18XXの魅力とは?―いよいよ発売!レイルウェイズ・オブ・ザ・ロストアトラス

 「ユーロゲーム的なモダンな18XX」として話題となりKickstarterでの成功を収めた「レイルウェイズ・オブ・ザ・ロストアトラス」(以下、「ロストアトラス」)。
 プロジェクトの成功を受けて拡張セットも制作され、さらに多言語展開されることとなりました。そして、その多言語展開の中にはテンデイズゲームズが手掛ける日本語版もあります。

 すでに多くの方に楽しみにしていただいている「ロストアトラス」の日本語版なのですが、その一方で、「とはいえ、18XX系はやっぱり難しそう……」、「ゲーマーに人気なのは知っているけど、そもそも18XX系ってどんなゲーム?」という方も少なくない印象です。

 まもなくとなる発売を前に、これを気に「18XX系」に触れてみたい、知ってみたいという方向けに、その魅力、「さわり」となる部分を、ご紹介していきたいと思います。

 (なお、今回の記事は、執筆者であるタナカマの主観による部分も多分に含まれています。18XX系は愛好者の方も多く、魅力の感じ方や見方もさまざまです。また、「18XX系」はタイトルによって程度に差はあるものの独自のシステムが採用されいることがほとんどです。各項目で述べられていることは18XX系の「基本要素として」という視点から書いており、すべてのタイトルに完全に当てはまるわけではありません。)

18XX系って?

 まずは、なにはなくとも根本的な部分、18XX系ってどんなゲームなの?というところからはじめたいと思います。
 その元祖となるタイトルは「1830」。1986年に出版されたゲームです。
 「1830」というタイトルは、ゲームの舞台、テーマを表しており、1830年代のアメリカ東部地域における鉄道会社の開発競争と時代の移り変わりを描いています。
 この「1830」は、鉄道ゲームとしても、株式ゲームとしても、そして経済ゲームとしても魅力に溢れ、濃密な面白さが詰まったその内容は世界中に熱心なファンを生み、そこからさらにファンコミュニティを生み、そして、さまざまな派生作を作られることになります。
 例えば、ユーロゲームファンに人気の「ロシアンレールロード」の作者であるレオンハート・オーグラー、ヘルムート・オーリーも18XXコミュニティの出身者です。デザインしたゲームとしては、実は「ロシアンレールロード」が異質。今でも「18XX」系をコンスタントに制作、発表しています。
 こうして、数多く出版されることとなった「18XX系」は、いまや、鉄道ゲーム/株式ゲーム/経済ゲームの一ジャンルとして定着しているのです。

柱その1:鉄道ゲーム

 ここからは、18XX系ゲームの柱となる要素とその面白さを簡単に紹介していきます。
 まずは、「鉄道ゲーム」としての面白さです。
 プレイヤーは、ゲームに登場することとなる鉄道会社の筆頭株主になることで、その鉄道会社を運営することになります。
 鉄道会社として、線路を敷設することで都市と都市を鉄道網で結び、より多くの都市間で列車を運行することで会社として利益を上げることになります。
 
 このあと紹介することとなる「株式ゲーム」の部分、「経済ゲーム」の部分にも、鉄道会社として利益を上げることが大きく関わってくることになるため、この「鉄道ゲーム」としての部分のウエイトは大きく、そして、しっかりと面白いものとなっています。
 毎手番ごとに敷設できる線路の数はとても少なく、また、山を越えるような線路はさらに敷設しにくいため、路線計画がそもそも重要で、実際に敷設をはじめる前、それこそ、ゲーム開始直後から、ゲームボードをじっくりと見て、カギとなる都市、要所となるマスを見極めるところからすでに濃密な時間が待っていることになります。

 また、鉄道である以上、道路とは違い列車が縦横無尽に行き交うような形に線路を敷設することができないということも重要なポイントです。
 時代が進むごとに、ある程度は対応出来るようにはなるものの、根本的な部分は変わりません。
 自分一人で敷設するならさほど気になりませんが、「ゲーム」である以上、他のプレイヤーの思惑が入り交じることになり、自分の運行計画に基づいた路線網を築くための要所を押さえ、また、望んだ形の路線を敷設するという点において、陣取りや早取りのような「競争」が繰り返されることになるのです。

 それはとても濃密で、「線路を敷くだけでも面白い」のが「18XX」系なのです。

柱その2:株式ゲーム

 次は、株式ゲームとしての魅力です。
 ゲームの目的、勝利条件は、「ゲーム終了時にもっとも多くの個人資産を持っていること」です。
 その個人資産には「株券」もあり、また、ゲーム中に得られる個人の収入は、株式の配当によるものになります。

 ここで「個人」ということを強調していますが、このゲームには「会社」の資産もあり、それぞれ別のものとして扱われます。
 会社が鉄道を運行し、収益を上げると、その収益を「株主に配当として還元する」か「会社の資産として留保する」かをその会社の筆頭株主である社長が選択することになります。
 それぞれの会社の株価は、配当額が大きければ大きいほど上がっていきます。より多くの配当額を得て、さらにそれによって上がった株価で資産を形成していくことが、勝利への主なアプローチとなるわけです。
 しかし、社長は、ただやみくもに配当を選択していけばいいわけではありません。
 列車の本数を増やす、新しく開発された新時代の列車を導入する、路線を敷設するといった、会社をより大きく発展させるためにはそれなりの費用がかかります。そして、それは会社の資産から支払われるため、会社の資産を形成していくこともやはり重要なのです。

