【スタッフ神田の視点】「テラミスティカ」好きが語る今年最大のプレゼント「革新の時代」

◆1000回遊べる「テラミスティカ」ができてしまった……!

と言っても、無印テラミスティカを1000回くらい遊んでる人はいそうですけども……

 かくいう自分もオンラインを含めれば「テラミスティカ」を200回以上は遊んでいるので、2012年の「テラミスティカ」の発売から10年、ずっと遊んでいる人なら非現実的な領域ではないでしょう。余談ですが私のオールタイムベストゲームは「ガイアプロジェクト」です。好きな種族はダークリングとタクロン人。錬金術師も好きなんですが黒の裏面なので、なかなか! 使う機会がない!

 さて、元々「テラミスティカ」は100回200回遊べて当然っすよみたいな顔をした恐るべきゲームではあるのですが、それをより重層的に深化させてしまいましたよというビックリタイトルが今回ご紹介する「テラミスティカ:革新の時代」になります。

 「革新の時代」は「テラミスティカ」の新しい拡張ではなく、これ単体で遊ぶことができるスタンドアローンゲームです。そのため、この記事では「テラミスティカ」既プレイヤー向けに「革新の時代」の変更点や魅力などをお知らせしていきたいと思っています。

 また、逆に「テラミスティカ」を遊んだことがないよという方は今年になって「テラノヴァ」→「革新の時代」という新ルートが拓けましたので、まずは「テラノヴァ」を遊んでみるのもよいのかなとも思います。

◆能力は? 地形は? 宮殿は? 3要素の組み合わせで君だけの最強勢力を作れ!

「革新の時代」最大の要注目ポイントはやはりこのモジュラー式の勢力決定システムでしょう。テラミスティカでは基本で14種族、拡張を含めて20種族が用意されていまして、これを一通り遊ぶだけでも20回のリプレイ保証があるベリーベリーディープゲームだったワケですけども、「革新の時代」ではお馴染み7種の地形に、12種の勢力、18種の宮殿(「テラミスティカ」でいうところの砦)があり、これを単純に掛け算するだけでも1512種類の組み合わせがあります。ここにセットアップの様々なランダム要素が加わってくるので、同一のセットアップはもはや再現不可能と言っていいでしょう。

 さらに宮殿はゲーム開始時に能力を選択するのではなく、建設した時点で能力を決定する早取り方式。狙っていた宮殿が取れるかどうかは手番順による影響が大きいので、ゲーム序盤の各プレイヤーの動きも想定して勢力をチョイスする必要があります。

 勢力や地形や宮殿の能力は「テラミスティカ」や「ガイアプロジェクトクト」由来の「何か」を彷彿とさせるものも多く、シリーズファンであればネタ元との細かな違いだけでご飯3杯食べられます。

例えば新勢力「モール」は、「テラミスティカ」のドワーフがベースとなっている勢力なのですが、ドワーフお得意の1マス飛ばし建設能力に加えて、本来は河川上にかける橋を、陸上でトンネルとして建設できるようにもなりました。相手の包囲網からぐにゅんと抜け出て接続を広げることができるので、これまでにないプレイフィールの陣取りが楽しめそうです。

 1マス飛ばし建設能力も地味ながら得点源として結構強力でして、わたくし「テラミスティカ」オンラインで5,6ラウンドに砦/聖域5点建設がくるようなロースコアゲームでの穴掘り連打で労働者2個4点ゲームを得意としていたんですけども(灰色は人気の茶とか黒と好相性なのもいいんですよね)、この能力も健在なので今回も一稼ぎできそうな気配です。

 ちょっと注意が必要な点としては、「革新の時代」では地形変換は本拠地に必ず近づくように掘らなければならないことがルールで明記されまして、穴を掘っては戻すシベリアムーブができなくなりました。とは言え、1マス飛ばしでアクセスできるマス数は元々激多いので、それが逆風になることはないとは思いますが。

 あと、もう一つ細かい変更点ですが、「革新の時代」では最終ラウンドのみラウンド得点タイルを2枚使うようになりました。なので旧作に比べて「もうやることがない!」という事態になることは少ないと思います。むしろ同種のラウンド得点タイル2枚が重なってエグい得点エンジンが生まれるパターンもあり、最終ラウンドの得点レースはこれまで以上に熾烈です。クライマックスを盛り上げるいい変更ですね。

 さて、そんな勢力固有の能力に、さて、どんな地形や宮殿が噛み合わさったら強いのかな? と妄想するのがこのゲームの楽しさではありまして、ルールブックの能力一覧を眺めているだけでも小一時間ウットリ浸れます。まあ、実際に遊んでみると、情報量の多さに圧倒されて「わからん! とりあえずこれ取る!」ということになりがちですが、そうやってインスタントに取った勢力をうまいこと使いこなすのも楽しいですし、他人の取った激強勢力を羨ましがるのも楽しいです。特殊能力モリモリゲーム特有の「自分でズルするのも楽しいし、他人がズルするのも楽しい」という、その快感を存分に味わわせてくれるゲームと言えます。

