ゲーム紹介:マスター・オブ・ルネッサンス-ルネッサンスの偉人たち(Master of Renaissance: Lorenzo il Magnifico – The Card Game / Simone Luciani, Nestore Mangone / Cranio Creations / 2019)

2018年に発表されスマッシュヒットとなった「ニュートン」のデザイナーコンビであるシモーネ・ルチアーニ&ネストレ・マンゴネが再びタッグを組み発表された新作が、今回ご紹介する「マスター・オブ・ルネッサンス-ルネッサンスの偉人たち」です。

プレイヤーは、フィレンツェの有力者となり、得た資源をもとにカードを獲得、使用することを繰り返し、教皇への信仰心も示しながら、より高い得点獲得を目指します。
ゲームのジャンルとしては、さまざまな効果を持つカードを獲得し、自分の場で組み合わせることでより効率的なリソース獲得や変換の仕組みを作り上げていく「エンジン/タブロービルド」。世界的ヒット作の「宝石の煌き」や「ウイングスパン」が、このジャンルの有名作と言えます。

今や最注目デザイナーの一人となったルチアーニと、パズル性を持った作品が得意なマンゴネが、その「エンジン/タブロービルド」を自作の中でどのように料理したのでしょうか。

収入か変換か

ゲームの進行はとてもシンプルに作られています。
手番が来たら、「市場から資源を得る」、「発展カードを1枚購入する」、「生産力を発動させる」の三つのアクションから1つを選んで実行します。(正確には、そのほかに特別なアクションとして指導者アクションがあります)

まず、なにはなくとも資源がなければはじまりません。
「市場から資源を得る」アクションを実行するこで、プレイヤーは資源を得ることができます。
市場は、マーブル(球)が並べられたトレイで表現され、余っているマーブル一個をトレイの段か列に押し込み、その時にその段か列に並んでいたマーブルに対応する資源を得ることができます。
マーブルを押し入れる、押し出すというギミックは目を引くことに加え感触的にも楽しく、このゲームの特徴になっていますが、決してギミック的な魅力だけに留まらず、ゲームシステム的にも面白いものになっています。
まず、列を選ぶか段を選ぶかで獲得できる資源の個数が3個なのか4個なのか変わり、どう押し出されていくかで資源の種類が刻一刻と変わるため、その選択には非常に妙味があるのです。

美しいマーブル

資源を得たら、発展カードを購入することになります。
カードは、示されている資源を支払えば購入することが出来ますが、カードは三つのレベルに分けられており、レベル2とレベル3のカードに関しては、すでに購入し所有している1と2のカードを上書きするようにしか購入することができないので、注意が必要です。
資源が豊富にあろうとなかろうと、自分の場は段階を経て強化していかなければならないのです。
また、これは、それまで使っていたカードの効果が使えなくなることも意味します。レベル2や3のカードは、単独で見ればより強い効果を持っていますが、その効果が実際に自分にとってより効果的なものかどうかはしっかりと見極める必要があるでしょう。
加えて、購入したカードを配置する「スロット」と呼ばれる場は、3つしかないため、そのスロット間のバランスも非常に重要なのです。

次に、購入したカードを発動させることになります。
カードを発動させることで、保有している資源を別の資源(もしくは信仰心)に変換することができます。
ここで重要なのは、発動させることでできるのは、あくまで「変換」だということです。1個の資源が異なる2個になることや、レベルの高いカードでは2個の資源が異なる5個の資源になり、結果個数が増えることはありますが、1個の資源が異なる1個に変換されるような効果を持つカードもあります。直接的な収入に繋がるようなカードは用意されていないのです。
エンジン/タブロービルドのゲームでは、直接的な収入増に繋がるカードが用意されていることも多く、拡大再生産的な要素を多分に含んでいることも珍しくないのですが、「マスター・オブ・ルネッサンス」においては、あまり当てはまりません。
むしろ、単に資源を増やしたければ、「市場から資源を得る」アクションの方が効率がいいことの方が多いのです。

