テンデイズゲームズ:これからのラインナップ(2021年10月1日更新)

2021年8月以降の発売済みタイトル

おじゃまっシー(ブロックネス日本語版)
ドクターエウレカ(再版)
グラスロード ミニ拡張同梱版 日本語版(ミニ拡張単体販売あり)
ドラゴミノ 日本語版

2021年10月発売予定

9日発売予定
レス・アルカナ:拡張2 力の真珠 日本語版
ニュートン:偉大なる発見同梱版 日本語版

下旬頃発売予定
オーディンの祝祭:拡張 ノース人(再版)
オーディンの祝祭:追加島タイル(再版)
パックス・パミール:二版 日本語版(限定数でメタルコインセットあり)
オリジンズ:ファーストビルダーズ 日本語版
ヴェニス 和訳付輸入版

2021年秋発売予定

12王国の玉座(再版・一部仕様変更の二版)

キングドミノオリジンズ 日本語版
サポテカ 日本語版

タバヌシ 日本語版
テケン:拡張 セトの時 日本語版
バラージ:5人プレイヤー拡張 日本語版
レクト・ベルソ 日本語版
テラミスティカ:オートマソロボックス 日本語版
12王国の評議会 日本語版


オーディンの祝祭(再版)※同時に拡張セットの再入荷予定もあり

パンピンポンカードゲーム

タロス 和訳付輸入版(Spielworxx

2021年年内発売予定

ゴーレム 日本語版
ペーパーダンジョンズ 日本語版

フォーラムロマナムの商人
クニツィアの「だるま」(海外で「Hit」、「Family Inc」(ボードゲーム版)」として流通しているタイトルの日本版です)

ペッパー(再版・新仕様小箱版)

そのほか、未発表のエッセンシュピール新作で発売決定しているもの、さらに企画進行中のものもいくつかあります。
ぜひ、ご期待ください!

※予定は変更となる場合があります。

エッセン注目作はこれだ!2021

 10月14日木曜日、ドイツエッセンで「Spiel」が開催となります。
 コロナ禍で昨年はデジタル開催となった「Spiel」も、今年は実際に会場に来場者を入れての開催。制限をかなり設けつつとはいえ開催にこぎ着けたのは、一ファンとしても本当に嬉しいところ。
 
 そのSpielで発売、発表される新作もコロナ前とは比べものにならないものの、同じ時期にこれだけ出るのだから、やはり興奮させられます。

 この記事では、その発表、発売される新作群の中から個人的に注目作を紹介していきたいと思います。
 本当は、2019年までのように動画で賑やかに紹介していきたかったのですが、まだまだ一所に集まってのお喋り配信は難しいこともあり、今年はブログ記事でお送りいたします。

 なお、この記事で触れているタイトルは、あまりテンデイズゲームズと関わりのない出版社に限っています。
 本当にごくごく個人的なものだと思っていただければ。

 ちなみに、配信の時は一緒にやっているシミーズさん、永峯さんのお二人、そして数寄ゲームズの円卓さんも同様の記事、一人での配信をやっておりますので、ご興味のある方、こちらもどうぞ。

シミーズさん→ツイキャス「エッセン直前チェック!!! / シミーズボードゲーム」

永峯さん→今日もプレイミス「2021年エッセンシュピール私的注目作」

円卓さん→18番発電所「エッセンシュピール2021の個人的注目作10作」

Rocodromo

https://boardgamegeek.com/boardgame/313166/rocodromo

 見ての通り、ボルダリング、スポーツクライミングをテーマとしたタイトル。
 スポーツテーマのボードゲームに「アタリ」ははっきり言って少ない。
 動画を見た限り、(先取りの要素はあるものの)用意されたタイルを使ってちょうど届く穴へ駒を進めていくというごくごく単純なレースゲームようだが、はたしてアタリかハズレか。

Galaxy Trucker

https://boardgamegeek.com/boardgame/336794/galaxy-trucker

 最高のドタバタリアルタイムパズルゲームが帰ってきた!
 過去、幾度となく日本語版を夢見たタイトルだけに、この機会に日本語版が出てくれれば……と願わずにいられない。

Caral

https://boardgamegeek.com/boardgame/348325/caral

 「カルカソンヌ」のヴレーデによる新作。今年はデモ出品。
 ヴレーデ、今年はPegasusから「Fire & Stone」を発表したり、なにやら精力的。
 この「Caral」、まだ情報は少ないものの、特殊効果カードあり、ミニチュアを用いたピラミッド建設ありの本格指向の様子。
 加えて「グレンモア2」の出版社からということもあってか「グレンモア2」で見られたモジュール形式の拡張「クロニクル」方式も取り入れているようで、さらにゲームを発展させていくことも可能とのこと。
 これまで「カルカソンヌ」のデザイナーでありながら、あまり強い存在感を打ち出してこれなかったヴレーデが、キースリングのようにその存在を強烈にアピールできるのか。今年と来年、注目してみたい。

Gigaton

https://boardgamegeek.com/boardgamepublisher/13288/sinonis

 まさか、2021年になってSINONISの新作を見ることになろうとは。
 デザイナーは、「ショウビジネス」から11年ぶりの新作となるよう。
 内容は、ポストアポカリプステーマの3Dミニチュアを使ったレースゲーム。
 いや、内容はどうでもいい。SINONISの新作というだけでアツい。

Glory: A Game of Knights

https://boardgamegeek.com/boardgame/206757/glory-game-knights

 騎士となって、馬、装備を揃えつつ、いろいろな人の助けを借りて、槍試合に出場、勝ち上がることを目指すという、全国1000万槍試合ファン大注目の一作。
 最愛の女性とのロマンスや、有名な貴族に挑むという展開も盛り込まれているようで、デザイナー曰く「騎士の人生の物語をボードゲームを通じて伝えたかった」とのこと。
 もちろん、プレイヤー間の闘いもありで、アツい展開も期待できそう。
 2019年にデモ出品の話を聞いて会場で探したものの見つけられなかったタイトルがいよいよ発売。
 絶対遊びたい。

【ゲーム紹介】オリジンズ:ファーストビルダーズ(Origins: First Builders / Adam Kwapiński / Board&Dice / 2021)

概要をまとめるとよくある……が、しかし

 「オリジンズ:ファーストビルダーズ」は、2018年に発表した「ネメシス」で一躍脚光を浴びることとなったポーランドの新進気鋭ゲームデザイナー、Adam Kwapińskiによる2021年の新作ストラテジーゲームです。
 
 さて、このあと、システムを簡単にまとめつつ、ゲームの概略を説明していくわけですが、その前にあらかじめはっきりと伝えておきます。
 この概略を読んだだけでは多くの方が既視感を覚え、結果、「オリジンズ:ファーストビルダーズ」の面白さはまったく伝わらないかと思います。
 しかし、この「オリジンズ:ファーストビルダーズ」には、システムの話を中心とした概略だけでは伝わらない「その先の面白さ」が詰まっているのです。
 ぜひ、最後まで読んでみてください!これは強く言っておきます。

 というわけで、まずはシステムをゲームの設定と共に簡単に紹介していきたいと思います。
 舞台となるのは古の時代の、おそらく地球。
 プレイヤーは、まだ近代的な文明が興るよりも遙か昔の時代の指導者となり、自らの文明を発展させていくことを目指します。
 発展させていくために、さまざまなアクションを実行していくことになるのですが、ややSF仕立ての設定となっており、このアクションをもたらすのが宇宙より飛来した超自然的な存在なのです。その存在がもたらしてくれる力というのが、すなわちアクションを実行して得られるさまざまな効果ということになります。
 メインとなるシステムは「ダイスプレイスメント」です。
 プレイヤーは、ワーカーに見立てたダイスをボード上へ置くことで、そこに用意されたさまざまなアクションを実行していきます。
 ダイスの目と色の要素がアクション選択における制限やボーナスに関係があるものの、それ以外の部分はごくごくオーソドックスで、各アクションを実行できる数に制限はなく(いわゆる早取りの要素がない)、むしろ他のゲームと比べると緩すぎるほどかもしれません。

 アクションがもたらす効果も極めてオーソドックスです。
 「特定の資源を3個得る」、「神殿トラックを進める」、「軍事力トラックを進める」、「ワーカー駒を獲得する」、「建物を建てる」……いずれの処理においても例外的な処理もほとんどなく、「アイコンに描いてある通り」というわかりやすさです。

