店長が訊く:SuperMeeple

テンデイズゲームズの店長タナカマが、その時々で気になる国内外のデザイナー、パブリッシャーにいろいろなことを直接訊いてみようというインタビュー企画がスタート!
第一回目は、フランスの出版社「SuperMeeple」です。
「メキシカ」のリリース以降、クラシックと言える名作の数々を美しいアートワークでリメイクし続け人気となっているSuperMeepleは、どんなことを考え、活動を行っているのか、メインスタッフのCharles-Amir Perretに訊いてみました。


まず、SuperMeepleのことを教えてください。

SuperMeepleは、パリに拠点を置くフランスの出版社です。
私たちは2014年からゲームの出版をしています。
4人のスタッフで立ち上げ、それから、1人が加わりました。その後の何年間で、さまざま理由で2人が去り、新たな1人が加わりました。
ですので、今もスタッフは4人です。

SuperMeepleは、『「持っているべきゲーム」を蘇らせる』というアイデアのもと、はじまりました。
そして、最初から質の高いものを出版したいと考えていました。そのためには素晴らしいタイトル、素晴らしいアートワークを用意しなければなりませんでした。
以降も、質の高さを維持できるよう心がけています。
私たちは、オリジナルタイトルの制作も開始しましたが、これまでにリリースしたタイトルと同様の「レベル」のゲームにすることにこだわっています。
また、こだわりとして、私たちはキッズゲームやパーティーゲームをリリースする意図は、今のところありません!

では、具体的に、その「こだわり」について訊いてみたいと思います。
リメイクするゲームを決める際に、最も重要視しているものはなんですか?


リメイクするゲームを決める理由はいくつかあります。
まず、そのゲームを愛していること。
基本的には、そのゲームが以前リリースされた際に遊んでいます。遊んでいなかった場合は、もちろん遊んでみます。
デザイナーが権利を持っているかどうかも気にしなければなりません。
また、そのゲームを市場に投入することが興味的かどうかも考えます。リリースされるゲームがあまりに多い現状にあって、このゲームがなにをもたらすのか、他のゲームの持っていないなにかをこのゲームが持っているかについても考える必要があるのです。
そして、可能ならば、よりよく改善できるポテンシャルを秘めているゲームを選びたいと考えています。

さらに詳しく訊いてみたいのですが、例えば、「Dixit」やGigamicのゲームなど、フランスのゲームは、ドイツのボードゲームとは少し異なるように思えます。あなたたちが、クラシックなドイツボードゲームのリメイクにこだわるのはなぜでしょうか?

それ自体にこだわっているわけではありませんよ!(笑)
ドイツボードゲームは、これまでメインとなるスタイルでした。
ボードゲーム業界において「トリガー」となった「カタンの開拓者たち」はドイツボードゲームです。「カルカソンヌ」だってそうです。
これらのゲームは、それ以前はギークやゲーマーのものだったボードゲームの世界を変えました。
ですから、伝説的なゲームを復活させようとした時、それがドイツボードゲームになるのは自然なことのように思います。
しかし、たしかにフランスのボードゲームが、違ったアイデアや違ったアートワークをもたらし、時を経て、時代は変わったと言えるでしょう。だからこそ、今年発表予定の私たちのオリジナルゲーム3つのうち、2つはフランス人デザイナーによるものなのです!

では、あなたたちがリリースしたタイトルのうち、もっとも印象に残っているタイトルを教えてください。

どんなことをもって「印象に残っている」と言えるのかは、私にはわかりません。
ですが、「メキシカ」、「ティカル」、「クスコ(ジャワ新版)」のマスクトリロジー(怖い顔三部作)をリリースできたことはとても誇りに思っています。
まず第一に、これらはとても素晴らしいゲームです。私はこれらのゲームを、以前リリースされた際に遊び、そしてずっと愛してきました。
また、これらのゲームが、明確な「三部作」に見えるということも、好きなところです。同じアーティストによる箱絵とゲームボード、アートワークの統一感です。
もちろん、私たちが行った内容物の改善も理由のひとつです。いずれも樹脂製の寺院をはじめとした内容物が含まれています。それにより、ゲーム終了時の盤面は、とても美しいものになるのです!

次に、制作過程について訊かせてください。
制作とリリースにおいて、もっとも難しいところはどんなところですか?


