ゲーム紹介:マラカイボ(Maracaibo / Alexander Pfister / Game’s Up / 2019)

2019年のエッセンシュピールで発表された多くの作品の中で、Boardgamegeekのランキングにおいて、もっとも高いランクに位置している話題作が、今回紹介する「マラカイボ」です。

ヨーロッパ諸国がその覇権を争っていた17世紀のカリブ海を舞台に、プレイヤーは、冒険者としての顔も持つ船乗りとして、富と名声を求め、さまざまな戦略を駆使し、目的を達成させ、より高い得点獲得を目指します。

作者は、アレクサンダー・プフィスター。
「アイル・オブ・スカイ」、「ブルームサービス」と言った中量級のゲームも得意とするデザイナーですが、今回の「マラカイボ」は「モンバサ」、「グレートウエスタントレイル」、「ブラックアウト香港」と言った重量級ユーロストラテジーの流れにある作品で、非常にゲーマー心をくすぐる一作になっています。

カリブの島、町、村を巡れ

ゲームの基本的な流れは、マスとして描かれたカリブ海の島にある町、村を巡りつつ、アクションを実行することです。町には町ごとに特別なアクションが用意され、村ではベーシックなアクションを実行することができます。(加えて、計画カードによって、自分の助手を配置することでさらに特別なアクションを実行できるようになります。後述)
村に止まった際に、非常に重要となることがあります。手番ごとに船駒を進めることになるのですが、このとき、その村に止まるまでに進めたマス数が、村で実行することのできるアクション数に関わってくるのです。
ならば、一気に進めたほうが有利のように思いますが、そこにはもちろん制約があります。それぞれのマス、ルートは一方通行になっており、戻ることができないのです。この点に関しては、「グレートウエスタントレイル」の流れを汲むと言っていいでしょう。
どのくらい船を進め、どのようにアクションを実行するか、一手ごとの選択はとても重要となるのです。
また、カリブ海を一周することがラウンド終了も意味しており、ゲーム全体の流れにも大きく影響を及ぼすのです。

計画カードに注目せよ

「船を進め、アクションを実行する」、ゲームのベースとなる部分は、非常にシンプルと言えるかもしれません。
そこに多様性を加えてくれる大きな要素といえるのが、150枚を超える枚数が用意された「計画カード」です。

さまざまな職業や人物の描かれた「計画カード」を自分の場に出すことで、プレイヤーは、カードごとのさまざまな恩恵を得ることができます。
こういったゲームでお馴染みの収入増加や即時効果もありますが、「マラカイボ」で特徴的なものとして「シナジートークンとの組み合わせによる相乗効果」、「助手アクション」といったものがあります。
まず、「シナジートークンとの組み合わせによる相乗効果」です。プレイヤーは、特定のカードをプレイした際に、それぞれのカードを象徴するアイコンが描かれた「シナジートークン」を得ることがあります。シナジートークンは、それ単独では効果を持ちません。しかし、そのシナジートークンを持つことが前提条件として描かれたカードがプレイされると、プレイヤーにさらなる恩恵をもたらしてくれるようになるのです。いわゆる「コンボ」を可視化させたような特徴的なものと言えるでしょう。
より特徴的と言えるのが「助手アクション」です。助手アクションが用意されたカードをプレイすると、指定されたマスに助手駒を置くことになります。以後、その助手駒の置かれたマスに船駒が止まった際に、そのカードに描かれた特別なアクションを実行できるようになるのです。ボード上にある町のアクションは共通のアクションとなるのですが、「助手アクション」があることで、ゲームが進むにつれ、プレイヤーごとにボード上で実行できるアクションも変化していくことになります。これは、船駒の進め方のルールと相まって、戦略に大きな影響を及ぼすことになるでしょう。
「グレートウエスタントレイル」でも見られた手法ではあるのですが、「村や町に助手がいることで、その場所を訪れた時に協力が得られる」という設定は、ゲームの雰囲気をより一層高めてくれ、テーマ派のプレイヤーにとって大いに魅力に感じてもらえるはずです。

もう一点、計画カードには重要な要素があります。
それは「リソースも兼ねている」ということです。
ボリュームのあるゲームではありますが、実は、基本となるリソースは「ダブロン」と呼ばれるお金だけです。
ですが、「クエストタイル」や「ストーリータイル」と呼ばれる「目的」を達成するために、計画カードが大きな意味を持つことになります。
カードにはさまざまなシンボルが描かれ、このシンボルが描かれたカードを指定された分だけ出すことで、目的を達成することになるからです。
カードは基本的に手番ごとに補充されるとは言え、それをどのように活用するのか、そしてその取捨選択はとても悩ましく、決してそれぞれのカードを安易に扱うことは出来ないのです。