 全員がパスを行うまでが一ラウンドとなり、終了フラグが切られるまで繰り返されることになります。
 
 ラウンドが進む際に、ワーカー駒として使われたダイスの目が「1」増えることになります。これにより次のラウンドでは、そのダイスを用いたアクション選択の自由度はやや増すのですが、「6」の目だった駒はワーカーとしての役目を終え、「助言者」としてプレイヤーボードに置かれることになります。
 この助言者は得点と、ワーカー駒でもある支配者「アルコン」に若干の優位性をもたらしてくれることになるのですが、ダイス自体はワーカーとしての役目を終えているため、ラウンド中に実行できるアクション数が減ってしまうことになるのは注意が必要です。
 「助言者」として役目が変わるタイミングを踏まえた戦略の組み立ては、ごくごくオーソドックスな「オリジンズ:ファーストビルダーズ」にあって、少し特徴的なところかもしれません。とはいえ、そこまで独自性が強いわけではないのですが……。
 
 ここまでが「オリジンズ:ファーストビルダーズ」の基本的な進行をまとめた概略です。
 
 しかし、「オリジンズ:ファーストビルダーズ」の面白さのキモとなる部分は、この概略からは推し量れないところに用意されているのです!

得点へのアプローチが「オリジンズ:ファーストビルダーズ」の真骨頂!あなたは得点を「爆発」させることができるか!?

 概略でも触れたように「オリジンズ:ファーストビルダーズ」のゲーム進行は、非常にオーソドックスです。
 ある程度ゲームに慣れた人であれば、「手なり」で進めること、まあまあ自分のやりたいように進めることも難しくないでしょう。
 しかし、それらの選択を「高得点」に繋げようとした途端、この「オリジンズ:ファーストビルダーズ」のゲームデザインの巧みさ、難しさに気付かされるはずです。

 この「オリジンズ:ファーストビルダーズ」に用意された得点方法、そのシステム自体は、とてもオーソドックスです。
 しかし、その得点スケールは、ある種変態的とも言えるものに設定されています。

 例えば、「神殿トラック」。
 神殿トラックは三本用意され、それぞれで駒をどれだけ進めることが出来たかによって得点を獲得することができます。
 1マス進めると「0点」です。
 2マス進めると「1点」になります。
 3マス進めると「3点」に増えます。
 これが、最終到達点である12マス目まで進めると「70点」になります。
 一つの得点要素でこれだけの差が設定されたゲームは、他に類を見ないと言っていいでしょう。
 「あれ、意外と簡単じゃない?」と思った方もいるかもしれません。
 しかし、三本のうち一本のトラックを闇雲に進めればいいというわけではないのです。
 最終的な得点は「三本のうち、もっとも進んでいるトラックを除いた二本から得点獲得」なのです。
 これは、もし、ある一本の神殿トラックから「70点」を得ようと思ったならば、少なくとも二本の神殿トラックを最終到達点まで進めないといけないということを意味しています。
 さらに、残ったもう一本から「それなり」の得点を得ようと思ったならば、さらに神殿トラックを進めると言うことが重要となるでしょう。

 他の得点要素も見てみましょう。
 「ダイスの色ごとに用意された塔」という最終得点要素があります。
 それぞれの塔には高さの概念があり、建設を繰り返すことで得点を増やすことが出来ます。
 一階建てなら1点、二階建てなら2点、三階建てなら3点、四階建てなら4点……そう、この塔はあくまで「素点」なので、塔の高さが直接もたらす得点はそれほどでもないのです。
 ですが、そこに、それぞれの色に対応した「権力者」が関係してくることで、様相は大きく変わります。
 ゲーム中、配置した都市タイルによって、2×2の地区を形成させることができます。
 その際、ワーカー駒だったダイスを「権力者」として地区に配置することになります。
 この権力者として置かれたダイスの目を、そのダイスと同じ色の塔の素点に掛けたものが塔から得られる得点になるのです。
 漠然と塔を高くしても決して高得点は得られません。
 塔を高くしつつ、都市タイルをうまく配置し地区を形成し、「目が大きくなった」適切なタイミングでダイスを権力者として送り込むことで、はじめてしっかりとした得点に繋げることができるのです。

 そのほか、「コンスタントに得点獲得が狙えるものの、他のプレイヤーと比べ抜きん出る必要がある」軍事トラック、「地区の形成時に決められた建物の種類で構成されているならば大きなボーナスが得られる」地区カードなど、どの得点要素も扱いの難しさはあるものの、その分のリターンは魅力的なものばかりです。
 
 そして、それらは手なりのプレイでは決して得ることはできません。
 他のプレイヤーよりも優位にアクションを実行するためには、ダイスの色とアクションマスに割り当てられた色の関係にも気を配る必要が出てきます。
 建物の特殊効果を発動させる機会を増やす、活かすには、より練られたマネージメントが必要となります。

 オーソドックスなシステムだけに、アクション一回当たりの差はわかりにくいかもしれません。
 しかし、それらのアクションをどう得点に結びつけられたか―その結果は、アクションをどう積み重ねたによるものにほかなりません。
 それを「オリジンズ:ファーストビルダーズ」は、否応なしに突きつけてくれるのです。
 あなたは「爆発的な得点力」を味わうことが出来るでしょうか?

相対的な結果である勝敗に満足せず、より高みを目指せ!

 「オリジンズ:ファーストビルダーズ」は、ゲームである以上、得点が何点だたっとしても「順位」がつき、その結果に一喜一憂することはできるでしょう。
 しかし、この歪にも思えるほどに特徴的な得点スケールの中で、どれだけ高みを目指せるか―その点を競うことが出来るようになったならば、「オリジンズ:ファーストビルダーズ」の面白さは何倍にもなるはずです。

 最後に。
 「オリジンズ:ファーストビルダーズ」では、得点トラックを周回するたびに「100点」、「200点」といった得点を記録するためのトークンを受取ります。
 さて、この「200点」のトークン、ファーストプレイの後、あなたの目にはどのように映っているでしょうか?

【ゲームプレビュー】レス・アルカナ:拡張2 力の真珠

 トム・レーマンの人気シリーズ「レス・アルカナ」、二つ目の拡張セットです。

 大きな拡張要素としては2点あります。
 ひとつは、タイトルにもある新しいエッセンス「真珠」、もうひとつは勝利条件が「13点」に引き上げられるということです。

 「真珠」は、「真珠」として扱われるほかに、自分がアクションを行うタイミングで「黄金1個」か「(黄金と真珠以外の)エッセンス2個」へと変換することが可能という、とても強力なエッセンスなのです。
 このことにより、ゲーム中に得た「真珠」をその後の展開に応じてどうように使用するのか、という選択がプレイヤーに求められることになります。
 着実に手を進めるために1個ずつ使うのか、タイミングを見極めここぞという爆発力に繋げるのか―「真珠」をどう活かすかがプレイングのカギとなるのは間違いないでしょう。

 勝利条件が「10点」から「13点」に引き上げられたことも大きな変化です。
 これまでの「レス・アルカナ」が、初めてプレイする前のイメージをはるかに越える「鋭さ」を持ったゲームであることは、この記事を読んでいる人なら、よくおわかりかと思います。
 超高効率なシナジーを持ったエンジン/タブローを作ることが出来たならば、次のラウンドでは勝敗が決してしまう―この鋭さは「レス・アルカナ」の大きな魅力である一方で、自分で戦略を組み立て、じっくりと手を進めていくという点においてはやや物足りなさがあったことは否めないところです。
 今回、勝利条件が「13点」に引き上げられたことで、カード選び(ドラフト採用時)とエンジン構築の面白さに、さらには手を進めていく面白さも加えられたと言っていいでしょう。
 新たに加わった「真珠」のポテンシャルと、それをどう活かすかの応用力が求めらることと、この「13点」へ引き上げられたことはとても相性がよく、「面白さのシナジー効果」を生み出しており、ファンであるほどにその違いを感じられるのではないでしょうか。