的確な選択をすることです!
ゲーム制作は、選択の連続です。そこで焦ってしまってはいけません。
そのためには、プレイヤーが何を期待しているのかをしっかりと推測しなければなりません。
と同時に、パブリッシャ-としては制作における制限も考慮しなければならないのです。

制作と言えば、ルールに関しては、リメイク前の作品に忠実な印象がありましたが、「マフィオズー」では変更が加えられています。
その理由や、変更するかしないかの差について教えてもらえますか。


「マフィオズー」について話しておきましょう。
オリジナルは、ルディガー・ドーンによる「ルイ14世」になるわけですが、私たちは、このゲームの中核となるシステムは大好きだったものの、まだ改善できる点があると感じていました。
非常に繊細なゲーマーズゲームであり、さまざまなことについて考える必要のあるゲームなのですが、いくつかの点において、あまりにも運によるところが大きいと感じていたのです。
単に「運が悪い」というだけであなたの戦略を台無しにすると思えたのです。
そこでデザイナーと話をして、運の要素を減らすことにしたのです。
また、私たちはゲームの「ボード」が好きなので、「ルイ14世」のようにパーツがわかれているのではなく、一つのゲームボードにまとめたいと思っていたのです。
テーマに関しては、より多くのプレイヤーにとって魅力的かつ、メカニックに適しているかを検討しました。テーマに関しては、「U.S.テレグラフ」でも同様のアプローチをしています。

なるほど。好きなゲームだからこそ、常によりよくなるように、ということを大前提として考えているんですね。
さて、そうして制作されたSuperMeepleのゲームは、現在、どの市場で販売されていてますか?また、どの国で売り上げや反応がいいのでしょうか。


私たちは、多くのパートナーと強固なパートナーシップを結ぶ機会を持つことができ、多くの国で販売されています。
もちろんフランス、ベルギー、スイス、カナダ、アメリカ、中国、ブラジル、スペイン、イタリア、イギリス、ドイツ、ロシア、そして日本です!
売り上げは、ゲームによって大きく異なります。
例えば、マスクトリロジーは、南米が舞台となっていることもあり、ブラジルとスペインにおいて、予想を超え、とても成功しています。

私は、SuperMeepleのゲームは、多くのゲームファンにとても喜ばれているように思います。そのように感じていますか?

そうであって欲しいですね。
私たちは、それぞれのゲームが、そのゲームならではの魅力を持てるよう、一生懸命取り組んできました。
それが私たちが1年に1、2タイトルしかリリースしてこなかった理由でもあります。これは多くの出版社と比べ、とても少ない数です。
私たちは、私たちがリリースしたゲームの品質だけでなく、そのリメイクされたゲーム自体が高い評価を得られていると思っています。

そして、今年、あなたたちはリメイクではなく、完全な新作をリリースする予定でいますよね。その理由を教えてください。

はい。私たちは、3つのオリジナル作品をリリースします。
私たちは、これまで、過去の素晴らしいゲームをリメイクすることで、評価を得てきました。ですが、リメイク作が大ヒットすることはめったにありません。
私はSuperMeepleを成長させ、より大きな出版社にしたいと考えています。そのためには、オリジナルの新作を出版する必要があるのです。

ここからは、少し、あなた自身のことを教えてもらいたいと思います。

私はSuperMeepleのスタッフの一人であり、今年からフルタイムで働いています。年齢は42歳です。
数学を学び、統計解析エンジニアでした。最初の一年だけですが、数学教師だったこともあります。
テレビゲームが大好きでしたが、ボードゲームもたくさん遊びました。
「フルメタルプラネット(Full Metal Planet)」、「デューン(Dune)」、「シヴィライゼーション」…そして「カタンの開拓者たち」と、90年代後半以降のさまざまなゲームを!そして、音楽も大好きです。

なぜ、ゲームの出版を始めたのでしょうか?

私はまずゲームをデザインすることからはじめました。
私たちはSuperMeepleを始める以前の数年前に、友人と「オッス(Oss)」と言うゲームをリリースしました。
その後、私自身の作品としては、ポーランドのポータルからリリースされた「Crazy Karts」をデザインしました。
そして、ボードゲームの世界において、多くの人や会社と出会ったのです。
その流れで、新しい会社を始めたいという人々と出会い、その中に加わったのです。

「オッス」!あの骨を投げたり、キャッチしたりの「オッス」ですか!?あのゲーム、テンデイズゲームズで販売していたんですよ!(笑)
とてもユニークで大好きなゲームです。
その制作過程について、少し聞かせてもらえますか?


好きでいてくれてありがとう!
子どもの頃、私がよく遊んでいた非常に古いゲームに「ナックルボーン(Knuklebones)」というものがあります。
ある時、私は、このゲームをよりよくするアイデアを思いついたのです。
私はこのアイデアを何人かの友人に話し、実際に形にすることに取り組み始めました。
多くの人にとってプレイのハードルを下げることは、制作する側としては、とても難しいものでした。
かなり時間を要しましたが、私たちはゲームを完成させ、エッセンでリリースすることができ、また、たくさんの方に買っていただきました。

あなたのフェイバリットゲームを教えてください。

それは難しい質問です!
私が好きなゲームはたくさんあり、そして、あらゆる種類のゲームが好きです。
もっともプレイした回数の多いゲームということならば、ライナー・クニツィアの「チグリス・ユーフラテス」でしょうか。オンラインも含めていいならば、「ギャング・オブ・フォー」もかなりプレイしました。
そのほかには、「メキシカ」、マスクトリロジーの中で一番のお気に入りです。
「エル・グランデ」、「電力会社」、「テラミスティカ」…私のベスト5に間違いなく入るでしょう。「インペリアル2030」、「サンマロ」、「ラ・ボカ」などのドイツボードゲームはどれも好きです。
「アクワイア」、「ディクシット」、「ベガス」などなど、お気に入りリストはあまりに長く、そこから選ぶのはあまりに難題です。

本当にゲームが好きなんですね。どのくらいの頻度でゲームを遊んでいるんですか?

