【ゲーム紹介】ゴーレム(Golem / Flaminia Brasini, Virginio Gigli, Simone Luciani / Cranio Creations / 2021)

インパクト大のパッケージ

パラメーター上げモンスター爆誕!

 いまやイタリアを代表するデザイナーの一人として、常に注目を集める存在となったシモーネ・ルチアーニと、イタリアのゲームシーンを世界に知らしめた第一人者ともいえるデザイナーチームのアッキトッカが手を組んで発表した最新作が、今回紹介する「ゴーレム」です。

 ゲームの概要としては、プレイヤーは、ゴーレム伝説発祥の街「プラハ」を舞台に、プレイヤーは「ゴーレム」に命を吹き込み、街の中でさまざまなアクションを実行させ、より高い得点を獲得することを目指すというもの。しかし、勝手に街を闊歩するゴーレムを常に支配下に置いておかねばならず、これは決して簡単ではないのです。

 さて、この「ゴーレム」、メインとなるシステムは「パラメーター上げ/パラメーターコントロール」。「パラメーター上げ/パラメーターコントロール」を簡単に説明すると、ルチアーニを人気デザイナーに押し上げたタッシーニとの共作「ツォルキン」でも見られたシステムで、ゲームを通じ、さまざまなトラックを進めていくことで、得点効率を上げたり、ボーナスを獲得したり、収入レベルを押し上げたりを行っていくことになるというもの。
 この「パラメーター上げ/パラメーターコントロール」は、他のシステムと組み合わされ……例えば、ワーカープレイスメントをメインに据えつつ、アクションの結果としてパラメーター上げがあるというようなことが多いのですが、今回の「ゴーレム」は、「パラーメーター上げ/パラメーターコントロール」が、ガツンと主役に据えられたゲームになっているのです。
 いや、「主役」という表現でも生ぬるいかもしれません。「パラメーター上げ/パラメーターコントロール」に偏執的なまでのこだわりが感じられる「パラメーター上げモンスター」と言ってもいいくらいの内容なのです。

どこを見てもパラメーターと開放要素があるのみ!

 普通のゲーム紹介であれば、アクションがどうだとか手番がどうだという話をするところなのですが、「ゴーレム」においては、それは相応しくないでしょう。
 というわけで、このゲームの主役となる「パラメーター」、また、改良することで開放される要素を見ていきたいと思います。

 「ゴーレム」に用意されたパラメーターと改良、その効果は以下の通りとなります。

個人ボード
・研究トラック(「知識」収入アップ、場に出せる書物の数アップ)
・研究進展タイル(書物を出せる場の開放)
・ゴーレム向上タイル(ゴーレムの特殊効果開放)
・ゴーレムトラック(「得点」収入アップ)
・アーティファクト(さまざまな収入の開放)

メインボード
・三列ある街の「通り」(通りに対応する種類の収入アップ)

 と端から端までがパラメーターなり開放要素となっています。さらに、これらはほぼすべてが最終得点にも関連してくるため、ゲーム終了時を見据えて上げたり開放していく必要があります。
 プレイヤーは、ゲームを通じ、これらをひたすら上げ、開放するためにアクションを繰り返していくことになるのですが……このあたりの詳細はのちほど詳しく紹介するとして、それぞれのパラメータと改良について、さらに掘り下げてみたいと思います。

要素が詰まった個人ボード

 まず、「知識」に関連した研究トラックと研究進展タイルです。
 この研究トラックを上げることで、「知識」の収入がアップすると同時に、場に出せる書物の数そ増やすことができます。
 書物は、獲得し場に出すことで、特別なボーナスを得ることができる特殊カードなのですが、同じ色の書物は同じ場に出すことになり、場に出す度にそれまでに出していた書物のボーナスも再び得ることができるのです。研究トラックを進めることで、場に出せる数も増えることになります。「コンボ数を増やす」と考えるとわかりやすいでしょうか。
 しかし、もちろん、そう易々とは許してくれません。
 まず、そもそも書物を出す場を開放しなければ、そもそも同じ色の書物しか出すことができず、著しくプレイの幅は狭くなってしまうのです。
 研究進展タイルによる改良は、その場を増やしてくれるのです。さらに、タイルごとに固有のボーナスもあり、単に場を増やすにとどまりません。どのようにゲームを進めていくかを見据えて改良することが重要です。
 場を開放し、数を増やし、収入を増やし、さらなるアプローチをする―研究トラックと進展タイルひとつとっても、この一連の流れを作らなければならないところに、「ゴーレム」の難しさと面白さがあるのです。

