スタッフ神田のゲーム紹介:ドーフロマンティック ボードゲーム:対決

プレイ人数:2人
対象年齢:8歳以上
プレイ時間:30分~45分
小売希望価格:6600円(税込)

◆協力ゲームから対戦プレイへの大変化

プレイするたびに新たなアンロック要素が加わる協力型のタイル配置ゲームとして2023年のドイツ年間ゲーム大賞にも輝いた「ドーフロマンティック ボードゲーム(以下『ドーフロマンティック』)」に、2人専用の新たなシリーズ作品が登場しました。それがこの記事でご紹介する「ドーフロマンティック ボードゲーム:対決(以下『対決』)」です。

「ドーフロマンティック」はタイルを配置することでタスクの達成を目指す協力ゲームです。タスクには達成に必要な地形の種類とその枚数が示されていて、その数ちょうどのタイルを並べることができたらそのタスクは見事達成! タスクの数字に等しい得点を得ることができます。タスクを1つ完了するたびに新しいタスク1つが登場するため、ゲーム中は常に3つのタスクと向き合うことになります。

こうした「ドーフロマンティック」の基本的な構造は「対決」でもそのままなので、ルックスからは前作との違いがなかなか見えませんが、実は「対決」ではゲームの構造が大きく様変わりしています。

まず、一つ目は「対決」において、プレイヤーは相互に協力するのではなく、(その名の通りに)高得点を目指して対戦します。プレイヤー全員で協力して1つの箱庭を作り上げる「ドーフロマンティック」に対して、「対決」ではプレイヤーがそれぞれが独立した自分だけの箱庭を作ります。言い換えると、「対決」の箱には「ドーフロマンティック」1ゲームを構成するタイル群が2セット入っていて、両プレイヤーが独自に異なる箱庭を作れる構成になっているのです。

ゲームでは、どちらか1人のプレイヤーが山からタイルをめくる役を受け持ち、めくったタイルを自分の箱庭に配置します。もう1人のプレイヤーはそのタイルと同じタイルを自分のタイル群から探して自分の箱庭に配置します。

配置するタイル自体は同じでも、どのように配置するかでプレイヤーごとの差が生まれてきます。すべてのタイルが置き終わる頃には全く異なる2つの箱庭ができあがっていることでしょう。

また、「対決」では「ドーフロマンティック」の5種類のタスクに加え、新しく2種類のタスクが登場します。

ひとつは「取り囲みタスク」で、このタスクに隣接するタイル枚数が数字とちょうど同じ枚数になった場合に達成されます。地形の種類を指定しないので達成自体はさほど難しくはないのですが、タスクタイル自体に3種類の地形が示されているなどクセモノな構成で、一つの大きな地形を作りにくくなっています。

もうひとつは「ダブルタスク」で、記されている2つの地形タイプのうちいずれかを6タイル繋げる必要があるタスクです。地形タイプこそ選択肢がありますが、すべてのダブルタスクは必ず6枚のタイルの接続を要求してくるため、達成に時間のかかるタスクと言えます。

「対決」は、こうした新しいタスクを含めて、各タスクを処理する優先順位を考えつつ、より多くのタスクの達成を目指すゲームです。それ以外のゲームデザインは「ドーフロマンティック」と同じですが、「対決」では残りのタイル構成を把握できるため「受け」を計算しやすく、「ドーフロマンティック」と遊び方自体は同じでもプレイ感覚は少し異なります。

◆2種のモジュールの導入で対戦はより熱くなる

「対決」には、「ドーフロマンティック」で好評を博したアンロック要素、キャンペーン要素はありません。その代わり、ゲームに変化を与える2つのモジュール「タスクカード」と「名勝」が用意されています。

1つ目の「タスクカード」モジュールではゲーム中に達成する必要がある3種の目標を提供します。森、麦畑、村の3種の地形について、「指定の地形をより早く5枚以上繋げて閉じる」「指定の地形を相手より多く閉じる」「指定の地形を多く閉じるごとに得点」といった追加の得点要素が加わります。

2つ目の「名勝」モジュールではタスクの達成にボーナスが加わります。既定の回数タスクを達成するたびにプレイヤーは3種の名勝「ハート」「写真家」「学校&穀物庫&オークの古木」のうち1つを選んでその効果を得ることができます。

両プレイヤーは共に同じ名勝を選ぶこともできるのですが、先に名勝を選んだプレイヤーはより多くの利益を名勝から得ることができます。例えば「学校&穀物庫&オークの古木」の名勝では、先に選んだプレイヤーはこの3枚のうち1つから選ぶことができますが、後手に回ったプレイヤーは残りの2枚から選ばなければなりません。

どちらのモジュールも導入によって、タスクの達成だけでなく、相手の進行状況にも注意する必要が生まれてきます。時には確率的にベストな形を崩してでも名勝を取りに行くべき局面も生まれてくるため、これまでの「ドーフロマンティック」とは異なる思考法が要求されるようになります。

また、新しいタスクタイルや「名勝」モジュールは、同様のルールを「ドーフロマンティック」に加えることができます。つまり、「対決」は単体で遊ぶことができるスタンドアローンゲームであると同時に、「ドーフロマンティック」に新たなルールを加える拡張セットとしての側面を持っているのです。

「ドーフロマンティック」を遊びこんだ方に向けたさらなるチャレンジとも言える内容なので、この新しい要素を加えてさらなるハイスコアを目指してみてください。

また、特殊な遊び方として「対決」を2セット揃えることで3人や4人で遊ぶこともできます。基本的なルール自体には変更はありませんが、モジュールの早取り勝負はより厳しくなるでしょう。

◆2人対戦ゲームとなっても「ドーフロマンティック」の良さは健在

「対決」の一番大きな変化は、やはり協力ゲームではなく対戦ゲームとなった点です。「ドーフロマンティック」がドイツ年間ゲーム大賞を受賞したことからもわかる通り、協力ゲームは昨今の大きな流行りではありますが、「対戦ゲームの方が自分は好きだ」という方も依然としていらっしゃるかと思います。協力ゲームであることが理由で「ドーフロマンティック」から一歩引いている方がいるならばそれはちょっと勿体ない話ではあって、「対決」は「ドーフロマンティック」の世界に触れるよいきっかけになるかとも思います。

また、2人用のボードゲームとしても、30分~45分というプレイ時間のレンジはちょうどいい塩梅ではないかと思います。ルール自体はとてもシンプルで、モジュールの追加によって難度にも調整が効くあたり、和やかにもシビアにも遊ぶ機会を作ることができる使い勝手のよいゲームと言えるでしょう。

様々なアンロック要素によって自然とゲームに習熟できるゲームデザインが特に評価されている「ドーフロマンティック」ではありますが、触ってみれば根本のタスク達成を踏まえたプッシュユアラックの構造がそもそもスジがよくできていることがわかります。幹が太いがゆえに様々なアンロックの枝葉を茂らせることができた「ドーフロマンティック」のメインエンジンの素性の良さは、この「対決」でも存分に味わうことができますよ。

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