 プレイヤーは、常に、どの会社の株をどの程度得ていくか、そしてさらに筆頭株主として経営権を得ていくのか、他のプレイヤーが経営しているならそのプレイヤーはどのように利益を上げ、どのように配当していくのか、どの鉄道がボード上でより発展していくのか……さまざまな点を踏まえて、投資先を考えなければなりません。
 ゲームが終盤に向かうにつれ、動く金額や配当も大きくなっていきます。
 頭を悩ませ、手に入れた株の株価が上がり、配当で現金を掴む。
 これがたまらないのです。
 まさに、株式ゲームの醍醐味でしょう。

柱その3:経済ゲーム

 次は、経済ゲームとしての魅力です。
 もちろん、鉄道ゲームとしての部分、株式ゲームとしての部分、それぞれにも経済ゲームとしての側面があります。
 ここでは、経済ゲームとして、ダイナミックなゲーム展開、シビアだからこそ面白い部分を紹介してみたいと思います。

 まずは、「時間が流れることで古い列車が取り除かれる」という要素を挙げたいと思います。
 「18XX系」では、ゲーム内の時間、時代が進むと新しい列車が開発され、それぞれの鉄道会社は導入することができるようになります。新しい列車は、一度の運行でより長距離(多くの都市)を訪れることができるようになっており、それによって、より大きな利益を生み出すことができるようになります。
 しかし、一方で、時代の流れは、古い列車を時代遅れのものとして葬ってしまうことになるのです。
 これは、文字通り、古い列車を捨てる、使えなくなることを意味します。
 古い列車を主力としていた会社は、ときとして取り返しの付かないような痛手を負うこともあります。
 もし、社長であるならば、いつ、新しい時代を迎えるのか、そのタイミングを読み、適切に列車をアップグレードしていくかを判断しなければなりません。
 時間は待ってくれません。シビアな決断を、ゲームがプレイヤーに迫ってくるのです。

 マネーゲームは、時として、不幸になるのは誰か、ということを突きつけてくることがあります。
 鉄道会社の経営は、常に順風満帆とは限りません。
 思った通りに鉄道が敷設できず利益がそれほど上がらなかった、時代の流れについていけず列車の世代交代ができなかった……そんな展開で「厳しい会社」が現れることもあります。
 そんな会社に見切りをつけ、筆頭株主からおりるプレイヤーが現れたなら、新しい筆頭株主のプレイヤーが会社を引く継ぐことになります。
 それぞれの会社が資産を失い、それでもなお必要となった時、社長がそれを負担することとなります。勝敗への影響が大きいのは言うまでもないでしょう。
 さらに、会社が厳しい状況におかれたのは、前の社長の計画的なものだったら……そんなこともあり得るのが「18XX」系です。

 経済の美味しいところも、シビアなところも。
 儲けるにせよ、損するにせよ。

 経済ゲームとしてシビれるような展開が味わえるのも「18XX」系の大きな魅力なのです。

そして、「レイルウェイズ・オブ・ザ・ロストアトラス」

 この「18XX」系の魅力を現代的な形で仕上げたのが、「ロストアトラス」です。

 例えば、固定されていたゲームボードはモジュラーボードとなり、ゲームごとに新鮮な気持ちで路線計画を立てることができます。
 これまでの「18XX」系では、ボードごとの定石のようなものがどうしてもありましたが、ゲームごとに臨機応変に戦略を練ることからはじめることになるのは、ビギナーにとっては「研究が必要」というような印象の払拭に繋がり、長く遊んできたプレイヤーにとっては新鮮な体験に繋がるでしょう。

 「18XX」系ゲームに、「プレイ時間が非常に長い」というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。「ロストアトラス」では、短時間で遊ぶためのセットアップも用意されており、2時間~3時間でプレイすることも可能です。そして、それでも十二分に面白さを感じ取れるバランスになっているのは見事です。(いろいろな細かいルールでもプレイ時間の短縮が図られています)

 「中小企業の固有能力と合併による大企業化」も魅力的でモダンなポイントと言えるでしょう。
 「ロストアトラス」では、鉄道会社は「中小企業」として登場します。それぞれの中小企業は固有の能力を持っており、それを活用することで会社運営をより効率よく行うことができるのです。
 ゲームが進むと、中小企業同士が合併し、大企業とすることができるようになります。
 このとき、合併する中小企業が持っていた固有能力を大企業が引き継ぐことになります。
 これによって、ゲームごとに多種多様な能力の組み合わせをもった大企業が誕生することになるわけです。
 この幅の広さと、シナジーを生み出す感覚は、とても現代的といえるでしょう。

 もちろん、ほかにもいろいろなアイデアが盛り込まれ、「18XX」系の奥深さ、遊びごたえが、より多くの方に感じられるように作られていることは間違いありません。

 とはいえ、決して簡単なゲームではありません。プレイヤー間のインタラクションも強く、時として、あまりに苦しい展開が続くことも少なくないでしょう。
 でも、だからこそ、こういったゲームでしか味わうことのできない面白さがあり、ゲーム終了後の感想戦もとてもとても楽しいものになるのです。

 これまで、ゲームの難易度以上に、入手のしにくさがあり、触れる機会がなかった方も多いかと思います。
 「レイルウェイズ・オブ・ザ・ロストアトラス」は、拡張セット「ランドマークス・オブ・ザ・ロストアトラス」も含めて、日本語版として広く販売される予定です。
 いまこそ、「18XX」デビューのタイミングです。
 

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