントで得意分野となるその力を存分に発揮していると言えるでしょう。 

3種のワーカーを上手く使いこなし、シャーマンで大きな勝利点を 

ゲームの戦略の部分に少し触れておきたいと思います。プレイヤーが使用できるワーカーには、通常のワーカーに加え、2種の特殊なコマのシャーマンと族長がいます。この族長は強力な力を持つコマで、基本的には2倍の能力を発揮するのです。
一方のシャーマンは専用のアクションスペースが用意され、魔法の力を駆使し、8種類の独特なアクションを行えます。しかし各アクションはゲームを通して1度しか実行できないのです。うまくタイミングを見計らい、最大限活かすようにアクションを行いたいところですが、シャーマンは通常のワーカーとほぼ同様にも使用できるため、専用アクションで使用するか、頭数を増やして様々なアクションを行うか、非常に悩ましいのです。他にもゲームを通して達成することを目指す目的は、ゲーム毎に変化し、早いもの順で獲得できる得点が変化するようになっています。さらに大きな得点源となるフレスコ画は、ラウンド毎に新たにフレスコ画の描ける場が出てくるため、その他の要素において、例えば臨機応変に狩る大型動物を変えたりといった、手番のアクションの計画だけでなく、ゲーム全体を見越した戦略も求めれらます。

リッチなコンポーネントでドッガーランドでの原始生活を体感しましょう。是非、プレイしてみてください。 

日本語ルールを公開しておりますので、合わせてご覧いただけると参考になるかと思います。 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA