タナカマ店長のゲーム紹介:ブラックフォレスト

ウヴェ・ローゼンベルク作「ブラックフォレスト」は、ガラス工房でのガラス製造と発展を描いたゲームです。
このテーマを聞いてピンときた人もいるかもしれません。
同じくウヴェ・ローゼンベルクによる「グラスロード」の流れを汲む作品です。
とはいえ、続編という位置づけではなく、随所に「グラスロード」を想起させるようなメカニクスや要素がありつつも、独立した完全に新しい作品になっています。
だからこそ、「グラスロード」が好きだった人、「グラスロード」が合わなかった人、そしてもちろん、「なんか気になる」という人、いずれの人もより詳しく知りたい、と思っているのではないでしょうか。
この記事では、「ブラックフォレスト」の面白さを紹介しつつ、「グラスロード」っぽいところ、似つつも明らかに異なるところにも触れていきたいと思います。
なお、「グラスロード」との比較についてを、それぞれの項目ごとに「Check!」を付けて触れています。具体的にイメージする参考にしていただければと思います。

○ゲームの目的は、ガラス工房の発展。メインメカニクスは「ワーカームーブメント」

「ブラックフォレスト」は、ドイツ南西部にあるシュヴァルツヴァルト地方のガラス工房を中心とした生活と発展をテーマとしたゲームです。
プレイヤーは、さまざまなアクションを選択、実行し、自分の土地となる個人ボード上で森を切り拓き、さまざまな建物を建て、資源を上手く管理、活用してより高い得点を獲得することを目指します。
アクションは、メインボード上に描かれた村に用意されており、それに対応したスペースへと自分の駒を置くことで選択、実行することになります。
ここで「ブラックフォレスト」は、ワーカームーブメントをメカニクスに採用しています。ワーカープレイスメントと近いメカニクスになりますが、ある程度は自由にアクション選択を行えるワーカープレイスメントと異なり、ワーカームーブメントでは、その名前の通り、移動を伴うことになります。「ブラックフォレスト」では、各プレイヤー一個ずつの駒を持ち、その駒を道を辿って村から村へ移動させ、それぞれの村に用意されたアクションマスへと駒を置き、実行することになるのです。
このとき、「移動を伴う」だけに、それぞれの村の位置関係が重要となります。遠くの村に移動することになるならば、それ相応のコストが必要となるのです。自分の実行したいアクションが、もし、遠くの村にあり、移動した上での実行だった場合、やや価値の高いリソースである「食料」を支払わなければなりません。

また、アクションを2つ、同時に選択するというのも面白いところです。
村にある駒を置くためのスペースは、2つのアクションに挟まれる形で用意されています。すなわち、あるスペースに置かれた駒は、その両隣のアクションをそれぞれ実行するために置かれたことになるのです。
近い村に、2つの魅力的なアクションがあるなら、迷うことはないでしょう。しかし、そのような状況にあることは「まれ」なのは言うまでもありません。さらにアクションのセットアップはゲームごとにランダムで用意されるため、毎回、その組み合わせを読み解く必要があります。
村に用意されたアクションの構成と、駒を移動させるという「ワーカームーブメント」ならではの仕組みがもたらす村までの距離を踏まえてのアクション選択は、常に悩ましく、面白いところです。

ちなみに、実はこのアクションの構成を変えることも可能です。ただし、「ガラス」同様に上位のリソースとして用意された「商品」の支払いが伴うため、ゲームを通して完全に自由に行えるわけでありません。そのタイミングの見極めもまた、悩ましいところでしょう。

Check!
「グラスロード」ともっとも大きな違いとなるのが、このアクション選択でしょう。
「グラスロード」では、カードによるアクション選択とバッティング要素による読み合いがメインとなっていたのですが、「ブラックフォレスト」では、どの村にどのようなアクションが配置されていて、どのアクションの組み合わせが効果的なのかを読み解くということのウエイトが大きくなっています。
「グラスロード」ファンからすると、この違いの大きさには戸惑うかもしれません。テンポの良さとバッティング要素のスリルは替えの効かない「グラスロード」の唯一無二の大きな魅力。やはり「ブラックフォレスト」はあくまで派生作であり続編ではないということの現れなのではないでしょうか。

○個人ボードを発展させるべし


さまざまなアクションを実行し、次にプレイヤーが行うことになるのは、個人ボード内の発展です。
個人ボードには、森や池、畑が広がり、ガラス工房が建てられています。
プレイヤーは、アクションによって森を切り拓いたり、さらに畑を広げたり、建物を建てるなどして、個人ボードを発展させていきます。
建物には即時効果のあるもの、常時使用可能となるアクションをもたらすもの、特定の状況において特典をもたらしてくれるものがあり、多くのゲームと同様に、これらを建てるほどにプレイの幅が広がることは言うまでもありません。

個人ボードに建てることのできる建物は、36種類。
この36種類の建物はゲーム開始時点にすべて公開されていることから、情報量の多さに圧倒されてしまう人もいるかもしれません。
しかし、「ブラックフォレスト」では、プレイヤーが感じるであろう負担を軽くする気配りも忘れていません。
建物のタイルが置かれたボードにはゲームに登場するリソースが描かれ、それぞれをキーとした建物を分けて置いてセットアップすることになります。
このセットアップ方法が非常に秀逸で、どのリソースを集め、どの建物を建て、そこからさらに次はどのリソースを得ていくのかをプレイヤーが意識しやすくしてくれているように思います。例えば、「最初は木を使ってこの建物を建てて、その建物を活かして水に余裕が持てるこの建物にアプローチして―」ということを辿ることが比較的容易なのです。

もちろん、「グラスロード」と同様に、建物は、得点源として重要です。
通常の建物のほか、新たに「大きな建物」も用意され、プレイの方向性を決める指針となるものになっています。

一見、手狭に見える個人ボードも、森や池のタイルは、ボードから取り除くことが可能となっており、取り除いてスペースを確保するのか、それらのタイルを置いたまま活用していくのかを考えるのは、「グラスロード」から引き続いて面白いところです。

Check!
「グラスロード」と異なり、個人ボード自体を拡張できるようになったのは大きな変化です。
そのことで、森や池といったタイルを除去するのか、残しておくのか、という選択に幅が生まれ、ボードを埋めていくだけではない展開も生んでいます。もちろん、簡単に拡張できるわけではないので、しっかりと展開を組み立てる必要もあります。
建物タイルがゲーム開始時点ですべて並べられ、自由に選んで建てられるのも大きな変化でしょう。
建物の組み合わせが生み出すシナジーを読み解き、それを踏まえての建物の選択と、その建設に向けてのリソースマネジメントは、「グラスロード」でも大きな魅力の一つでしたが、その面白さがさらに増したように思います。

○特徴的なホイールによるリソース管理は健在

「グラスロード」でも大きな特徴だったホイールを用いてのリソース管理は、「ブラックフォレスト」でも引き続き、大きな存在感を放っています。

「グラスロード」と同様、「ブラックフォレスト」でも自動的な変換が行われることになり、引き続き、プレイヤーを悩ましてくれます。
ホイールの内側はマスで区切られており、リソースを獲得、消費するたびに、リソースごとに用意された駒を動かし、その数を示すことになります。
これだけであれば、ごくごく普通のリソース管理方法と言えますが、さきほど書いたように「自動的な変換」が起こることがあり、これがユニークな点になっています。
具体的には、リソースが獲得され、その結果、例えば、すべてのリソースを2個以上保持してい

るような状況になると、「1個」のマスが空くことになります。もし、そのような状況になったなら、空きマスを埋めるようにホイール自体を回転させ、この回転によって、リソースすべてが一個ずつ消費され、と同時に、上位のリソースが増える―すなわち、上位のリソースへの変換が行われることになるのです。