さまざまなカードを組み合わせていく

貯蔵所と金庫がカギ

では、なぜ、発展カードの購入と発動が重要なのでしょうか。
その答えは、個人ボードに用意された貯蔵所と金庫にあります。
「マスター・オブ・ルネッサンス」では、市場から得た資源は、貯蔵所へと置かれることになります。
しかし、この貯蔵所は、3種類の資源をそれぞれ1、2、3個までしか保管することができないのです。しかも、同一の資源4個を1個と3個に分けておく、というようなこともできません。ゲームを進めるには、あまりにキツい制限が設けられているのです。
ここでカードを発動させることでの変換がとても大きな意味を持ってくることになります。
変換によって獲得した資源は、貯蔵所ではなく金庫へ置かれることになります。
金庫は、貯蔵所とは異なり、制限無くさまざまな資源をどれだけでも保管することが出来るのです。
ゲーム序盤こそ、貯蔵所の資源だけでもカードの購入は出来るものの、レベル2や3のカードは、金庫の資源を用いることが前提になっているので、金庫を含めたマネージメントは必須なのです。
すなわち、市場から獲得した資源を貯蔵所に保管しつつ、適宜、カード効果を用いて変換を行い、金庫へ移していくことが勝利のカギとなっているのです。

的確なマネージメントが必要な貯蔵庫と金庫

教皇への信仰心を示せ

プレイヤー間のインタラクションも見ていきましょう。
「マスター・オブ・ルネッサンス」でインタラクションが色濃く出ているのは、発展カードの購入と信仰トラックでしょう。
購入する対象となる発展カードの種類、枚数は、非常に限られており、他のプレイヤーとプレイの方向性が被った際には、狙ったカードをいち早く獲得できるかどうかが重要となるのは言うまでもありません。
次に信仰トラックです。
ゲーム中、信仰心を獲得するたびに、プレイヤーは、信仰トラック上で信仰マーカーを進めることになります。
信仰トラック上で、あるプレイヤーが教皇スペースと呼ばれるマスに到達、もしくは通過した際に、ほかのプレイヤーもマーカーの進行を確認することになります。
このとき、対応する一定の区間に到達していれば問題ないのですが、もし、一定の区間に到達できていない場合、教皇からの恩恵を得られなかったとして得点を逸してしまうのです。
また、最後の教皇スペースはゲームの終了条件にもなっており、ゲームの終了タイミングを見据えたプレイングを考えた時にも、非常に重要な要素になっています。
直接的なインタラクションではありませんが、他のプレイヤーがどの程度信仰を獲得しているのか、もしくは獲得できるようなエンジン/タブローを構成しているのかは常に把握する必要があるでしょう。

間近に来た教皇スペース

まとめ

現在、人気ジャンルのひとつになっている「エンジン/タブロービルド」ですが、「マスター・オブ・ルネッサンス」では、拡大再生産的な部分をかなり大胆にそぎ落とし、「変換」の部分を掘り下げたことで、非常にタイトなゲームになっています。
収入の増加、インフレがもたらす高揚感はありませんが、だからこそ、組み上げたエンジンがうまくはまり、狙ったとおりの資源の獲得と活用が出来た時の快感は、このゲームならではのもの。そして、タイトなゲームであればこそ、より一層、その快感が味わえるものになっているのです。

基本アクションのシンプルさ、貯蔵庫と金庫における資源管理の悩ましさ、限られた3つのスロットをどのように活用していくかのプランニングとエンジンビルドの面白さ、信仰トラックにおける駆け引きとそれによる収束性の良さ、加えて、マーブルを用いた市場システムのキャッチーさ。
決してヘビーゲームではありませんが、ゲーム好きも唸らされる箇所を随所に感じられることができます。
ルチアーニ&マンゴネのデザインセンスが随所に光る、完成度の高い一作であると言えるでしょう。

マスター・オブ・ルネッサンス-ルネッサンスの偉人たち
プレイ人数:1~4人(1人ゲームはスコアアタック)
対象年齢:14歳~
プレイ時間:60分
ルール:8ページ

※5月下旬発売予定