テンデイズゲームズスタッフの神田です。
テンデイズゲームズの夏セール、様々なタイトルが立ち並ぶので、どれにしようか目移りしてしまう方もいるかとは思いますが、「せっかくなので、ちょっと変わりどころが欲しいな」「ちょっと冒険してみたいな」という人向けのタイトルをここではいくつかご紹介したいと思います。
ど真ん中からは意図して外したものとなりますが、球速は折り紙つきの作品です。一風変わった後味が胸に残るタイトルを揃えてみましたので、ご購入の際の参考にしてもらえればと思います。
ニャー
トリックテイキングゲーム(以下「トリテ」と呼びます)は、古くから遊ばれている伝統ゲームながら最近にわかに注目を集めている1ジャンルです。
気軽に遊べるカードゲームでどれもが独自の奥を持つものの、長い歴史を誇るだけあって数多くのトリテが出回っているため、「どれから手をつければいいの?」と悩む人もいるかもしれません。
そんな人にオススメのトリテ入門作が「ニャー」。トリテの楽しさとはズバリ「長期計画の立案と遂行」です。自分の手札を睨み、どこで勝ち、どこで負けるかを計画し、実行し、評価します。自分の思い通りにゲームを運べた瞬間が実に気持ちいいのです。
「ニャー」は、プラス点とマイナス点のチップで勝つべき勝負と負けるべき勝負が示されているため、計画の見通しがとても立てやすいゲームです。
とは言え、そこは人間同士の勝負なので常にうまくいくとは限りません。時には予想外の展開で計画の立て直しが必要にもなり、臨機応変な対応力が問われるのです。
ルールも極めてシンプルにまとめ上げていてクニツィアらしい美学も随所に感じられるゲームです。「ここは勝つべき!」というプレイヤー間の無言の同意が場のテンションを静かに高め、勝敗に一喜一憂できる点は、さすがクニツィア、トリテの神髄を見極めているなと唸らされます。
ファウンダーズ・オブ・テオティワカン
ジャンルとしては変形のワーカープレイスメントで、ワーカーを配置して獲得したタイルを個人ボード上に配置して、資源や得点を獲得していきます。ワーカーの配置ルールが一風変わっていて、1つのアクションスペースで積み上げられたワーカーの数だけアクションポイントが貰えるので後乗りが有利な局面があるのです。全体的には「選ぶアクションは決まっているけど、さて、どのタイミングで実行するか?」を悩むゲームになります。
他にも様々なツイストが光る一作で、例えば、資源を産出する建物タイルはそのタイル上ではなく、配置された周囲の空きマスに資源を湧かせます。そのため、広い盤上を頑張って埋め切るのではなく、狭いスペースをどう有効利用するかで頭を使うゲームです。
ラウンドごとにタイル配置が制限される仕組みもシビアながら痺れる仕組みで、目先だけではなく長期計画が求められるゲームでもあります。マネジメント性の高いゲームを好む人に特に刺さる内容と言え使っていくか、るでしょう。
個人ボード弄りは誰にも邪魔されることなく手元に集中できますが、ワーカープレイスメント部分は後乗りでより強いアクションが打てるため、他プレイヤーの一手が自分の選択に大きく影響してきます。この辺りのインタラクションの持たせ方は実に今風で洗練されています。
「テオティワカン」と同テーマのタイトルではありますが、デザイナーも違えばゲーム性も全く異なる作品です。どちらかと言えばこちらの方が遊びやすいタイトルなので、「テオティワカン」を遊んだことがない、という方でも問題なく遊べる内容です。
オリジンズ:ファーストビルダー
「ネメシス」の作者として知られるポーランド人デザイナーAdam Kwapińskiの変形のワーカープレイスメントです。この人らしい様々な工夫が盛り込まれた尖った作りのゲームと言えるでしょう。
例えばその工夫の一つとして、ワーカーとして使うダイスはその出目がワーカーのパワーとなります。各アクションスペースは「ここを使用するには3以上のパワーが必要だよ」といった形でワーカーのパワーを要求してきます。さらに、アクションスペースはその利用後に要求パワーが1増えてしまうため、値上げ前の駆け込み需要のような形で各アクションの争奪戦が展開されるのです。一方で、アクションスペースの要求パワーは6を超えると1に戻るので、高い峠を目の前にしてのダチョウ倶楽部的な我慢比べも展開されます。この辺りの静と動のグラデーションはユニークです。
また、ワーカーもラウンドごとに成長して出目が1増えていくのですが、出目が6を超えたワーカーは引退してしまい、アクション選択には使えなくなってしまいます。そのため、新人とベテランをバランスよく揃える長期的な人材運用がプレイヤーには求められます。
他にも見どころは数多くあるのですが、遊ぶ際の戦略のヒントとしてセットアップの際のボーナスタイルの配置が実は非常に大きいです。ボーナスタイルは各アクションに付随し、特定の色のダイスでそのアクションを実行する際にプレイヤーにボーナスを与えます。このアクションとボーナスタイルの組み合わせによって、そのゲームでの有効な戦略が大きく変わってくるのです。
これを知った上で、さて、誰もが使いたがる強戦略を必死で奪い合うか、それとも目立たないアクションをコスパよく使い倒すか、その判断から良質なインタラクションが生まれます。非常に多くの要素が盛り込まれたゲームなだけにその全貌を掴むのも一苦労ではありますが、そういった点を意識して取り組んでみるとこのゲームの魅力である歯ごたえのある戦略性を楽しめるのではないかと思います。
スマートフォン株式会社
このゲームは、スマートフォン開発会社のCEOとなって、自社を世界最高のスマホ会社に押し上げることを目指す経済ゲームです。
ゲームの舞台は4Gが最新技術という位置づけの、ちょっと昔の時代設定。そのため、南アフリカやインドなど自社のスタート地点も他のゲームとは一風変わっています。技術勝負のスマホにとっては世界全体が市場なのです。
製造、開発、研究、販売など種々のアクションの行動力を密かに割り振ってから一斉公開するプロットゲームで、タブレットを模した2枚のパッドを重ね合わせてプロットするところにユニークさと妙味があります。廉価販売か高級志向か、開発研究か販路拡大か、という様々な二律背反がパッドに盛り込まれていて、この選択が非常に悩ましいのです。
一度行動を決めてしまえばあとはサクサクとゲームが進んでいくのでスピード感もあり、とても遊びやすいゲームです。現実要素をシミュレーション的に盛り込むことでごちゃごちゃとしがちなこの手のゲームにおいて、一切の経費が存在しないという割り切りも大胆で見事の一言です。5人まで遊べてしっかり遊んだ感のある2時間級ゲームというのも最近ではなかなか希少なポイントですね。