 もちろん、力ある場所、アーティファクト、マジックアイテム、メイジカード、モニュメントカードも追加されます。

 ファン必携の拡張セット「力の真珠」は、10月9日発売予定です。

【ゲームプレビュー】パックス・パミール:第2版

 まもなくの発売を予定しているタイトルを、詳細な紹介に先駆けて簡単にお伝えする「ゲームプレビュー」。今回は、「パックス・パミール:第2版」です。

 「パックス・パミール:第2版」は、日本でも大きな話題となった「ルート」の作者、Cole Wehrleによるアフガニスタンの歴史的背景をテーマに据えた本格的な戦略ゲームです。

 プレイヤーは、アフガニスタンにおける有力者となり、「グレート・ゲーム」と呼ばれる19世紀から20世紀にかけて英露両国、そしてアフガニスタンに権力者によるアフガニスタンの争奪抗争を通じ、自らの影響力を高めることを目指します。

 ゲームは、ルールブック冒頭でも触れられているように「タブロービルド」と呼ばれる「カードを獲得し自分の場へプレイすることで、カード効果を得て自らを成長させ、より強力な手を打っていく」ことが主となるゲームシステムです。
 この「タブロービルド」は、「エンジンビルド」と非常に近く、同義の言葉として扱われることもありますが、「パックス・パミール」においては、拡大再生産、リソースの再利用といった効果を持つカードはなく、「エンジンビルド」的な側面は薄くなっています。
 代わりに、争奪抗争をテーマとしているだけに、ボード上への戦略的アプローチの選択肢を増やすことや、アクションの強さに関わってくることになります。

 この「パックス・パミール」のもっとも重要、かつ、面白さの元となっているのが、プレイヤー自らがイギリスやロシア、アフガニスタンの権力者になるわけではなく、あくまで有力者の一人として、それぞれの勢力の力を高めていくよう立ち回ることで、得点に繋げていくという点です。
 ボード上では、実際にイギリス、ロシア、アフガニスタンの権力者の駒が展開され、激しく戦いが繰り広げられるのですが、その結果、得点を得られるのは、「影響力のもっとも高い勢力(=得点獲得の権利が発生した勢力)と同盟を組んでいたプレイヤー」なのです。
 そのため、ある勢力と二人、三人のプレイヤーが同盟を組んでいたのであれば、それぞれのプレイヤーの得点機会となるわけです。
 加えて、この同盟関係はゲーム中に変えることもできます。ゲーム展開に応じ、どこと同盟を結ぶのか、大きな決断を迫られることになるかもしれません。

 一方で、ボード上には、プレイヤー自らの駒が置かれることもあります。もちろん、自らの駒がゲーム内において大きな影響があることは言うまでもありません。
 
 カードを獲得しプレイすることでアクションの質や効果を高め、自分の影響力を高めつつ、他の有力者の動向を見据えながら、同盟先を見定め、それら同盟の力を高めるよう、手を打っていく。
 この多層構造が「パックス・パミール」の魅力です。
 
 展開によってはサドンデス勝ちとなることもあり、ゲーム中は一瞬たりとも気が抜けません。
 多層構造かつ、緊張感の高いゲーム展開を、このクラスのゲームとしてはスマートなルールで見事に作り上げています。

 細かいフレーバーも丁寧に日本語化した美麗なカードを含んだ「パックス・パミール:第2版」は、10月下旬発売予定です。

 さらなる詳細なゲーム紹介は、発売の前後にお送りいたします。

※「グレート・ゲーム」の背景となっている英露両国のアジア進出や、アフガニスタンの歴史等を「ゲーム」のテーマとして扱うことの賛否はあるかもしれません。ルールブック巻末でも触れられている通り、デザイナーは真摯に取り組んでいます。

※発売後、この日本語版の売上の一部は、アフガニスタン復興のために寄付されます。

近日発売予定のタイトルミニ紹介

 先日配信しましたテンデイズTV「怒濤の新作紹介スペシャル2021July」でご覧いただいた通り、テンデイズゲームズではこれから年末にかけて多数のゲームを発売予定です。
 発売予定表は別記事として用意してありますが、その記事で書かれているのはあくまで発売予定だけになっています。
 もう少し詳しく知りたいという方も多いと思いますので、この記事では、まもなく発売を迎えるタイトルを、簡単なコメントとともにまとめて紹介していきます。(タイトルによっては発売時により詳細な紹介をさせていただく予定です)

※配信後に発売予定日が変更となったものがあります。
※テンデイズTVでの紹介順と同じではありません。

マグニフィセント:拡張 スヌー(7月23日発売予定)

 サーカスをテーマとした隠れた人気作「マグニフィセント」の拡張セットです。
 タイトルにもなっている「雪」をテーマにした新しい演目といくつかのルールが追加され、得点への異なるアプローチが出来るようになります。
 また、5人プレイに対応します。

 基本セットも再入荷いたしますので、気になっていた方は合わせてご検討ください。

おじゃまっシー(8月発売予定)

 湖に棲む怪獣たちの縄張り争いを描いたゲームです。
 体を模したピースを使って頭か尻尾を伸ばしていき、最後まで生き残ることを目指します。他の怪獣にブロックされたり、ボードの端まで行ってしまい、伸ばせなくなってしまったら脱落です。
 「高さ」があるのがポイントで、他の怪獣の体をまたぐように伸ばすことも可能。
 運要素のない(いわゆる)アブストラクトゲームに抵抗感のある方もいるかもしれませんが、思わぬところでブロックしたりブロックされたり。はたまたそれを乗り越えたり。ちょっとしたドタバタ劇感もあり、気楽に楽しめるのもポイントです。
 ちょっと変わった見た目もインパクト大な、楽しい一作です。

ドラゴミノ(7月下旬~8月中旬発売予定)

 今年のドイツ年間ゲーム大賞キッズゲーム部門を受賞した人気作「キングドミノ」の派生作です。
 ニマスで一枚となるドミノ状のタイルを手元に配置し得点を獲得していくという基本システムはそのままに、よりシンプルにまとめ、対象年齢が下げられました。
 最終的なタイル配置状況で得点計算を行っていましたが、こちらでは同じ地形の描かれたマスを繋げられたらただちに得点獲得のチャンスとなります。「たまご」タイルを引いて、ドラゴンが描かれた「当たり」を引くことが出来たら得点です。
 タイル配置の制限が大幅に緩くなっており、くじ引き方式の得点システムとの組み合わせにより、子どもから大人まで気軽に楽しめるタイル配置ゲームになっています。

グラスロード(8月発売予定)

 人気デザイナー、ウヴェ・ローゼンベルクの2013年発売作が待望の再版となります。
 「リソースマネージメントによる田舎の集落の発展」がテーマと聞くと、ローゼンベルクのゲームとしてはお馴染みなイメージがありますが、バッティング要素が盛り込まれたアクション選択がゲームの軸に据えられており、近年のローゼンベルク作としては、やや異色な位置づけとなっています。
 バッティングを基調としていることもあってか、プレイ時間も60分とほどよくまとめられており、多くの方にオススメできるタイトルになっています。
 2013年の発売後に発表されたミニ拡張を含んでの再版です。(ミニ拡張単体での発売も予定しております)

ベニス(8月~9月発売予定)

 ベニスの街を舞台に、ゴンドラ船でボード上を巡りながらさまざまな仕事をこなし得点を獲得していきます。
 色鮮やかなボード、凝った作りのゴンドラ船やワーカーといった駒はとても華やかでそれも大きな魅力ですが、数多くのタイトルのソロルールを手掛けつつ自身も作も多いターツィ、ルーマニアという地からチャレンジングなゲームを発表するノヴァックのコンビ作だけに、油断のならない一作になっています。というのも、得点を稼ぐ一方でそれらの仕事には汚い部分もあるという設定で、得点が高くともあまりに汚いことを積み重ねると最終的に脱落してしまうのです。
 王道的ながら少し変わった感触のゲームを楽しみたい方にオススメと言えるでしょう。

パックスパミール(8月発売予定)

 「グレート・ゲーム」と呼ばれる19世紀のアフガニスタンにおける権力闘争の時代を描いたマルチゲームです。プレイヤーは、イギリス、ロシア、そしてアフガニスタンの三者のいずれかと同盟を組みつつ、権力基盤を築いていくのです。
 さまざまな効果を持ったカードを獲得し自分の場に並べることによる効果の組み合わせを活用しゲームを進めていく「タブロー・ビルド」システムのゲームで、その中心的な仕組みはシンプルかつスタンダードなものながら、時代背景をしっかりと描いたヒストリカルな部分や他プレイヤーとの絡みは「濃く」作られており、コアゲーマーに向けたものであることには違いありません。
 しかし、ボード上に描かれた地域は6つのみ、基本となるアクションはカードの購入とプレイの二種類と、非常にスマートに作られており、多く方にとって挑戦する価値のタイトルとも言えます。

 100枚にも及ぶ当時の背景をしっかりと記述したフレーバー盛り沢山のカード、抜群の雰囲気を持った駒とボード、日本でも話題となった「ROOT」の作者によるゲームデザインなど、見るべきところの多いテンデイズゲームズが贈るこの夏一番の自信作です。

 ※限定でメタルコインとのセット販売も予定しております。

オリジンズ:ファーストビルダー(8月~9月発売予定)

 豊富な内容物が含められたスケールの大きなパッケージとSFホラーの雰囲気が詰まったゲーム内容で注目を集めた「ネメシス」のデザイナーによる戦略ゲームです。
 テーマは、宇宙からやってきた知的生命体との遭遇と都市の発展というスケールの大きなもの。
 基本的な進行は、ダイスをワーカーとして使ってアクションを実行していくというもの。加えて、都市の発展におけるタイル配置のパズル的な要素、他プレイヤーと差があればあるほど恩恵が得られる軍事力や神殿へのアプローチのためのパラメータ上げなど、ゲーム好きの心をくすぐる要素が多分に含まれ、ボリュームのある作りになっています。
 ポーランドを代表する隠れた実力派デザイナーによる注目の新作と言えるでしょう。

ゲーム紹介:キャピタルラックス2(Captal Lux2 / Eilif Svensson, Kristian Amundsen Ostby / 2020)

 ノルウェーの名デザイナーコンビによる2016年の隠れた逸品に、スケールを大幅にアップさせた続編が登場しました。

基本は二択。しかし、超強烈。

 ゲームでは、異世界の発展と勢力争いが描かれます。
 共通の場となる「首都」に出されたカードを「発展」と見立て、その発展度合いに対し、対応する各勢力(色)のカードをいかに「本拠地」となる手元に出せるかということを競います。
 各勢力は首都に人材を派遣し発展に貢献しつつ、自分の本拠地をより充実させていくというイメージです。
 
 ゲームは三ラウンドに渡って行われます。
 各ラウンド、配られたカードを元に「選び取っては次のプレイヤーに回す」形でのドラフトを行い、各プレイヤーの手札が決まります。

 基本的に手番で行うことはシンプルそのもの。
 手札からカードを「場に出す」か「手元に出す」かの二択です。
 しかし、シンプルでありながら、いや、シンプルゆえに、一手番一手番がとても悩ましいものになっています。
 まず、得点の基本に触れておきましょう。
 得点の基本となるのは、各ラウンド終了時に手元に出されているカードの数比べです。色ごとに自分の手元に出されているカードの数値を合計し、もっとも高い数値だったプレイヤーが、場の中央に出されている同色のカードから得点となるカードを受取ることができます。
 「じゃ、どんどん手元にカードを出していけばいいじゃないか」と思う方もいるかもしれません。しかし、もちろん、そんなに簡単は話ではありません。
 冒頭で書いた通り、場となる「首都」に出されたカードは発展度合いを表しています。この発展度合いが、首都のキャパシティーとなるのです。
 勘のいい方なら気付いたかもしれません。
 そう、各プレイヤーの手元に出されているカードの数値合計は、このキャパシティー(首都上限)までしか許されないのです。
 しかも、首都上限を超えた時のペナルティーはかなりキツいもの。ラウンド中に一時的に超えるのは許されているのですが、得点計算時に、もし超えているようであれば、せっかく手元に出したその色のカード、すべてを捨てなければならないのです。

 一方で、場に安易にカードを出すことができないことは言うまでもありません。
 「場にカードを出す」ということは、すなわち、他のプレイヤーにとっても手元にカードを出しやすくなるということに繋がるからです。

 さらに、各ラウンドの手札となるカードはたったの6枚。一枚一枚の価値たるや、他のゲームの比ではありません。
 
 この強烈な悩ましさ、ジレンマは、間違いなく「キャピタルラックス2」最大の魅力と言えるでしょう。

ゲームごとに異なるパワー、その影響を読み解け!

 もちろん、強烈な悩ましさだけが「キャピタルラックス2」の魅力ではありません。
 ゲームごとに変化を加えてくれる「パワー」も忘れてはいけないでしょう。

 ゲーム開始時に、各色ごとに特別な「パワー」が用意されることになります。
 この「パワー」は、ゲームを通してさまざまな効果をもたらすことになります。
 場となる「首都」にカードが出された場合、その色に対応した「パワー」の効果が発生します。
 「パワー」は、追加手番、カード補充と言ったシンプルなものから、他プレイヤーと完全に異なる駆け引きをもたらすものまで、幅広く、とてもユニークです。

 例えば、上の写真の「悲観論者」。
 彼はこの世の中に何か強い不安を抱えているのでしょう。その自分の不安の矛先を「時限爆弾」による破壊に向けてしまっています。
 桃色のカードを場に出す度に、時限爆弾のカウントダウンを表すタイルを一枚めくります。合計が4までであれば何もおきませんが、5以上になるとドカーン!場に出されているカード、各色ごとに1枚ずつ捨て札となってしまうのです。

 例えば、「商人」。
 プレイヤーは、黄色のカードを場に出す度、金貨を受取ります。
 各ラウンドの終了時、もし、首都上限を手元のカードの数値を超えていたならば、この金貨を支払うことで、(自分にだけ作用するように)首都上限を引き上げることができます。
 さながら、取引で得た財力にものを言わせるイメージでしょうか。

 そのほか、場に出すか手元に出すかによって内容が変わる特別なカードを補充することの出来る「二元論者」、ランダムで退いた特別なタイルによって首都上限を(自分だけがその数値を知った状態で)増減することができる「工作員」、完全版と言える「キャピタルラックス2:ジェネレーションズ」にはロケット発射計画を推し進める「発見者」などなど、各色ごとに4種類ずつ(廉価版「ポケット」では3種類)用意され、その組み合わせのバリエーションは256種類(ジェネレーションズ)にも及ぶのです。

 ベースとなるルールが、非常にシンプルだけに、その効果はシンプルなものであっても、もたらされる影響はかなりものです。
 タイルの効果、ゲームにもたらす影響をしっかりと読み解き、カードを適切、かつ効果的にプレイするのも、「キャピタルラックス2」の醍醐味です。

唸らされる「油断のならないポイント」

 ここまで大きな二つの魅力を書いてきましたが、「キャピタルラックス2」を優れたゲームにしている、というよりも、ゲーム好きにとってはたまらない油断のならないポイントは他にもあります。

 まず、ラウンドの終了タイミングと残った手札の扱いです。
 各ラウンド、あるプレイヤーの手札がつきた時、他のプレイヤーはもう一手番ずつプレイして終了となります。
 ラウンド開始時は、同じ枚数の手札を持っていることになるのですが、「パワー」効果によっては手札枚数が均一ではなくなります。
 そのため、ラウンド終了となった時点で、まだ手札が残っているプレイヤーが出ることも少なくありません。
 この残った手札は、問答無用でそれぞれのプレイヤーの手元に置かれることになります。
 手元に置かれたカードの数値が大きければ大きいほど得点のチャンスに繋がるこのゲームにあって、手元に置かれるカードの枚数が肝心ではあるのですが、前述の通り、首都上限を超えた時のペナルティーはとても大きいため、むしろ手元に置きたくないケースも多々あります。
 このルールにより、手元にどのカードをキープするかという悩ましさ、カードを出すタイミングの見極めのシビアさが増しているのです。

 続いては、ゲーム終了時の得点獲得方法です。
 3ラウンド目の得点計算が行われた後、ゲーム終了の得点獲得があります。
 各プレイヤーは、その数値の大小にかかわらず、手元に置かれていたカードをすべて得点として獲得することになります。
 各ラウンドでは、色ごとの数比べを制したとしても、得点として獲得できるのはカード一枚のみです。
 このゲーム終了時の得点ウエイトが大きく設定されているわけです。
 また、この得点獲得があるため、「ある色を捨てる」、「ある色に絞る」ようなプレイは、無効ではないものの、もたらされる得点を考えると有効的とは言えないでしょう。
 そしてプレイヤーは、どのような状況であっても、出来るだけギリギリ首都上限ギリギリを攻めたい、そんな風に思わされるのです。

 また、冒頭で簡単に触れましたが、各ラウンド、手札は「ドラフト」によって決まります。
 悩ましいゲームだけに、他のプレイヤーに回したカードというのは、極めて重要な情報となるでしょう。もちろん、回ってきたカードから推測することも重要です。
 あくまで数字のみが描かれているのみのカードでありながら、そして手札は6枚と少ないながら、ラウンド開始時点でのドラフトから、シビアな駆け引きは始まっているのです。

まとめ

 「キャピタルラックス2」は、構成する要素が主に「二択のカードプレイ」、「ゲームごとに異なる特殊効果タイル」の二要素だけに、とてもシンプルなゲームです。
 得点のシステムも、「色ごとのマジョリティ争い」という、非常にオーソドックスなものです。
 しかし、悩ましさが詰まったゲームプレイ、至るところに用意されたプレイヤー間の駆け引き、ゲームごとに異なる特殊効果の組み合わせから生まれる展開の妙、これらがとてもセンス良く組み上げられたタイトルです。
 そして、シンプルゆえに「凄み」を感じられるゲームデザインにもなっているように思うのです。

 クワンチャイ・モリヤの魅力的なアートワークにより、ルールブックなどでは深く語られていないながらも、その世界観がうまくゲームにも彩りを与えてくれてもいます。

 「キャピタルラックス2」は、間違いなく多くの方に触れてもらいたいタイトルです。

※「キャピタルラックス2」は、完全版といえる「ジェネレーションズ」と廉価版「ポケット」の二種類があります。「ジェネレーションズ」では、「ポケット」と比べ、「パワー」が各色1つずつ多く用意されています。また、「ジェネレーションズ」では、ソロプレイ用のルールと内容物が含まれています。

スタッフ神田の視点

◆全体に貢献しつつも個人の最大利益を目指す

 「キャピタル・ラックス2」において、プレイヤーは未来の首都「ラックス」の有力者として、カードで示される4種の人物を首都か本拠地に派遣(プレイ)します。ゲーム中、プレイヤーは、カードを首都にプレイして公共の利益に貢献するか、あるいはカードを自分の本拠地にプレイして利益を独占するかの二者択一を迫られます。
 もちろん、大変なだけの公共事業は他人に任せて、自分の利益だけを追求できれば最高です。しかしながら、公益を軽視して蓄財に励んでいることが露見してしまえば、これまで築き上げてきたすべての利得を没収されてしまうでしょう。
 したがって、プレイヤーは公共の利益と、自分の利益を天秤にかけて、バランスよく両者を発展させていく必要性があります。その上で、ゲームに勝利するためには他者を出し抜いて自分だけが利益を独占する立ち回りが必要になるでしょう。

 「キャピタル・ラックス2」は2016年に発売された「キャピタル・ラックス」のアップデート版です。基本的なルールにも若干の見直しが入りましたが、それ以上に着目すべきは固定式だった4種の特殊効果が組み換え可能になったことで、「ポケット」版なら81通り、「ジェネレーションズ」版は256通りのセットアップが可能になりました。
 「キャピタル・ラックス2」の各バージョンの違いについてはタナカマ店長の記事にて紹介されているので、そちらをご覧ください。

◆ゲームの流れはごくごくシンプル

 「キャピタル・ラックス2」は、カードドラフトとカードプレイの2つのエンジンによってラウンドが構成されたゲームです。

 ラウンドの始めにはカードのドラフトを行います。全員がカードを6枚引き、同時に2枚をピックして残りを左隣に渡し、また2枚をピックして渡し、最終的に6枚の手札を構築します。
 その後、スタートプレイヤーから手番を行います。手番ですることは手札からカードを1枚選んでプレイするだけです。
 カードは本拠地(自分の場札)へプレイするか、首都(全員共有の場札)へプレイするかのいずれかを選び、どちらの場合でも、プレイされたカードは場札として蓄積されていきます。また、共有の場札にプレイした場合、カードの色に応じた特殊効果が発動します。

 誰か1人の手札が尽きるとラウンド終了のトリガーが引かれます。他のプレイヤーは最後の1手番を行い、余った手札はすべて自分の場札に加えます。

 ラウンドの最後には、4色のカードそれぞれについて得点計算を行います。ここでは自分の場札の数値の合計と共有の場札の数値の合計を比べるのですが、自分の場札の合計値が共有の場札の合計値を上回ってしまった場合、自分の場札をすべて捨てなければなりません。
 その後、それぞれの色について場札の合計値のマジョリティを比較し、勝ったプレイヤーが共有場札から最も高いカード1枚を得点ボーナスとして獲得します。

 こうした流れのラウンドを3回繰り返したところでゲームは終了します。ゲーム中に獲得した得点ボーナス、自分の場札の数値の合計、金貨トークンの得点を合算して最も多くの得点を得たプレイヤーがゲームに勝利します。

◆明瞭平易なゲームデザインの奥に隠された工夫の数々

 こうして文章にしてみると極めて簡素な展開のゲームですが、実際にプレイしてみるとルールの裏側に潜んでいる匠の技の数々に気づかされます。

 まず、着目すべきはその得点システム。プレイヤー共有の場札によって上限値が決まり、ラウンド終了時までにその範囲内に自分のカードの合計値を収める。ここにはチキンレース、バーストの要素があり、まず1つ目のジレンマになります。
 そして、さらにこのバーストをくぐり抜けたとしてもそれだけでは得点には結びつきません。その中でさらに合計値で1位を目指さなければならない。これが2つ目のジレンマになります。
 バースト+マジョリティの組み合わせはバーストの「上限値を越えてはならない」特性と、マジョリティの「最大多数を目指さなければならない」特性が噛み合い、両者が両者の特性を補完する極めて筋の良いメカニクスです。昆布とカツオの掛け合わせみたいなもので、旨味と旨味が足し算ではなく掛け算になる、言わば黄金の組み合わせなのです。

 さらにマジョリティはその機能上、後手が極めて有利なゲームです。なぜなら先手の行動に対して、後手はそれを(時にはちょっと無理して)上回ることも、勝てないと見限って勝負を降りることもできるからです。
 このゲームではプレイヤーは「手番に必ずカードを1枚プレイしなければなりません」。他人の動きを見てから判断を下したいのにルールがそれを許してくれないのです。これが3つ目のジレンマになります。

 さらにラウンド終了時に余った手札は「すべて自分の場札としてプレイしなければなりません」。それがバーストの引き金になるとしても避けることはできないのです。もうお分かりの通り、これが4つ目のジレンマです。
 従ってバーストの危険性があるカードは早めに共有の場札に送り込まなければなりません。しかしバーストの上限値が緩んで喜ぶのは得てして他プレイヤーです。自分のウィークポイントはなるべくポーカーフェイスで隠しつつ、できれば他プレイヤーが上限値を緩めるのを待って、それから自分の場札を増やしたい…… そんな思惑がプレイヤー同士で間断なく巡ります。ルールは平易ながら非常に一手が重いゲームなのです。

 また、ラウンド開始時のドラフトも上手い仕掛けです。自分が流したカードは下家のプレイヤーが確実に持っていて、必ずどこかの局面で登場するのです。4人プレイの場合、ラウンドに登場する24枚のカードのうち、プレイヤーは12枚を既知の情報として持っています。
 この相互作用の強いゲームにおいてドラフトによって得られる情報の果たす役割は非常に大きく、ゲーム展開を予想し、またコントロールする補助線として大きく機能しています。我慢比べの末に他人の動きを見切った時には「してやったり」の気分になることでしょう。
 また、このドラフト自体も6枚から2枚をピックするちょっと変わったシステムで、この工夫により大幅なスピードアップが図られています。なにせ6枚から1枚ずつピックするドラフトのピック回数は5回ですが、このシステムだとピック回数がたったの2回で済みます。
 この高速ドラフトはゲームの密度を高め、記憶負荷への低減を図り、コントロール性を高める一石三鳥の秀逸な仕組みと言えましょう。

 ルールの一つ一つにそれぞれ意味があり、それぞれが有機的に結合して互いが互いを引き立てています。この機械仕掛けのようなシステムの噛み合わせの妙こそがノルウェー人ゲームデザイナーコンビ、エイリフ・スヴェンソンとクリスチャン・オストビーの最たるところです。

◆アブストラクトでもない、アメリトラッシュでもない秀逸なバランス感覚

 また、最初に少し触れた通り、共有場札にカードをプレイした場合、その色に応じた特殊効果が発生します。元々の「キャピタル・ラックス」もこの特殊能力がいい味を出していたのですが、「キャピタル・ラックス2」では、この特殊効果のパターンが大幅に増えています。

 骨組み自体はシンプルながら、この特殊効果の影響も踏まえて手札をやりくりする必要があるため、このゲームはアブストラクトめいた無味無臭には陥らず、モダンなゲームらしいスパイシーさも兼ね備えています。かと言ってアメリトラッシュを思わせる破壊的な効果は意図して避けられていて、このバランス感覚も特筆に値する点です。

 共有場札にカードをプレイすることは直接的には得点に結びつかないため、そのリバランスでもあるのでしょう、特殊効果は基本的にはプレイヤーに有利に働いたり、ゲーム展開に影響を与えるものが多いです。「キャピタル・ラックス2」では、使い方によってはプレイヤーの不利に大きく働く特殊効果も盛り込まれ、さらに尖った展開が約束されています。特殊効果の有利不利によっては共有場札へプレイするマインドにも変化が生じるので、ドラフトはより慎重さが必要になるかもしれません。

◆逆転性を演出する得点システムも必見

 このゲームには膝を叩くルールがいくつもあるのですが、「ラウンド終了時に共有場札の一番大きな数値のカード1枚をボーナス得点として与える」というのもこれまた非常に秀逸なルールで、これによってギリギリまで自分の場札を溜め込んだ優位なプレイヤーは強制的にバースト危険度MAXの状態に押し込まれる羽目になります。
 自分の場札が少ないプレイヤーにとってこの状況は、逆に自分の場札を溜め込む大きなチャンスです。なにせバーストの危機に瀕しているプレイヤーは高確率で共有の場札を増やし、上限値を緩めてくれることでしょうから。
 これだけのシンプルなルールで自然と次の緊張状態を作るとともに逆転の余地を生み出しているのはさすがの一言です。

 また、最終ラウンドではこれまでのラウンドと同様のボーナス得点を得つつ、最後に自分の場札の合計値がすべて得点として計上されます。ゲームを通してこれが得点源として非常に大きなウェイトを占めています。
 したがって最終ラウンドでバーストしてしまうと、その損害は甚大なものになるでしょう。逆に言えば最後まで逆転のチャンスは残されているのです。自分の得点を確保するだけでなく、他人の得点を失わせるための立ち回りも時には重要になるでしょう。

 得点にインフレを持たせつつ、クライマックスを最後に持ってくる得点メカニクスは同作者コンビの手による「アベニュー」と同コンセプトで別アプローチを体現した形でしょう。得点システムにおいてゲームデザイナーは常に「ゲームの最後まで逆転の可能性を残さなければならない」「かと言ってゲーム中の得点要素が疎かであってはならない」という二律背反の命題に悩まされているのですが、スヴェンソン&オストビーはいとも明快に、そして鮮烈に命題への回答を導き出しているのです。
 というか、「キャピタル・ラックス」と「アベニュー」を同時に出した2016年の両者はエグすぎますね!

◆「緊張と緩和」が巡り巡るゲームデザイン

 ゲームデザインには「ゲームの面白さとは緊張とその緩和の繰り返しである」という理論があります。例えば「ダイスを振って1,2,3,4なら成功、5,6なら失敗」という場面は、成功か失敗のどちらが訪れるか判然としない「緊張」の状態であることがわかるでしょう。ダイスを振った後に訪れるのが対となる「緩和」です。ダイスの結果が成功でもあっても失敗であっても、もはや結果は一意に収束し、それ以上の揺らぎはありません。

 ゲームの面白さとは、このような緊張と緩和の状態の行き来によって演出されています。ハードルを設定し、それを飛び越えることで収束する。マッチポンプ的ではありますが、このハードルの高さと頻度をどのように設定するかがゲームデザイナーの腕の見せ所とも言えます。
 このゲームでは「バースト危機的状態」と「非バースト状態」の行き来がまさに「緊張と緩和」の状態遷移に該当します。4つの色それぞれにおいて「バースト危機的状態」と「非バースト状態」のフラグがあり、プレイヤーの一手番ごとにこれらの状態は頻繁に移り変わります。
 そこには自分が関与できない他人の選択による状態遷移も多く、時にはジェットコースターに身を委ねているかのような他律的なめまいに翻弄されます。しかしながら、裏を返せば棚ぼたのような幸運が幾度も訪れるということでもあります。
 シビアな選択に苦しめられるだけではなく、意外なタイミングで嬉しいイベントが転がり込んできて感情が大いに揺り動かされるところにこのゲームの起伏に富んだ楽しさがあります。これほど数多くの「緊張と緩和」を濃密に体感できるゲームは稀と言っていいでしょう。

 繰り返しになりますが、ルール上、手札にあるカードは必ず場札としてプレイされることになります。ですから悩むのは、どのカードをどの順番でどこに出すのか。このゲームは言ってしまえばそれだけなんですが、とにかくその選択が悩ましいゲームです。
 それは織り込まれた巧妙なジレンマの数々と、一手ごとに「緊張と緩和」の状態遷移が誘発される濃密なゲームデザインの為せる技です。
 それでいてプレイフィールはカオスに塗れることなく整然と秩序だっています。元々の骨組みからして抜群に面白かった「キャピタル・ラックス」が大幅なボリュームアップを遂げた今作、ゲーム好きを自負するならマストバイです!

Kickstarterプロジェクト「マハラジャ」のバッカーの皆様(そして、一般販売をお待ちになられているファン)へ

 昨年にKickstarterで出資者が募集され、まもなく発送が始まる見込みのCraniosreations「マハラジャ」について、すでにお知らせさせていただいております通り、テンデイズゲームズが、日本語版発売と、国内バッカーへ向けての発送をさせていただくことになっております。
 そのスケジュールが固まって参りましたので、一般販売の時期も含めてお知らせさせていただければと思います。

注意
 今回のお知らせは、テンデイズゲームズが独自にお客様サービスとして提供させていただくものであり、Craniocreationsの公式的なものではありません。このお知らせの内容について、Craniocreationsに問い合せすることはお控えください。
 あくまで予定であり、変更となる可能性は十分あります。
 今回のプロジェクトに関して、テンデイズゲームズは、あくまで日本国内発送のサポートであり、今回のプロジェクト、発送、商品に関する責任は、Craniocreationsにあります。(もちろん、対応できることは出来るだけ対応させていただきます)

 プロジェクトの進捗についてですが、現状、以下の通りとなっています。

・マハラジャ本体
 商品完成、製造済み。輸送手配中。今月下旬~末納品予定。

・キックスターター限定タイル
 近日製造完了予定。

・キックスターターアドオン
 内容によりイタリアと中国の(「マハラジャ」とは異なる)工場から、近日出荷予定


 日本国内のバッカー向け発送については、内容にかかわらず、すべて揃い次第の発送とさせていただく予定です。
 また、数量(件数)が非常に多いことや、通常の通販などの発送とは異なる出荷形式となる見込みであるため、すべての方への発送を終えるまで、一週間程度のお時間をいただく見込みです。
 現在、2月3日時点で見込んでいるスケジュールとしては、最短で2月末~3月中旬に発送開始となる見込みです。

 「マハラジャ」一般販売に関しては、バッカーの方への発送が完了した後、一ヶ月から一ヶ月半後の販売開始を予定しています。

 クラマー&キースリングの大傑作「マハラジャ」を、シモーネ・ルチアーニがディヴェロップしたこの春イチオシの期待作です。
 ぜひ、楽しみにお待ちください。

「ステップアップ幻想」の話

 先日、ボードゲームポッドキャスト「ほらボド!」に呼んでいただいて、ホスト役のmomiさん、アークライトゲームズの刈谷さん、ボードゲーム芸人のいけださんとともにボードゲームシーンの今、これからをそれぞれの立場でお話させていただいた時のこと。
 「ライトなゲームから戦略性の高いゲームへステップアップしていかない」という話から、私は「ステップアップで云々みたいな話っていうのは、幻想か、もしくはビジネス的なトーク」と持論を展開させてもらいました。
 それを「Table Games in the World」の小野さんの琴線に触れたようで、エッセイとして取り上げていただきました。(→リンク

 これが思いの外、反響があり、私もいろいろな人のツイートなりを拝見させてもらったのですが、「ステップアップ幻想」という言葉が一人歩きしている感があり、誤解をもたれている方も多いようなので、今回、ここで少し突っ込んで書いてみることにしました。

ステップアップ(論)幻想

 まず、今回、「ステップアップ幻想」という言葉から『ステップアップを経てゲームをより遊んでもらう』こと、それ自体を「幻想である」と断じている旨の会話だったと捉えられた方が多いような印象です。
 しかし、それは私が本来言いたかったこととは少し異なります。

 私は普段、職業柄、多くの方に接するわけですが、その中で「周りの人を『ステップアップ』させたい」ということをうかがうことは少なくありません。
 これはゲームをこれまで長く遊んできた方に多いというよりも、ここ数年でボードゲームの魅力を知り、今まさに「もっともっとゲームを遊びたいし、知っている人を増やしたい」と思っている方に多い印象です。
 より詳しく話を聞いてみると、大多数というわけではないものの「ステップを踏んでこなかった」方も少なくありません。
 「自分はステップを踏んでこなかったけれど、誰かにボードゲームをより知ってもらいたい時、ステップを踏んでもらおう、ステップアップしてもらおう」と思ってしまっているわけです。
 そう思い込んでしまわないためにも、「ゲームをより知ってもらうためにはステップを踏ませたほうがいいよ」というステップアップ(論)を「幻想ではないか」と表わしたのです。
 決して「ステップアップ」自体を否定したわけはなく、むしろ、「ステップアップ」が有効な過程であることも知っています。
 しかし、その「ステップアップ」の形は、それこそ無数にあり、「これがまさに王道のステップアップ」と決めることはできないでしょう。
 ただ、より多くの方に当てはまるであろう「ステップアップ」の形を提示することも重要です。「ほらボド!」の中で、「幻想」と同時に「ビジネス的トーク」との言葉を用いました。「多くの方が参考にしやすい形で提示する」ことを、私は「ビジネス的トーク」と表したのです。

ステップアップの形

 多くの方がゲームに触れるようになった今、「ステップアップ」という言葉も、狭義のもの、広義のもの、と分けて考えるタイミングになったのかもしれません。

 「ステップアップ」という単語から、多くの方は「簡単なゲーム→難しいゲーム」という形を想像するかもしれません。
 「簡単なゲーム→難しいゲーム」というステップアップは、「ひとつの側面でそうであるけれども、ある側面ではそうではない」のではないでしょうか。
 今回の「ほらボド!」では「簡単なゲーム→難しいゲーム」という流れを前提に「ステップアップ」の話をしていましたが、それは狭義のステップアップであるように思います。

 では、広義のステップアップとはどのようなものでしょうか。
  例えば、ある「大喜利系パーティーゲーム」を楽しんだ方が、さらにゲームを遊びたいと思った時のステップアップについて考えてみます。
 これを狭義のステップアップで、次のステップを考えるなら、「少し戦略性のあるカードゲーム」辺りでしょうか。「ボードゲーム」に触れてみる意味でも、大定番を試す価値もあるでしょう。
 しかし、「異なるスタイル(システム)のパーティーゲームを試す」、「ゲームとしての駆け引き、得点要素のあるようなパーティーゲームを試す」というようなステップアップもあるはずです。
 これは、中級以上のゲームにも当てはまります。
 「45分くらいの競りゲーム」を楽しんだ後のステップアップ。
 「60分~90分くらいのゲーム」、「さらにいくつかの要素を縦走的に重ねたより複雑な競りゲーム」、「まったく異なる(遊んだことのない)システムのゲーム」、いずれも当てはまるでしょう。
 
 もちろん、狭義のステップアップ、広義のステップアップのどちらについて話すべきかということではありません。
 これからは、発信する側も、受取る側も、この点を少し気をつけて話せるならば、よりたしかな形で話ができるのではないでしょうか。

販売店、出版社として

 今回、ブログのトピックとして書かせていただきましたが、販売店として、そして出版社としては、すでに、そして自然に意識させていただいていることでもあります。

 店頭で、ご相談いただいた場合は、「どういったゲームが欲しいのか」はもちろんのこと、「これまでのゲーム経験」、「想定している場、メンバー」さまざまな点をうかがった上で、ご提案をさせていただいています。
 はじめてゲームをやる人、ひとまずは「今日の飲み会」で楽しめればいい人、プレゼントにしたい人、ゲームを買われる方の幅は本当に広がっています。
 そして、もちろん、「ステップアップしたい人」。
 それぞれの方に真摯に向き合い、最良の提案をさせていただくことはとても重要です。
 このときに、前述の「ステップアップ(論)」に安易に頼ってしまわないよう、自戒気味に「幻想」と思っているのかもしれません。

 一方、テンデイズゲームズは、出版社としての顔も持っています。
 出版社として「ステップアップ」についてのアプローチを考えた時、また違った面が出てきます。
 テンデイズゲームズでは、多くのゲームを発売していますが、これらのゲームについて一つ一つ、出版社自らが販売店と同様の形でお客様一人一人にご提案していくことは不可能です。
 しかし、なんらかのアプローチはできるはずです。
 テンデイズゲームズは決して大きな出版社ではありませんが、そのラインナップの幅は、キッズゲームから、パーティーゲーム、重量級ゲームの日本語版、コアユーザー向けの和訳付輸入版など、出版社としての規模に見合わない幅の広さがあると自負しています。
 ラインナップの拡充と安定供給をはかることで、より多くの方に、さまざまな選択肢をご提供できるものと思っています。
 お客様一人一人が、それぞれの環境でボードゲームの購入やステップアップを考えた時や、出版社よりもファンの方に近い販売店やサークル主催者の方々などへ、多くの選択肢を提供できるように努めることは出版社としてとても重要だと思うのです。
 もちろん、まだまだ課題はたくさんあります。今、私が取り組みたいものとしては、「お客様と購入ゲームのミスマッチがおきないよう、より参考となる情報を提供する」ということでしょうか。

最後に

 今回、多くの方が「ステップアップ幻想」というトピックについて考えたり、語られたように思います。
 日本のボードゲームシーンは、まだまだはじまったばかりではないでしょうか。
 そのボードゲームシーンで、ひとつのトピックが熱を持って語られるというのは、とてもいいことだと思います。(もちろん、そんなことは放っておいて、純粋にゲームを楽しむのも大事です)
 いろいろな方の話を共有し、昨日より今日、今年より来年、5年後より10年後のボードゲームシーンがより充実したものになればいいなあと思います。

今、「ガイアプロジェクト」ではなく「テラミスティカ」を遊ぶ6つの大きな理由

 2012年の発表以降、ユーロ系ヘビーストラテジーゲームシーンを代表する一作として多くの人に楽しんでいただいている「テラミスティカ」。
 引き続き、高い人気を誇る一方で、派生作の「ガイアプロジェクト」と比較され、その上で「ガイアの方がいいよ」と言われることも少なくありません。
 また、店頭などでお客様から「どっちがいいですか?やっぱりガイアプロジェクトですか?」というように訊かれることもあります。

 先日、再版分が入荷したこともあり、2021年、「ガイアプロジェクト」ではなく「テラミスティカ」を遊ぶ理由をお送りしたいと思います。

 もちろん、どちらが優れているか、ということではありません。それぞれの魅力を今一度、みなさんに知っていただき、参考にしていただければと思います。

 なお、今回の記事作成にあたり、「テラミスティカ」の熱烈なファンであり、かなりのプレイ回数を誇る、せんせーさん(Twitter:@ T_Irie6037)にご協力をいただきました。

1:経験値を積みやすい

 ゲームごとにいくつかのボードを組み合わせるモジュラーボードを採用した「ガイアプロジェクト」と異なり、「テラミスティカ」のボードは固定ボードです。
 このことにより、「テラミスティカ」では、セッティングの段階で、大きくボード構成が変わることはありません。
 そのため、一回一回のゲーム経験を、次のプレイに向けてよりいいプレイングをイメージをしたり、活かすことが比較的容易です。
 「テラミスティカ」を遊んだ後、「初期配置をあそこにしておけば」、「あっちに延ばしたほうが、この種族の強みを活かせたはず」といった感想から、すぐにでも次のプレイをしたくなった人も少なくないと思います。
 この経験値をダイレクトに活かしやすいというのは、「テラミスティカ」の大きな魅力の一つといって間違いないでしょう。

 一方で「ガイアプロジェクト」のセットアップにおけるランダム性は、ゲームごとにアプローチを変える必要性が高く、経験値というより、ゲームの根本的な部分に対する深い理解をより求められると言っていいでしょう。
 「ガイアプロジェクト」のランダム性による「リプレイ性の高さ」が魅力として触れられることも多いですが、「経験値を次のプレイに活かす」ということも、次のゲームプレイへのモチベーションとしては決して劣るものではなく、そのリプレイ性は「ちょっと毛色の違うもの」と言えるのではないでしょうか。

2:相手の行動を読む面白さ

 「テラミスティカ」は、基本的には王道的な(素直な、と言ってもいいかもあしれません)アクションが強いゲームです。また、その「強いアクション」は、場面場面で、ある程度絞られています。
 このことにより、プレイ経験を積むと、プレイヤー間で相手がどのようなアクションを実行するかという読みが比較的容易にできるようになります。
 手の読み合いの面白さがプレイを重ねるごとに上積みされ、自分のプレイングの上達も実感できることでしょう。

 「ガイアプロジェクト」はQICアクションに代表されるように、選択肢の幅が広げられ、アクションの自由度も高められています。
 さまざまな戦略を試す面白さ、妙味がアップしており、「どちらの戦略がより優れているか」を競うという点は大きな魅力ではあります。
 しかし、「テラミスティカ」の効果的な手を打ち合い、その読み合いを繰り返す面白さは、やはり大きな魅力と言えるでしょう。

3:慣れるとプレイのテンポが早くなり、ゲーム時間が短くなりやすい

 「王道的なアクションが強い」ということを「2」で述べました。
 この利点は、まだほかにあります。
 さまざまなアクションを吟味しなければならないという状況は、プレイを重ねることで少なくなり、そのプレイはより洗練されたものになります。
 そのため、さまざまな状況での思考時間は、プレイを重ねるほどに短くなっていくでしょう。
 プレイ時間が短くなれば、より多くの遊ぶ機会をもたらしてくれるでしょう。

 このことは、「定石化しやすい」ということに繋がり、それをネガティブに捉える方もいるかもしれません。
 しかし、「テラミスティカ」は、多人数ゲームであり、ある程度定石化したところで、すべてのケースに対応することは決して簡単ではありません。
 また、そのことにより、「相手のアクションを読む面白さ」はより高められていると言っていいでしょう。

 また、「テラミスティカ」が本来持っている拡大再生産的な面白さや、ボード上のせめぎ合いは、ゲーム展開に起伏を生み、プレイは毎回ドラマティックであり、「定石(に近いもの)をなぞる」ような印象はありません。
 やはり、むしろ魅力に繋がっていると考えていいでしょう。

4:他プレイヤーとの協力関係による妙味

 「テラミスティカ」は、陣取り要素がある一方で、他プレイヤーと協力関係を作ることがシステムに組み込まれ、それをプレイに活かすことが重要となるゲームです。
 交易所のコストダウンやパワー授受など、一回一回の恩恵は少ないながらも、その積み重ねは大きく勝敗に関わってくることになります。

 「テラミスティカ」の陣取り要素において、他プレイヤーを閉じ込めるようなプレイングも可能です。
 このことにネガティブがイメージを持たれている方も少なくないように思います。
 しかし、果たしてそうでしょうか。
 協力関係を作ることがある程度重要である以上、いたずらに他プレイヤーを閉じ込めるより、共存共栄を選択するほうがゲームの勝敗においては有利であることも多いのです。
 もちろん、鍵となるマスを押さえることは極めて重要です。
 相手をどう活かし、自分はより優位を保つか、その押し引きの悩ましさ、面白さがある、ということです。

 説明書の推奨配置を見ると、「テラミスティカ」は二軒とも他プレイヤーと隣接していますが、「ガイアプロジェクト」では一軒隣接に留まります。ひょっとしたらこのあたりに、設計思想が見え隠れしているのかもしれません。

5:種族の使い分けが楽しい

 「いやいや、『ガイアプロジェクト』だってそうでしょ?」と思われた方、それは正しくもあり、間違ってもいます。
 
 種族ごとの異なる特性をどう活かすか、は「テラミスティカ」、「ガイアプロジェクト」の最大の魅力のひとつ、であることは言うまでもありません。

 しかし、その特性の持たせ方は少し異なります。
 発売当初は、非常に個性的に思えた「テラミスティカ」の種族特性は、「ガイアプロジェクト」と比較すると、ややおとなしめなものになっています。
 このことにより、異なる種族を使った時であっても、ある程度はそれまでのプレイ経験を活かしやすいということに繋がっています。
 それでいて、さらに特性を巧みに活かすことができれば、勝利に近づきます。
 もちろん、個性的かどうかということについても、「テラミスティカ」の種族特性も十二分に個性的です。
 この種族間の特性バランスの良さは、「テラミスティカ」において特筆すべきポイントでしょう。

 「ガイアプロジェクト」は、「テラミスティカ」と比べ、より種族特性は個性的なものになっています。
 種族ごとに新鮮なプレイ感覚を得られるというのはもちろん魅力です。また、個性的なだけに、活かしきった時の気持ちよさもあります。

 「テラミスティカ」の種族間の特性バランスの妙味をとるか、個性的な種族特性を活かす面白さをとるか。
 あなたの好みはどちらでしょうか?

6:拡張セットを加える度に新鮮な発見ができる

 「テラミスティカ」では、「氷と炎」、「商人たち」という二種類の大型拡張セットが発売されています。
 これらの拡張セットを購入することで、新しいボードや、新しい種族、新しい要素、ボーナス得点システムなどを追加することが出来ます。

 「テラミスティカ」の拡張セットは、いずれも完成度が高く、決してその人気にあやかった安易な商品ではありません。
 また、「拡張要素は、すべて加えたほうがいい」ということでもなく、基本セットだけでも十二分な面白さ、奥深さがあり、そこへ拡張セット(要素)をどのように加えるかによって、新鮮なプレイ環境、戦略の試行錯誤などを繰り返し楽しむことが出来るのです。

 もともとランダム性の高いセットアップを取り入れた「ガイアプロジェクト」は、プレイごとの新鮮さは基本セットだけでもかなりのものがあると言えます。
 しかし、現状では拡張セットは発売されておらず、「テラミスティカ」に拡張セットを加えたほどの大きな変化を味わうことはできません。
 あんなに大好きだったゲームも、いつかは飽きてしまうこともあるでしょう。
 その時に、すでに拡張セットが用意されている「テラミスティカ」は、また新しい気持ちを呼び起こしてくれる作品となるでしょう。

最後に

 というわけで、お送りした「今、テラミスティカを遊ぶ6つの理由」、いかがでしたでしょうか。
 
 「ガイアプロジェクト」との比較を軸としてありますが、冒頭でも触れたように異なる魅力を持った作品であり、どちらが優れているかということではありません。
 また、ここで触れた内容が、ある人にとっては魅力であっても、ある人にとっては欠点となることもあるでしょう。
 
 「テラミスティカ」、「ガイアプロジェクト」のどちらで遊ぼうか、どっちが自分の好みに合っているだろうか、そんな時にこの記事を参考にしていただけると嬉しいです。

 「テラミスティカ」、「ガイアプロジェクト」のいずれも、名作であることは間違いありません。
 ぜひ、それぞれを遊び比べて、自分にとってより響く方はどちらなのかを考えみてください。