 また、今作には選択ルールとして勢力、地形、宮殿の3要素のドラフトがあります。こちらはセットアップの際に時計回りでそれぞれ勢力、地形、宮殿を1つずつピックしていくもので、基本ルールでは完全ランダムで決定される勢力の組み合わせをある程度コントロールできます。

当然ながら基本ゲームにおいて、各要素にシナジーが生まれるか否かはランダムで、能力がうまく嚙み合うこともあれば、そうでもない場合もあります。選択ルールではプレイヤーが意図的にシナジーを持つ組み合わせをピックしやすいので、より自分の選択が反映されたゲームを楽しむことができるでしょう。

 基本ルールと違って宮殿の能力もセットアップ時に選択するので、「テラミスティカ」により近いスタイルと言えるかもしれません。

◆新要素1 本と革新タイル

 「革新の時代」と銘打つ今作の、新しいリソース&得点経路として用意されたのが「本」と「革新タイル」です。リソースとしての本は「ガイアプロジェクト」のQICに近い存在でして、本を支払ってリソースや得点を得る「QICアクション」に似た「本アクション」が用意されています。

 しかし、本の用途の真髄は、5枚の本を組み合わせて支払う「革新タイル」にこそあるでしょう。「革新タイル」は「ガイアプロジェクト」の上級技術タイルに近い存在でして(上級技術タイルのように基本技術タイルを潰すようなことはないのですが)、獲得することで新たな特殊能力や即時の得点、さらに今回新登場の中立建物の獲得ができます。

早期に獲得することで特殊能力を得るもよし、ゲーム終盤の逆転の一手として大量得点を狙うもよし、追加の都市(「テラミスティカ」でいうところの街)完成や追加収入を得るために中立建物(これは後程紹介します)を建てるもよし、勝利を目指す上で無視できない存在と言えます。
 本は主に能力タイル(「テラミスティカ」でいうところの恩恵タイル)の獲得からおまけボーナスとして貰うことができます。この能力タイルのセットアップは「ガイアプロジェクト」のように配置順によって貰えるリソースの組み合わせが変わってくるので、「能力タイル自体は欲しいけど、その本じゃないんだよなー」とか「本が欲しいんだけど、この能力タイルを取ってもなー」と言ったジレンマもあり、能力タイル自体の価値もゲームによって大きく変化します。

例えば、上記の画像では、7番のタイルを獲得すると、ボーナスとして科学ディスプレイで白のトラックを1ステップ進め、白の本を2冊獲得できるといった塩梅です。

 今回の勢力の中には本や革新タイルの獲得に特化している勢力もあり、革新タイルを主軸に据えた戦略でこれまでにはない新しいアプローチを楽しめそうです。

◆新要素2 中立建物

主に革新タイルから獲得できる「中立建物」は「ガイアプロジェクト」の航法LV5で獲得できる暗黒惑星の概念を拡張したものと言えます。暗黒惑星は言わば早取りの共有の鉱山でしたが、それを鉱山のみに限らず交易所や研究所、学院などにも範囲を広げたのが「革新の時代」の中立建物です。中立都市は建設することで様々な収入や即時ボーナスを得ることができるほか、都市の設立にも利用できます。

中立建物は主に革新タイルから獲得できますが、能力タイルから獲得できる中立建物も1種あります。中立建物は建設するための本拠地が必要なので、前もって建設予定地を用意しておかないといけないのが要注意ポイントですね。

 また、中立建物は都市の設立にも利用できるので、「テラミスティカ」と比較して作れる都市の数は増加傾向にあります。中立建物の一種「別館」は「テラミスティカ」常識からすると相当に異質な建物でして、この「別館」は建設済みの建物に言わば「増築」することでパワー値と建物数を増やすことができます。なので、宮殿と大学(「テラミスティカ」でいうところの聖域)の建物2個に別館を1個増築すると、合計7パワーの3建物となり、それだけで都市の設立要件を満たすことができちゃうんですね。

 都市を設立するために必要な土地が他プレイヤーの思惑で潰されてしまった…… これは「テラミスティカ」あるあるですが、そういった場合でもリカバリーが効きやすい仕組みが用意されているため、過去作に比べて陣取りのシビアさは若干ながら緩くなっていると感じます。マップ自体はマス数が減ってちょっと窮屈になってるんですけどね。

 都市の設立数自体は「テラミスティカ」よりも「ガイアプロジェクト」寄りなアッパー調整です。普通に3個は行けて、勢力によっては4個以上も狙える塩梅。中立建物は最終ボーナスの接続数マジョリティにも影響してくるので要所要所で存在感があります。

勢力の中には初期配置で中立建物の「塔」を配置できる「物見」といった勢力もあります。これは「テラミスティカ」のノマドっぽい能力ですが、「塔」はギルド(「テラミスティカ」でいうところの交易所)相当の建物なので、収入効率的にはかなり強力に感じます。1ラウンド目の最初の収入から2金2パワーが追加で得られるのでパワーアクションの選択も含めてスムーズな立ち上がりが期待できます。

◆新要素3? 宗教トラックから科学ディスプレイへのちょっとした変更点

 今回、科学ディスプレイと改名された宗教トラックは「テラミスティカ」と作りはほぼ同じですが、若干の変更点があります。1つ目は鍵が必要な段数が引き下げられたこと。「テラミスティカ」の感覚でいるといきなり目の前に壁が現れたような感覚になります。都市設立しなきゃ……!