 次は、ゴーレム向上タイルとゴーレムトラックです。
 このゲームのタイトルにもなっている「ゴーレム」は、町中でさまざまなアクションを実行できるものの、そのほかに特別な能力や、もたらしてくれる恩恵はありません。しかし、ゴーレム向上タイルの改良することで、ゴーレムに新たな力を付与し、より強力な存在へと押し上げてくれるのです。
 また、ゴーレムトラックを進めることで、収入として得点を得ることができるようになります。タイトルになっているだけあって、ゴーレムの強さは即ち勝利への近道というところでしょうか。
 しかし、概要でも触れたように、ゴーレムを支配下に置いておかなければなりません。ゴーレムトラックを進めることにより、街にいるゴーレムは通りをより早く進むようになってしまい、結果、プレイヤーの支配力を容易く超えるようになってしまうのです。

 プラハは、錬金術でも有名な街です。錬金釜を用いてアーティファクトを作ることで、プレイヤーは収入の内容を自分なりに決めることが出来ます。
 まず、決められた黄金駒を大釜に配置することで、まず、ボードに用意された収入を開放することになります。
 次に、そのアーティファクトを改良することで、異なる内容でいくつか用意された改良タイルを配置することになり、ボードに用意された収入に改良タイルの効果を組み合わせることで、収入の内容を自分なりに決めることが出来るのです。
 自分の戦略にあったものを伸ばすのか、自分の弱いところを補うのか―ここまで説明してきた研究トラック、ゴーレムトラックにも当てはまるのですが、改良と開放において提示される選択肢は、常にプレイヤーを悩ませてくれるでしょう。

独特な色使いのメインボード

 さらにメインボードにもプラハの「通り」として表現されたトラックが用意されています。
 それぞれの通りに置かれた助手を薦めることで、基本的なリソースの収入を増やすことができます。
 また、各通りにはゴーレムも置かれることになります。ここまでゴーレムを支配下に置くことが重要であることは触れましたが、この通りにおいて、助手がいるマスまでに置かれたゴーレムであれば、支配下に置くことができます。コストを支払えば、助手よりも先に置かれたゴーレムも支配下に置くことはできますが、もちろん、そのコストを安易に支払っているようであれば勝利は遠いものとなるでしょう。
 この通りに置かれたゴーレムもトラックと言っていいかもしれません。ですが、趣は大分異なります。というのも、ゴーレムは命を与えられた存在だけあり、プレイヤーの意思とは別に自らの足で進んでいくのです。
 通りの各マスにはアクションの描かれたタイルが置かれており、ゴーレムを働かせることでゴーレムがいるマスのアクションを実行することができます。
 しかし、ゴーレムが自らの足で進んでいく以上、魅力的なアクションが目の前にあるにも関わらず、狙って実行できると限りません。これは、プレイヤーにとってアンコントローラブルな要素ではあるのですが、決してストレスを受けるようなランダム要素ではありません。むしろ、アンコントローラブルであるが故、今、提示されているアクションを実行することでどれだけ自分に利があるのかを考えるのは、このゲームならではの妙味と言え、この揺らぎを大胆にゲームに取り入れているところにルチアーニとアッキトッカの凄みさえ感じると言っても言い過ぎではないでしょう。

すべては3アクションに凝縮されている

 ここまで各種のパラメータ、開放要素を紹介してきましたが、では、それらの要素にどのようにアプローチしていくのかを次に紹介していきます。
 プレイヤーは、各ラウンドで通常のアクション選択といえる「マーブルアクション」を2回、プレイヤーの分身でもある「ラビ(神父)」と呼ばれるワーカー駒を用いた「ラビアクション」を1回の計3アクションを実行することになります。そして、これを4ラウンドに渡って行うことになります。
 そうです。たったの12アクションで、前述のパラメーターを上げ、開放要素を開放していかなければならないのです。この辺りにも、私が「ゴーレム」を「パラメーターコントロールモンスター」と評する理由があります。
 