すべてのリソースを消費することで入手することになる上位のリソースは、ゲーム上、重

要であることには違いありませんが、ゲーム中、常にそのリソースが必要であるとは限りません。場合によっては、変換される前のリソースがどうしても必要となることも少なくないでしょう。一般的なゲームであれば、それらのリソースを使わないように確保しておくことは簡単にできるわけですが、自動的な変換が行われることで、明確にその所持量をコントロールすることが求められるのです。

少ない駒数でリソースの所持数を表しつつ、独特の面白さを生み出すこのホイールによるリソース管理の優秀さは、いまだに新鮮な驚きを与えてくれるでしょう。

Check!
変換を含めたホイールによるリソース管理のシステム自体は、「グラスロード」とは大きくは異なりません。
しかし、このホイールが持つもう一つの意味、それは明らかに大きな違いになっています。
それは「ゲームの終了トリガーを兼ねている」ということです。
「グラスロード」では、ラウンド制になっており、規定ラウンド終了とともにゲーム終了となります。一方、「ブラックフォレスト」では、回転したホイールの針がゲーム終了を表すポイントを指したらゲーム終了となるのです。
ホイールが回転するということはすなわち、それだけ上位のリソースへの変換を行い、また、それを使用した、ということになります。
終了トリガーが用意されたホイールにおける上位リソースは「食料」で、この食料は、ゲーム中、「より自由なアクション選択」を行った時に消費されるリソースです。
「より自由なアクション選択」、それはつまり「より積極的な手を打った」と言い換えてもいいかもしれません。
より積極的な手を打ったプレイヤーが、ゲーム終了タイミングのコントロールにおいてイニシアチブを握れることにも繋がります。さらに、このホイールを回転させることで得点も獲得できるのです。
規定ラウンドで終了ではないという点に、ゲームがいたずらに長くなるという懸念をいただく人もいるかもしれません。
しかし、プレイヤーにホイールを回転させることの優位性を明確に提示することで、それをうまく回避もしています。

○見所十分な内容でありながら、プレイ時間は90分!

ゲームボリュームに関して、ここまで紹介してきた「ブラックフォレスト」の内容から、いわゆる「重量級」をイメージした方も少なくないかもしれません。
しかし、実際のプレイ時間は、箱に書かれたプレイ時間通りの「60分~120分」で収ることが多いでしょう。
手番で行うことも、ほぼ「移動とそれに伴うアクション選択・処理」だけなので、一手ごとのプレイ感も重くありません。
ルール説明においても、ある程度この手のゲームやウヴェ・ローゼンベルクのゲームに馴染みがあれば、すんなり飲み込めるはずです。
プレイまでのハードルも低く、プレイ自体の負担も比較的軽いというのは、それだけで魅力に感じる人も多いでしょう。

Check!
「グラスロード」の方があきらかにゲームのテンポがよく、プレイ時間も短めです。
しかし、これだけリッチで、かつ、遊びごたえ、満足感を感じられるゲームでありながら、この遊びやすさには驚かされます。
「45分~60分のゲームで得られる満足度としては最高クラス」の「グラスロード」。
「60分~120分のゲームで得られる満足としては最高クラス」の「ブラックフォレスト」。
そんな風に言っていいかもしれません。

「ブラックフォレスト」は、さまざまな点で「グラスロード」の流れを汲みつつも、明確に異なるゲームとしてデザインされたことがおわかりいただけたかと思います。
「家族の数に応じた食料の支払い」のような縛りもなく、ゲーム中、ほとんどの状況においてプレイヤーは自由な選択が出来るように作られている「おおらかさ」がありつつも、リソースマネージメントやシナジーの組み立てをたっぷりと味わうことのできる「遊びごたえ」を兼ね備えた優れた一作と言えるでしょう。

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