自分の船をより強力にせよ

手を有利に進めるために計画カードが重要であることは述べたとおりです。
ですが、もちろん、それだけではありません。
加えて重要となるのが、自分の船をより強力にすることです。
プレイヤーは、ゲーム開始時に、自分だけの船ボードを受取ります。
船ボードには、非常に多くのさまざまなアクションや効果が描かれています。
しかし、ゲーム開始時点では、これらのアクションや効果にはディスクが置かれ、ロックされた状態になっています。
ゲーム中に、「ディスクを取り除く」という効果を得た時に、それぞれのディスクは取り除かれ、徐々に船ボード上のアクションや効果がアンロックされていくのです。
単純な収入増や得点獲得はもちろんのこと、手札の上限枚数増加や村での基本アクションの効率アップなど、戦略の根幹に関わってくるものも用意されています。
どのタイミングでどのアクションや効果をアンロックしていくか、ここでもまたシビアな選択が求められることになります。

昨今のゲームでは非常に基本的な要素として含んでいることの多い「拡大再生産」。
「マラカイボ」でも、「拡大再生産」的な箇所はもちろんありますが、「お金」だけ、といってもいいほど、拡大再生産の存在感は薄いと言っていいでしょう。
しかし、計画カードや船の強化などにより、「さまざまな効果を積み重ね、プレイヤー自身をアップグレードしていく」ことで高揚感や興奮が得られるようになっており、要素の取捨選択にみられるゲームデザインの巧みさには唸らされます。

さまざまな得点獲得方法を活かせ

では、そのようにプレイを進めていき、その先、実際にどのように得点を獲得していくのでしょうか。

まず、一番基本となるのが収入としての得点です。ラウンド間での決算時、収入として得点を獲得することができます。もちろん、その収入はさまざまなカードによって増加させることができます。先に述べた特定のカードと「シナジートークン」の組み合わせによってはとても大きな得点獲得にも期待できるでしょう。
もちろん、ほかの多くのゲームと同様に、プレイしたカードも得点をもたらします。カード左上に描かれた得点にも注目してカードをプレイしていきましょう。
計画カード以外にも、最終得点ボーナスにもたらす「名声建物カード」の獲得も狙ってみましょう。大きな得点を期待できますが、限られた枚数しかなく、いち早く獲得する必要があります。

もちろん、プフィスターのこと、まだまだ得点手段は用意されています。
「探険トラック」を進めることも、そのひとつです。
ゲーム中、効果として探険トラックを進める機会を得ることがあります。そして、プレイヤーは、ボード上に用意された探険トラックにおいて、自分の探検家駒を進めることになります。
探険トラックの各マスには、さまざまな恩恵が用意されており、その中にもちろん得点もあります。
基本的に進めてさえいけば、それだけで恩恵を得ることができます。しかし、特定のマスにいち早く到達したかどうかでの追加得点もあるため、他のプレイヤーの動向にも注意すべきでしょう。
加えて、ところどころ、分岐点も用意されています。ここでもまたプレイヤーは選択を迫れることになります。
ある種のパラメーター上げとも言える「探険トラック」もまた「マラカイボ」では重要な要素なのです。

さらに重要な得点要素として、世界観と結びついて重要なヨーロッパ諸国への影響力があります。
カリブ海では、フランス、イギリス、スペインが覇権を争い、戦いを繰り広げています。
プレイヤーは、この覇権争いにも身を投じることになります。
勃発する戦いの際に、どの国に加担し、そして影響力を持っていくのか、戦いごとの各国の戦闘力、自らの船の戦闘力、そしてなによりも最終的な得点を見据え、選択を迫られます。
それぞれの国がカリブ海で存在を増していくことは、一種のマジョリティ争いにもなっており、それぞれの国に対しプレイヤーがどのくらい影響力を持ってるかによって最終得点計算においてとても大きな意味を持つことになるため、ゲームを通して常に頭に留めておく必要があるでしょう。

そのほか、個人ごとの目標ともいえる「経歴カード」もあり、得点方法ひとつをとってみても、このゲームのボリュームの大きさを感じ取れるのではないでしょうか。

「マラカイボ」最大の注目点、ストーリーカード!