 これだけのボリュームと真っ向勝負でアクションを選択していく悩ましさだけでも面白さは十二分ですが、「ゴーレム」は、このアクション選択自体にもしっかりと面白さを盛り込んでいます。

 まず、通常のアクションに該当するマーブルアクション。
 各ラウンドで、ユダヤ教の会堂の名が付けられた「シナゴーグ」と呼ばれるコンポーネントに色つきの球「マーブル」を入れることになります。入れられたマーブルは、アクションが割り当てられたレーンにランダムで振り分けられることになります。
 それぞれのレーンからマーブルを選び取り、対応したアクションを実行するのがマーブルアクションです。
 このとき、重要なのが、振り分けられたマーブルが多いアクションほど、アクション効果が高くなるということです。すなわち、4個のマーブルのあるアクションのほうが、2個のマーブルがあるアクションよりも効果的となるわけです。
 自分の実行したいアクションにマーブルがより多く振り分けられていればいいのですが、そうでないことも多いでしょう。
 また、アクションを実行する際には、マーブルを選び取ることになるため、アクションが実行されるごとにマーブルが減ることになり、対応したアクションの効果は弱められることになります。
 マーブルの個数と、アクションの実行順に気を配り、より効果的にアクションを実行しなければなりません。なにせ、4ラウンドで8回しかマーブルアクションを実行することができないのです。
 さらには、マーブルの色にも注意しなければなりません。各ラウンドごとに用意された人物カードのボーナスを得るためには、カードに描かれた組み合わせでマーブルを取らなければならないのです。
 手番数が少ないことから、ボーナスを取れたかどうかの差が相対的に大きくなることはおわかりかと思います。どのアクションを実行するかはもちろんのこと、マーブルの色もまた軽視できないのです。
 しかし、ただ、考えるポイントを増やし、窮屈なだけではありません。他のレーンのアクションを実行できる「模倣」アクションや、マーブルが減ってしまうもののラウンドの最後にマーブルを入れ直した上でアクションを選択する権利を得る「パス」が用意され、プレイヤーはじっくりと自分の戦略と向き合えるように作られているのです。

人物カードにも注目すべし

 各ラウンド、1回ずつ実行することにある「ラビアクション」ももちろん重要です。
 いずれも特殊な効果が用意された、この「ラビアクション」、どのようなアクションが出てくるのか、なんと、引かれたタイル次第という、ランダム要素になっているのです。それも、ラウンドごとに異なるアクションが出てくることになるのです。
 オーソドックスなマーブルアクションに対し、特殊な効果ばかりのラビアクションは、活かすことができれば強力なアクションですが、それだけに選択の難しさもあるのです。

いずれも独特な効果を持つラビアクション

もちろん、ゴーレムの存在感は大!

 ここまで軽く触れてきましたが、タイトルにもなっている「ゴーレム」についても今一度、しっかりと紹介しておきましょう。
 ゲームのセットアップ時、そして、ゲーム中に作られたゴーレムは、ボード上の通りにあるマスに置かれます。
 このゴーレムは、マーブルアクションの「労働」によって働かせることで、各マスに対応したアクションを実行させることができます。
 労働アクションにおけるマーブル数は、そのまま「働かせることが出来る(=アクションを実行することができる)ゴーレムの数」になるため、各プレイヤーに用意されたゴーレム4体すべてをボード上に置いていれば、アクション数にものを言わせることができるようになるのですが、さきに説明した通り、ゴーレムを支配下においておくことは「ゴーレム」において難しいポイントであるため、「ゴーレム」をいたずらに増やすことは危険かもしれません。
 支配下におけるかどうかは、各通りに置かれた助手次第。助手が置かれたマスと同じか、手前までのゴーレムは支配下に置いていると見なされます。助手をより進めているかがすなわちゴーレムへの支配力になるわけです。
 しかし、助手をどれだけ進められるかもアクションの効果に依るところである上に、通常のマーブルアクションでは進めることはできません。限られた機会の中で助手を進め、その上でゴーレムを確実に活用するのは、決して簡単なことではないでしょう。
 さらに、ゴーレムは、プレイヤーに恩恵をもたらすほどに、支配下に置くことも難しいものになっていきます。
 ゴーレムに対応するゴーレムトラックを進めることで、収入として得点を得ることができるようになるのですが、と同時に、ゴーレムはよりボード上を早く進むようになっていきます。そして、それは、支配下に置くのをより難しくすることを意味するのです。

