【ゲーム紹介】ニュークレウム( Nucleum / Simone Luciani, Dávid Turczi / Board&Dice / 2023 )

我々の住む世界とは異なる世界線の19世紀のザクセンを舞台にプレイヤーは事業家となり、都市の建設や電力の供給、契約の履行することによって、勝利点を稼ぎ、経済の発展により多く貢献したプレイヤーが勝利となります。この世界線では、『ニュークレウム』(我々の世界線での原子炉)に関わる技術が大きく発展し、莫大な電気を生み出しています。プレイヤーはこれらの強大な発電能力や様々な特殊な技術を駆使し、新たな産業革命の指導者になろうと激しく競い合っています。 

デザイナーは、「バラージ」「マルコポーロ」など手掛け、言わずと知れた有名デザイナーシモーネ・ルチアーニと、「アナクロニー」「テケン」のデビィッド・ターツィがコンビを組みました。 

ゲーマーの手腕の問われる「アクションタイル」 

ゲームはいくつかのアクションを実行し進行していきます。地図上に書かれたいくつかの都市に都市建物の建設する「都市化」アクション、タービンやウラン鉱山の発電設備を建設する「工業化」アクション、燃料(石炭やウラン)を発電所まで輸送し、タービンを稼働させ発電し、さらに建設した都市建物に送電する「電力供給」などのアクションから各手番で選択し、実行していきます。様々なアクションを駆使し、産業革命という激動の時代を乗り越えていく。3つのアクションの流れは、産業革命や工業、発電をテーマにした重量ゲームではよく登場する要素ではあるが、「ニュークレウム」ではここに独自の要素を加えられている。このため、好きなアクションを自由に選択できないようになっている。 


 
このゲームの大きな特徴である「アクションタイル」を使用することでアクションを実行していく。 
 
アクションを実行するためにアクションタイルには2通りの使い方がある。1つは個人ボードの上部に挿してアクションを実行する。この場合は、アクションタイルに記載されている全てを行える。

もう一方の使い方は、メインボードに配置する。この場合は、ボード上に示された色とアクションタイルの色が一致するアクションのみ実行できる。 このように書くと、メインボードに置く利点がないように感じるが、むしろコチラのほうが重要ともいえる。それは、配置したアクションタイルは、都市間に配置かれ、都市間を繋ぐ鉄道/送電線(ネットワーク)となる。上で説明した「都市化」や「工業化」「電力供給」のアクションは、当然自身のネットワークに含まれていたり、使用する燃料も発電した電力もネットワークで輸送しなければならない。都市間のネットワークの構築とアクションの実行がアクションタイルを介して組になっている。一度配置した鉄道(アクションタイル)は二度と手元に戻ってこないため、強力なアクションタイルはできれば手元で使用したいが、ネットワークビルドも進めていかないと、ゲームには勝てない。当然鉄道は、同じスペースには1人しか配置できない。ほかのプレイヤーのネットワーク構築をただ眺めているわけにもいかない。どのアクションタイルを繰り返し使うか、1度きりで手元に戻ってこないタイルをどのように選択していくか。毎手番悩ましい選択を迫られる。 

メインのアクションは全部で5つで、まだ説明していないアクションが2つある。新たなアクションタイルの獲得ができる「開発」と契約タイルを獲得する「契約」アクションである。 

手元にある契約は、建物をいくつ建てるとか指定された都市に建物を建てるなどの条件を達成していくことで、様々な効用が得られる。獲得し手元にキープする契約だけでなく、すべてのプレイヤ―が常にアクセスできる共通の契約もある。他のプレイヤーの動向にも注意を払う必要がある。 

「開発」アクションでは、強力なアクションタイルを獲得できる。アクションタイルのビルドとまでは言えないが、2通りの使い道のある各タイルを吟味し、強力なアクションタイルを手元で構築していく。 

アクションタイルには、メインのアクションの他にも補助的なアクションや値引きの付随したアクションもあり、アクションタイルの選択、管理はより悩ましいものとなります。 

タイミングが難しい「リチャージ」 


手番に行える選択肢は3つあり、アクションを行う2つと最後の1つはリチャージ。これは、収入とアクションタイルの回収である。収入トラックに応じたリソースや、勝利点を獲得でき、個人ボード上で使用したアクションタイルを手元に戻す。収入で得られるものは、収入トラックの進捗に応じて増えていくのだが、個人ボードに挿したアクションタイルの枚数も影響してくる。短いスパンでリチャージしてしまうと、得られる収入が大きく減ってしまう。強力なアクションタイルが手元にあっても、多用することは難しい。リチャージのタイミングもアクションタイル管理に干渉してくる形となっている。 
 
さらに、リチャージから次のリチャージの間の発電量に応じて、マイルストーンをどの程度達成したかのかの功績を判定される。ここで多くの功績を獲得することで、ゲーム終了時の得点計算の倍率も変化していく。例えば、特定の種類の建物が1軒あたり何点など。獲得した功績はリチャージの度にリセットとなるので、ここでもリチャージのタイミングのコントロールが求められる。できることがなくなった、リソースがなくなったからといって、リチャージするのではなく、積極的にリチャージを選択するような決断も求められる。 

ゲームの終了条件までも独特 

ゲームの終了条件と独特なフラグ管理もニュークレウムの特徴である。各プレイヤーがリチャージすることで、コンパクトなリセットを掛けるが、ラウンドやフェイズの様にゲーム側が提示する切れ目や規定数ラウンドで終了といったものはない。その分ゲームの終了は突然やってくる。 

ゲーム終了は5つある条件うちの2つ(2人ゲームでは3つ)が満たされるとゲームが終了に向かう。条件の中には、誰か1人のプレイヤーが達成するものと、共通の山(アクションタイルや契約の山札)が尽きるものがある。ゲームを進めて行くことで、必然的に条件は満たされていくのだが、特定の条件を狙い、タイミングをコントロールすることは、大きなアドバンテージとなる。ゲーム終盤になっていくと、1回の手番で大きく得点が変化するため、終了タイミングを見極めることも勝利の鍵となる。 
ゲームに慣れれば、さらにプレイヤー間でのフラグ管理も苛烈となることでしょう。 

まだまだ楽しませてくれる様々な要素が盛りだくさん 

ここでは詳細に紹介しきれない要素もまだあります。 

一部の契約を達成していくことなどで技術の解放ができる。技術は即時リソースを獲得したり、ゲーム中特定のアクションがパワーアップしたりする。これらの技術は、ゲーム開始時にプレイヤー毎に異なるセットを持って始める。技術の中には大きな得点源となる最終目標の技術もあり、技術セット毎に大まかな方向性が示されており、ゲームプレイの指針となる。同じ技術セットでもゲーム展開に合わせて解放していく順番や、異なる技術セットに変えることで、何度でも遊びたくなる要素も含まれている。 
 
アクションタイルの管理、ネットワークビルドなど、骨太なシステムに加えて、産業革命・重工業のテーマ、可変のプレイヤーパワーなど、コアなゲーマーのツボを抑えた至極の一作です。ルール量、難度ともに敷居は高いですが、それを超える重厚なプレイ体験を味わえる作品です。 
 
是非、プレイしてみてください。 

日本語ルールを公開しておりますので、合わせてご覧いただけると参考になるかと思います。 

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