一通り「マラカイボ」のシステムを紹介してきましたが、もっとも大事なことにまだ触れていませんでした。
それはストーリーカードによる物語性、ナラティブ要素です。
ゲームを開始する前に、「キャンペーン」としてプレイすることを選んだ場合、80枚弱の枚数が用意された「ストーリーカード」を用いることになります。

このストーリーカードには、カリブ海で繰り広げられる物語が書かれており、その内容に従い、それぞれのストーリーの鍵となるストーリータイル、クエストタイルを用意することになります。
ゲーム中、それぞれのタイルに描かれた条件を満たし、達成することで、ストーリーが進展していくことになります。
例えば、冒頭、ここカリブ海で伝染病が蔓延しはじめたことが語られます。
プレイヤーたちは、その伝染病に対処するため、ある町を訪れることになります。
町を訪れ、クエストを達成し・・・すると、一人の医者がキーマンとなることがわかるのですが・・・というように進んでいくのです。
時に、そのカードの内容によっては、大きな選択を迫られることになることもあります。
全プレイヤーでどの選択肢を選ぶべきか、そしてその行く末は・・・ゲームブックのように、どの選択肢を選んだかによって、次に読むべきストーリーが書かれたカードが指定されることになります。
さらには、特定のタイルがボード上に置かれることもあります。ボード上にタイルが置かれることで、ボード上に描かれたマスやルートが上書きされ、ボード上の構成が変わるのです。
ストーリーが進むにつれ、どのようにカリブ海の村や町が変貌を遂げていくのでしょうか。遊ぶほどに、その変化が気になっていくことでしょう。
もともと戦略ゲームとして懐の深い造りをしている「マラカイボ」だけに、普通にゲームを楽しむだけでも十分にリプレイ性の高いゲームになっているのは間違いありません。
しかし、キャンペーンを遊ぶことで、ランダムセットアップとはまた違った、非常に特徴的かつダイナミックな方法で高められたリプレイ性の高さを感じ取ってもらえるはずです。
また、興味深いストーリーを追いつつも対戦ゲームとして駆け引きを繰り広げるのは、とても新鮮なプレイ感があります。

この「キャンペーン」は、いわゆる「レガシー系」と呼ばれるゲームと近いシステムになっていますが、不可逆な変更が加えられることはなく、全体を通してのプレイは一回のみに限られているということはありません。
また、「キャンペーン」ではないプレイ方法も用意されているため、ストーリーにこだわらない、一般的なストラテジーゲームとして楽しむことも可能であり、ユーザーごとのプレイ環境に合わせて遊ぶことができるのです。

まとめ

「マラカイボ」、端々にプフィスターの過去作との繋がりのようなものを感じることができますが、決して過去作の寄せ集めということはありません。
要素によっては極力にシンプルにまとめられた箇所、そしてもちろんストーリーカードを用いたキャンペーンプレイなどに「今」のプフィスター作であるということを十分に感じることができるのではないでしょうか。

拡大再生産とはまた違った「能力や効果の底上げ」を積み重ねることでのプレイ中に味わえる独特な加速感、高揚感は、とても魅力的。
ボード上の駒の進め方やアクションの実行は自由度が高くとも、ヨーロッパ諸国の覇権争いを介しての駆け引き、クエスト達成や探険トラックといった「早い者勝ち」の要素など、インタラクション性も十分。
そしてもちろん「ストーリーカード」を用いたゲーム本来の展開とは異なるダイナミズムとリプレイ性の高さ。
オートマプレイヤー「ジーン」と相手にしての一人用ルールも用意され、抜かりなし。

ひょっとしたら、このボリューム感に難解さやハードルの高さを感じた方も少なくないかもしれません。
しかし、ルールは決して難解ではなく、24ページあるルールブックでも、メインとなるルールについては、半分の12ページで語られています。残りの12ページは、一人用ルールやカードやシンボルの詳細な解説です。
これは私見ですが「グレートウエスタントレイル」や「モンバサ」よりもルール理解の難易度は、低いように思います。
そういう意味では、プフィスターの作品に興味はあったものの、これまでなかなか手を出せなかった方にとっても、ぴったりなタイトルと言えるかもしれません。

2020年、絶対にプレイすべき一作であると自信を持って言えるタイトルです。

マラカイボ
プレイ人数:1~4人(1人ゲームはオートマプレイヤーとの対戦)
対象年齢:12歳~
プレイ時間:プレイヤー一人あたり30分
ルール:24ページ