 扱いが難しくとも、大きな力を秘めたゴーレムですが、ゴーレム自信の力を開放することで、さらに強大な存在になっていきます。
 支配に置きやすくなったり、労働をより多く実行する機会を得たりと、開放することで得られる効果はいずれも強力です。どの効果をどのような順番で開放していくかもまた悩ましいものとなるでしょう。

 手に余るようになってしまったゴーレムは、解体することで取り除くことが可能です。
 解体することで得られるボーナスも用意されているため、積極的に解体したほうがいい状況も少なくないでしょう。
 しかし、支配に頭を悩ませつつもゴーレムを置いておいたほうがいいのか、それとも解体し、支配にかかる労力を他に割いたほうがいいのか。
 ここにも悩ましい選択が待っています。

そして最終得点計算へ……パラメーター上げの醍醐味、ここにあり

 こうして4ラウンドを行った後、ゲームは終了となり、最終得点計算へと進みます。
 ゲーム中、さまざまな要素を開放すると同時に、各カテゴリーに対応した「燭台」を獲得することになります。
 カテゴリーごとに、「対応した燭台の数」と「各カテゴリーでの得点に関係する要素(例えば完成させたアーティファクトの数など)」を掛け合わせたものを最終得点計算中に獲得します。
 ゲーム中に進めたり開放した要素が最終得点に直結する仕組みになっていることで、いわゆる「得点行動」を積極的に取らずとも最終結果に繋がるように作られているのは、非常に気持ちのいいポイントです。もちろん、進めること、開放すること自体がとても難しくはあるのわけですが……。
 
 最終得点計算において、「目標カード」も無視できません。
 描かれた条件を達成することができていたかどうかでボーナス点を得ることができるのですが、異なる種類、系統の目標カードを達成していたならば、その種類数に応じて追加ボーナスを獲得できるのも大きなポイントです。
 もし、目標カードを戦略の柱のひとつにするならば、なにかの要素に特化するだけでなく、満遍なくさまざまな要素に注力する必要が出てくるのです。
 ここまで読んできた方なら、それは決して容易いことではないのはおわかりでしょう。

 パラーメーターのひとつひとつ、開放要素のひとつひとつ、そのすべてがゲームの結果に直結しているというのは当たり前のことかもしれません。しかし、この手応えこそがゲームの醍醐味であり、それを存分に味合わせてくれるのは、「ゴーレム」の、いや、パラメーター上げゲームの強みと言えるでしょう。

ルチアーニ&アッキトッカが放つモンスターに真正面からぶつかれ

さまざまな形で用意されたパラメーターと開放要素に、限られた手番数の中、どうアプローチしていくか。
 ただ着実に積み重ねていくだけでも簡単ではないでしょう。
 しかし、「ゴーレム」に用意された各要素は、必要なコストと進めること、開放することで得られるリターンとのバランスや、ゴーレムに見られるような扱いの難しさなど、隅々まで考えられたものになっており、ただアクションを積み重ねるだけの要素には留まりません。
 
 さらには、マーブルの振り分けやラビアクション、書物カードに見られるランダム性にどう対処していくかという点で、臨機応変さも求められることになります。
 もちろん、このランダム性は、リプレイビリティーにも繋がっていることは言うまでもありません。

 そのボリュームと随所に見られるこだわりから「モンスター」と評しましたが、決してややこしいだけのゲームではありません。
 むしろ、ルチアーニとアッキトッカが「世のコアゲーマーをなんとしてでも満足させるぞ」という意気込みのもと、過剰なサービス精神で作られたゲームのように思えるのです。
 ぜひ、彼らの渾身の一作であるだろう「ゴーレム」を真正面から受け止めてみてください。

「ゴーレム」は、一月下旬発売予定です。