 もう一つはレベル9からそれぞれのトラックごとに収入が得られるようになったこと。こちらは「ガイアプロジェクト」の研究エリアを彷彿とさせる作りです。9レベルとかなり後ろにあるので序盤から収入を解放するのは難しいですが、盤面が噛み合ったところでチャレンジしてみるのは面白いかもしれません。

 ちなみにこの科学ディスプレイの収入はめちゃくちゃ忘れやすいのでプレイの際にはお気をつけください! むしろ「テラミスティカ」慣れしてる人ほど忘れやすいまであります。

◆新要素4 現在のトレンド、少人数プレイにもアジャスト

「テラミスティカ」は5人プレイに対応していることからもわかる通り、多人数で遊ぶのが一番ポテンシャルを発揮できるゲームと言えます。ただ、個人的には5人プレイはキツすぎるので4人ベストかなーと思ってるんですけども。

 「革新の時代」では、「テラミスティカ」では別売されていたオートソマソロプレイが標準実装されています。「テラミスティカ」のオートマソロプレイと内容はほぼ同じなので、そちらを遊んだことがある人なら違和感なく楽しむことができるでしょう。
 また、「革新の時代」のゲームボードは表面が3‐5人用、裏面が1-3人用に調整されています。「テラミスティカ」の少人数プレイは陣取りというゲーム特性からどうしても駆け引きが緩くなりがちです。また「テラミスティカ」の特徴的なシステムである他プレイヤーとのパワーの授受はゲーム中に時折訪れるちょっと嬉しいポイントです。

 そうしたパワーの授受と陣取りの駆け引きを少人数でもバランスよく楽しめるように考えられているのはやはり時代の変化と言えるでしょう。3人プレイの裏面は相当にエグい陣取りが展開されるのですが、これはぜひ一度試してみて貰いたいですね。

明らかにマス数が少ない……!

◆「テラミスティカ」未プレイの人にはどうなの?

ということで、様々な変更点のある「革新の時代」。遊び方や考え方は従来の「テラミスティカ」通りなんですが、実際に遊んでみると新要素が盛りだくさんで圧倒されるかもしれません。私は「テラミスティカ」自体には慣れているハズなんですが、初回プレイは見るべきところが多くて結構ぐったりしました。

 ただ、2回目以降のプレイは打って変わってスイスイと遊ぶことができたので、これまで「テラミスティカ」「ガイアプロジェクト」を楽しんできた方なら乗りこなすのは難しくはないでしょう。とは言え、用意されている要素は全く別物で、新しい戦略を見つけていく過程はすごくワクワクしますね。

 逆に「テラミスティカ」を数回程度遊んだだけ、という人にとっては、「テラミスティカ」だけでも掘り進める余地が多い世界と言えますので、「革新の時代」に触れるには「テラミスティカ」を十分に楽しんで貰ってからでも遅くはないのかなとも思います。

 とは言え、ゲームバランス的にはバニラの「テラミスティカ」が一番シビアですし、初見殺しのような選択肢も散見されます。そこから拡張2種や「ガイアプロジェクト」を経て少しずつマイルドに調整されているのがテラミスティカユニバースなので、「重いゲームには慣れているけど『テラミスティカ』自体は触ったことがない」という人なら「革新の時代」から直接入って貰っても問題はないのかなと思います。「革新の時代」の方が罠っぽい選択肢も薄まってますし、リカバリーも効きやすい構造にはなっていて、初回で派手にすっころぶ可能性も抑えられているかなと。

 重いゲーム自体への慣れがどうかなーという方には冒頭で書いたように「テラノヴァ」から入るのが一番スムーズな形になるでしょう。プレイヤーの習熟に応じて様々なルートで「テラミスティカ」に触れることができるようになったのは、シリーズとしての成熟を感じます。

 どのようなルートであっても、「テラミスティカ」は探求し甲斐のある世界ではありますので、多くの方にこの世界に触れて貰えれば嬉しいです。その上で「革新の時代」はいくらでも深掘りの機会がある、研究余地が爆発的に広がったゲームなので、ぜひ様々なチャレンジを試してみて貰いたいと思います。

テラミスティカ:革新の時代 日本語版
タイトル:Age of Innovation
デザイナー:Helge Ostertag
メーカー:Feuerland spiele
発売年:2023年
プレイ人数:1人~5人
プレイ時間:一人あたり40分
対象年齢:14歳~
小売希望価格:14,520円(税込)

「テラミスティカ:革新の時代」は、10月中旬発売予定です。
現在予約受付中!

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