【ゲーム紹介】オリジンズ:ファーストビルダーズ(Origins: First Builders / Adam Kwapiński / Board&Dice / 2021)

概要をまとめるとよくある……が、しかし

 「オリジンズ:ファーストビルダーズ」は、2018年に発表した「ネメシス」で一躍脚光を浴びることとなったポーランドの新進気鋭ゲームデザイナー、Adam Kwapińskiによる2021年の新作ストラテジーゲームです。
 
 さて、このあと、システムを簡単にまとめつつ、ゲームの概略を説明していくわけですが、その前にあらかじめはっきりと伝えておきます。
 この概略を読んだだけでは多くの方が既視感を覚え、結果、「オリジンズ:ファーストビルダーズ」の面白さはまったく伝わらないかと思います。
 しかし、この「オリジンズ:ファーストビルダーズ」には、システムの話を中心とした概略だけでは伝わらない「その先の面白さ」が詰まっているのです。
 ぜひ、最後まで読んでみてください!これは強く言っておきます。

 というわけで、まずはシステムをゲームの設定と共に簡単に紹介していきたいと思います。
 舞台となるのは古の時代の、おそらく地球。
 プレイヤーは、まだ近代的な文明が興るよりも遙か昔の時代の指導者となり、自らの文明を発展させていくことを目指します。
 発展させていくために、さまざまなアクションを実行していくことになるのですが、ややSF仕立ての設定となっており、このアクションをもたらすのが宇宙より飛来した超自然的な存在なのです。その存在がもたらしてくれる力というのが、すなわちアクションを実行して得られるさまざまな効果ということになります。
 メインとなるシステムは「ダイスプレイスメント」です。
 プレイヤーは、ワーカーに見立てたダイスをボード上へ置くことで、そこに用意されたさまざまなアクションを実行していきます。
 ダイスの目と色の要素がアクション選択における制限やボーナスに関係があるものの、それ以外の部分はごくごくオーソドックスで、各アクションを実行できる数に制限はなく(いわゆる早取りの要素がない)、むしろ他のゲームと比べると緩すぎるほどかもしれません。

 アクションがもたらす効果も極めてオーソドックスです。
 「特定の資源を3個得る」、「神殿トラックを進める」、「軍事力トラックを進める」、「ワーカー駒を獲得する」、「建物を建てる」……いずれの処理においても例外的な処理もほとんどなく、「アイコンに描いてある通り」というわかりやすさです。

 全員がパスを行うまでが一ラウンドとなり、終了フラグが切られるまで繰り返されることになります。
 
 ラウンドが進む際に、ワーカー駒として使われたダイスの目が「1」増えることになります。これにより次のラウンドでは、そのダイスを用いたアクション選択の自由度はやや増すのですが、「6」の目だった駒はワーカーとしての役目を終え、「助言者」としてプレイヤーボードに置かれることになります。
 この助言者は得点と、ワーカー駒でもある支配者「アルコン」に若干の優位性をもたらしてくれることになるのですが、ダイス自体はワーカーとしての役目を終えているため、ラウンド中に実行できるアクション数が減ってしまうことになるのは注意が必要です。
 「助言者」として役目が変わるタイミングを踏まえた戦略の組み立ては、ごくごくオーソドックスな「オリジンズ:ファーストビルダーズ」にあって、少し特徴的なところかもしれません。とはいえ、そこまで独自性が強いわけではないのですが……。
 
 ここまでが「オリジンズ:ファーストビルダーズ」の基本的な進行をまとめた概略です。
 
 しかし、「オリジンズ:ファーストビルダーズ」の面白さのキモとなる部分は、この概略からは推し量れないところに用意されているのです!

得点へのアプローチが「オリジンズ:ファーストビルダーズ」の真骨頂!あなたは得点を「爆発」させることができるか!?