時間を見つけては遊んでいます。
長年にわたり、毎週のように同じ集まりの仲間たちと一緒に遊んでいるのです。
そして、もちろん、SuperMeepleでも遊んでいます。

そろそろ質問も終盤です。
これからのリリーススケジュールを教えてください。
可能であれば、それぞれのオススメポイントも教えてください。


今年、私たちは4つのゲームをリリースする予定です。
本来、3つのゲームをリリースする予定でしたが、計画より遅れてしまったものがあり、4つリリースすることになりました。

まず、「ミシシッピ・クイーン」を6月にリリースします。これはリメイク作になります。私たちがリリースしてきたゲームの中にこの種類のゲームがないこともあり、もっとも有名なレースゲームの一つであるこのゲームをリメイクしたいと思っていたのです。
とても楽しいゲームです。レースゲームに期待することを誰もが簡単に味わえるのです。

2つめは「カラーズ・オブ・パリ」。これは7月発売予定です。
フランスの新人デザイナーによるオリジナル作品です。
はじめてゲームをプレイした際、すぐに大好きになりました!ゲームを遊んでもらった人からも、すでにいいフィードバックを得ています。
ワーカープレイスメントのゲームですが、独自のメカニックも持った絵画をテーマとしたゲームです。

3つめは「ジェネシア(Genesia)」。9月発売予定です。
これもフランスの新人デザイナーによるオリジナル作品です。
プロタイプを対象としたいくつかの賞をすでに獲得しています。
ドラフト要素を持った陣取りのゲームです。
3ラウンドに渡り、より強力なカードをプレイすることでゲームを進めていきます。
プレイヤー間のインタラクションは強めで、他のプレイヤーを攻撃することも出来ますが、まったく戦うことなくゲームに勝利することも可能になっています。

4つめは「多重塔(Tajuto)」です。これはエッセンでの発売を予定しています。
ライナー・クニツィアによる独創的なゲームです。
戦略要素はもちろん、アクションポイント、ベット要素などが組み合わさり、ゲーマー向けに作られていますが、軽めのゲームです。
日本が舞台となっており、プレイヤーは塔を建造していきます。
90年代後半にクニツィアが作っていたような彼の手による「ゲーマーズゲーム」を多くの人々が待っていると思うので、このゲームをリリースできることはとても嬉しく思っています。

日本のファンに一言もらって締めようと思ったのですが、その前に、テンデイズゲームズの印象を教えてください。(笑)

エッセンで出会い、2015年に私たちの最初のリリースである「メキシカ」で一緒に仕事をして以来、テンデイズゲームズは、常に私たちのゲームを日本へ紹介し続けてくれました。
私たちをとても信頼してくれるテンデイズゲームズのようなパートナーを迎えることができ、とても嬉しく思っています。
私たちはとてもいい信頼関係にあり、良好なコミュニケーションが出来ています。
私はすべての国でこのようなパートナーを持つことができればと願っています。

ありがとうございます。
では、最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。


まずはじめに、ありがとう!
私たちのゲームが、日本でも遊ばれていることをとても嬉しく思います。
そして、今年、ついに日本をテーマにしたゲームを発表できることをとても嬉しく思います。
来年、私は日本へ行こうと思っています。私はまだ、魅力的な人々の住む、魅力的な国へ行ったことがないのです。また、川端康成は大好きな作家の一人です。
あなたたちの国には特別なことがあると、楽しみにしています!

いかがでしたでしょうか。
「好きだからリメイクする」というスタンスは、私もとても共感できるもので、ますますこれからのSuperMeepleのリリースが楽しみになりました。
リメイクだけでなく、完全な新作についても精力的にリリースしていくとのこと。特に、エッセンで発売される予定というクニツィアの新作は、日本テーマである上に、90年代のゲーマーズゲーム的な内容ということで、おおいに期待したいところです。続報が楽しみです。

テンデイズゲームズでは、SuperMeepleの各タイトルを絶賛取扱い中です。
テンデイズゲームズ店舗、取扱い各店で、ぜひ、ご覧いただければと思います。

これからもいろいろな人に話を訊いてみたいと思っていますので、「店長が訊く」をよろしくお願いします。

1 COMMENT

ぼーどげーむ5年目

とても興味深く読ませて頂きました。今回は恐らくメール等でのやりとりだと思うので、是非直接相手の方と膝を合わせながら、タナカマさんだからこそ訊ける内容や、相手の感情を訊き出していただければと思いました。これからも楽しみにしております。

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