 概略でも触れたように「オリジンズ:ファーストビルダーズ」のゲーム進行は、非常にオーソドックスです。
 ある程度ゲームに慣れた人であれば、「手なり」で進めること、まあまあ自分のやりたいように進めることも難しくないでしょう。
 しかし、それらの選択を「高得点」に繋げようとした途端、この「オリジンズ:ファーストビルダーズ」のゲームデザインの巧みさ、難しさに気付かされるはずです。

 この「オリジンズ:ファーストビルダーズ」に用意された得点方法、そのシステム自体は、とてもオーソドックスです。
 しかし、その得点スケールは、ある種変態的とも言えるものに設定されています。

 例えば、「神殿トラック」。
 神殿トラックは三本用意され、それぞれで駒をどれだけ進めることが出来たかによって得点を獲得することができます。
 1マス進めると「0点」です。
 2マス進めると「1点」になります。
 3マス進めると「3点」に増えます。
 これが、最終到達点である12マス目まで進めると「70点」になります。
 一つの得点要素でこれだけの差が設定されたゲームは、他に類を見ないと言っていいでしょう。
 「あれ、意外と簡単じゃない?」と思った方もいるかもしれません。
 しかし、三本のうち一本のトラックを闇雲に進めればいいというわけではないのです。
 最終的な得点は「三本のうち、もっとも進んでいるトラックを除いた二本から得点獲得」なのです。
 これは、もし、ある一本の神殿トラックから「70点」を得ようと思ったならば、少なくとも二本の神殿トラックを最終到達点まで進めないといけないということを意味しています。
 さらに、残ったもう一本から「それなり」の得点を得ようと思ったならば、さらに神殿トラックを進めると言うことが重要となるでしょう。

 他の得点要素も見てみましょう。
 「ダイスの色ごとに用意された塔」という最終得点要素があります。
 それぞれの塔には高さの概念があり、建設を繰り返すことで得点を増やすことが出来ます。
 一階建てなら1点、二階建てなら2点、三階建てなら3点、四階建てなら4点……そう、この塔はあくまで「素点」なので、塔の高さが直接もたらす得点はそれほどでもないのです。
 ですが、そこに、それぞれの色に対応した「権力者」が関係してくることで、様相は大きく変わります。
 ゲーム中、配置した都市タイルによって、2×2の地区を形成させることができます。
 その際、ワーカー駒だったダイスを「権力者」として地区に配置することになります。
 この権力者として置かれたダイスの目を、そのダイスと同じ色の塔の素点に掛けたものが塔から得られる得点になるのです。
 漠然と塔を高くしても決して高得点は得られません。
 塔を高くしつつ、都市タイルをうまく配置し地区を形成し、「目が大きくなった」適切なタイミングでダイスを権力者として送り込むことで、はじめてしっかりとした得点に繋げることができるのです。

 そのほか、「コンスタントに得点獲得が狙えるものの、他のプレイヤーと比べ抜きん出る必要がある」軍事トラック、「地区の形成時に決められた建物の種類で構成されているならば大きなボーナスが得られる」地区カードなど、どの得点要素も扱いの難しさはあるものの、その分のリターンは魅力的なものばかりです。
 
 そして、それらは手なりのプレイでは決して得ることはできません。
 他のプレイヤーよりも優位にアクションを実行するためには、ダイスの色とアクションマスに割り当てられた色の関係にも気を配る必要が出てきます。
 建物の特殊効果を発動させる機会を増やす、活かすには、より練られたマネージメントが必要となります。

 オーソドックスなシステムだけに、アクション一回当たりの差はわかりにくいかもしれません。
 しかし、それらのアクションをどう得点に結びつけられたか―その結果は、アクションをどう積み重ねたによるものにほかなりません。
 それを「オリジンズ:ファーストビルダーズ」は、否応なしに突きつけてくれるのです。
 あなたは「爆発的な得点力」を味わうことが出来るでしょうか?

相対的な結果である勝敗に満足せず、より高みを目指せ!

 「オリジンズ:ファーストビルダーズ」は、ゲームである以上、得点が何点だたっとしても「順位」がつき、その結果に一喜一憂することはできるでしょう。
 しかし、この歪にも思えるほどに特徴的な得点スケールの中で、どれだけ高みを目指せるか―その点を競うことが出来るようになったならば、「オリジンズ:ファーストビルダーズ」の面白さは何倍にもなるはずです。

 最後に。
 「オリジンズ:ファーストビルダーズ」では、得点トラックを周回するたびに「100点」、「200点」といった得点を記録するためのトークンを受取ります。
 さて、この「200点」のトークン、ファーストプレイの後、あなたの目にはどのように映っているでしょうか?

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